映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ロルナの祈り  ジャン=ピエールetリュック・ダルデンヌ

2010-05-16 19:53:39 | 映画(フランス映画 )
カンヌ映画祭の常連ジャン=ピエールetリュック・ダルデンヌ兄弟監督の映画
「ロルナの祈り」はヨーロッパ映画独特の不毛のにおいがする。テーマはどす黒い。国籍売買、偽装結婚など隣国中国ではあるが、日本ではないような話を題材とする。共産主義崩壊によって東欧、西欧の双方への人口流入があることで裏取引が蔓延しているどきつい話が基本となる。

アルバニアからベルギーに来ている主人公ロルナことアルタ・ロブロシは、ブローカーの手によってヘロイン中毒の男と偽装結婚してベルギー国籍を得る。男はうだつの上がらない男で、常に身体の不自由を訴え、わがままし放題。それでも彼女への情が移り、更正をしようとする気持ちは持っている。しかし、彼女は彼と離婚して、ベルギーの国籍を売ってロシアの男のもとへ行こうと試みる。ちょっとした狂言ばりに暴力ざたを夫が犯したと台本を考えて、男にもそれに協力するように話をするが。。。。



ショートカットの女性主人公をカメラがひたすら追う。手持ちカメラで臨場感を出し、社会の底辺の人間の卑しい行為を舐めるようなカメラワークで追いかけていく。それにしても下劣である。でも途中から違った心が彼女に生じてくる。あっと驚くラブシーンもある。本気度が強いと思わせるハードさである。明白ではないが、その転換が映画の主題となっていく。

この監督が映画で主人公にする人たちはみな下劣である。今回のユーロ通貨危機で感じることであるが、思っている以上にヨーロッパ諸国がいい加減であることを感じさせる気がする。日本企業は強いユーロを背景に輸出でリーマンショックの前はかなり儲けてきた。それが1ユーロ170円近かったのが今は114円台だ。為替市場からの不信任は彼らの低俗さから来ているというのを、ヨーロッパ系底辺の人物像を描いた映画を観てなおのこと感じる。
ちょっと言い過ぎかもしれないが。。。
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歩いても歩いても  阿部寛

2010-05-16 07:57:26 | 映画(日本 2000年以降主演男性)
なんか奇妙な題名である。映画を観てしばらくして、家族の団欒時にいしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」のレコードをかける画面がある。その中で有名なサビ「歩いても~歩いても~」と歌詞が流れてくる。
どうもそのメロディが題名の基本になっているのかな?と思った。
祖父が亡くなったとき、はじめて身内を亡くした内孫の自分はとてもショックだった。そのとき流行っていたのがこの曲である。子供ながらこの歌が妙にしみた。そんな思い出もある。

「歩いても歩いても」はある家族の帰郷の一日を描いた作品である。
大きな起伏がなく、内容が家族の会話に集約される。
でも全てのセリフが味わい深い作品だ。


阿部寛と夏川結衣夫妻には子供が一人いるが、現在失業中。彼が夏に実家に泊まりに戻る。
実家は開業医であったが、年老いた医師の父原田芳雄は、妻樹木希林と二人で暮らしている。
本当は息子に後を継いでもらいたかったが、15年前に長男は他界、次男阿部寛にはその気はなかった。今でもそのことで父と息子にわだかまりがある。妻は漂々と余生を楽しんでいる。
そんな帰郷の日を描いていく。

最後に語られる話を言っても、映画の性質上問題ないであろう。
息子夫婦が帰郷したあと、数年たって原田芳雄が亡くなり、妻が後を追うことになっている。その墓参りのシーンである意味を持たせて映画が終わる。
自分も父母は一昨年亡くなって、同じようなパターンになった。
そんな話を聞きながら、自分に照らし合わせた。
この映画はストーリーを楽しむというよりも、この帰郷の話を自分に照らし合わせてみて
何かを振り返るといった感じである。

父子の異様な確執
母が息子にこっそり語る嫁の話、母のぴんとはずれたような会話
妻と夫が次の帰郷について語る話など
同じようなことってあったっけ

原田芳雄も阿部寛そして樹木希林もうまいなあ。
派手さのない映画だけど、妙にひきつけられる。
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花まんま  朱川湊人

2010-05-16 07:51:50 | 
通勤途中に、朱川湊人の短編集「花まんま」を読んだ。
特に題名の「花まんま」の愛情あふれる文面に思わず涙してしまった。
心が洗われて、妹への愛情という言葉が気になり、品川の家に一人住む妹のところへ寄った。

花まんま
妹をもつ兄の語りではじまる。妹は生まれたときから変わった子であった。父を亡くした
兄妹は母と一緒につつましく暮らしていた。時々妹は行方不明になったりして家族を心配させた。
そのとき行方の手がかりを得るため、妹の日記帳を兄は見た。そうすると漢字で名前が書いてあった。
小学校の低学年では書けないような字の名前だ。誰なんだろうと兄は思ったが、それは彼女の前世の名前であることがわかった。。。。。

凍蝶
差別を受けて子供のころいつも一人ぼっちだった少年が、やすらぎを求めて遊び相手を探しに自分の住むエリアから離れたところを放浪していた。そこで繰り返し会うようになる18歳の女性がいた。彼女は病気の弟のためにウェイトレスとして働いていると言っている。ある冬の日、二人が会話している時白い蝶が飛んできた。春よりも早く飛びはじめているなあというが、彼女によれば春からずっと生きてきて飛んでいるのだという。。。。

送りん婆
主人公が大阪の古いアパートに住んでいたときの50年ほど前の回想である。アパートに酒乱のおじさんがいた。
おじさんはがんに侵されていた。そのとき、おばさんが呼ばれた。耳元でおばさんが一言話すと、苦しんでいた顔つきが一転柔和な表情となり、そして少しして亡くなっていった。このおばさんは死ぬ寸前の病人のところへ行き、同じように言葉をささやくのであが。。。。

大阪で暮らすということと差別の話はきっても切れない話である。
朝鮮人の差別問題と同時に、はっきり何の差別とは言わないが、いわゆる「差別」の話も出てくる。
それを書くことでいかにも大阪らしい話となる。

それにしてもなんと愛情に満ち溢れている話であろう。
電車の中で本を読みながら、家族のことをおもった。
妻と娘だけでなく、亡くなった父と母そして妹のことを思った。
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