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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ラストレター」 松たか子&福山雅治&広瀬すず

2020-01-26 18:41:47 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「ラストレター」を映画館で観てきました。

岩井俊二監督の新作である。「love letter」と「リリーシュシュ」が特に好きである。「love letter」の冬の小樽を舞台にした透き通った色合いが好きで、一方で「リリーシュシュ」は自分の中学時代にダブる部分もあり強いインパクトがあった。その2作の印象が強く先入観を持たずに映画館に向かう。中年の夫婦が目立つ館内である。途中までは何これっていう展開で期待外れかと思ったが、小林武史の音楽も情感を高めていて中盤からは徐々に深みがでてくる。

夏の仙台、姉未咲の葬儀に出席していた祐里(松たか子)は未咲の娘鮎美(広瀬すず)から姉に届いた同窓会通知を見せられる。祐里は受け取り、自分が通知しておくと伝える。姉の欠席を伝えるために同窓会会場に向かうと、しばらく音信不通だったこともあり周りから姉未咲と間違えられる。会場には見覚えがある乙坂(福山雅治)の姿があった。

スピーチまでさせられたあとで、早めに帰ろうとしたバス停で乙坂に呼び止められる。きみのことは今も思っていると言われ、今は小説家になっていると名刺を渡される。何度も誘われたが、帰りを急いだ祐里に対して小説のことについて聞いてきた。祐里は小説というのが何のことだかわからないまま帰宅を急いだ。


その後祐里は乙坂に未咲の名前でもらった名刺の住所に手紙を書いた。差出人未咲の名前だけで自らの住所を書かずに送った。その返信が実家に送られてくる。夏休み中だったので、祐里の実家にいる鮎美のことを思い、祐里の娘である颯美(森七菜)がしばらく滞在していた。送られてきた手紙をみて2人は驚く。

一方で祐里は腰を痛めて療養中の姑(水越けい子)から姑の恩師波戸場(小室等)への連絡を頼まれていた。何度も波戸場の元を訪れているうちに乙坂への手紙の送り元住所を波戸場宅にしていた。すると、突然乙坂がその家を訪ねてきて、玄関先に出た祐里は驚くのであるが。。。


1.ありえない序盤
主人公祐里(松たか子)は平凡な漫画家の夫をもつ主婦である。姉の欠席を伝えるために行った同窓会で姉に間違えられ、何も言えなくなって姉のふりをするという話がある。いくらなんでも、それはないでしょう。少しでも話していれば昔の想い出につながってばれちゃうもんね。しかも、松たか子と広瀬すずは全く似ていない。
あとは認知症気味かと外出する姑を追いかけて、姑が男性と一緒のところを見つけて、尾行するシーン。これも変だな??こんな感じの話が続き、しかも姉のふりををする祐里のパフォーマンスすべてが不自然に感じられ、このストーリーたいしたことないのかと思ってしまう。

2.中盤からの逆転(中盤戦の軽いネタバレあり)
起承転結の「承」というべきあたりから、急展開して引き締まってくる。手紙を受けた乙坂が仙台にもう一度やってきて祐里と再会するあたりからぐっとよくなる。そして回想の青春シーンもよく見えてくる。乙坂は実は亡くなった未咲でなく祐里が同窓会に来ていたことに気づいていたのだ。もともとは、転校生として生物部に所属することになった乙坂の後輩に祐里がいたのだ。未咲よりも先に妹に会っているのである。

これからがラブストーリーとしての深みが出てくる。途中で美人の姉未咲を紹介し、一気に乙坂が惚れ込むのに妹祐里も乙坂に好感を持つというはかない恋の物語がある。祐里はクラブの先輩後輩で乙坂にあこがれているのに、みんなのアイドルである姉に好意を持たれるのを恐れる。そうやって過去の話が青春モノとして複雑化する。


中盤戦から、広瀬すずと森七菜の瑞々しさで青春の輝きを映し出す過去と現在の交差が頻繁になるとともに、松たか子&福山雅治がよくみえる。特に松たか子に安定感を感じる。ナレーターなども時折やっている松たか子はあせらずじっくりと言葉を選んで話す。全般的に早口でなくわれわれにわかりやすいように会話を重ねさせるのがいい。岩井俊二の力量を感じる。

3.意外性のある登場
乙坂がむかし便りをもらって知っていた未咲の住所をめざす。猥雑な飲み屋が建ち並ぶエリアだ。ドアをたたくと元亭主のあたらしい恋人がでてくる。中山美穂である。主力出演者以外のクレジットは見ずに映画館に向かったので思わずうなってしまう。おおこう来たかと。自分の脳裏にはlove letterの透明度の高い映像になじむ中山美穂が目に浮かぶ。飲み屋の女という設定、ギャップに一瞬戸惑う。もうすぐ50歳になる。

そのあとでてくるのが豊川悦司である。久々にトヨエツを見たかもしれない。存在ある芝居を見せてくれる。これから先の場面は映画にとって重要な部分であるので、言及は避けるが、まさに適役といった感じである。岩井俊二豊川悦司の役柄に自分自身を重ね合わせているのではないか。この2人の登場はスパイスのように効いてくる。

あとはエンディングロールで小室等と水越けい子の2人の名前を見つけ驚く。それが姑とその元恩師とわかりビックリだ。フォーク全盛時代の自分より上の世代でもわからなかったんじゃないだろうか?


ちょっと違うんじゃないかなと思ったのは、広瀬すずが姉の高校時代を演じていた場面で、64回卒業式となっていた場面。この数字って絶対おかしいよね。どんなに伝統のある学校でも旧制中学と新制高校は分けているはずで、創立何周年は戦前からトータルで計算しても、あくまで戦後の新制高校の年数でやっているはずだから時代考証は×だと思う。
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映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」 渥美清&山田洋次

2020-01-01 08:00:01 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「男はつらいよ お帰り 寅さん」を映画館で観てきました。


渥美清が亡くなった後、当然続編はないと思っていた「男はつらいよ」の新作制作発表が昨年あった。そのときからどんな映画になるのであろうかと興味津々である。寅さんのおい吉岡秀隆の初恋の相手後藤久美子は中年の域に達して美しさに磨きがかかった。数年前CMでその姿をみてこんな美女誰なんだろうと思い、しばらくして後藤久美子とわかりドキドキした。その後藤久美子山田洋次監督が出演依頼のお手紙を送ったという逸話があまりに素敵である。

妹夫妻倍賞千恵子、前田吟の夫婦も老いたがまだ健在、寅さんが最も親しかったといえるリリー役の浅丘ルリ子後藤久美子の母親役の夏木マリもその姿を見せる。

映画がはじまり「男はつらいよ」の主題歌を歌う桑田佳祐の姿には思わず涙してしまう。


映画の途中でも、満男がおじさんの思い出を語ると往年の渥美清の姿が出てくる。ちなみにこの映画で寅さんこと車寅次郎が亡くなったとは一言もセリフでは出てこない。昔ながらの柴又の家の仏壇においちゃん、おばちゃんこと下條正巳三崎千恵子の遺影はあるが、渥美清の写真はない。意図的であろう。

諏訪満男(吉岡秀隆)は、妻を6年前に亡くし中学三年生の娘と二人暮らし、サラリーマンをやめて小説家になっていた。妻の七回忌の法要で柴又の実家を訪れた満男は、母・さくら(倍賞千恵子)と父・博(前田吟)、たこ社長の娘(美保純)たちと伯父・寅次郎との楽しかった日々を思い起こしていた。その一方で出版社の担当者(池脇千鶴)から依頼を受けている次回作の執筆にはいまいち乗り気になれなかった。


それでも、最新著書の評判は良いので出版社から書店でのサイン会に出てくれと言われいやいや引き受ける。そのころ、満男の初恋の人である泉(後藤久美子)は国連難民高等弁務官事務所の東京でのシンポジウムに出席するためヨーロッパから来日していた。所用を終え書店へ立ち寄ると、偶然満男のサイン会のポスターに気づく。そして、満男のサイン本を求める列に並ぶ。初恋の人泉の姿を突然一瞥して満男は呆然とする。

その後、旧交を温めるため、ゆっくり話ができる神保町の喫茶店に向かう。そこには伯父寅さんがもっとも心を許したリリー(浅丘ルリ子)がいた。寅さんの思い出を語った後で2人は柴又の満男の実家へ向かうのであるが。。

見れば見るほど後藤久美子がいなければ、成立しないストーリーである。それだけに山田洋次監督の心のこもった手紙に感動する。後藤久美子演じる泉は家庭環境の複雑さから欧州に向かったという。帰るところもないと。

倍賞千恵子演じるさくらに親しみを感じ、うちに泊まっておいでよと言われて素直に泊まる姿に好感が持てる。普通女はこういうとき、なかなか泊まらないものだ。一般にも嫁が夫の実家を訪ねて母親が泊まっていけと言っても、嫁は意地でも泊まらないでいさかいを起こすことが多い。そういう女性同士の関係にも踏み込んだ脚本である。


1.浅丘ルリ子
後藤久美子を引き連れ吉岡秀隆は神保町の喫茶店に向かう。地下に降りていくと照明を落とした雰囲気のあるお店だ。そこの店主がリリーこと浅丘ルリ子である。さすがに御年79歳の浅丘ルリ子も往年の美人女優の面影はかなり薄らいでおり、どちらかというとホラー映画にしか登場できないくらいの妖怪的存在だ。

こういう暗い照明の方がいいだろうと山田洋次監督が心配りしたのであろう。寅さんの求愛を受けたことがあったという昔話が、当時の映像を含めて映し出される。さすがに日活時代の美貌ほどではないが昔のリリーは美しい。


2.夏木マリ
後藤久美子が父親を探しに九州の日田に向かう作品は「寅次郎の休日」である。夏木マリ演じる母親のもとを離れ、寺尾聰演じる父親は宮崎美子演じる若い薬剤師と2人で暮らしている。元々は父親に戻ってほしいと言いに日田に向かおうとしていた。新幹線のホームまで満男が見送りに来ていたが、発車間際に思わず乗車してしまう。満男が向かったことを知り、寅さんも泉の母親と夜行列車で日田へ向かう。泉は結局会えたが、幸せそうな父親を見てそのまま立ち去る。


後藤久美子が九州に旅発つ新幹線に吉岡秀隆が思わず乗ってしまうシーン、渥美清と夏木マリが今は亡きブルートレインの寝台列車に乗り込んで酒盛りしながら九州に向かうシーン、父親に会ったけど幸せそうなので何も言えないと夏木マリ後藤久美子から聞いて泣き崩れるシーン、3つのシーンがこの映画でも映し出される。

クラブのママ役である夏木マリも適役である。今回も前回同様の水商売キャラは変わらない。理由はわからないが、泉の父親役は寺尾聰から橋爪功に替わる。娘の旦那と思って吉岡秀隆に金をせびるシーンは橋爪功らしい老練さが感じられる。

泉に会えたのは満男にとっては夢のような日々だった。その満男をみて、「お父さん3日間まるで遠くに行ってしまったようだ」と娘がいうシーンがある。これってデイヴィッド・リーン監督の名作映画「逢びき」のラストシーンで、軽い不倫で心ここにあらずになっていた妻に対して夫が言う名シーンを連想させる。吉岡秀隆にとっても帰国する泉を見送るときのナイスなシーンはまさに役得だったであろう。

渥美清独特のテキ屋の口上が響き、最後に向かっては、歴代のマドンナが登場する。吉永小百合、樫山文枝、竹下景子や最近鬼籍に入った京マチ子、八千草薫、48作の中でも指折りの名作のマドンナ太地喜和子池内淳子、新珠三千代などの故人も顔を見せる。一番最後に映るのは初代マドンナである光本幸子というのはまさに敬意を表してだろう。
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映画「閉鎖病棟 それぞれの朝」 笑福亭鶴瓶&綾野剛&小松菜奈

2019-11-17 19:10:36 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「閉鎖病棟 それぞれの朝」を映画館で観てきました。


帚木蓬生の山本周五郎賞受賞作「閉鎖病棟」が原作、平山秀幸監督・脚本により映画化した。実際の精神科の医療施設でロケ撮影をしたという。精神科の専門医療施設・小諸高原病院で2週間にわたるロケ撮影が行なわれた。芸達者の笑福亭鶴瓶の出演も気になり見に行く。いきなり死刑執行のシーンが出てきて何これ?と思ったら、死刑囚が蘇生してしまう。こんなことってあるのかい?と思いながら映画のストーリーを追う。主要な患者が笑福亭鶴瓶綾野剛小松菜奈の3人を中心に話が進むが、精神科の病院にありがちな患者たちを巧みにからませる。

長野県のとある精神科病院。それぞれの過去を背負った患者たちがいる。
母親や嫁を殺めた罪で死刑となりながら、死刑執行が失敗し生き永らえた梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)。サラリーマンだったが幻聴が聴こえ暴れ出すようになり、妹夫婦から疎んじられているチュウさん(綾野剛)。不登校が原因で通院してくる女子高生、由紀(小松菜奈)。彼らは家族や世間から遠ざけられても、明るく生きようとしていた。そんな日常を一変させる殺人事件が院内で起こった。(作品情報より引用)

実際の精神病院の病棟に行ったことある人は少ないであろう。自分はある人を数回見舞いに行ったことがある。薬漬けになっている患者たちがボーとした顔をして院内を徘徊している。入院したばかりは暴れる人もいるだろうが、実際には薬の作用で動きが鈍い。この映画では患者の振る舞いをきっちりと取材している痕跡が見られる。

手旗信号をふりつづけて感情表現する男、しつこく写真を撮りまくる少年、毎日12杯うがいをしろと親の遺言で言われたと後ろに大勢ならんでいるのにマイペースで水を飲む女など特徴ある患者をピックアップする。それに加えてきっちりと抗うつ剤を飲んでいるのかを看護師が患者の口を確かめるシーンなど、リアルな動きも見せる。

1.笑福亭鶴瓶
いきなり死刑執行のシーンが出てきて、モノクロの画面でどうも笑福亭鶴瓶が演じているようだ。絞首刑で死んでいるはずなのに生きている。脊髄には損傷があるけど、そのまま蘇生する。もう一回死刑執行するとなると世間に騒がれると刑務所側が判断して精神病院をたらい回しにあうという設定である。であるから統合失調症になっている精神科の患者ではない。

陶芸の工房と言うべき小屋があり、そこで作業をしている。死刑判決の理由は妻と母殺しということだが、妻が訪ねてきた役所の男と情交を重ねているのを見つけて包丁で殺す。このまま刑務所に入ってしまうとぼけて寝込んでいる母親を面倒見る人間がいないと母親まで殺してしまうのだ。

精神病院ではみんなに親しまれている。18歳の小松菜奈演じる患者も心を許す。しかし、周囲に暴言を吐く今までと違う乱暴な男が病院に入ってきた。病院の患者は戸惑う。それには笑福亭鶴瓶演じる秀丸も心を痛める。そんなときある事件をその乱暴な男が起こすのだ。


2.綾野剛
この3人では唯一の精神病の疾患を持つ男だ。自宅で突如発狂し、同居する母と妹夫婦を不安に陥れ精神病院に入院する。かなり重い統合失調症の疾患を持つ周囲の患者よりはましな方だ。外出して和菓子や洋服などを仕入れてそれを1.5倍の価格にして病院内で売る。当然病院側から怒られる。妹夫婦は母親がぼけてきたこと、兄が精神病院に入院していることもあり、土地の有効活用や売却の相談を面会で持ちかける。当然拒否する。兄妹の折り合いはよくない。


若干の激しさを持つ役柄が多い綾野剛であるが、ここではおとなしい。若干女々しいくらいで、気も弱い。精神病棟では抗うつ剤で精神の起伏を抑えるようにされているわけであるから、実際の姿に忠実であるといえる。

3.小松菜奈
実母と継父と同居しているが、母親がいないときに継父に犯される。部屋の中で閉じこもりになり、不登校となったことでこの精神病院に入院することになる。入院時の検査で懐妊していることが判明する。それが尾をひいて、病院内の屋上から自殺未遂を起こすが、落下地点が運良くクッションになり軽いけがですむ。

統合失調症というわけでもないので退院してもかまわないくらいだが、もう一回自宅に戻っても再びこの病院にもどる。家族の人間関係は最悪だ。笑福亭鶴瓶、綾野剛ほかの入院患者との折り合いもよくなった。その後、事件が起きる。


周囲と交わらない乱暴な一人の男が入院してきた。その男が小松菜奈をレイプしてしまうのである。
この映画のすべてはそこに集約されてくる。
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映画「ひとよ」 白石和彌&田中裕子&佐藤健

2019-11-10 22:26:36 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「ひとよ」を映画館で観てきました。


凪待ちに次ぐ白石和彌監督の新作である。「麻雀放浪記2020」はちょっとどうかと思ったけど、まず外れのない監督である。社会の底辺にいる人たちをクローズアップする。そこには大抵殺人事件がからんでいる。

DVの父親に常に殴られ傷ついていた子供たちを守るために夫を殺した母親が子供たちの前に帰ってくる。そこで起きる出来事を語っていく。ストーリーは単純でない。主要の母子4人だけでなくサブになる登場人物にもストーリーの根幹に絡むエピソードを作る。重層構造であっさりとは終わらせない。

主要4人はいずれも主演級だ。豊富な出演陣は、むしろ多作ともいえる白石和彌監督が世間に認められている証拠だろう。見応えのある作品である。

どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。そして、こはるは、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去った—

時は流れ、現在。次男・雄二(佐藤健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日から抱えたこころの傷を隠したまま、大人になった。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。
「これは母さんが、親父を殺してまでつくってくれた自由なんだよ。」
15年前、母の切なる決断とのこされた子どもたち。皆が願った将来とはちがってしまった今、再会を果たした彼らがたどりつく先は—(作品情報より引用)

1.田中裕子
回想シーンでは黒髪だが、真っ白な白髪になって15年ぶりに突然帰ってくる。あれ?普通は出所って家族に知らせるはずなんだろうなあと思いつつ、いきなり帰ってくる。出所の時に迎えに行った娘とタクシー会社の従業員とはすれ違いになったという。子供たちの気持ちは複雑、でも一応はタクシー会社の従業員を含め皆で歓迎し、東京でライターをやっている次男も帰ってくる。普通で言えば、母子再会でハッピーエンドになるシーンがいきなり出るなと思いつつ、これまでの疎遠なときに子供たちが経験したいやな世界を振り返っていく。


最初の再会で見せる田中裕子らしい笑顔をみるのも久しぶりだ。高倉健の遺作あなたへの時は若干やさしい表情を見せていたが、この笑顔ほどではない。自分は傑作だと思ういつか読書をする日で見せたぶっきらぼうな顔以来、田中裕子が出る作品はいずれも表情が暗い。ここでも基本は能面のようだが、いくつかの笑顔は久々に観た。高倉健との共演で妖艶な姿を見せた夜叉や伊豆の娼婦を演じた天城越えなどの若き日の美貌とは遠ざかったが、まだ演技派として存在感を示す。


2.佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優
長男役鈴木亮平は地元の中小企業で働く。家庭内はうまくいっていない。娘もいるが妻から離婚も迫られている。ドモリで自分の意思も伝えるのが不得手で、殺人事件の後はしばらくいじめられていたらしい。妻には父母は幼少からいないと言っているようだ。これが後で尾を引く。

次男役佐藤健は風俗ライターを東京でやっている。しばらく兄妹とは疎遠関係だ。携帯にも出ない。でも母親が帰ってきたとの一報に久しぶりに帰郷する。ただ、動きはどうもおかしい。母親の帰還を喜びつつも、殺人事件の後周囲から受けたいやな出来事をつい思い浮かべる。自分の家の出来事をこっそり綴っている動きが見られる。このあたりの佐藤健演じる次男の動きの真意がよくわからない。


松岡茉優は近くのスナックで働いている。美容師ぽいが免許は持っていないようだ。独身で自由奔放、毎晩のように自分のお店で飲み潰れて、実家が経営しているタクシーで送り迎えしてもらっている。映画ではお水っぽい風貌で現れ、最初は松岡茉優とわからなかった。

3人のためと思い母親が父親を殺し、いずれ戻ってくるから待っていてくれというシーンからスタートする。そして母親が子供たちの前に15年の日々を経て戻ってくる。ところが、この空白の15年では、周囲からのイジメなどでそれぞれに苦い思いもしている。そこがこの映画のポイントである。もっとやさしく迎えればと思うのに、この状況になったらこんな風になるのかしら?


3.佐々木蔵之介、筒井真理子
ここでは助演と言うべきタクシー会社の運転手として雇われた佐々木蔵之介やタクシー会社の従業員である筒井真理子にもエピソードを与える。2人とも主演級で筒井真理子は最近のよこがおの好演が記憶に新しい。酒も飲まない真面目なタクシー運転手佐々木蔵之介が実は反体制社会にいた男で、それを引きずった逸話をからめて最後にむけての逆転は予想外で作り込みがされている。


茨城県が舞台というのはすぐわかる。強く煙が吹き出す煙突は鹿島方面で見る光景だと思ってみていた。父母がひっかかって買った鹿島の土地を持っていたので見たことある。そうしたら大洗のフェリーが出てくる。あれ?やっぱり違うのかな?と思ってエンディングロールのクレジットをみたら神栖市の文字が出てくる。確かに鹿島方面だったなと思い、はっきり地名を指定しているわけではないから、両方の組み合わせでいいんじゃないという感じだ。
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映画「半世界」 稲垣吾郎&阪本順治

2019-10-23 17:17:47 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「半世界」は2019年公開の阪本順治監督作品


阪本順治監督の作品に稲垣吾郎が出演するということで、上映中から気になっていた。阪本順治監督作品で田舎町が舞台だというと、原田芳雄の遺作で三国連太郎も出演する「大鹿村騒動記」が好きである。

伊勢の海辺の町を舞台に、町を離れていた男が久々に帰還して、小学校中学校で同期だった3人が再会する。その3人を取り巻く紆余曲折を描く物語である。阪本順治作品の常連石橋蓮司などの芸達者が加わり、それなりのレベルであるが、今ひとつの感がある。

伊勢の海辺の町に暮らす高村紘(稲垣吾郎)とその妻・初乃(池脇千鶴)、息子・明(杉田雷麟)の家族は、父から受け継いだ炭焼き窯で備長炭を製炭して暮らしている。中学からの旧友で、海外派遣されていた自衛隊員の沖山瑛介(長谷川博己)が突然町に帰ってくる。瑛介は妻子と別れて、一人で故郷に戻ってきた様子だった。紘は、同じく同級生で中古車販売業を営む岩井光彦(渋川清彦)も呼び、十数年振りに3人で酒を飲む。翌日、3人は廃墟同然だった瑛介の実家を掃除し、住める状態にする。


紘の息子の明は反抗期の真っ最中で、学校でいじめられているようだが、紘は気に留めていなかった。紘は光彦から、息子に関心を持っておらず、それが息子にもバレていると指摘され、ハッとする。数日後、過去を引きずったまま仕事もしていない瑛介を、紘は自分の仕事に誘う。炭材のウバメガシを伐採し、枝打ちして短く切断して窯に火を入れる。炭ができると新規の顧客を開拓しようと営業活動をする。瑛介は、紘がひとりでやってきた仕事ぶりに驚きを隠せないが。。。 (作品情報引用)

1.イジメ
主人公稲垣吾郎の息子は仲間にイジメられている。母親にはそのうわさは入っているが、父親は関心がない。イジメ集団には1人親分がいて、あとは取り巻きだ。陰湿にやられている。いじめている方はさして気にしていないけど、やられている方は最悪というのはいつもの常。でも家ではあいつらにも良いところがあると言い訳している。

久しぶりに故郷に帰ってきた長谷川博己が旧友の息子へのイジメに気づく。これまで自衛隊で格闘の実戦訓練を受けてきたので、息子に格闘のコツを教える。こういうシーンがいい感じだ。やがていじめっ子に復讐する場面が出てくるというわけだ。

同時に中古車販売業を営む光彦のところで、金銭トラブルが起きてよからぬ連中の襲撃をうける。そこにも長谷川博巳の登場だ。なかなか活躍するね。


阪本順治監督は2つ物語にしたいことがあって、それを1つにまとめたという。多分イジメがその1つなんだろう。イジメ映画も復讐場面があると生きてくる。先日観た「ドッグマン」も復讐の場面で意外にも爽快な感触を覚えた。これも同じだ。

2.伊勢備長炭
稲垣吾郎は山で木を切り、窯で備長炭を作っている。親の家業を継ぎ、1人でやっている。ただ、家計は苦しい。これまでの取引先である旅館に納入しているが、旅館の主人からは料理には合わないと言われる。そこで立ち上がるのは池脇千鶴演じる奥さん、生活が苦しくなってもこういう職人タイプの男は何もしない。奥さんが乗り込むしかないのだ。池脇千鶴はいつのまにか肝っ玉母さんの役が性に合ってくるようになった。「そこのみにて光り輝く」以降は強い女としての存在感がある役をできるようになった。


旦那には同窓会へ行くと言って旅館に乗り込む。直談判するのだ。必死である。でもその頃自宅では異変が起きていたのであるが。。。
この終わり方はなんか不自然だなあ。


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映画「まく子」 草なぎ剛&山崎光&新音

2019-10-15 20:43:16 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「まく子」は2019年公開の直木賞作家・西加奈子の同名小説を映画化した作品


SMAPが解散したあと、次々にジャニーズ事務所を離れた3人が田舎が舞台の映画に出ている。地方で主役というのはそれぞれスケジュールに余裕ができたんだろう。ここでも、草なぎ剛が出演していて、映画のタッチが自分に合いそうで気になる。でも時間合わずdvdスルーして手に取る。小学5年生の少年が身近に突然やってきた美少女の転入生と知り合うが、なんと彼女は宇宙人だったという話である。草なぎ君は主演というより脇を固めて、思春期に入ろうとする少年少女にスポットをあてる。のんびりしたムードがただよう小品だ。

群馬の山間部中之条町の温泉街が舞台、小学校5年生のサトシ(山崎光)は旅館を営む父親(草なぎ剛)や母親(須藤理彩)や隣接した社員寮に住む旅館の従業員とともに暮らしている。そんな旅館へ住み込みの女中とその娘がやってきた。娘のコズエ(新音)はサトシと同じクラスになる。


背もサトシより高く大人びたコズエはサトシに関心を持ち、下校の時も一緒に帰ろうと誘う。でも、思春期入りたてのサトシは気恥ずかしくてそれができない。それなのにコズエはサトシの後をついてくる。やがて2人は古城の跡に向かっていき、落ち葉をばらまくのである。どうやらコズエはまくのが好きなようだ。


そんな2人で話していると、彼女は自分は火星の近くにあるある惑星からやってきた異星人で、自分には「死」というものがないと告白するのである。

1.田舎の温泉街
家が密集している坂道のある路地を少年が走っていく。どうも温泉街らしい。伊香保温泉にも似たような小路があるので、そうかな?と思うけど、しばらくすると中之条町四万という文字が電柱に見える。町の名前は聞いたことがあるぞ。実際にある温泉街が舞台のようだ。地図を見ると、中之条町よりかなり北に四万温泉はある。これは秘境といってもおかしくないね。旅館は大勢の女中を雇わねば成り立たない。そこに女中としたやってきたのが女主人公の母親だ。浮気癖のある草なぎ剛は旅館の主人で、厨房にも入っている。映画では町の祭りもクローズアップする。小学校の生徒が手作りで神輿をつくりそれを担ぐ。でもここでの祭りはかついだ後壊してしまうのだ。

2.思春期の少年
小学校5年でこんなかわいい子が身近に来たらやばいね。一緒に帰ろうといわれただけでドキドキする。でも少年は気恥ずかしくてそれができない。その気持ちもよくわかる。この2,3年前だったら全然平気なのにできない。


本当にかわいい。仮に夢に出てきたら、この映画に出てくる少年のように夢精してしまいそうだ。ここでは何回も同じような性の目覚めのようなシーンが出てくる。少年が父親の草なぎ剛と一緒になってあそこを見せ合うシーンが出てくる。こんなことって男は普通しないと思うんだけど。男の心理がわからない監督が女性の鶴岡慧子だからなんだろうな。



3.異星人との別れ
我々はこれまで映画で異星人といろんな別れをしてきた。「ET」やアニメだけど「かぐや姫」とかね。でもこれがちょっと変わっている。自分が異星人ということを言いふらして、みんながいる前で母親と出発である。みんなに涙はない。それにしてもこの美少女、異星人といわれても違和感を感じない美貌をもつ。末恐ろしい気がする。
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映画「惡の華」 玉城ティナ&秋田汐梨

2019-10-11 05:43:27 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「惡の華」を映画館で観てきました。


押見修造の漫画を井口昇監督が映画化したもの。もちろん原作は未読。ボードレールの「悪の華」といえば誰しもが名前を知っていても、中身を知っている人は少ない。クリームのプロデューサーだったフェリックス・パパラルディがロックバンド「マウンテン」を結成した時に「悪の華」という名前のアルバムがある。そんな連想しているうちに、日経夕刊シネマ欄5点満点を始め映画評を見たら絶賛である。青春映画の傑作という響きに引かれて見に行ってしまう。これが想像以上にすごかった。

地方都市の中学校に、普通の男子中学生春日と強烈な個性の女子中学生仲村を放つ。男子生徒はボードレールの「悪の華」が好きだという文学青年。この女子中学生仲村が普通じゃない変態ぶりだ。映画では仲村がからんでいくつものヤマを作る。中高生を描くにはきわどいシーンもある。単なる起承転結に収まらないストーリーだ。漫画で長期にわたって連載されたものを130分あまりに凝縮する。内容は当然濃くなる。時間軸を巧みに飛ばした脚本のうまみも冴えている。

ある地方都市、春日高男(伊藤健太郎)はボードレールの詩集「惡の華」が好きな読書家の中学2年生だ。かわいくて勉強もできるクラスメイト・佐伯奈々子(秋田汐梨)にあこがれていた。ある放課後、春日は教室に忘れ物を取りに行った際、佐伯の体操着袋が落ちているのに気づく。


袋を開け、思わず体操着とブルーマーの匂いを嗅いでいたら、物音がする。あわてて体操着をもって飛び出してしまう。翌日学校に行くと、担任の先生が佐伯の体操着がなくなっていると騒いでいる。春日は知らん顔をするしかない。しかし、クラスの問題児・仲村佐和(玉城ティナ)が春日に声をかける。体操着を持ち帰るのを仲村が目撃していたのだ。そして、体操着のことを秘密にする代わりに、春日にある“契約”を持ちかける。こうして仲村と春日の悪夢のような主従関係が始まる。


その一方で、春日のパフォーマンスを男らしいと感じた佐伯は春日に急接近する。二人で会うようにもなるし、コクッテしまう。


しかし、その一部始終は仲村に監視されている。春日は、仲村からの変態的な要求に翻弄されていくのだ。

1.秋田汐梨
清楚で人気者の少女佐伯(秋田汐梨)がかわいい。かわいいだけでなく、勉強もできる役柄だ。自分の中学時代にこんなかわいい子がいたらとつい思ってしまう美少女である。


ブルーマー姿が思わず青春の香りを感じさせる。体育の時間に、女子生徒のブルーマー姿にはそそられたものだ。カメラが中学生男子の好奇心あふれる視線を巧みに捉える。性に関心を持ったときの自分を思い出す。秋田汐梨は出演者の中ではかなり年少である。かわいいけど、途中からの変貌の姿はもう大人の演技だ。15歳から16歳でこんな大胆になっていいの?という演技は関根(高橋)恵子の再来だ。将来が楽しみである。


監督が彼女しかいないとオーディションで言ったらしい。その気持ちは目線を中高生の自身に置き換えれば、誰しもがよくわかるであろう。

2.玉城ティナ
強烈なのは玉城ティナだ。昨年映画「響」を見た。ここでの平手友梨奈が圧倒的な存在感を示した。響は文才があるという役柄で、この映画とは若干違う。でも、メガネの下の眼光の鋭さに同様のものを感じる。

春日を手玉にとる。文学青年ぽく気取る春日に対してお前は変態だ。変態を自覚しろとばかりに詰め寄る。宗教に入り込むが如く春日も悪魔的な仲村に惹かれていく。SMの女王を思い浮かべさせる激しさだ。いくつかの山を作るが、なかなかここまでは演じられない。この子も逸材だ。最終に向けての海辺のシーンが好きだ。


3.桐生
お祭りのシーンで桐生が舞台ということがわかる。栃木に5年すんでいるころ、隣県とはいえ桐生の町は何度か行った。桐生、太田、栃木県だけど足利は3つで上毛エリアでワンセットという感がある。川沿いを自転車で走るシーンが多用される。渡良瀬川だろう。森高千里がこの歌で舞台にした渡良瀬橋は下流の足利だ。何もない町だというけれど、地方都市独特のムードを持った場所である。

仲村は両親が離婚して父と祖母と3人で暮らす。その祖母役が名優佐々木すみ江である。映像で観ていてそうかなと思ったけど、亡くなったはずだから出ているわけないだろう。そうしたら、エンディングロールで佐々木すみ江の名前をみて思わず合掌した。長い間脇役で頑張っていたもんね。
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映画「宮本から君へ」池松壮亮&蒼井優

2019-09-29 22:37:02 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「宮本から君へ」を映画館で観てきました。

「宮本から君へ」新井英樹の漫画を映画化した作品。もちろん原作は未読。宮本という営業マンが年上の彼女に対して不器用だけど一途な恋を貫く物語である。監督は「ディストラクション・ベイビーズ」真利子哲也、ケンカを趣味にしたような主人公が思いっきり暴れる前作に引き続き今回の演出も暴力描写がかなり多い。

主演の2人池松壮亮蒼井優も今までと違うワイルドさを持つ。特に池松壮亮はさめた現代の若者を演じることが多いのに対して、ここでは恋のために熱く立ち向かう男になろうとする。いずれも年末の演技賞にノミネートされてもおかしくないレベルである。

ピエール瀧が出演している。昨年秋に撮影されたようなので逮捕に合わせて公開が遅れたんだろう。見てみると、一旦撮影されたものから彼を抜いてやり直すのはどう考えてもムリな構造である。彼もいったんシャバに出たので、ほとぼり冷めて公開といったところであろう。

チケット購入にも珍しくR15 の画面が出てきて強調される。別に蒼井優のバストトップが出るわけでもない。暴力描写の激しさからであろう。時間軸を前後に振りながら、2人の恋の軌跡を描いていく。見ようによっては一途な恋だが、ここまでこじれる前に警察に傷害で訴えたりしてもいい感じもする。映画としてのレベルは高いが、後味はキモイの一言かも。

文具メーカー「マルキタ」で働く営業マン宮本浩(池松壮亮)は、笑顔がうまくつくれない、気の利いたお世辞も言えない、なのに、人一倍正義感が強い超不器用な人間である。
宮本は会社の先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間である、自立した女・中野靖子(蒼井優)を紹介された。そして靖子と恋に落ちた。靖子の自宅で夕食を楽しんでいるとき、そこに靖子の元彼・裕二(井浦新)が現れる。裕二を拒むため、宮本と寝たことを伝える靖子。怒りで靖子に手を出した裕二に対して、宮本は「この女は俺が守る」と言い放つ。
この事件をきっかけに、心から結ばれた宮本と靖子に、ひとときの幸福の時間が訪れる。

ある日、営業先で気に入られた真淵部長(ピエール瀧)と大野部長(佐藤二朗)に誘われ、靖子を連れて飲み会に参加した宮本は、気合いを入れて日本酒の一升瓶を飲み干し、泥酔してしまう。見かねた大野が、真淵の息子・拓馬(一ノ瀬ワタル)の車で送らせようと拓馬を呼びつけた。そこに現れたのは、ラグビーで鍛えあげられた巨漢の怪物だった!泥酔する宮本と、宴会を楽しむ靖子、二人の間に、人生最大の試練が立ちはだかる。(作品情報引用)


映画が始まってすぐ主人公宮本が殴られて顔が晴れ上がってボコボコにされた状態の映像が出て来る。前歯がない。どうもケンカしたようだ。上司から注意をされるけど、相手側からは大ごとにするなと言われているという。どんなもめごとなんだろう?そう思い映像を追う。

続いて、文具販売の営業マン宮本(池松壮亮)が彼女(蒼井優)を引き連れて宮本の実家で父母に紹介するシーンが出てくる。どうも彼女は妊娠しているらしい。宮本の母親は気がつく。大ケガをさせたこともみんなわかっているようだ。そのあとで出てくるのが、彼女の家で食事しているときに泥酔した元彼氏(井浦新)が現れるシーンだ。ここで一発触発ケンカして大ケガしたのかと思ってしまう。でも、ドタバタするが、そこではいったん落ち着く。


時間軸が前後に振れるが、大きくは動かない。むしろハッピーなシーンが多い。そう思った時にピエール瀧が登場する。飛び込みで入った建設会社の部長の役だ。部長はラグビー仲間と飲んでいる。靖子と一緒に加わる。営業だから注がれた酒には応えざるを得ない。そこで一升瓶イッキをして泥酔した宮本を部長は息子(一ノ瀬ワタル)に送らせようとする。そして、3人で靖子の自宅に帰って宮本はぶっ倒れて寝る。その時だ。性欲あり余っている息子はついつい靖子に乱暴してしまう。大声をあげても泥酔している宮本は起きる気配もない。息子はやりたい放題だ。この映画のキーになる事件はそれだ。

最初は気づかないが、わかって宮本は動揺する。
あとは、ひたすら復讐である。ここでいいところを見せるのかと思ったらそうはいかない。逆に返り討ちにあう。

途中までこのケガって何?と観客に連想させる。よくわからない。こうやって観客の判断をじらすのが大事なのだろう。じらした後でこういうことかとわかるが、それでも復讐が沈滞する。しまいには元彼氏まででてくる。いったいどうなるの?とやきもきさせる部分はある。ストーリーの先を予測させないのは脚本の巧さであろう。
「ディストラクション・ベイビーズ」同様、腕っぷしで見せる映画である。マンションの階段での格闘シーンはよくやるな!といった感じである。日本の団地ではこういう撮影はなかなかさせてくれないだろう。ここでのキーワードは「金的」

まあ見てみないとこのキモさはわからないだろう。
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映画「天気の子」新海誠

2019-08-15 21:44:06 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「天気の子」を映画館で観てきました。

「君の名は」新海誠の新作はなんか気になる。会社が休暇中の娘と観に行こうと、準備をしていたら外はすごい雨、まさに豪雨に近い。娘の運転じゃいけないかと思ったら、一転雨が止む。なにこれ?でもこれってこの映画でまさに再現するような話だ。


東京が映し出される。毎日のように降り続く雨にみんな嫌気がさしている。7月の下旬までの気候と同じじゃないか。降ったりやんだりで何本傘をなくしたことか。そんな雨の東京に作者は二人の少年少女を放つ。母親の看病をしている少女が外を照らす光に気がつき、老朽化しているビルに向かう。屋上に向かうとそこには鳥居がある。同様に神津島から東京に向かう少年がいる。まだ高校一年だ。未知の東京で一人彷徨う。いかがわしい雑誌の責任者などの脇役の使い方もうまく、飽きずに最後まで見れる。

「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。(作品情報より)


まわりを見ると少年少女が多い。そういう小学生や中高生が見る映画にしては、結構きわどい。ホテルに連れ込もうとする場面など歌舞伎町のディープゾーンが次から次へと出てきて、若い女の子わかるかな?といった印象をもつ。

代々木や田端駅の光景が頭に焼き付く。
映画が始まってすぐ古いビルを見て、これって「傷だらけの天使」萩原健一と水谷豊が屋上に住んでいたビルじゃないと気づく。このテレビが放映されていた当時この主人公たちと自分は同じ年頃だった。うわさでこれが代々木にあるってわかり何度か観に行ったけど、見上げるだけで中に入ったことはない。最終回水谷豊が死んでしまうときの萩原健一のパフォーマンスが目に浮かんだ。


田端駅南口というのも、映画のロケでたまに見るエリアである。なぜか何度も行ったことがある。メインの入り口でない南口を降りると、坂があり、そこを上がると階段がある。上がっていくといくつか住宅が建っている。道は狭い。そこのアパートにに陽菜が住んでいる。アニメだけど、いいロケハンをしたなという感じだ。いかにも昭和のアパートは二人の想い出をつくっていく。晴れ女を売りにして、イベントごとでどうしても雨にしたくないときに現れて、雨天を晴れに転換させみんなに感謝され金を稼ぐ。こんな商売いいよね。


映画を見終わって、娘の通うスポーツジムにむかう。20分強でつくのであるが、運転は自分がすることにした。そうしたら、また強烈な豪雨が来た。大丈夫と別のエリアの人に言われるくらいの雨だった。娘は自分だったら運転お手上げだったかもと言いながら、映画を楽しんだ彼女はジムに行った。
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映画「凪待ち」香取慎吾&白石和彌

2019-08-11 06:44:11 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「凪待ち」を映画館で観てきました。


白石和彌監督の新作は香取慎吾の主演でギャンブル依存症の男を描いている。これも転落の物語である。SMAP解散後、ジャニーズ事務所から飛び出した3人が続いて映画に出演している。ぼそぼそという口ぶりの香取慎吾はしゃべりがうまいというタイプではない。体格がよく全身で演技するという面では白石和彌監督の演出もよく、思いっきりこの役に浸っている。

これでもかこれでもかと主人公は転落ベクトルの波状攻撃で谷底に何度も落ちるような思いを味わう。バッドエンドで終了してしまうような映画の予感が途中してきた。でも、予想外の展開に驚くと同時に、絶望の状態に軽い光を差し込むやさしさがみえて後味はわるくない。


仲間と競輪三昧でぶらぶらしていた木野本郁男(香取慎吾)は川崎の工場を辞めて、同居人である恋人・亜弓(西田尚美)の故郷・石巻に戻る決心をした。そこには、末期がんであるにも関わらず、石巻で漁師を続ける亜弓の父・勝美(吉澤健)がいた。亜弓の娘・美波(恒松祐里)は、引っ越しを余儀なくされ不服を抱いている。美波を助手席に乗せ、高速道路を走る郁男に美波の声が響く。
「結婚しようって言えばいいじゃん」半ばあきらめたように応える郁男。
「言えないよ。仕事もしないで毎日ぶらぶらしてるだけのろくでなしだし…」

実家では、近隣に住む小野寺(リリー・フランキー)が勝美の世話を焼いていた。人なつっこい小野寺は、郁男を飲み屋へ連れていく。そこで、ひどく酒に酔った村上(音尾琢真)という中学教師と出会う。村上は、亜弓の元夫で、美波の父だった。新しい暮らしが始まり、亜弓は美容院を開業し、郁男は印刷会社で働きだす。


そんな折、郁男は、会社の同僚が競輪の予想記事をみてだべっているところに口出しをする。こいつも仲間だとわかり、同僚から競輪に誘われる。公営競輪場はないが、町の一角にノミ屋があるのだ。郁男のアドバイス通りにすると大当たり、これが間違いの始まりだった。

ある日、美波は部屋からタバコが見つかったことで亜弓と衝突し家を飛び出す。その夜、戻らない美波を心配しパニックになる亜弓。落ち着かせようとする郁男を亜弓は激しく非難するのだった。
「自分の子供じゃないから、そんな暢気なことが言えるのよ!」
激しく捲くし立てる亜弓を車から降ろし、ひとりで探すよう突き放す郁男。だが、その夜遅く、亜弓は遺体となって戻ってきた。郁男と別れたあと、防波堤の工事現場で何者かに殺害されたのだった。突然の死に、郁男と美波は愕然とする。


「籍が入ってねえがら、一緒に暮らすごどはできねえ」
年老いた勝美と美波の将来を心配する小野寺は美波に言い聞かせるのだった。一方、自戒の念が強い郁男も寂しさがつのり、やがて競輪のノミ行為にはまっていく。その後郁男は、社員をトラブルに巻き込んだという濡れ衣をかけられ解雇となるのであるが。。。
(作品情報 引用)

作品情報には石巻と書いてあるが、映画では宮城県に行くとしか言っていない。それでも、津波にのまれた話や日本製紙の大きな工場の映像で石巻であることがわかる。水量の多い旧北上川の河口が印象的だ。三回行けば一生金に困らないという金華山には5回も行った。その時に石巻にも泊まった。このおかげでギャンブルにもハマらず助かっている。

1.競輪とギャンブル依存症
一時期競輪が好きになった時期があった。好みはあるだろうが、非常に高度な推理ができてたのしい。強い風圧の関係で競輪は誰かの後ろ(番手)について走った方が有利である。そのため最も強い「逃げ選手」の番手についた選手が本命になるケースが多い。そこを別線の逃げ選手はそうは簡単に逃げさせまいと駆け引きをする。先行は一車なのか?先行型のどちらが優位になるのか?その番手はだれがとるのか?先行型はまくりにまわるのか?という競輪の基本推理はあるけれど、力が均衡していると直線になれば誰が上位に入選するのかわからないのだ。

いろいろ考えてもなかなか当たらない。やられるのはわかっても好きなものは好きということで平日の昼間からたくさんの人が競輪をやっている。そしてやられる。だから競輪場から駅までの間はオケラ街道と言われる。


2.郁男の転落
もともと郁男(香取慎吾)は川崎競輪に入り浸りの生活だった。同居人の女性が実家に帰るのでついていく。まさに髪結いの亭主だ。もともとの仲間から宮城は競輪場がないねと言われ足を洗うつもりだった。ところが、同僚がスポーツ新聞の競輪記事をみて予想している。郁男も気になる。同僚の予想に対して「この強い先行選手に番手はついていけないはずだから、薄めの選手との車券をおさえておいた方がいい」という。競輪好きならわかるセリフだ。

もっともらしいアドバイスなので、こいつは競輪を知っているなと仲間に思わせる。それが間違いのもとだった。思えば、こういうことってあるかもしれない。しばらくの間麻雀やその他ギャンブルに手を出していなかったのに、異動先でこんな会話がきっかけでまたやるようになる。そしてはまる。人生ってこんな感じじゃないだろうか?


3.ノミ屋の店長のふるまい
ノミ屋といっても若い人はわからないだろう。私設競輪売り場である。当然違法、反体制勢力の資金源である。公に行われているレースと同じように買えるのだ。今は場外車券場やネットで購入するシステムができたが、昔はそういうのはなかった。客にタネ銭がなければ、町金金利で用立てる。

ノミ行為に郁男は引っかかった。やられっぱなしで借金が積む。それでも挑戦して当てるのだ。やったとばかり配当を回収しようとする。大金かけているから払い戻しが多い。大慌てのノミ屋の店主は店の外へ逃げる。香取が大きな体で追う。捕まえたとき、店主は勝った控えをなんと口に飲み込んでしまう。飲み込んでしまうからノミ屋なんだと。これをギャンブル好きの親父が見たら笑えるけど、SMAPの香取君が好きで見に来た人はわかるのかな。笑いは起きず。若いころノミ屋で馬券買わないかと友人に何回か言われたことがある。これだけは経験がないのは幸いしている。


競輪の話もちきりのこの映画だけど、白石和彌監督がギャンブルはしないという。アウトローの映画ばかり撮っているのにちょっと意外。脚本家はギャンブル好きじゃないと書けないんじゃないかしら?でもこの映画血を超えた交情が本当のテーマなんだろう。それはみているとよくわかる。

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映画「アルキメデスの大戦」菅田将暉&田中泯&小林克也

2019-08-08 19:02:37 | 映画(日本 2019年以降主演男性)

映画「アルキメデスの大戦」を映画館で観てきました。

菅田将暉の主演作品とは相性がいい。数学の天才が海軍の方針を動かすという話のようだ。おもしろそう。高等数学のセンスがないと自覚する自分は数学の天才という設定にひかれて観に行ってしまう。どういうところで、数学の天才ぶりを発揮するのかと思っていたら、船舶に関しては素人の主人公が巨大戦艦の建造費を2週間で算出してしまおうという話である。工学部出身ではない。帝大数学科100年に一人の天才という触れ込みである。しかも、船舶建造費に関する所与の条件は機密でわからないことだらけ。

漫画が原作だけに不自然なことだらけの設定である。映画の中に出てくる物語の数々は普通で考えたらありえないことだらけ。それでも不思議とストーリーの中に入り込んでいくので眠くはならない。


いきなり映像となるのは昭和20年の戦艦大和の最期である。制空権をとられて米軍航空機による空からの攻撃を受けっぱなしだ。戦艦からの砲撃も激しく、入り乱れる攻防がなされるが、結局沈没してしまう。誰もが知っている事実である。山本五十六という人物は東条英樹首相などのA級戦犯とは逆に一般の日本人からは好評価を受けていると言える。この映画でも正義の味方はあくまで山本五十六で、その考え方に基づいて動くのが主人公という構図である。

1933(昭和8)年海軍省は秘密裏に巨大戦艦の建造を計画している。海軍少将・山本五十六(舘ひろし)はこれからの戦いに必要なのは航空母艦だと進言したものの、嶋田少将(橋爪功)をはじめとした上層部は日露戦争の開戦を制した世界に誇れる壮大な軍艦こそ必要だと考える。しかし、巨大戦艦の建造費は意外に高くない。不自然だ。山本はその矛盾の解明にあたり軍部の息がかかっていない協力者として、帝国大学の数学科で100年に1人の天才と言われる櫂直(菅田将暉)に目をつけた。

大の軍隊嫌いという変わり者の櫂はかたくなに協力を拒んでいたものの、巨大戦艦を建造すればその力を過信した日本は必ず戦争を始めるという山本の言葉に動かされ、すでに決まっていた米国留学の道を断る。櫂は二週間という短期間で建造費のからくりを解明するよう指示を受けた。しかし、戦艦に関する一切の情報は建造推進派の者たちが秘匿している。困難だらけにもかかわらず、櫂は作戦を立てる。


さすがに戦前日本史の真実というのはマンガであっても動かせない。その事実を前提としながら、一人の数学好きの若者を暴れさせる。海軍任官後まずは、当時先端の軍艦であった「長門」を見学、設計図等は極秘扱いであるが、艦長をごまかしこっそりと図面を書き写す。それをもとに今回計画の軍艦の設計図を自ら作成する。一方で船舶工学に関するあらゆる書籍を読み込み、構造計算など船舶設計に必要な諸要件を理解する。しかし、軍艦の積算資料はない。建造にどれだけの人工がかかり、鉄の量がどれだけ必要なのか資料がないのだ。以前海軍と取引があった大阪にある造船会社に行き、過去の船舶建造の資料を得ようとするが断られる。それでも粘る。

1.不自然さ満載
⒈将校が出入りする高級料亭で学生の身分で芸者をあげる。そこで山本五十六と知り合う。
⒉いきなり少佐に任官
⒊使っている鉄の総量のみを変数にして船舶の建造費を算出し、それが正解する。
これらをいちいち気にしていたらきりがない。所詮はマンガと思うしかない。

2.東京帝大数学科
帝大で100年に一人の天才だという。1933年であれば、東京帝大数学科ができて100年たっていない。個人的には高木貞治教授がまだ在籍していたかどうかが気になった。数学を勉強した人で解析概論 ">
高木貞治の「解析概論」
を知らない人はいないであろう。調べると1936年に東京帝国大学教授を退官したようだ。とすれば、漫画の世界であるが櫂直とはダブっている。有名な数学者でいえば、彌永昌吉は1929年の卒業でその後留学、小平邦彦は1935年の数学科入学のようである。この映画で櫂直は海軍勤務になる前にプリンストン大学に留学することになっている。小平邦彦が東大卒業後プリンストン大学に留学したことを意識して設定したのであろう。

世の中にはすごい天才っていると思う。工学部、理学部という境界をこえて短期間で巨大戦艦の設計をして金額をはじき出すことが、一歩抜けた天才であればできうることなのか?もしもで考えると面白い。


3.ベテラン俳優の活躍
不自然な設定によるマイナス点はあれど、この映画はベテラン俳優の活躍が目立つ。橋爪功の嶋田少将はいやな奴の役だが、嫌味の語りがうまい。
何より海軍技術系のトップの役を演じる田中泯が抜群の存在感を示す。まさに昭和の将校らしい顔になっている。ラストに向けての主人公とのやり取りはこの映画のヤマ場だ。凄みのある将校ができる俳優ってそんなにいない。もともと舞踏界の人であったが、「たそがれ清兵衛」真田広之演じる主人公と対決する剣豪を演じてから出番は飛躍的に増える。個人的には「八日目の蝉」の写真館の店主役も好きだ。


あとは小林克也だ。最初はわからなかったが、途中で気づく。DJで一世を風靡した小林克也も昭和の軍人らしい顔になっている。若いころは大変お世話になった。「ベストヒットUSA」がスタートする前に、1970年代前半FM東京で全米ヒットチャートを紹介する深夜番組があった。アップデートで小林克也が国際電話をして最新チャートを伝える。その番組を聞くのが中学生のころ毎週楽しみであった。そんな彼が78歳になる。まだまだ健在であることを確認してうれしくなった。


印象に残ったシーンがある。序盤に戦艦大和が沈没するシーンの時、大和の砲撃を受けて海に米軍戦闘機が墜落する。戦闘員はパラシュートで海に落ちる。それを別の米軍軍用機が海に降り立ち、乗務員を助ける。それを戦艦大和の乗組員があぜんと見守るシーンである。日本ではこんなことはあり得ないのであろう。あえてこういうシーンを入れ込んだところに意味がある。

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映画「教誨師」大杉漣

2019-06-11 18:30:55 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「教誨師」は2018年制作の日本映画。

大杉漣
の遺作というべき佐向大監督による最後の主演作である。気になっていたが、とりあえず後回しにした。大好きな「孤独のグルメ」(鶯谷編)を見ていたら大杉漣が出ているので、これは「教誨師」を見ろということだなとDVD手に取る。


大杉漣が演じるのは死刑囚を相手するキリスト教の教誨師である。男5人、女1人の6人の死刑囚を受け持つ。変わった奴らだが、長い間生きていると似たような奴にあったものだ。きっとモデルはいるのであろう。まあ面倒な仕事だ。何かの間違い死刑囚となってしまったのであろう。彼らは刑務所でなく、拘置所で独房ににいる。独房の中の生活は映さない。

再審が必要とのことでH死刑囚が釈放された。長い間の拘置所生活で完全に精神が錯乱されているようにTVでは見えた。1人でこんな閉鎖空間にいたら頭がおかしくなってしまうだろう。かなり特殊な人物との会話を描いている。

プロテスタントの牧師、佐伯保(大杉漣)。彼は教誨師として月に2回拘置所を訪れ、一癖も二癖もある死刑囚と面会する。無言を貫き、佐伯の問いにも一切応えようとしない鈴木(古舘寛治)。気のよいヤクザの組長、吉田(光石研)。年老いたホームレス、進藤(五頭岳夫)。よくしゃべる関西出身の中年女性、野口(烏丸せつこ)。面会にも来ない我が子を思い続ける気弱な小川(小川登)。そして大量殺人者の若者、高宮(玉置玲央)。佐伯は、彼らが自らの罪をしっかりと見つめ、悔い改めることで残り少ない“ 生” を充実したものにできるよう、そして心安らかに“ 死” を迎えられるよう、親身になって彼らの話を聞き、聖書の言葉を伝える。しかしなかなか思い通りにはいかず、苦難の日々が繰り返される。(作品情報 引用)


教誨師という仕事を知ったのは小学生のころ「東京裁判」に関心をもち児島襄の本を読んだ時だ。A級戦犯が過ごす拘置所内での状況を花山教誨師が書いた本から引用している。東条英機、広田弘毅といった元首相が死刑判決をうけて、人生を達観視して悠然とその日を迎えている姿が描かれていた。今回の死刑囚はそのような品位はない。大杉漣演じる教誨師は一癖ある男女を相手にしている。でもこの教誨師にも複雑な過去があるのだ。

1.文盲の男

長い人生で文盲の日本人に自分はあったことがない。教誨師は面談中にこの人は字が読めないと気づく。性格は温和である。ホームレスだというが、結果として車での事故で殺人を犯したと告白する。文盲で運転免許は取得できるわけないからおかしいと思うが、よくテレビで長い間無免許だった人が捕まるなんて話を何度も見たことがある。そう考えれば、ありえないことではないかもしれない。起こした犯罪のディテールはわからないが、面倒な連中の中では応援してあげたい類だ。


2.やくざ上がりの男
こういうタイプはヤクザでなくてもたまに見る。お調子者である。立石のキャラはヤクザとは違うかな。俺のいうようにやってみろよと教誨師に何度も語りかける。口八丁手八丁で這い上がるタイプだ。教誨師に実はあの殺人事件殺したのは俺だとコソコソ話をする。でも教誨師はそれを額面通り受け取らない。死刑になったら、証拠がなくなるので当分は処刑はなくなるという死刑囚の思惑があるとみるからだろう。

処刑を恐れている。12月24日前になんでケーキが出るんだ。次は俺かと慌てふためく。


3.支離滅裂な関西女
言っていることが支離滅裂だ。存在しない拘置所職員の名前をだして、その職員はこう言っているという。自分の話のつじつまが合わず、話しているうちにヒステリーを起こす。


烏丸せつこは久々見た。四季奈津子の映画から40年近くの年月が過ぎ、彼女も64歳である。ボリュームたっぷりのバストをあらわにして、世の男性陣をとりこにしたのは嘘みたいな変わり様だ。おとろえたなあ。これが演技のために造られたメイクとなればすごいけど。

4.屁理屈にあふれた若者
大量殺人を犯したという。屁理屈を言って、自分の殺しを正当化する。斜に構えている若者だ。自分が1番嫌いなタイプで学園紛争の時期にはこういう奴は大勢いたかもしれない。教誨師にも強気で議論を吹っかける。教誨師もつじつま合わずタジタジだ。

リンゴを盗んだらコソ泥で捕まり、国を盗んだら支配者になるなんてのたまう。チャップリンが「殺人狂時代」で言った大量殺人なら英雄になるというセリフが脳裏に浮かぶ。この6人の中で最も嫌な奴だが、印象にも残る。



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映画「翔んで埼玉」GACKT&二階堂ふみ

2019-02-27 21:43:54 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「翔んで埼玉」を映画館で観てきました。


これはむちゃくちゃ面白い!
埼玉県民として気になる映画である。漫画家の魔夜峰央の原作を映画化とした作品。GACKT&二階堂ふみがダブル主演だ。娘と二人で平日にイオンシネマに行ったが、超満員。若い人というより、年寄りも数多い。埼玉の侮辱ネタだけど、館内は笑いの渦に包まれていた。出るは出るは、埼玉のディスネタ。最後のエンディングロールが終了するまで、満員の観客は誰も立たない。関西人は埼玉といっても全然見当がつかないだろうけど、東京はもとよりライバル千葉や神奈川の人、群馬、栃木の北関東の人が観てもおもしろいじゃないかしら?

結局間に5年の栃木県宇都宮市での生活を挟むが、合計で19年埼玉に住んでいる。東京の30年に次いで長い。大宮、川越、浦和と住んでいるが、住みやすいところだと思う。映画の中でもそれは強調される。確かにこれといった特産品はない。それだけに映画では埼玉の名産と言って草加せんべいがクローズアップされる。埼玉のご当地ソング、さいたまんぞうの「なぜか埼玉」も久々に聞いた気がする。埼玉のカラオケスナックでは誰も歌わないし、知らない人も多い。

埼玉県の農道を1台のワンボックスカーがある家族を乗せて、東京に向かって走っている。
カーラジオからは、さいたまんぞうの「なぜか埼玉」に続き、DJが語る埼玉にまつわる都市伝説が流れ始める――。


その昔、埼玉県民は東京都民からそれはそれはひどい迫害を受けていた。通行手形がないと東京に出入りすらできず、手形を持っていない者は見つかると強制送還されるため、埼玉県民は自分たちを解放してくれる救世主の出現を切に願っていた。

東京にある、超名門校・白鵬堂学院では、都知事の息子の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が、埼玉県人を底辺とするヒエラルキーの頂点に、生徒会長として君臨していた。しかし、アメリカ帰りの転校生・麻実麗(GACKT)の出現により、百美の運命は大きく狂い始める。


麗は実は隠れ埼玉県人で、手形制度撤廃を目指して活動する埼玉解放戦線の主要メンバーだったのだ。
その正体がばれて追われる身となった麗に、百美は地位も未来も投げ捨ててついていく。

2人の逃避行に立ちはだかるのは、埼玉の永遠のライバル・千葉解放戦線の一員であり、壇ノ浦家に使える執事の阿久津翔(伊勢谷友介)だった。東京を巡る埼玉vs千葉の大抗争が群馬や神奈川、栃木、茨城も巻き込んでいくなか、伝説の埼玉県人・埼玉デューク(京本政樹)に助けられながら、百美と麗は東京に立ち向かう。(作品情報より)



1.池袋
品川で生まれて育った自分からすると、池袋ってめったに行かないところである。軍艦のような西武デパートがあるといっても、渋谷に行けばなんでもある。新宿すらあまり行かなかったなあ。でも、埼玉に住むようになってから池袋に寄るようになった。埼玉県民は池袋に行くと落ち着くという人が多い。何度も聞いたことがある。東武、西武に埼京線、今は神奈川までつながる湘南ライナーが通る。エンディングロールのはなわの歌でも「やたらやたら池袋で遊ぶ」と歌われる。確かにそうかもしれない。

2.千葉への対抗
千葉にはディズニーランドに、成田空港、そしてららぽーと東京ベイと年間1000万人を超える人が訪れる場所がある。観光では大きく出遅れている。小江戸川越や秩父長瀞なども注目されているが、比較にはならない。しかも、千葉には海がある。埼玉が千葉に対抗して、茨城県の太平洋からトンネルで海水を引き込んだなんて馬鹿げた話が笑える。会社の仕事で千葉へ5年通った。人口は埼玉の732万人に対して、千葉は627万人で埼玉の方が多い。県立の雄浦和高校があって、早慶の付属高校があるなんてセリフも映画にある。でも民度は千葉の方が高いかもしれない。

映画ではGACKT率いる埼玉県民と伊勢谷率いる千葉県民が流山で川を隔てて相対する場面がある。これが面白い。それぞれの出身の芸能人なんかの大きな絵を出して対抗する。いったいこの対決どうなるんだろうと思いつつも、しばらくすると両県民が一緒になって都庁に乗り込む場面になるのが笑える。埼玉と千葉の人口を合わせると1360万人で全国の人口の一割を超える。両県の映画好きがこの映画を見るなら、相当な興行収入になりそうな気がする。



3.GACKT

正月というと「芸能人格付けチェック」を見るのが楽しみである。ここではGACKTが55連勝を持続中である。すげえなあという畏怖の対象だ。今はXジャパンのYOSHIKIと一緒に出演している。流山の川を隔てての千葉埼玉対決では千葉館山出身のYOSHIKIがクローズアップされていたのがおもしろい。40代のGACKTが高校生役というのは、本人は無理があるといって断ったらしいが、不自然さがまったくないのが凄い。しかも、男色の色彩があり、伊勢谷友介とキスしてしまうのにも驚く。しらこばとの柄のある草加せんべいでの踏み絵をするかで埼玉に縁があるどうかをはかるシーンで苦渋の表情を見せるGACKTがかわいい。



4.貧乳ナンバー1の埼玉

これが図入りで何回か出てくる。しかも、逆に巨乳好きナンバーも埼玉だと。何それ?そんな統計誰がとるの?という感じだ。でも、一緒に映画を見に行った娘が妙に感心していた。確かに東京の大学に行くまで、細身で胸の大きいという人に出会ったことがないという。しかも、修学旅行で大阪に行ったときに、お笑いを見に行って埼玉から来たといったら貧乳ナンバー1の埼玉だねと言われたという。なんじゃそれ!確かにうちの娘も少なくとも巨乳ではない。

最後の埼玉県を徹底的にディスるはなわの歌がえらく面白い。最後まで笑える。
でも佐賀じゃなくて春日部出身とはびっくり。

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映画「七つの会議」野村萬斎

2019-02-14 19:59:00 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「七つの会議」を映画館で観てきました。


池井戸潤原作の映画化である。半沢直樹シリーズでの常連である香川照之、片岡愛之助、及川光博が脇を固める中で、狂言師野村萬斎が主人公となる。P社を連想させる大阪本社の電機会社ゼノックスの系列会社東京建電を舞台にする。家電や列車の座席などをつくっている会社だ。割とオーバーな演技をみせる芸達者の出演者がそろい、よくある会社内部におきるさまざまなネタが語られる。

最初は単純なパワハラネタかと思いしや、営業部の経費取り扱いに対する経理系社員の反発や社員同士の不倫などよくありがちな話題に移る。そして、不良品に対する企業対応が語られる。よくありがちなネタだけど、それぞれのドラマと自分の会社での出来事を照らし合わせたくなる話も多い。出演者も男性が大半でむしろ男の物語である。ふつうはいったん話を終えてエンディングロールという流れであるが、エンディングロールを出しながら、最後の最後まで時間を使ってストーリーを見せていく珍しいパターンだ。映画として上質というわけではないが、最後まで楽しませる。

都内の中堅メーカー、東京建電の営業一課で係長を務めている八角民夫(野村萬斎)。最低限のノルマしかこなさず、会議も出席するだけという姿勢をトップセールスマンの課長・坂戸宣彦(片岡愛之助)から責められるが、意に介することなく気ままに過ごしていた。営業部長・北川誠(香川照之)による厳格な結果主義のもとで部員たちが疲弊する中、突如として八角がパワハラで坂戸を訴え、彼に異動処分が下される。そして常に2番手だった原島万二(及川光博)が新課長に着任する。(作品情報より)

いきなり営業会議の場面が出てくる。香川照之扮する営業部長が及川扮する営業二課の課長を叱責する。計画達成していないのだ。そしてもともとの目論見より高い数字を言わさせられる。一方片岡愛之助扮する営業一課長は連続で計画を達成している。逆に褒められている。その時、会議の内容を聞いていない営業一課の課員がいる。それが主人公の野村萬斎扮する八角だ。この勢いであれば、すぐにでもクビだといわれてもおかしくない態度なのにそうならない。この八角はなんか守られているなと感じる。


そのあと八角はいかにも劣等生のふりをして、上司の営業一課長に逆らう。と言うわけで叱責する。それならパワハラだと会社に訴えると八角は言う。こういう時少し前だったら、逆らったパワハラを訴えた方が飛ばされるわけだが、ここでは営業一課長の方が人事部付になり失脚する。


でも、このパワハラ失脚の流れはここ最近の日本の一般会社ではあり得ることとなった。
こういうパターンは現実にある。

1.地方への左遷
この映画では、やたらと左遷の話が出てきて、小倉とか東北とか関連会社とか行かされるのが、いかにもサラリーマン人生の終わりのような話につなげる。この映画見ている人で左遷先のエリアで仕事している人にはおもしろくないよね。地方でも仕事をした後で今東京にいる自分から見ると、地方で仕事をしている方がよっぽど気楽だと思うんだけどね。池井戸潤はすぐ左遷で地方、片道切符と言うが、出世のチャンスはむしろ地方に広がっているんじゃないかな?こんなことで今の若い人に間違ったことを教えているんじゃないかな??


2.営業と経理の対決
映画の設定では営業部と経理部が仲わるい。営業が接待系で経費を使っていることに目を光らせて、あげ足をとってやろうと経理課長と課長代理が動く。営業一課の八角がねじ会社との会食で10万円の経費を使っている。あの不良社員の八角が下請けと会食?しかも、接待したねじ会社に替わる前よりむしろ原価が高くなっているのではないか。もしかして、バックマージン狙いに新しい会社に近づいた?このあたりに目をつけ、役員会で経理部が営業部を糾弾するという構図だ。

でもこんなことって役員会の話題かよ!?といった感じだね。映画を観ていて笑った。1000万円ならともかく10万円ごときの接待で役員会の話題なんてならないよね。ありがちな話だけど、むしろもう少し下のレベルでの話じゃないといった感じだ。会社の規模は東北やら小倉やら全国ネットであるような会社なんだから、本社経理部がとやかくいうような話でないでしょう。


3.不良品の取り扱い
いろいろな話があるけど、最終的な焦点は利益を増やすために安価なねじを使ったいすや列車の座席をつくったけど、ボディを支えるねじの強度は実験してみると弱い。ほっておくと事故が起きてもおかしくない。しかもこの会社は大会社ゼノックスの子会社だ。リコールするの?リコールしたらこの会社は一気に吹っ飛んでしまうよ。さあどうする?これは見てのお楽しみ

でも経営者もからんで会社くるみで安価な強度の弱いねじを使ったということが焦点になるけど、最近の経営者って品質には敏感だと思うよ。むしろ悪い製品をつくって顧客や一般大衆、マスコミにやられることの方が儲からなくて株主などに怒られるよりもよっぽどイヤなはずだ。経営者に忖度して悪い実験データを公表しないで製品を作り続けたなんてことあるけど、経営者が品質に疑問のある製品をつくる指示するなんてことはないんじゃないかな?自分を守るためにかなりびくびくしているのが現状の経営者でしょう。

いくつかあげたけど、なんかずれているなあといった印象を持ち続けた。八角のキャラも嫌いだ。
でも最後まで飽きずには見れた。
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