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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ノーヴィス」イザベルファーマン

2024-11-03 07:33:06 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「ノーヴィス」を映画館で観てきました。


映画「ノーヴィス」大学のボート部に所属する女子学生を描いたアメリカ映画、「セッション」などで音響を担当した女性のローレン・ハダウェイ監督が脚本・編集も手がける。「ノーヴィス」とはスポーツ分野において一定のランクに達していない初心者のことだ。直近は観たい映画がなく、短期間映画をご無沙汰してしまったが、何となく気になる作品である。

映画を観てしばらくして、「アレ?もしかして?似ているなあ?」と思っていたら、見終わった後その通りだとわかる。主人公アレックスを演じるのがあのホラーサスペンス「エスター」の子役イゼベルファーマンだと気がついたのだ。ある意味自分自身にとって最も印象深いホラーの主人公で何かの縁を感じる。

大学に入学したばかりのアレックス・ダル(イザベル・ファーマン)はボート部に入部を決める。物理を専攻するアレックスは学業にも力を入れるだけでなく、1年生としてコーチの指導を受けながら練習にも励んでいた。同期にはスポーツ万能のジェイミーもいたが、1人で黙々と早朝から練習して少しづつ認められていた。上級生の一軍チームとの対決にもアレックスを含む2軍チームが勝つ。そんな時、レギュラー争いでジェイミーと争う中でイザコザが起きてから、アレックスの精神は安定しない状態となっていく。


文武両道を目指す女子学生の奮闘と精神の乱れを描いた見応えのある作品だ。
映画の登場人物とはいえ、こんなにストイックに学業にもスポーツにも真剣な女子学生って今の日本にいるのだろうか?高校生の時は学年の成績上位を争い、結局学年2番だったが、大学は特待扱いで学費タダで通う奨学生だ。ボート部でのレギュラーを目指して過酷なトレーニングで自分を追い込む。専攻する物理の小テストも完璧を目指すため何度も見直して時間をかける。高校時代から努力の鬼だった。たえずメモをとり常に改善の意識を持つ。

日本映画でも上昇志向の強い女性はいても、観たことがないタイプだ。マジメに一心不乱に努力するタイプの女性は魅力的で個人的には好感をもつ。

⒈悪夢
この「ノーヴィス」を観ながら連想する言葉は悪夢だ。映画「ブラックスワン」ナタリーポートマン演じる主人公がバレエのライバルに負けないように奮闘しながら、悪夢のように徐々に精神が破壊する姿に共通するものを感じた。ナタリーポートマンにもミラクニスというライバルの存在があった。ここでも主人公にジェイミーという同期のライバルがいる。

ローレン・ハダウェイ監督ボート競技(ローイング)の経験があるようだ。コーチからの指導で「脚、体、腕」というタイミングでボート漕ぎのトレーニングをするのも自身の経験から出た言葉だろう。同じようにストイックに練習したのかもしれない。ローレン・ハダウェイ監督自らの練習でのつらい体験がこの映画につながった印象を受ける。


⒉主人公に追随するカメラと音楽
「ノーヴィス」で注目するのはカメラワークと音楽だ。いきなり空から捉えたボートの映像が映る。ボートの水上シーンを躍動感をもって捉えて、アップで登場人物の圧倒的な情熱と苦痛の表情を映す。映像に濃淡をつけつつ、現実と虚構らしきものを混ぜている編集も悪くない。できるかぎり大画面の映画館で観たい映画だ。観る映画館を変えたのは正解だった。

ドラマーの成長物語「セッション」の音響デザインを担当したローレン・ハダウェイ監督は割と多めに演技者のバックに音楽を流す。不安を呼び起こす弦楽器の音楽だけでなく60年代のブレンダリーやコニーフランシスの曲を織り交ぜるところにセンスを感じる。でも、音楽の量に賛否はあるかもしれない。

⒊エスターの子役
今回事前にあの「エスター」イザベル・ファーマンが演じていることはまったく知らなかった。自分のブログを読んでくれた女性から「エスター」を勧められて観たら、イヤイヤ凄い恐怖の波状攻撃であっと驚いた。色んな人に勧めて驚いてもらってからもう13年経つ。当初の「エスター」は映画ファンには有名作品のはずなのに、その主役であることを強調しないというのが自分には不思議でならない。


精神が徐々に不安定になっていくシーンは見ものだ。自傷行為には思わず目を背けてしまう。衝撃のラストも印象的だ。今回は大人の世界を垣間見るためにパーティで男といい仲になっての濡れ場女性の恋人とのレズビアンシーンも用意されている。あのエスターも大人になったんだね。ただ、ボート競技が主題のこの映画の主役は楽ではないはず。撮影前の6週間、毎朝4時半に起床し、1日6時間の水上トレーニングを実施したという作品情報を見ると相当な鍛錬を重ねたようだ。イザベル・ファーマンの成長を感じてうれしい。


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映画「トラップ」 ジョジョハートネット

2024-10-26 17:40:08 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「トラップ」を映画館で観てきました。


映画「トランプ」「シックスセンス」から独特の作風のM.ナイト・シャマラン監督の新作で、ジョシュ ハートネットが主演だ。ハートネットの主演作を観るのは久々な気がする。人気アーティスト役でシャマラン監督の長女サレカ・ナイト・シャマランが主演している。サレカのパフォーマンスはよかった。

溺愛する娘ライリーのために、消防士のクーパー(ジョシュ ハートネット)は世界的アーティスト、レディ・レイブン(サレカ・ナイト・シャマラン)が出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れた。クーパーは会場についた後で異変に気づく。大勢の警察や警備やFBIもいる。3 万人の観客が熱狂に包まれる中、ライブが幕を開ける。クーパーは口の軽いスタッフから「指名手配中の猟奇殺人犯についてタレコミがあり、警察がライブというトラップ(罠)を仕組んだ」ことを聞き出す。という。クーパーは会場で不審な行動を見せるようになる。クーパーは秘密を隠していた。


期待外れの映画だった。
事前情報なしでの鑑賞だった。巨大ライブ会場の熱気が伝わる中で、ジョシュ ハートネットの動きがおかしい。女性を階段から突き落としたり、内部で働く人のセキュリティカードを盗んだりしていく。女性を突き落とすあたりから何か変だな?と思うようになったけど、状況を理解するのに時間がかかる。途中で凶悪犯をコンサート会場で追いつめるというのがわかるけど、なんかしっくりこない流れだ。


実は意味不明な設定が多すぎるので戸惑ってしまった。普通ようやく手に入れたコンサートチケットなのに休憩時間でもなく会場の廊下にこんなにたくさん人がたむろっているかしら?色んなグッズってコンサートの前後に買うもんだけど、ここではコンサートの途中で行列になっている。しかも、やたらにトイレ行ったり、座席を外したりするものかしら?人気歌手のセキュリティもいい加減だ。普通はありえないよなあ。

話もわかりづらい。ちょっとガッカリだ。
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映画「まる」堂本剛&荻上直子

2024-10-23 06:36:53 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「まる」を映画館で観てきました。


映画「まる」荻上直子監督の新作、KinKi Kidsの堂本剛が現代美術のアーティストの役柄を演じる。綾野剛、吉岡里帆、柄本明に加えて荻上直子作品常連の小林聡美が脇を固める。意図せずに一気に有名人になってしまった絵描きの男が世間の大騒ぎに戸惑うストーリーだ。何気に興味をそそる。

荻上直子監督の近作「川っぺりムコリッタ」は監督らしいほんわかムードで、「波紋」新興宗教にハマる女性に失踪した夫が帰ってくる人間ドラマであった。いずれもそれなりのレベルだがパンチが弱い印象を受けた。それでも直近公開作のラインナップからいくと、荻上直子作品が優先順位で上になる。

美大を卒業したもののアートで成功できず、人気現代美術家のアシスタントとして働く沢田(堂本剛)。独立する気力さえも失い、言われたことを淡々とこなすだけの日々を過ごしていた。そんなある日、彼は通勤途中の雨の坂道で自転車事故に遭い、右腕にケガをしたために職を失ってしまう。

部屋に帰ると、床には1匹の蟻がいた。その蟻に導かれるように描いた◯(まる)が知らぬ間にSNSで拡散され、彼は正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名人に。社会現象を巻き起こして誰もが知る存在となる「さわだ」だったが、徐々に◯にとらわれ始め……。(作品情報 引用)

自分の肌に合う心地よく観れる映画だった。
荻上直子監督の前2作よりはよく見えた。映画の中の堂本剛のキャラが好きだ。エンディングの歌が心を柔らかく包んでくれるのもいい感じだ。直近ではお気に入りの作品だ。

上昇志向のない主人公で、本来才能があるのに現代美術家のアシスタントに甘んじている。師事している美術家(吉田鋼太郎)にいいとこ取りされて、同僚の女性アシスタント(吉岡里帆)の方が上に搾取されていると言って腹を立てている。ところが、自転車事故で腕をケガして事務所をクビになってしまうのだ。


失意のまま、池のある公園で円周率3.14の桁下数字を唱える正体不明の老人(柄本明)からパンの真ん中をちぎってできた◯を見せられる。ボロい賃貸の部屋に帰って何気なく◯を描いてサワダの名前をサインしたものを古道具屋に持ち込む。しばらくして、それがいつの間にか世間で絶賛されていくのに気づくのだ。


堂本剛演じる沢田は特に自己主張しない男だ。アシスタントをクビになってから淡々とコンビニでバイトをする。有名になっても継続する。日本語がたどたどしく若者にからかわれるミャンマー出身の店員(森崎ウィン)といい掛け合いを見せる。隣の部屋には売れない漫画家(綾野剛)がいてやたらとちょっかいを出してくる。沢田はテンション高く一方的に話す漫画家の言葉を遮らず聞いている。イヤイヤながら外で付き合わされることもある。美術家の女性アシスタント(吉岡里帆)は口びるにピアスをして、搾取反対と町で集会を開く。沢田はただ見ているだけだ。


意味不明なキザな男が自宅に尋ねてきて◯の作品を書いてくれたら一枚につき100万支払うといい沢田は驚く。ある時、◯を描いた作品を画廊のギャラリーで発見する。声をかけると画廊の主人(小林聡美)が本人と知り驚いて、ギャラリーの個展のために描いてくれと依頼される。


黙々と作品を描いていく沢田(堂本剛)の傍に個性的な脇役を揃える。独特のキャラクターをもたせてこの映画をよりおもしろくさせる。荻上直子監督の俳優の使い方の上手さを感じる。彼女の作品にはいつも名優が集まる。

主人公の住処も含めて横浜がロケ地だとすぐわかる。宮川橋付近の福富町から宮川町あたりのディープゾーンが映る。画廊のロケ地は銀座のようだ。謎の老人がいる茶室の丸い障子や路地にチョークで書いた◯とかあらゆるところに◯を意識するところもいい。現代美術は比較的苦手なジャンルだけど、どの作品もよく見えた。


エンディングロールの堂本剛の歌はなかなかいい。カラオケではかなりKinKi Kidsの硝子の少年を女の子とデュエットで歌ったものだ。クレジットに片桐はいりの名前を見て、アレ?いたっけと思い作品情報を見たら、古道具屋のオヤジ役だったのだ。そうだったんだ。
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映画「消された男 DEADMAN」チョ・ジヌン

2024-10-21 20:17:51 | 韓国映画(2020年以降)
映画「消された男 DEADMAN」を映画館で観てきました。


映画「消された男 DEAD MAN」は韓国サスペンス映画で人気俳優のチョジヌンの主演だ。「お嬢さん」「毒戦」などの代表作ははあるが、日本でもリメイクされた「最後まで行く」悪役が不気味な恐ろしさで怖かった。チョジヌンはその時々で違った顔を見せる。彼の出演作なので今回マークする。単なる名前貸しのつもりが陰謀に巻き込まれ、死んだことにさせられてしまう男を演じる。

妻に離婚を迫られたり窮地に陥るイ・マンジェ(チョ・ジヌン)は「名義貸し」の雇われ社長としてスポーツ業界の会社に勤める。言われるままに身を隠すように言われてマカオに行くと、TVで自分に1000億ウォン横領の疑いがかけられてそのまま行方不明になっているニュースを見て驚く。

気がつくと、何者かに拉致されて中国の私設刑務所に閉じ込められてしまう。そこで苦役の生活をする間にすでに死亡していたことになっていた。2年半過ぎた時、謎の女性シム女史が現れ、彼を救い出す。彼女は大統領選に絡む政治コンサルタントだった。マンジェは刑務所を脱出できたがシム女史は彼を利用して政界工作を企てていた。

残念ながら期待外れだった。
定評のある韓国クライムサスペンスでここまでつまらないのはかなり珍しい。話自体が訳がわからず、展開も微妙で眠気を呼んでしまう。大金が絡んでもスリリングでない。韓国映画の詐欺がらみはおもしろい映画多いけどね。。。


仕事探しに廃車が大量に置いてあるところへ行き、「深く考えすぎると稼げない」名前を貸すと金になるよと言われる。韓国っぽい古い建物で印鑑を作ったりする場面の後普通に仕事をする。雇われ社長は日本のサラリーマン社会でもよくある話で、オーナー社長の代わりに実務をやる訳だが、今回は単に名前を貸すだけ。一応出社して個室を持って承認の印は押す。ただ、陰謀にハマってから後のストーリーがよく理解できない。刑務所を脱出後の大統領選に絡んでの両陣営の策略も映像を追ってもちんぷんかんだ。韓国の人ならわかるのかなあ?せっかくのチョ・ジヌンの登場だけど、見どころも少なく気がつくと終わってしまう。


楽そうに見える名義貸しだけど、ハマると怖いなあと言うことだけは教訓となる。確かに借金が絡むと個人財産まで持っていかれるもんね。それだけわからせてくれる映画にすぎなくて韓国クライムサスペンスにしては残念選択ミスもたまにはあるだろう。
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映画「ジョイランド わたしの願い」

2024-10-20 19:30:08 | 映画(アジア)
映画「ジョイランド わたしの願い」を映画館で観てきました。


映画「ジョイランド 私の願い」は初めて観るパキスタン映画カンヌ映画祭でもある視点部門で審査員賞を受賞している作品だ。監督は1991年生まれの新鋭サーイム・サーディク。ヒンズー教のインドと異なりイスラム教国家だとはわかっている。ビンラディンが暗殺された国とかの暗黒なイメージとしての知識しかない。人口1000万強の都市ラホールが舞台といってもピンとこないが、ムガール帝国の都とした王アクバルの名前を聞くと高校の世界史を思い出す。だいたい3時間の放映時間で腰がひいてしまいがちなインド映画と異なり、2時間ちょっとでまとめられているので助かる。

パキスタンの大都市ラホール、ラナ家は3世代で暮らす9人家族。次男で失業中のハイダル(アリ・ジュネージョー)は、子守や料理もする主夫のようだ。兄夫婦に赤ちゃんが生まれたが予想に反して女の子だった。父から「早く仕事を見つけて男の子を」というプレッシャーをかけられていた。妻のムムターズは結婚式のメイクアップの仕事をしている。

ある日ハイダルは、就職先として紹介された劇場でバックダンサーの職を得た。慣れないダンスに辞めるつもりだったが、トランスジェンダーの人気ダンサービバ(アリーナ・ハーン)と出会い一気に惹かれる。ハイダルは単なる下っ端だったが、突如急接近して行くうちに、夫婦関係に支障がでてくるようになる。


予想よりもよくできている映画だ。映像のレベルは高い。
後進国の映画という感じがしない。そもそも英国統治下から大戦後一国で独立するのが宗教問題に二国になったくらいなので、パキスタンとインドとは同じようなものだ。しかも、インド映画のレベルは直近であがっている。宗教的問題が理由かわからないが、パキスタンでは当初公開されていない。そんなにヤバイシーンがあるように見えないが、イスラム教とLGBTは相性が悪いのであろう。

パキスタンには当然行ったことがない。ラホールの街並みを観るのが楽しみだった。調べるとムガール帝国の痕跡を残す建物が観光地としてあるようである。残念ながら、そのシーンはなかった。煉瓦積み?のような建物が並んで建っている。列車の車窓から見る風景もそんな感じだ。

強度的に問題があるように思える建物だ。以前パキスタンでは大きな地震があったようで、地震がきたらまずいだろうなあと感じる。どの建物もほとんど手を入れていないようで、内壁ははがれている。それでもノーヘルメットでバイクが疾走する猥雑な町の映像がよく見える。


イスラム教国なので女性はベールをかぶる。ただ、主人公の家庭では母親を除いては普段はしていない。女優陣はいずれも美形である。加えてトランスジェンダーのダンサーを演じるアリーナ・ハーンも魅力的だ。主人公がグッと惹かれるのもわかる。主人公とのディープキスのシーンがあってもそれ以上はきわどくない。とは言うものの主人公の浮気はよく捉えられていない。悲劇につながっていく。


夜のシーンに見どころあるショットが数多く見られる。兄と弟の嫁同士が夜の遊園地で遊ぶシーンのネオンがきれいだし、トランスジェンダーのダンサーが携帯の灯りをバックに踊るシーン、赤外線系の灯りの中で主人公ハイダルとビバが部屋で過ごすシーンには監督とカメラマンの美的センスを感じた。その映像体験を味わえただけで、映画を観た甲斐がある。
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映画「国境ナイトクルージング」 チョウ・ドンユイ

2024-10-19 16:33:16 | 映画(中国映画)
映画「国境ナイトクルージング」を映画館で観てきました。


映画「国境ナイトクルージング」は中国映画、朝鮮族が多く居住する延吉の町を舞台に3人の若者を映し出す。予告編で観た雰囲気がよく早速映画館に向かう。「少年の君」チョウ・ドンユイが主演3人の1人だ。シンガポールのアンソニーチェン監督の作品だ。現題は「燃冬」

中国北部延吉の町、バスガイドのナナ(チョウ・ドンユイ)は、ツアー客を朝鮮族の観光施設に案内する。ツアーの中に上海のビジネスマン、ハオフォン(リウ・ハオラン)がいる。友人の結婚式に出るためにこの町に来た。時折スマホにメンタルクリニックから電話が入る。

気がつくとスマホをなくして困っているハオフォンを、ナナは食事に誘う。男友達シャオ(チュー・チューシアオ)が待つ店に連れてきて、3人で飲み明かす。3人はそのままナナのアパートで雑魚寝。翌朝、ハオフォンは上海行きの飛行機に乗り遅れそのまま居座る。3人はバイクに乗って国境の川に繰り出す。いずれも心に挫折感を感じていた。ナナもフィギュアスケートの選手だったがケガで断念したのだ。


若者の嘆きが自分には伝わらず正直のれない映画だった。
朝鮮族が多く住む延吉の町に行くことは一生ないだろう。いくつかの韓国映画で町は見たことはある。町を車で走らせると、漢字の看板の中にハングル文字が混じる。ハオフォンが出席する結婚式では朝鮮語と中国語が混ざってにぎやかだ。ナナはツアー客に朝鮮族の住居を案内して、朝鮮の衣装を着た女性たちの踊りを見せている。この曲って「トラジの歌」でなかろうか?そして、ツアー向けの食堂にもう1人のシャオがいる。

朝鮮民族モードが強い前半戦から、ぐうたらの若者がただふらつく姿が中盤にかけてずっと映し出される。書店で悪さを企んだり、クラブで踊りまくったり、まだ暗い早朝に動物園に行く。それぞれに悩みはあるんだろうけど、自分は感情移入できない。成り行き次第な感覚だ。食堂で働くシャオはナナに好意を持つが、ナナは交わす。そのナナは行きずりの恋のようにハオフォンとメイクラブする。ナナを演じるチョウドンユイの乳首は見えそうで見えない。


寒々しい雰囲気が伝わる映画だ。町の中心部を離れると水は凍りつく。本当に寒そうだ。最後3人は虎と熊が対決する伝説の地、長白山を目指す。雪が激しく降る山で目的地を目指すが、なかなか着かない。吹雪が強くなり山の管理人から戻れと言われる。そんな時そこで軽い見せ場をつくる。が本当に出てくるのだ。そして、「アリラン」の歌声を聞きながら映画は最終場面に向かう。
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映画「2度目のはなればなれ」マイケル・ケイン&グレンダ・ジャクソン

2024-10-14 18:05:43 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「2度目のはなればなれ」を映画館で観てきました。


映画「2度のはなればなれ」は大ベテランマイケルケインの引退作になる英国映画、オスカー主演女優賞を2度受賞しているグレンダジャクソンと90歳になる老夫婦役を演じる。この映画の公開前にグレンダジャクソンは亡くなっている。字幕翻訳はこれもベテラン戸田奈津子で、久々に名前を見た。もう88歳なんですね。

個人的に老人映画は敬遠しているが、Netflixでマイケルケイン主演の日本未公開作品「小説家の旅路」を観たが良かったので気になっていた。原題は「the Great Escaper 」、対岸のフランスで開催される退役軍人の会に参加するために英国ドーバーの老人施設を抜け出して船で向かう主人公の話だ。

2014年夏。イギリスの老人ホームで寄り添いながら人生最期の日々を過ごす老夫婦バーナード(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)のある行動が世界中の大ニュースとなった。ひとりバーナードはフランスのノルマンディへ旅立つ。彼が行方不明になったという警察のツイート(#The Great Escaper)をきっかけに、世界中で話題になったのだ。(作品情報 引用)


老人施設を脱出することで原題がつけられている。フランスで開催されるノルマンディ上陸作戦の70周年記念式典に出席するため、ひそかに老人施設をぬけ出すので職員が行方不明の捜査を依頼して大騒ぎになったのだ。「大脱走」と日本題は付けづらかったかもしれない。

大ベテランの枯れ切った掛け合いには敬服する。
色あいのセンスがいい映画だ。薄いブルーとベージュの補色に近い2色が服装やインテリアだけでなく、ドーバーや海上の船から望む海や青空の色となる。視覚的に心を落ち着かせてくれて、やさしいピアノの音色が包んでくれる。わかりやすい英語で心地よく映画を楽しめた。


2人のセリフはそれなりの量だ。俳優のキャリアを通したマイケルケインとは異なり、グレンダジャクソンは政治家になりいったん俳優を引退している。それでも、茶目っ気あふれるセリフはアフリカ系女性が演じる介護士と巧みにからまってコミカルな雰囲気をだす。一定のレベルに達すると、技量は落ちないのであろうか?


ロードムービー的な感覚でバーナード(マイケルケイン)はフランスに行ってから色んな人に出会う。つらい戦争経験の苦しみも分かち合う。行く途中で出会った英国空軍出身の老紳士にはツインだから一緒に泊まろうよと宿までお世話になる。その紳士が空軍にいた時、空から爆撃した街に弟がいて自分が殺したのではとのトラウマを持つ。ドイツ軍兵士だった老人にも会いお互い感極まる。大戦中の回想シーンでは最前線のシーンになり亡くなった戦友をしのぶ。戦争経験のある高齢の方が見たら思うところもあるだろう。若き日の2人を映すシーンはさわやかな恋愛映画のようだ。


The Great Escaperと新聞でも話題になったようだ。ドーバー海峡越えての英国へのご帰還で「You'd be so nice to come home to」とバックに曲が流れるのがいい感じだった。
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映画「若き見知らぬ者たち」 磯村勇斗&岸井ゆきの&福山翔大

2024-10-14 05:52:26 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「若き見知らぬ者たち」を映画館で観てきました。

映画「若き見知らぬ者たち」は「佐々木インマイン」の内山拓也の監督脚本作品である。直近の日本映画を引っ張る若手の磯村勇斗が主演で岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太が脇を固める。磯村勇斗と岸井ゆきのの共演というだけでそれなりのレベルを期待して事前情報なく映画館に向かう。

資金がなく貧相な映画になってしまうことが多い日本映画としてはフランス、香港、韓国の資本が入っているというのは良いこと。それでも、テーマは貧困、脳に障がいをもった母親の介護といった直近の日本映画に多い貧乏くさい内容が中心だ。

映画が始まり、3人の若者と母親らしき4人が出てくるが、それぞれの関係がよくわからないまま映画は進む。どうも母親(霧島れいか)は障がいを持っているようだ。まともに食事もままならない。次男(福山翔大)はトレーニングに励んでいる。食卓で食事をだす女性(岸井ゆきの)が誰なのかと思ったら長男(磯村勇斗)とメイクラブする。女性は看護師のようだ。長男はどこからかの督促状を持っている。金銭的に楽でなさそうだ。結局、説明的な進み方をしないで、時間をかけて個人間の関係がわかっていくようになる。

ここで作品情報を引用する。

風間彩人(磯村勇斗)は、亡くなった父(豊原功補)の借金を返済し、難病を患う母・麻美(霧島れいか)の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたスナックで働いている。彩人の弟・壮平(福山翔大)も同居し、同じく借金返済と介護を担いながら、父の背を追って始めた総合格闘技の選手として、日々練習に明け暮れている。息の詰まるような生活に蝕まれながらも、彩人は恋人・日向(岸井ゆきの)との小さな幸せを掴みたいと考えていた。(作品情報 引用)


途中から意外な展開を見せた後で思わぬ見せ場をつくる。
最近の日本映画得意の貧困ストーリーに介護まで加わるだけの話かと思ったら、主人公を一気に奈落の底まで落とす。これには驚く。苦難の道に陥るだけでない。ネタバレなのであとで語る。

それと、総合格闘技の選手という設定の次男の金網ファイトシーンがある。「これって本気じゃない」と思ってしまうほどのマジファイトとは想像していなかった。殴っているのは本気に見えるので驚く。どうも福山翔大は格闘技の練習をしたらしい。


「ドライブマイカー」の浮気した妻役で好演した霧島れいかが母親役だと最初は気づかなかった。食事している時から調味料を異常に混ぜたり、スーパーで万引きしたり、ぐちゃぐちゃにしたり、畑を荒らしたりするまさに要介護の母親だ。せっかくスナックを始めたのに、浪費でカネを使い果たした元警察官の夫に呆れかえっているうちに心を病んだのであろうか?はっきりと映画内で語っていないけど、母親に存在感をもたせる。


(ネタバレありなのでここから注意)
それにしても、主役(磯村勇斗)が途中で亡くなってしまうのにはビックリする。親友の結婚パーティに行く予定で、店を閉めようとしたら酔っぱらい3人が入ってきて強引に店で飲んでしまい、暴行を受けたあとで外で引きづり回された上に、痛めつけられてしまう。警察が来てストップするけど結局やられた主人公を連行するなんて強引な設定だと感じる。

実はこのあとツッコミどころ満載だ。
⒈閉店と言っているのに酔客を断りきれないという設定がそもそもそんなことあるのかな?店で暴れてケガをしているのに外へ飲みに連れ回すなんてことあるかしら?

⒉外で暴行を受けていて、警察が見つけて尋問する。結局倒れている方が連行されるけど、普通は争っている全員の素性を確認するために、現場に来た警察は全員の免許証(身分証明書)を確認して警察署に問い合わせて前科も含めた素性を確認するはずだ。結局暴行した連中が誰かはわかる。警官2人が主人公の死でうやむやにしようとする設定としてもおかしいんじゃない。

⒊結局主人公が亡くなって、葬儀が終わった後に親友だった染谷将太がスナックに行って歌うシーンがある。そもそもスナックが死んだその日のままなのもおかしいし、スナックには主人公が殴られて血が出ている跡もある。いくら何でもこれに気づかないのは変じゃない?それで捜査を再開するように訴えてもおかしくないし、今は防犯カメラもあって暴行した人間を追跡もできる。これは神奈川県警をバカにしているシーンだ。

4.父親が亡くなっているのは主人公が子供の時だ。今主人公が経営しているけど、その間どうしていたの?誰かスナックやる人がいないとおかしいよね。妻がやるようには見えない。しかも、父親の借金こんな長い間飛ばないでできるのかしら?自宅も一戸建てに住んでいるし?督促状は何?不思議?

あんまり疑問点ばかり言っても仕方ない。監督がまだ若くて仕方ないだろう。
出演者それぞれの演技自体は悪くないし、霧島れいかと福山翔大には敢闘賞をあげたい。今回の岸井ゆきのは見せ場がなかった。
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映画「死の棘」 松阪慶子&岸部一徳&小栗康平

2024-10-13 05:23:20 | 映画(日本 1989年以降)
映画「死の棘」を映画館で観てきました。

映画「死の棘」島尾敏雄の原作を小栗康平監督が映画化した1990年(平成2年)の作品、名画座の偏愛映画特集で観た。評判はいいが、DVDに長らくなかったので観るチャンスがなかった。その年のキネマ旬報ベストテン3位で、主演の松阪慶子と岸部一徳はいずれもキネマ旬報と日本アカデミー賞の主演女優男優賞を受賞している。全く予備知識なしに映画を観に行くと、島尾敏雄の私小説の映画化であることがわかる。夫の浮気で妻が精神の安定を崩す家族の物語だ。

1954年(昭和29年)の東京小岩、妻のミホ(松阪慶子)が夫のトシオ(岸部一徳)を部屋の中で強く責めたて死んでしまおうとまで言っている。トシオの浮気が発覚したのだ。2人は奄美大島で出会い結婚して子どもが2人いた。トシオは改心を誓い、浮気相手(木内みどり)に会いもう会わないと縁を切る。家庭の平和が戻ったように見えたが、思い出したかのようにミホはトシオを強く叱責する。やがて、環境を変えるために2人は田舎に転居したが、ミホがたびたび発作のように精神を狂わせる


松阪慶子と岸部一徳がまだ若い。その2人の演技合戦が見ものだ。
話自体はどうってことない。こんな話くらいで文学になっちゃうのか?という印象。どこにでもある浮気話だ。私小説だけど、妻が健在なうちによくこんなこと書いたなという感じもする。

戦後昭和20年代に建てられたと思しき板の外壁の平屋の家と付近の光景は映画が撮られた平成の初めまでは東京にも残っていた。映画ではセットとロケの場面を組み合わせる。部屋の中の古い調度品は平成の初めまでは各家庭にあった。小岩駅前の電柱には力道山対木村政彦の試合の掲示があるので昭和29年だとわかる。映画では2人の諍いが中心で、松阪慶子の狂ったような叱責が強烈だ。あまりの妻の狂いに呆れて夫が線路に飛び込もうとするシーンもある。小栗康平監督は2人に体当たり演技を要求している。


ただ、こんな感じで妻が夫を責めたてる構図は古今東西どこの家庭でも変わらない気がする。普通の会話を交わしていたのに突然妻が変貌するシーンがいくつかあっても、精神病院に行くほどまで自分には見えない。精神が不安定なのはわかっても発狂はしていない。途中でミホが麻酔注射を打たれて無理やり入院させられるシーンがあった時に、そこまでひどいのかなあと感じる。

いちばんの見せ場は、浮気相手(木内みどり)が周囲が心配しているからと言って、お見舞いと言いつつ遠方はるばる訪れるシーンだ。妻が怒り狂うのがわかっていてくる相手もバカだなと観ていて思うが、ここからの妻(松阪慶子)の暴れ方がすごい。本気モードでの取っ組み合いを小栗監督に要求されているのだろう。やられる木内みどりもたまったもんじゃない。演技指導もここまでくるとやりすぎと思ってしまうが、韓国映画ではよく見るマジな暴力シーンだ。

小栗康平監督作品「泥の河」はよくできている傑作と思ったが、こちらはそれなりかな。
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映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」 ホアキンフェニックス&レディガガ

2024-10-12 07:51:54 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」を映画館で観てきました。


映画「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」は前作に引き続きトッド・フィリップス監督がメガホンを持ち、ホアキン・フェニックスがジョーカーを演じる。今回はレディガガがジョーカーと心を通じ合う女性として登場する。前作はホアキンフェニックスの狂気に迫る怪演もありすばらしい作品だった。あれから5年たつのでディテールを忘れていたが、自分の(ジョーカーブログ記事)を見ているうちに、地下鉄の中での緊迫した場面を思い起こした。最後まで気の抜けない映画だった。

かなり前からパート2の予告編が放映されていて、レディガガの存在が明らかになる。予告編でのジョーカーのパフォーマンスに関心が引き寄せられて、どんな話になるのか楽しみにしていた。でも、直前に賛否両論とのウワサ。週刊文春の映画評で敬愛する芝山幹郎が珍しく星2つで驚く。映画が始まりいきなりアメコミ風のアニメ画面にジョーカーが登場する。どうなっていくのかワクワクする。

5人もの殺人を犯したアーサー(ホアキンフェニックス)は刑務所の中にいた。殺人を法廷で裁くにあたり、担当弁護士は被告が多重人格障害だと主張する。犯行時にジョーカーとなり心神喪失状態で責任能力がないとして無罪を勝ちとろうとする。
模範囚だったアーサーは別棟の監獄にいるリー(レディー・ガガ)と知り合う。リーは実家に火をつけて収監されていた。リーはもともとジョーカーに好意をもっていて、アーサーも惹かれて2人は恋に陥る。


前作のように傑作だとうなることはなかった。でも、映画自体は見どころが多く最後まで飽きずに観れた。
予告編を見る限りでは前作と連続しているとは思っていなかった。5人を殺して刑務所に入り、裁判で無罪有罪になるのか瀬戸際にいるアーサー(ジョーカー)が女性と恋に陥る話がベースである。刑務所内と法廷内のシーンがほとんどだ。しかも、ミュージカル仕立てになってアーサーとリーが歌うシーンが多い。いずれも名曲ばかりで自分が知っている曲も多い。心に沁みる曲もある。リアルと妄想が入り混じるシーンも多い。


題名の「フォリ・ア・ドゥ」とはフランス語で「二人狂い」とのこと。もう1人でなくなったジョーカーはスティービーワンダー「for once in my life」をウキウキしながら歌い、リーと知り合った喜びを見せる。好きなシーンだ。ホアキンフェニックスの歌がここまで聴けるとは思わなかった。

でも、リー(レデイガガ)はやっぱり普通じゃない。ミュージカル映画を観るのに飽きて思わず放火癖が出てしまうのだ。火事になった刑務所から2人で脱出を図ろうとする。できるわけがない。犯行当時の心神喪失で無罪を勝ちとろうとする女性弁護士は精神科の医師の診断なども使い、犯行時に別人格のジョーカーだったことを訴えるのだ。街ではジョーカーの狂信的信者がいて応援する一方で、死刑が当たり前だとする人も多い。ところが、自分に対する侮辱と感じる発言で女性弁護士を解雇して、自ら1人で検察と対決するようになる。


2人が交わった結果愛の結晶が密かに育つことがわかって歌うカーペンターズの名曲「Close to you」も実に良かった。パリオリンピックにも登場したレディガガもさすがの存在感で良い曲は多い。予告編での期待度が大きく下がったわけでなく見どころはたくさんある。しかも、映像のレベルは高い。もっと刑務所以外の下界でのシーンが多いと良かったのでは?

でも、本来のジョーカーの世界とイメージが違うと感じる人が多いことで賛否両論となるのかもしれない。ウェイン家の匂いはない。最後は「え!そうなるの?」という感じで終わってしまう。色んな解釈がされているけど、ジャックニコルソンやヒースレジャーの名作のいくつかが存在しないようになると問題だ。
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