僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

阿久悠

2009-03-26 23:14:27 | Weblog


“本当に不機嫌ですもんね皆。あの、条件が整って、生活の条件が整えば整うほど人間というのはどっか不機嫌になっていく不思議さですね。で、歌が一番大事なのは、こんな不幸な目にあって悲しいっていうことではなくって、不幸のちょっと手前のね、切ない部分がどう書けるかということが、僕は一番大切なことだと思ってるんですよ。”
作詞家、阿久悠の在りし日のコメントです。
彼は、1974年から1975年にかけて、作詞に半ば興味を失い、いつやめようかという気持ちになっていました。
不調とかスランプということでなく、職業的鬱病というか、何を書いてもあまり興奮しなくなり、それが売れてもうれしくない時期があったそうなのです。
表面的にはヒットが連発し、何の不足もない状態でしたが、なにか流れの中でヒットを生んでいる気分が強く、思いがけないもので鮮度を感じるとか、新しい分野を開拓するというものがなかったと言います。
その鬱病時期を払拭させたのが岩崎宏美の二作目のヒット曲「ロマンス」でした。
「ロマンス」は阿久氏に言わせると、
「成熟を感じさせる、清潔な声音でありながら色気を含ませた歌になった」
そんなヒット曲だそうです。
阿久氏にとっての「ロマンス効果」が生まれた瞬間でした。

中也の印象

2009-03-26 00:30:01 | Weblog
 萩原朔太郎は「中原中也君の印象」という本で次のように述べています。

中原の最近出したラムボオ訳詩集はよい出来だつた。ラムボオと中原君とは、その純情で虚無的な点や、我がままで人と交際できない点や、アナアキイで不良少年ぢみてる点や、特に変質者的な点で相似してゐる。ただちがふところは、ラムボオが透徹した知性人であつたに反し、中原君がむしろ殉情的な情緒人であつたといふ一時である。このセンチメントの純潔さが、彼の詩に於ける、最も尊いエスプリだつた。