僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

連歌・連句

2010-07-01 22:50:30 | 短歌・俳句
菜の花や月は東に日は西に

これは有名な蕪村の名句である。この句は単独で詠まれたのではなく、蕪村の詩友と弟子、三人が会した席で発句としてつくれたのである。
その発句に対して蕪村の友人樗良(ちょら)が直ちに応じる。


山もと遠く鷺かすみ行く

このように五・七・五の問いかけに対して、七・七の形で答えるのが連歌・連句の基本である。
蕪村の描いた菜の花畑の夕暮れの風景を、さらに敷衍して、彼方に暮れ残る遠山に鷺が一羽かすみつつ飛んでいく、と受けたのである。

それでは何故近代になってこの連歌・連句の伝統が打ち切られたのか。
それは、明治になって短歌、俳諧の革新を目指した正岡子規が、連歌は文学にあらず、といってその価値を否定し、連歌の冒頭の一句(発句)だけを独立させ、それを俳句としてそこに新しい詩の精神を吹き込もうとしたからである。

では何故子規は連句というものの価値を認めなかったのか。
それは、いくら句を継ぎ足していっても、イメージはバラバラになるだけで、三十六句重ねようと、千句つなげようと、そこには文学作品としてのまとまった詩想は生まれない・・・というのが子規の論拠だった。

バラ

2008-05-06 16:51:57 | 短歌・俳句


原文: 美知乃倍乃 宇万良能宇礼尓 波保麻米乃 可良麻流伎美乎 波可礼加由加牟
作者: 丈部鳥(はせつかべのとり)

よみ: 道の辺(へ)の、茨(うまら)のうれに、延(は)ほ豆の、からまる君(きみ)を、はかれか行かむ
意味: 道端のうまら(ノイバラ)の先に絡(から)みつく豆のように、私に絡みつく君をおいて別れゆく。。。。。

天平勝宝(てんぴょうしょうほう)7年(755)2月9日に、上総國(かずさのくに)の防人(さきもり)を引率する役人である茨田連沙弥麻呂(まむたのむらじさみまろ)が進上したとされる歌の一つです。

防人(さきもり)として選ばれた丈部鳥(はせつかべのとり)という人が、奥様との別れを惜しんで詠んだ歌です。「行かないで。」と絡みつく奥様の様子が痛ましく感じられます。

 上記のように、日本でバラが最初に記述されているのは「万葉集」で「うまら」、「うばら」とあります。両方とも、「野いばら」のことです。

 万葉では 「宇万良」でしたが、「薔薇」という言葉が、この漢字の 「さうび」という音訓で古今集から登場してきます。そして、この「さうび」は万葉集の 「宇万良」とは別品種で、その頃中国から渡って来た新種の蓄薇でした。
           
               
    我はけさうひにぞ見つる花の色をあだなる物といふべかりけり

 これは紀貫之の歌です。
 平安初期に中国から渡来して、貫之の歌に詠まれたこの「さうび」は庚申バラというバラで、日本の野茨系とは違う中国原産の四季咲きで、現代バラ改良の母胎といわれている種類だそうです。










小倉百人一首

2008-03-23 18:17:01 | 短歌・俳句
「小倉百人一首」の選者は1230年ごろ、当代随一の歌人とうたわれた藤原定家。彼は、京都・奥嵯峨の小倉山にある別荘の障子に、選んだ歌を書いたところから、「小倉百人一首」と呼ばれるようになりました。

選考の対象になったのは、奈良時代の「古今和歌集」から鎌倉時代の「続後撰和歌集」まで、10冊の勅撰集。「有心美」といわれる、優美で妖艶な歌が多く収められています。

 はなの色は移りにけりないたづらに
    わが身世にふるながめせし間に (小野小町)

魂振り(たまふり)

2007-10-24 21:42:58 | 短歌・俳句
 神社に参拝するとき、拍手を打ったり、鈴を鳴らすのは、空気を振動させる事によって、神様の力を鼓舞しようという意味があります。これらはどれも古来から伝わる「魂振り」という儀式のバリエーションです。魂振りは神の魂を奮い立たせ神を呼び寄せるための儀式なのです。
 やがてこの魂振りは人に対しても行われるようになり、「万葉集」には恋人に向けて袖を振る歌が多く残されています。恋する相手の魂を引き寄せるまじないが、袖を振ることだったのです。
 日本人が「いってらっしゃい」と手を振るのも、もともと単なる合図ではなく、魂振りの意味合いがあったのです。昔の人は出かける人に対して手や袖を振ることで心霊を招き寄せ、その心霊の加護によって安全に旅ができるようにと祈ったのです。

   あかねさす
         紫野行き
              標野行き
                  野守は見ずや
                        君が袖振る


                             (額田王)

春はまだかいな

2007-02-19 23:14:14 | 短歌・俳句
 ご存知じ「梅は咲いたか桜はまだかいな」で有名なMetisです。なんと受験生の神様、菅原道真公の末裔だそうで、彼女の歌を聴けば合格間違いなしですね。
 個人的にN.R君の高校合格心よりお祈りしています。

 菅原道真といえば次の歌が知られていますよね。
東風吹かば におひおこせよ 梅の花
     あるじ なしとて 春な忘れそ

 大宰府天満宮でこの歌を詠んだとたん、ふるさとの梅の木が飛び立って天満宮の地に降り立ったという飛び梅伝説があります。