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映画『ライフ・オブ・パイ』のここがおかしい、よくわからない(要注意:ネタバレしまくりです) (3)

2013-02-06 12:55:36 | 映画!
早速ですが、「映画『ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日』のここがおかしい、よくわからない(要注意:ネタバレしまくりです)の続きを。

9. 日本の保険会社から送られてきた調査報告書について
映画の中で作家が手にした調査報告書には以下のような記載がありました。

Mr. Patel's is an astounding story, (of?) courage and endurance unparalleled in the history of ship-wrecks. Very few castaways can claim to have survived so long, and none in the company of an adult Bengal tiger.

日本語に訳すと(字幕の日本語ではなく、私が訳したものです)、

「パテル氏の驚くべき話は海難事故の歴史の中でも類を見ない勇気と忍耐の物語である。これほど長く漂流し生き残った人物はほとんどいないであろうし、ベンガルトラと一緒だったというケースはまったくない。」

ということだと思います。素朴な疑問なのですが、これは保険会社が「パテル氏はベンガルトラと一緒にいた」と認めるていることになるのでしょうか? 私には「(パテル氏はベンガルトラと一緒だと言っているが)そんな例は過去にない」と書いているだけで、パイの1つ目の話が正しいかどうかの明言は避けているように思えます。字幕がどのよう表現だったかは記憶が定かではありませんが、保険会社が事実認定しているような日本語訳でしたよね? 逆に、もし保険会社が2つ目の話を事実だと考えたのなら、パイを殺人罪で警察に引き渡す必要があったのではないでしょうか? 殺人が行われた地理的な場所も特定できない事件ですが、日本の救命ボート上の出来事だから日本の警察に届け出ることになるんですかね? 映画では描かれていないけれど、ひょっとするとパイは起訴されそうになって、でも証拠不十分で不起訴になったとか? 考えていると頭が爆発しそうですが、結局、保険会社はパイの2つの話のどちらに対しても曖昧な態度を取ったように私には思えました。みなさんはどう思われましたか? ちなみに、現在の日本の法律では、一般人については他人が犯した犯罪を告発する義務はないようです(ただし、公務員は違うようです。そして非常に興味深いことに、原作ではこの日本人二人は保険会社の社員ではなく、運輸省の役人という設定になっているようです)。

10. 物語終盤のパイのセリフについて
パイが2つ目の物語を話し終わった後の会話は以下のようになっています。

Adult Pi Patel: So which story do you prefer?
Writer: The one with the tiger. That's the better story.
Adult Pi Patel: Thank you. And so it goes with God.
Writer: [smiles] It's an amazing story.

上記のとおり、作家はトラが出てくる方の物語が好きだと言います。それに対してパイは礼を述べ、"And so it goes with God." と言います。字幕ではこの箇所が「神の話でもある」と訳されていたように記憶していますが、この訳、私には納得できませんでした。ここでパイが言いたかったのは「2つの物語のどちらが正しいかは誰にも証明できない。でも、あなたは好きな方を選び、そちらの方が良い物語だと言った。神についても同じだ。神がいるかどうかは誰にも証明できないけれど、神を信じるかどうかはあなたが選ぶことだ」ということではないでしょうか?「もっと短い言葉で訳せよ!」と自分自身につっこみを入れるべきところですが、それにしてもこれほど深いセリフを「神の話でもある」と訳してしまったのはちょっと乱暴な気がします・・・と言いつつ、実は私の日本語読解力がないだけで、「神の話でもある」という字幕だけで、普通の人はちゃんと納得できるものなんですかね?

11. 映画で登場する日本人について
この映画では3人の日本人が登場します。一人はベジタリアンのパイに「グレービー(肉汁ソース)は肉ではないので食べても大丈夫」のようなことを言う、自称仏教徒の船乗り(彼はパイの2つ目の物語にも登場します)。あと2人は保険会社の調査員。映画の中のこの3人の共通点は、相手のことを真剣に理解しようとはせず、うわべだけを取り繕おうとする態度と、自分の立場をはっきりさせず中途半端なスタンスを取るところ(仏教徒なのに徹底した菜食でなかったり、自分がパイの話を信じるかどうかより、会社が信用してくれる話なのかどうかを問題としている点等)ではないでしょうか? 「映画『ライフ・オブ・パイ』のここがおかしい、よくわからない(要注意:ネタバレしまくりです) (1)」の「3. 日本語に聞こえない船の名前」で書いた、船がイスラエル船籍でなく日本船籍だった理由の1つは、この「うわべだけ取り繕おうとする、どっちつかずの中途半端な人物」として日本人を登場させる必要があったからではないかと私は考えました。だって、イスラエル人(ユダヤ人)に「うわべだけ取り繕おうとするどっちつかずの中途半端な人物」ってイメージ、あんまりないですよね? もちろん他の理由もあるでしょう(イスラエル船だと航路的に不自然等)が、いずれにしてもあの船が日本船籍なのは注目すべき設定だと考えます。

・・・とまぁ、長々と書いてきましたが、これまで書いたことは私個人の疑問と物語の解釈であって、物語の原作者や映画製作者の公式見解ではありません。結局、物語をどう解釈するのかは観客一人一人に委ねられていると思います。そして、この物語で一番重要な点、神を信じるか信じないかの選択も、一人一人に委ねられているのです。
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