今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から、昨日と同じ「『戦前』という時代」と題した昭和60年の連載コラムの一節です。
「昭和五年はいわゆるエロ・グロ・ナンセンスの最後の時代だった。タキシーは『円タク』といって市内一円(ただし当時東京は十五区)だったのが五十銭で、甚しきは三十銭で乗れる時代だった。満州事変はおこったが半年で終った。世間は軍需景気でうるおったがそれはほんの一部で、全体はまだ不景気だった。ネオンは輝きデパートに商品はあふれカフェーバーダンスホールは満員だった。金さえあれば贅沢は出来た。」
(山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊 所収)
「昭和五年はいわゆるエロ・グロ・ナンセンスの最後の時代だった。タキシーは『円タク』といって市内一円(ただし当時東京は十五区)だったのが五十銭で、甚しきは三十銭で乗れる時代だった。満州事変はおこったが半年で終った。世間は軍需景気でうるおったがそれはほんの一部で、全体はまだ不景気だった。ネオンは輝きデパートに商品はあふれカフェーバーダンスホールは満員だった。金さえあれば贅沢は出来た。」
(山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊 所収)