「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・12・30

2005-12-30 07:20:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「岩波はよい本を出来るだけ安く売ってどこが悪いと思っているが、悪いのである。正義だからである。正義は自分をおしつけてなお正義である。五・一五事件二・ニ六事件は政財界の腐敗、汚職を糾弾して要人を殺してなお正義だった。汚職は国を滅ぼさないが正義は滅ぼすのである。正義を売物にするのは最も恥ずべきことなのに、岩波はながくそれを売った社会主義の正義である。」

 「私は岩波の罪の一つは正義を売物にしたことと、日本語を日本語でなくしたことの二つをあげたい。人生教師になるなかれと私は言う。人の患(やま)いは人の師となるを好むにありと古人は言っている。」

  (山本夏彦著「愚図の大いそがし」文春文庫 所収)
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