「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・12・06

2005-12-06 06:30:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「一国の文明をはかる尺度に言葉がある。ほめる言葉と悪くいう言葉が共に豊富なら、その国は文明である。大人どもは自分が車にひかれそうなときもバカヤロー、自分がひきそうなときもバカヤローとしか言わない。こん日ほど語彙が貧しくなった時代はない。いじめっ子が『死ね』というのもこのたぐいで、本気ではあるまい。ほかの言葉を知らないこと大人のごとしなのである。」

 「子供の世界は一にも二にもまねである。独創なんてない。あっても希である。大人は子供に毎日々々まねのもとを提供しながら子供がまねしたといって驚くのである。こっちが驚きたいくらいだと私が子供なら言ってやりたい。」


  (山本夏彦著「不意のことば」-夏彦の写真コラム-新潮社刊 所収)
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