Toshizoh's Bar

大阪を愛する編集者トシゾーのほろ酔いメッセージ。

ある夢

2016-05-24 22:44:49 | Weblog
3日続けて家でゴキブリを殺した。初めてのことだ。
部屋を汚くしているわけでは、断じて、ない。
そして今日、家に帰るやいなや、悪臭を放つガスを放射され、オレは気を失った。

目が覚めたところは、薄暗い洞窟のようなところだった。

目の前に、仮面ライダーの地獄大使そっくりのオッサンが立っていた。
違うのは、真っ黒に近い茶褐色一色だということだった。

地獄大使が言った。

「キタさん」
いきなり馴れ馴れしいのであった、
「手荒なマネをして申し訳なく思う。許してほしい。実はあんたに頼みがあって、わが国の勇者3匹を送りこんだものの、あっけなく踏み潰されてしもうた。どうしても、キタさんにお願いしたいことがあるのじゃ。

わしらヤマトゴキブリは、嫌われながらも節度を守り、この国でともに生きることを許されておる。
しかし、近年のグローバル化は、わしらの世界にも、魔手を伸ばしてきよったのじゃ。つまり、西洋ゴキブリの侵略の危機に瀕しておるのじゃ。

奴らは近々、コックローチ5963代皇帝を将軍として、このヤマトに攻め入る作戦を発動したことが、わかったのじゃ。

奴らの欲望には限りがなく、道徳観念はいっさい持ち合わせておらん。
そんな奴らに、ヤマトを渡したくないのじゃ。

そこで、あなたのお力になんとしてもすがりたいのじゃ。

人間ばなれした反射神経、殺すまで追い続ける執念深さ、そして、ウッカリ油断させる狡猾さ…」

おいおい、ほめてんのかけなしてるのか、どっちやねん、とも思ったが、ゴキブリとはいえ、よそもんにデカイつらされるのは、気に入らない。

「わかったぜ」と答えた。

大使の後ろから、歓声が上がった。
そして、地獄大使の後ろから、すっとメスゴキブリが出てきた。

顔は、由美かおるに、似ていた。

地獄大使が言った。
「わたしの娘です。こいつのフィアンセはあなたが踏み潰した3匹目です」

知らんがな、と思ったが「ヤツは勇敢だった」と言ってしまった。

世渡りの染みついた自分が情けなかった。

大使が言った。
「作戦は娘を介して全軍に伝えます。こう見えて、こヤツはあなたの漠然とした指示を、ほぼほぼ正解に読み取るのです」

このおやっさん、一言多いなと思いつつ、兵隊のよこすゴキブリのように飛べる羽根がついて、まったく光を反射しない真っ黒で、どんな壁もよじ登れる三次元ガウス突起のついたグローブとハイカットのスニーカーを身につけた。

そしてオレは、由美かおるににたゴキブリの娘とたのきんトリオのようなゴキブリを従えて、西洋ゴキブリとの決戦に突入した。

ときにはシャア大佐のように奇襲を仕掛け、ときにはなぜかラストは殴り合いになるMIのトムクルーズのように殴り合い、ときにはジョージクルーニーのように西洋ゴキブリの女をたらしこんでスパイをさせたり、阿修羅のごとく西洋ゴキブリを退治した。

西洋ゴキブリどもは、あるものはとにかく西に向かって羽ばたき、あるものは貨物船に乗り込んで日本から去った。

オレたちは勝ったのだ。

別れの時がきた。

洞窟のなか、オレの前には地獄大使と娘、そしていっしょに戦いぬいたたのきんトリオ風ゴキブリがいた。

オレは言った。
「世話んなったな、おやっさん」

地獄大使は
「誰がおやっさんやね~ん♪」
とオレを叩きかけて、おや、で急に猫なで声になった。

「キタさん、ここに残って はくださらんか?」
「ことわる」
「せめて娘だけでも連れていってくれやしまへんでっしゃろか?」
「アホぬかせ~! ついてきたら踏み潰すぞ~!」
と大人げなく叫んでしまった。

由美かおるに似た娘は号泣しながら平べったいケツを振りつつ、洞窟の奥にカサカサと消えていった。

洞窟の奥から、ため息のようなどよめきが伝わってきたが、知ったことか、バツイチになっただけでも一族の面汚しなのに、再婚相手がゴキブリとなると、ご先祖さまに申し訳がたたんわい、と思ったところで、目が、覚め、た。