能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

新たな資本主義のマネジメント入門 人を幸せにする経営 坂本光司先生の54の視点・・・一番大切なことを一番大切にする

2021年05月06日 | 本と雑誌

資本主義の限界が見えてきた現在の世界・・・。

ただ、資本主義以外の社会システムは見当たりません。

SDGs、ESG、CSVなどの新たな視点から資本主義の修正が行われているところです。

新たな資本主義のマネジメント入門 人を幸せにする経営54の視点

坂本光司著  ビジネス社  1500円+税

 

坂本光司さんの新刊です。

坂本先生は、「日本でいちばん大切にしたい会社」がベストセラーになった経営学者。

法政大学大学院教授を経て、現在、千葉商科大学中小企業人本経営プログラム長を務められています。

 

会社は誰のものか?という命題に対して、それは株主のもの、社長のもの、社会のもの、社員のものといった議論があります。

坂本先生は、会社は社会のもの、社員のものであると喝破します。

坂本さんが、「日本でいちばん大切にしたい会社」の中で特に強調するのが、人間本位主義経営

組織に関わる全ての人々の中で、特に5種類の人たちの幸せを追及、実現しなければならないと説きます。

1.  社員とその家族

2.  仕入れ先や協力企業等で働く社外社員とその家族

3.  現在顧客と未来顧客

4.  地域住民、とりわけ障がい者や高齢者等の社会的弱者

5.  出資者や関係機関

「その家族」が入っていること、「未来顧客」が入っていること・・・出資者や関係機関等のステークホルダーは最後の5番目になっているということ。

まさに、人間本位主義経営が柱になっています。

BS、PL、CS等の経営分析指標ではなく、定性的分析のアプローチをとる坂本先生の研究。

8000社の会社を研究されてきたとのこと。

大半が中小企業・・・。

限られた経営資源の中で、会社という公器を活用し、ゴーイングコンサーンとして社会に貢献していかなければ、存続は難しい中小企業。

そういったホワイト企業に坂本先生はエールを送っています。

目次

第1章 マネジメントの歴史

第2章 人を幸せにするマネジメント

第3章 リーダーの使命・責任

第4章 正しい競争

第5章 業績評価の基準

第6章 人財経営

第7章 環境変化にどう対応するか

第8章 大家族的経営

 

前著の「日本でいちばん大切にしたい会社」では、「経営者に関する指標」では、次の10の問いがあります。

1.  経営者は常に経営理念の体現者としての言動をしている

2.  経営者は社内のだれよりも勉強家、努力家である

3.  不況時には経営者が社内の誰よりも率先して大幅に役員報酬を削減する

4.  経営者は自らの引退時期を決めている

5.  経営者は意思疎通をはかるため、全社員とのノミュニケーションに積極的に参加している。

6.  事業承継のため、おおむね10年計画で準備をする

7.  経営者は常に耳の痛い話や情報を聞いたり、入手する場や仕組みを持っている

8.  後継者の選定に関し、社内外に的確な意見を行ってくれる相談者がいる

9.  経営者または部門の責任者は、全社員の名前はもとより、その家族や生活状況をおおむね知っている

10.公認会計士、税理士、経営コンサルタント、社会保険労務士、弁護士等の経営専門家との固有名詞レベルでの人的ネットワークがある

現在の日本の中小企業の持つ課題解決のためのキーワードが詰まっています。

新刊「新たな資本主義のマネジメント入門」では、第1章のマネジメントの歴史から始まります。

テーラーやメイヨー、マグレガーやドラッカー、ミンツバーグまでマネジメントの歴史を振り返ることが出来ます。

第2章からは、坂本節が炸裂。

経営者の使命と責任について言及します。

そして、正しい競争とは何か、業績評価の基準や正しい生産性向上のやり方を解説していきます。

第7章では、企業は「環境適応業」とした上で、環境を読み取るための5つの「眼」を取り上げます。

1 主観ではなく客観

2 短観ではなく歴史観

3 ローカル観ではなくグローカル観

4 現象ではなく原理原則・本質観

5 机上観ではなく、現場現実現物という三現観

 

そして最終章では、大家族的経営というコンセプトのもと、6つの提言をしています。

1 成果主義は人を幸せにしない

2 いちばん大切なことを、いちばん大切にする

3 社員満足が高い企業は業績も高い

4 企業経営は個人戦ではない

5 人を幸せにする経営計画

6 経営理念は企業の憲法

コロナ禍もあり、今、世界は大きく変わりつつあります。

そして、人々の価値観も変わりつつあります。

 

競争戦略の第一人者、ハーバードビジネススクール教授のマイケル・ポーター博士。

5フォースや差別化戦略の提唱者です。

バリバリの共和党員で、弱肉強食の米国式資本主義の支持者。

そのポーター博士が10年ほど前に提唱したCSVというコンセプト。

Creating Shared Value・・・共創価値の創造、社会的問題、課題解決のビジネス化という意味です。

「競争」ではなく、「共創」。

マスコミがポーター博士にインタビューして、突っ込んだそうです。

「今まで、あなたが提唱していた競争マーケティングから、CSVに切り替えた理由は何ですか?」

ポーター博士は答えました。

「だって、それが一番儲かるからだ」

 

SDGsにしろ、ESGにしろ、CSVにしろ、今、企業経営の立ち位置をここに置かないと明日、未来はないということだと思います。

 

「新たな資本主義のマネジメント入門 人を幸せにする経営54の視点」

社長さんや人事部長さんに読んでいただきたい一冊です。


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