能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

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高度プロフェッショナル制度活用論 工場法のルールで働く日本のホワイトカラーは生産性を上げられない

2020年08月02日 | マネジメント

働き方改革法が施行され、働き方改革元年と言われる2020年。

同一労働同一賃金、長時間労働是正、労働生産性向上、テレワークなどの導入です。

そこを襲った新型コロナウイルス・・・「働き方」を大きく変えることになりました。

在宅勤務、テレワーク、リモートワークが急速に進み、ZOOM会議やオンラインミーティングが日常の光景になってきました。

これまで進まなかったハンコ押捺、ペーパーレスなども進化し始めました。

行政でもデジタル化が浸透し始めました。

今までの日本だと考えられないスピード感です。

これまでの日本の労働慣行により、名ばかり管理職、残業未払い、月80時間を超える残業による過労死、職場でのパワハラ・・・日本の職場は、様々な課題を抱えています。

 

この苛酷とも言える労働条件から働く人を守るのが、労働法と総称される法律です。

労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法など雇用をベースとした法律群が制定されています。

この労働法の中心となるのが、労働基準法。

年次有給休暇が取れたり、残業代が支払われたり、毎週決まった日に休めたりするのは、この労基法の決めがあるからなのです。

その前提にあるのが、民法第623条以下の「雇用」について定めた条項・・・契約自由の原則、私的自治の原則により基本的には自由に労使で労働条件を定めることが出来るのですが、それをやれば雇用する側が有利に立つのは一般的には当然です。

働く人の健康や安全を守るために、労基法により民法の規定に縛りをかけているのです。

 

アニメやマンガが大好きな青年がいるとします。

まんが雑誌で有名な漫画家の元に、手弁当でもいい、賃金もいらないから働かせてくれ!という青年の要望を受けて、ただ(無給・無休)で弟子入りということは基本出来ないのです。

1日8時間、週40時間という労働時間の上限があり、賃金も最低賃金法という法律で地域ごとに下限が決められている・・・そして、決まった休みを与え、条件を満たせば有給休暇を与えなければならないのです。

ですが、この労働基準法という法律は、戦後に制定されたもの。

そのおおもとは、大正時代に作られた工場法がベースになったものです。

「ああ野麦峠」や「蟹工船」などのプロクタリア文学が発表された頃の過酷な労働がまかり通っていた時代。

子供まで非人間的な環境の中で1日14時間働かせる・・・という大変な時代でした。

そこで、制定された工場法。

労働者を守るための、必要最低限の縛りを付け、雇用サイドの横暴をセープしたのです。

ただ、この労基法の前身とも言える工場法は、あくまで工場を舞台にした規制法。

工員さんが工場の門を入り、制服、安全靴を装着し、ベルトコンベアが動き出す・・・そこから労働時間が算定され、ベルトコンベアが止まると労働が終業・・・となります。このあたりは、昔の最高裁である大審院の判例もあり、とても興味深いものがあります。

 

ただ、この法律をそのままホワイトカラーに当てはめると、かなりのムリが生じることになります。

会社に来て、パソコンを立ち上げキーボードを打つ・・・外出して顧客に営業活動を展開する・・・明日のプレゼンのために企画書を夜遅くまでかって作る・・・直行直帰する・・・お客さんに接待の飲み会をする・・・どこまでが仕事で、どこまでが労働時間なのか結構悩むところです。

そんな中、出てきたのが「高度プロフェッショナル制度」・・・略してコープロです。

欧米流の「ホワイトカラー・エグゼンプション」というコンセプトをベースにしました。

平たく言うと、労働時間に関係なく仕事内容、成果で賃金を払いましょうという制度。

ヨーロッパや米国では、職務給・・・仕事にお金が付いているため自然に受け入れられる制度(ジョブ型)なのですが、日本の雇用環境(メンバーシップ型)でいうと、少し特殊。

人(年功や能力・・・)にお金が付いている日本では、なかなか受け入れられなかったのです。

労働者側やマスコミからすると、「残業代なし法制」「過労死を増やす制度」などと揶揄しています。

いっぽうの使用者側では、世界で低位にあるニッポンのホワイトカラーの生産性の低さを何とかしようと躍起になっている・・・というのが現状だと思います。

日本の第三次産業の比率は、67%。

これは経済産業省の十年前の調査なので、今では70%を超えているものと思われます。

米国では、約八割が第三次産業と言われています。

 

そうした中、個人的には、ホワイトカラー労働者を基本に置いた労働法制が絶対に必要ということになると思います。

もちろん、労働者の健康管理、メンタルヘルス保護というのがセットの話ですが・・・。

厚生労働省では年収1075万円以上の専門職に対して時間ではなく成果に賃金を払う「高度プロフェッショナル制度」を施行しました。

この年収1075万円というのは、課長級の民間給与で上位の25%の水準にあたるそうです。

労働者全体でいえば5%程度になるのでしょうか?

職種的には、弁護士・税理士・公認会計士といった資格ホルダー、デザイナー・システムエンジニア・金融ディーラー・アナリストなどの専門職としているようです。

産業医を絡めた健康管理、メンタル対策、休日の確保等の条件を満たせば、優秀なビジネスパースンのモチベーションを高め、働きがい増進し、成果を生み出し、生産性を高めるという好循環が期待できると思います。

逆に言うと、年収の1075万円を超え高プロの条件を満たすことが、一流のホワイトカラーの証明であり、キャリア目標になると思います。

今まで、労基法では、ホワイトカラーの増加に伴い、同法第32条を拡張して対応してきました。

変形労働時間やフレックスタイムなどの例外規定の増設・・・しかしながら、働く環境は、はるかに速いスピードで進化しており法律が置いていかれている状況です。

高プロで、今までの法的な矛盾が、かなりの部分是正できると思います。

女性や高齢者を含め、もっと柔軟性を持った働き方が出来る社会を作ること、ダイバーシティ社会を構築することは、ニッポンの未来を創ることになります。

チャレンジしたい人、自分の限界に挑みたい人、天才や尖がった人、キャリア開発したい人たちには相応な舞台を、また、逆に、身体やメンタルなど仕事する上でハンディキャップを持っている人にはフォローやセーフティネットを担保していくことが大切だと思います。

今、活力ある日本社会にしていく上で、とても大切な時期です。

アフターコロナ、withコロナの時代、働き方を根本から変えていかなければならない時代に入ったと言えます。


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