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能率技師のメモ帳 経済産業大臣ぬ登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

物流経営の時代 陸海空クライシスを乗り切れ・・・日経ビジネス誌の特集 これからはCLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー/物流担当役員)の時代!?

2024年03月11日 | 本と雑誌

外車ディーラーの営業の方が言っていました。

「この一年で欧州から輸入するクルマの運送費が爆上がりしていて困っています」

そういえば、地政学上の問題で、スエズ運河が使用できず、アフリカ喜望峰を回ってアジアへというルートになっています。

喜望峰を回ると21日間が余計にかかり、運賃は5倍に跳ね上がるとのこと。

日経ビジネス誌2024.3.11号の特集は、「物流経営の時代 陸海空クライシスを乗り切れ」。

物流、ロジスティクスというと経営の機能の中でも地味な感じがします。

でも、物流、ロジスティクスは、企業や組織の生死を決します。

歴史を見ても、ナポレオン、ナチスドイツ、旧日本軍の敗北は、ロジスティクスの軽視によるものとされています。

 

Contents

Part1 経営力で供給網改革 2024年問題の突破口

Part2 海の大動脈、目詰まり 北海道でパスタ不足

Part3 「運送拒否」に現実味 待遇改善、荷主の責任

Part4 物流危機、経営の出番 拠点再編に共同配送

 

国内の運送業界では、トラックドライバーの残業規制で、2024年で14%、2030年で34%のトラック輸送力が不足すると予測されています。

今までは、トラック運転手の長時間労働で支えられていた国内物流が、年間時間外労働960時間までという規制によって機能しなくなります。

6年後には、3分の1の荷物が運ばれなくなる・・・国内で混乱が起こると思います。

物流業界の人出不足は、本当に深刻になると思います。

ロボットやドローンなどりハイテクを入れていかなければ、経済が回らなくなります。

 

さらには、地政学の中で、大動脈であるスエズ運河、パナマ運河が通行できなくなるという国際的な問題も発生しています。

イエメン沖や台湾海峡についても、リスク大です。

これからの時代、物流、ロジスティクスに強い経営者が求められてくると思います。

アップルCEOのテッム・クックさん、ゼロックスの元CEOのウルスラ・バーンズさんなどは物流部門で実績を上げた経営者です。

最近は、情報系のCIO、財務系のCFOが脚光を浴びていますが、これからはCLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー/物流担当役員)の存在が重要になってくると思います。

物流、ロジスティクスを学べる大学や大学院は少数派・・・これからの専門性、キャリアを切り拓くチャンスです。


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まんがでわかる「サピエンス全史」の読み方・・・天才ハラリ博士の思想が分かりやすく腹落ちする一冊

2024年02月22日 | 本と雑誌

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ博士が著した「サピエンス全史」。

全2巻の少し難解な歴史書です。

これをマンガにした文庫本が出版されました。

ハラリ博士の思想が分かりやすく腹落ちする一冊です。

まんがでわかる「サピエンス全史」の読み方

山形浩生監修 マンガ/葉月 宝島文庫 900円+税

 

250万年前、アフリカ大陸で人類が誕生以降、人類は6種類いたそうです。

ネアンデルタール人やホモエレクトスなどです。

その中から唯一生き残ったのが、われわれサピエンスです。

サバイバルできた最大の理由が、サピエンスだけ想像力という特殊能力を持っていたこと、そして、フィクション(虚構)を創り出したこととハラリ博士は指摘します。

マンガで全体像を把握して、そして原典にあたる・・・哲学や思想を学習するときに最も効率的、効果的なやり方です。

 

目次

Chapter1 サピエンスの勝因はフィクションを信じる力

Chapter2 知識を貪欲に収集した狩猟民族

Chapter3 農業の始まりがもたらした人類の苦しみ

Chapter4 文字の使用とヒエラルキーの強化

Chapter5 世界をグローバル化する3つの虚構・・・貨幣、帝国、宗教

Chapter6 科学が駆り立てた更なる征服への欲望

Chapter7 資本主義がもたらした平和と課題

 

人類が起こしてきた「革命」

認知革命

農業革命 人類は穀物、小麦の奴隷になった

科学革命

 

サピエンスの創り出したフィクション。

現代の事象も全てフィクション(虚構)だとハラリ博士は言います。

会社、貨幣、男と女、文明や文化、資本主義・・・。

そして、言います。

サピエンスは、本当に幸せになったのか?

幸せとは何なのか?

哲学的な問いです。

さらには、生成AIやバイオテクノロジーなどが加わると話は更に複雑になります。

サピエンスは、今からどこに進んでいくのか?

ひとり一人が考えなくてはいけない時代になってきました。

 

巻末には、監修者の山形浩生さんとホリエモンの対談が掲載されています。

ここだけ読んでも面白いと思います。

「サピエンス全史」の大枠を、このマンガで押さえてから、原典2冊に当たるのもアリだと思います。

お薦めのマンガ本です。


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ストップ水素敗戦 技術一流、戦略三流を繰り返すな 日経ビジネス誌の特集・・・半導体、電池の失敗を繰り返すな!

2024年02月20日 | 本と雑誌

半導体で負け、電池で負け・・・。

思い起こせば、造船や製鉄、家電でアジア勢の台頭により、負け続けているニッポン。

何とか歯止めをかけなければなりません。

今週の日経ビジネス誌2024.2.19号の特集は「ストップ水素敗戦 技術一流、戦略三流を繰り返すな」。

二酸化炭素を出さない、燃やしても水になるという水素の特性は、地球の存続のためには絶対に必要なものです。

環境や優しい水素ビジネス・・・日本が世界に誇る技術力を有しています。

が、国、経済産業省の打ち出す戦略が世界に追いついていないという状況です。

 

Contents

Part1 リードを守る日本の特許力 中韓の猛追を受けるも1位トヨタ、3位ホンダ

Part2 先導役不在の日本 企業投資、点火せず

Part3 グリーン水素市場が勃興 覇権を狙う欧州企業

Part4 需要があっての供給網 ルールづくりで負けるな

 

環境に優しい水素ビジネスを確立していくためには、国をあげての政策展開、予算づけが必要不可欠となります。

水素サプライチェーンは「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」というフローを築き上げていかなければなりません。

EV用の充電ステーションの普及もこれだけ遅れているニッポン・・・これが水素スタンドになると大変だと思います。

「水素」で、世界の環境をサステナブルにしていくためのリーダシップを取るのだ、という気概がなければ、悪夢の再来となります。

半導体や電池のような失敗を繰り返してはいけません。

トヨタ、ホンダ、ニッサン、パナソニックなどの技術は一流。

世界に対抗できるテクノロジーを有しています。

が、国家の世界戦略は三流・・・。

戦後に機能した通産省モデルのような国を挙げての戦略展開が必須だと思います。

水素ビジネスが未来の日本の礎になると思います。

がんばれ!ニッポン


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BRUTUS 1000号、おめでとう!マガジンハウスが総力をあげた編集した見事な一冊・・・人生を楽しむための視点が得られます

2024年01月16日 | 本と雑誌

雑誌「BRUTUS(ブルータス)」の1000号記念号が発刊されました。

ポパイの兄貴分として創刊されたBRUTUS・・・まさか、ここまで続くとは思いませんでした(失礼!)。

都市部の尖がった人たちをターゲットに様々な情報発信をしてきたBRUTUS。

マガジンハウスが誇るクオリティの高い雑誌です。

1000号記念号の特集は「人生最高のお買い物。」。

時代の先端を走り続けるタレント、アーティスト、音楽家、イラストレーター、事業家など数十人の人生を変えた買い物を全頁カラーで紹介していきます。

この号は、なんと164ページもあり重たい一冊です。

読みごたえもあり、マガジンハウスのチカラの入れようが伝わってきます。

車やバイク、絵画から雑貨まで、様々な品物が登場します。

さすが、尖がった人たちは、目の付け所が違います。

人生を楽しむためには、こんな視点が必要なんだなあということを知ることができます。

 

面白かったのが、「地球最後の日に食べたい一品」。

秋元康さん、松任谷正隆さん、酒井順子さん、佐藤可士和さんが、今一番の食べ物を3品ずつ紹介していきます。

ここに出ている食べ物・・・今年1年かけて食べ歩きしたいなあと思った次第です。

「あしたのベストバイ」も必見です。

モノそのものだけでは、あまり幸せにはなれないと思います。

その裏にあるストーリー、こだわり、自分の想いこそが、至福のひと時を味わうことが出来るのだと思います。

お気に入りのモノに出会えるといいですね。

今年は、世の中の景色が変わるような自分ならではの逸品を手に入れたいものですね。


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アフターコロナの時代 人口動態研究で知られる河合雅司さんの著書を読み直してみました・・・縮小ニッポンで勝つための30か条

2024年01月05日 | 本と雑誌

3年間に及んだ新型コロナウイルスのパニック、混乱・・・今思うと、アレは一体何だったんでしょうか?

なかなか分析、総括できていない自分がいます・・・。

3密回避、ワクチン、マスク・・・今では昔話のようです。

多くの方が亡くなり、入院し、経済活動もストップ、日本社会、日本経済に多大なダメージをもたらしました。

まさか!の事態が世界を覆い、人生に大きな変化を及ぼしました。

今にして思うと、コロナ・パニックは不意打ちということもあり、防戦一方でした。

このあたりで、一度、総括つなければならないと思い、河合雅司の著作を再読してみました。

 

アフターコロナの時代・・・人口動態研究で知られる河合雅司さんの著書を再読してみました。

コロナの最中、明日への希望を持つために何度も読み返した一冊です。

コロナ後を生きる逆転戦略 縮小ニッポンで勝つための30か条

河合雅司著 文春新書

 

ベストセラー「未来の年表」で知られる著者の新書。

国力、経済力、国際競争力が低下し続ける日本、そこに追い打ちをかけたコロナウイルス。

少子高齢化で人口減少が進む日本は、コロナで18年間早まり、恋愛、結婚、出産が激減していると著者は言います。

そして、同書の結論として、「戦略的に縮む」ことを指摘しています。

 

同書でアンダーラインを引いたところをピックアップさせていただきました。

 

・コロナ禍で露呈した現実、もはや日本は先進国ではない

・コロナ前の生活には、もう戻れない また別の感染症が・・・

・労働力もインバウンドも、もう外国人には頼れない

・「失われた30年」の根本原因は、人件費でアジアと争ったこと

・我が国は加工貿易国ではない 国内マーケットの大きさで成長できた

・薄利多売はもうやめて高付加価値ビジネスに転換しよう 売上高より一人当たり利益

・稼げない事業は縮小して、外注できる業務を洗い出せ

・成長分野に若手を投入せよ

・データで高い付加価値を生むためのDX

・会社に縛られない働き方を考えよう

・給料を上げたければリスキリングしかない 職業訓練、DXスキルが重要

・文系学部出身で中級スキルの人が一番危ない

さらに、世代別の働く人たちに具体的な助言をしています。

 

年代別マネジメント計画

40代のうちに準備しておくこと

・セカンドキャリアに必要なことを仕込める最後の10年

・「人生の未来年表」を作ろう

・70歳までの収入を得られるようにしておく

 

50代のうちに済ませておくこと

・少なくとも人生のプラマイをゼロにしておこう

・自分の資産、人脈、スキルの棚卸をする

・生活スタイルを断捨離する

・最大の課題は、子育てと親の介護が重なるダブルケア

・まずは防災訓練に参加して地域にとけこむ

 

60代になったら実践していくべきこと

・戦略的に賢く生活コストを削っていこう

・支出を減らして生活スタイルをコンパクトに

・使っていない部屋は使わないと決める

・持ち家や車を売却して可処分所得を増やす

・おしゃれをして趣味を発表できるような社交場を見つける

・配偶者に先立たれたら同棲パートナーを見つける

 

説得力のある助言、アドバイスです。

コロナで受けた様々なインパクトを今一度整理し、新たな一歩を踏み出す時期に来ていると思います。

明日に夢と希望を持って、前に進んでいきたいものですね。


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人事変革ストーリー 個と組織「共進化」の時代 髙倉千春さんの新刊新書・・・今後の人事はどうあるべきか?人的資本経営の実現に向けて

2023年12月28日 | 本と雑誌

最近、人事労務管理のジャンルの多様化してきました。

今までのように、成果主義が流行れば多くの会社が成果主義導入、役割給が流行ればこれまた役割給ブームに踊った我が国です。

最近では、伊藤リポートを受けての人的資源経営、健康経営、パーパス経営、サステナブル経営、ウェルビーイング経営、ジョブ型雇用、グローバル人事などなど、様々な学者や経営者が諸説をぶつけ合っているように思います。

人事変革ストーリー 個と組織「共進化」の時代

髙倉千春著  光文社新書 990円

 

著者は、1983年に津田塾大学を卒業して農林水産省に入省。

フルブライト奨学生として米国ジョージタウン大学院でMBAを取得。

その後、コンサル会社、ファイザー、ノベルティスなどの外資系企業を渡り歩き、味の素のグローバル人事部長、ロート製薬取締役、さらには上場企業複数社での社外取締役を務められています。

すごいキャリアです。

現在は、コンサル合同会社を設立され、共同代表を務められています。

 

目次

序章 いま、企業人事は何を問われているのか

第1章 霞が関からMBA、そしてコンサルタントに 女性の社会進出とキャリア形成を考える

第2章 グローバルHRプロフェッショナルへの道

第3章 適材適所から適所適財へ 日本企業のグローバル人事制度改革

第4章 ジョブ創出型企業の挑戦

第5章 組織改革への道のり 日本企業の特性を踏まえたアプローチとは

第6章 今後の人事はどうあるべきか 人的資本経営の実現に向けて

終章 私の「転職論」

 

同書で驚いたのが、第2章と第3章で自身のキャリア形成をストーリーとして展開されている部分。

将来の目標をしっかり定め、それに向かってドリフトしながらも進んでいく、学んでいく姿勢に圧倒されました。

キャリア論では、WILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(求められていること)の3つの視点があります。

著者は、自ら学び、先を読み、ホームを出てアウェイに身を置き、試行錯誤を重ねながら自身のキャリアを築いていきました。

バリキャリを目指す女性(もちろん男性も)に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

同書では、米国の人事の最新事情が散りばめられています。

・動的な人財マネジメント

・コーポレートアラムナイ

・4B

・組織ヘのエンゲージメント 個のエンゲージメント

・エナジャイズ

・エンプロイーエクスペリエンス(従業員経験価値)

・職業観、価値観、キャリアビジョンとしてのパーパス

・SDGsネイティブ

・ジョブを創出しつづけること

・企業変革のドライバーは「消費者」と「投資家」

・投資家に人事ストーリーを語れるか?

 

人間にはココロがあり、人事(ジンジ)を決して人事(ヒトゴト)にしてはいけないという著者の信念が通底しています。

この国のCHROや人事部長に読んでいただきたい一冊。

新しいピープルマネジメントをキャッチアップすることが出来るおすすめの本です。


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もしトラ・・・日経ビジネス誌の大胆予測第2弾「トランプ復権 世界を壊す」・・・2024年の干支は「甲辰(きのえ・たつ)」

2023年12月25日 | 本と雑誌

ウクライナの戦争、パレスチナの戦争、中国の失速、米国の景気後退・・・。

激動の世界です。

日経ビジネス誌2023.12.25&2024.1.1号の大胆予測は第2弾。

タイトルは、「トランプ復権 世界を壊す」。

もし、トランプが米国大統領に再任されたら、世界とどうなるか?を解説しています。

Contents

Part1 米国編 政権奪回へ保守派重鎮が出した本気 トランプ復権が前提 大統領権限強化も

Part2 中国・台湾編 選挙で動く台湾有事 トランプが見せぬ本心

Part3 中東情勢編 パレスチナ問題を揺さぶる米大統領選 停戦拒むイスラエル 石油危機の再来も

Part4 ロシア・ウクライナ編 ウクライナを待つ過酷な試練 最悪事態の三歩手前 トランプが招く悪夢

Part5 日本経済編 マイナス金利解除や円安定着に備えよ トランプが揺らす日本 断たれる経済好循環

 

もしトラ・・・もしトランプ大統領が再び就任すれば、世界の情勢が大きく変わる・・・悪い方向に進む可能性が大きくなります。

地政学的なバランスもおかしくなり、世界的な不況、資源争奪戦、石油危機・・・大混乱が起こるのではないかと危惧されます。

同誌の特集ではPwC Japanグループが発表した「2024年の世界の10大地政学リスク」を紹介しています。

パワーバランスの多極化

1 米国大統領選挙

2 台湾情勢

3 ポスト・ウクライナ紛争

4 グローバルサウスの第3極化

グローバル経済の細分化

5 西側諸国のデリスキング政策

6 中国の非市場的経済行為

7 グリーン鉱物の争奪戦

デジタル経済の断片化

8 サイバー脅威の継続

9 新興技術への規制をめぐる競争

10 データ保護主義

 

これまでのようなグローバル化、一元化、統一化といった流れから、多極化、細分化、断片化に進むというトレンドのようです。

そこに、トランプ大統領が再任されれば拍車がかかるというのが2024年の見立てです。

個人的には米国・民主党に頑張ってほしいのですが、分断の進む米国社会・・・一寸先は闇にもなります。

2024年の干支は「甲辰(きのえ・たつ)」。

物事のはじまりを示す「甲」と勢いがあることを象徴する「辰」の組み合わせです。

新芽が勢いよく成長する縁起の良い年になるそうです。

はたしてどんな年になるのか?

今年もあと1週間・・・ちょっと心配な年末の週末です。


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よくよく考え抜いたら、世界はきらめいていた 哲学、挫折博士を救う・・・哲学に入門するための23の道標

2023年12月16日 | 本と雑誌

友人から薦められて買った一冊・・・面白い中身でした。

よくよく考え抜いたら、世界はきらめいていた 哲学、挫折博士を救う

関野哲也著  CCCメディアハウス刊  1500円+税

 

著者は、フランスの哲学博士。

リヨン第三大学大学院で博士号(哲学)を取得、専門は宗教哲学、言語哲学。

博士論文は、ヴィットゲンシュタイン、シモーヌ・ヴェイエ。

すごい経歴ですが、現在は、工場のラインの作業員として働いておられるとのこと。

フランス語の翻訳者、通訳としてはたらいていましたが、30代でメンタルを患い、ドライバー、障がい者ホーム職員、工場勤務と職を転々とされています。

今でも問題となっているオーバードクター、高学歴ワーキングプアのジャンルに入ってくるのでしょうか。

「知性」「リベラルアーツ」の無駄遣い・・・という感じがしましたが、同書を読んでいると、形而上の世界と現実の下界を繋いで生きるということ、東洋哲学的には知行合一で生きるという価値観は人生を充実させるのではないかと感じた次第です。

 

目次

第1章 哲学することで強くなる

第2章 哲学をはじめる 私の哲学遍歴

第3章 哲学を体験してみよう 「私」とは何か?

第4章 働くということ

第5章 病むということ

第6章 宗教を信じるということ

第7章 善く生き、善く死んでいくということ

 

特に面白かったのは、第4章の「働くということ」と第7章の「善く生き、善く死んでいくということ」。

著者の実体験とオーバーラップさせながら、西洋の哲学者のコンセプトを引用しながらの展開は説得力があります。

市井の学者よりも言説に重みを感じます。

 

第4章の「働くということ」

・プロフェッショナル意識の重要性

・「使命」と仕事を重ね合わせる

・「自己中心」ではなく「使命中心」と発想を転換する

・どんな些細なことでも「使命」の糧にする

・みんなそれぞれに「使命」を抱いて生きている

 

大学などのアカデミック機関に20以上応募した著者・・・全て落とされたとのこと。

人生の酸いも甘いも知った著者の生きざまは学生たちにも伝わると思います・・・本当にもったいないです。

哲学でメシは食えないけれど、人生には彩(いろどり)を与えてくれるように思います。

同書の最終章で著者は述べます。

 

哲学することは、善く死んでいくための準備

哲学は善く生きるための準備・・・

善く死ぬことと善く生きることは表裏一体

いつ死んでも後悔しない生き方をすること

 

本当にそのとおりだと思います。

小難しい西洋哲学ですが、哲学入門には同書は良い本だと思います。

個人的には、ちょっと色あせてきた実存主義哲学が好みです(笑)・・・キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、サルトルあたりの著作をもう一度読み直そうかなあと思った次第です。

実存は本質に先立ちます!


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炎上防止の新潮流 その記者会見、火に油・・・日経ビジネス誌の特集 あまりに当たり前のことですが、基本は「日頃の行い」です

2023年12月12日 | 本と雑誌

ビッグモーター、旧ジャニーズ事務所・・・。

ガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)が当然のことになった今でも、不祥事に対する謝罪会見が毎日のようにニュースに取り上げられています。

さらには謝罪会見の「まずさ」で、ますます評判を落とすことが多々あります。

日経ビジネス誌2023/12/11の特集記事は「炎上防止の新潮流 その記者会見、火に油」。

危機対応のポイントを事例を交えて解説しています。

Contents

Part1 データで見る炎上 浮かぶ失敗の5要因

Part2 内部告発が火種に 素早く広がるSNS

Part3 早く誠実に、正確に 最後は日頃の行い

Part4 防ぐより万全の準備 動じぬ姿勢で鎮火を

 

長年かけて築き上げてきた信用や信頼を初期対応のミスからゼロにしてしまう・・・株価が下落したり、不買がおこったり、企業組織に大きなダメージをあたえてしまいます。

同特集では、「謝罪会見の鉄則5カ条」を指摘します。

1 スピード

2 誠実さ

3 正確さ

4 スタンス

5 積極性 堡礁再発防止は聞かれなくても問題解決の姿勢を示す

 

当然と言えば当然ですが、これが出来ない企業は多いんですね。

事前に対応策をマニュアル化したり、トレーニングをしたりすることも有効だと思います。

基本は、「日頃の行い」。

常日頃から、企業の正直さ、真面目さ、道徳性を打ち出し続けることが、危機発生時にも顧客からの信頼、信用を繋ぎとめる鍵になると思います。

でも、人は、なかなか当たり前のことを当たり前に出来ないんですね(涙)。

今日も、どこかで謝罪会見が行われているのではないか?と思います。


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自動車の歴史 T型フォードからEV、自動運転まで 鈴木均新潟県立大学准教授の新刊 クルマ大好きな大人のための一冊

2023年12月10日 | 本と雑誌

こどもが図鑑を読むように楽しく読める本に出合いました。

自動車の歴史本です。

世界の歴代の名車が100台以上登場、写真もモノクロですが、たくさん載っています。

クルマ好きには、たまらない一冊です。

自動車の歴史 T型フォードからEV、自動運転まで

鈴木均著  中公新書  960円+税

 

著者の鈴木均さんは、新潟県立大学准教授。

主にヨーロッパ史を研究されている学者です。

同書では、自動車という工業製品を通じて、各国の盛衰と国際関係の歴史をたどっていきます。

ジャパンアズNo.1と言われたわが国も、電動化、自動運転、CASE(つながる・自動化・シェア・電動化)といった流れの中で遅れをとっていると言われています。

EVをリードする米国のテスラ社や中国のBYD社・・・トヨタやホンダ、ニッサンは対抗していくことが出来るのでしょうか?

 

目次

序章 自動車産業の夜明け

第1章 大衆車普及への道 終戦と高度成長

第2章 貿易摩擦の時代 省燃費化のスタートからスーパーカーブームまで

第3章 狂乱の80年代 日本車の黄金時代と冷戦終結

第4章 グローバル市場の誕生 台頭する新興国と日本の衰退

第5章 中国の台頭とCASE エコカー・電動化・自動運転の波

第6章 失われた40年か、ブレークスルーか テロとの戦い、気候変動、コロナ危機

学者の執筆ということで参考文献やソースについて、巻末でしっかり紹介されています。

社史や自動車メーカーのHP、著作物なども幅広く紹介されています。

 

メルセデスベンツやフェラーリ、アストンマーチンやルノー・・・伝説のクルマを産み出した自動車メーカーのことがよく理解できる解説です。

また、コラムとして入っている「世界の公用車」の解説も面白かったです。

国の威信をかけた大統領や首相の乗るクルマをどうするか?なかなか興味深いテーマです。

 

これから自動車は、どうなっていくのか?

どこの国、どこのメーカーが主導権を握るのか?

いろいろ想像を膨らませてくれる一冊です。

 

米国では、現在ハイブリッド車が売れているようですし、中国にはEVの墓場があるといった話がネットを賑わせています。

日本国内ではEVバッテリーの充電器は数が少ないですし、充電器の普及にはまだまだ時間がかかりそうです。

EVの普及・・・
ちょっと見当がつかない昨今です。

欧州で生まれた自動車という工業製品、ドイツや英国、フランス、イタリアから米国、日本、そして中国へと工業力、技術力が移っていくことを俯瞰することが出来る一冊です。

大人の絵本、ならぬ大人の字本・・・お薦めの一冊です。


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