特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第310話 九官鳥としゃべる男!

2007年05月14日 02時23分34秒 | Weblog
脚本 押川國秋、監督 辻理

女子大生誘拐事件の容疑者として、九官鳥を飼う一人暮らしの中年男を張り込む橘たち。事件が起こったのは6日前のこと。犯人は身代金の受け渡し場所として電話ボックスを指定。何度か電話で場所を変更したあげく、ぷっつりと連絡を絶った。被害者の生存が危ぶまれるなか、警察は公開捜査に踏み切り、特命課も捜査に加わる。
少年たちの証言から、電話ボックスの番号をメモしていた男の存在が浮上する。男の働くソバ屋の証言から、事件前後に無断欠勤を続けていたことが判明。さらに、以前に働いていたスポーツ店で被害者と面識があることも分かった。尾行を続ける橘たちは、男が下着泥棒を働く現場を目撃。このまま泳がすべきか迷った末に逮捕する。
誘拐事件とは無関係だと主張し、警察を侮るかのような態度を貫く男を、粘り強く尋問する橘。その一方で、桜井らは「犯人はレンタカーで被害者を連れ去ったのでは」と推測し、しらみつぶしに営業所を当たる。さらに、男が口走った「死体は運河にでも捨てられたんじゃないか」との言葉から、叶らは水上署の協力のもとに運河の川底を探る。
頑なに否認を続ける男に、疲労の色が浮かぶ橘たち。そんなとき、男の九官鳥が被害者の名前を口にする。被害者がこっそり自分の名前を九官鳥に教えていたのだ。九官鳥を前に男を締め上げたところ、ついに男は被害者の死体を埋めた場所を告白する。しかし、男の自白はでたらめで、死体は発見されなかった。
男を起訴しようとする神代だが、検察庁から「証拠不十分で起訴できない」と退けられる。九官鳥が被害者の名前を覚えていたことを証拠として主張する神代。しかし、男は検察庁に対して「分かれた女房が死産した子どもにつけていた名前だ」と供述していた。
確かな証拠をつかもうと捜査を続ける橘。九官鳥がチャイムの音に反応して童謡を唄い出したことにヒントを得て、付近の幼稚園を捜索する。該当する幼稚園を発見した橘は、事件の間、近くの空き地にワゴン車が停められていたとの証言を得る。同じ頃、桜井は男がレンタカーでワゴン車を借りていたことを突き止める。男は被害者をワゴン車内に九官鳥とともに監禁していたのだ。
それでも自白を得るのは困難だと見て、橘は男を釈放する。「お前は営利目的で彼女を誘拐したんじゃない。死んだ娘の幻を見ていたんだ。そうだろう?」と揺さぶりをかける橘。その夜、男は弔いの花束をもって運河にボートを出す。その行動を見張っていた特命課が男を包囲。川底を探ったところ、寝袋に包まれた被害者の死体が発見される。死体を調べる橘らに「汚い手で触るな!」と激昂する男。そこには、愛しくてたまらない存在を自らの手にかけてしまった、哀れな男の姿があった。

誘拐犯の被害者に対する倒錯した愛情を描いた一本。悪びれることもなく、でたらめな証言を繰り返す男だけに、「死産した子供の名前」というのも真偽はあやふやなままですが、ラストで橘が呟いていたように、「せめて、それだけは真実だったと信じたい」。それほど救いのない、重苦しい気持ちにさせてくれる話です。細部は異なるものの、なんとなく全体の構成が第211話「自供・檻の中の野獣」と似ているような印象がありますが、樋浦勉演じる犯人像は、かの小池朝雄とはまた違った異常さを醸し出しており、そこが今回の見所と言えるでしょう。

1 コメント

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十条は心のふるさとです。 (コロンボ)
2011-07-29 20:57:49
映画「19歳の地図」(1979)を久しぶりに視聴。「死ねないのよ~!」(故・沖山秀子さん好演)が印象的。北区・十条を中心にロケされた作品でラストシーンの場所を探して#172「乙種蹄状指紋の謎!」のゲンさんの家(JR東十条駅そば)に辿り着きました。ちなみに胡散臭い中年男役が後の4課の西岡(蟹江さん)なのが笑えます。

映画の予告編映像に王子の音無橋の貴重な姿が残ってます。#90「ジングルベルと銃声の街!」の殺害現場です。意外だったのはアパートのシーン(竹井みどりさんがケーキを台無しにされる場所)が遠く離れた三鷹市(井の頭公園のすぐそば)で別撮りされた事でしょうか。

映画に戻って主人公と駆けっこするのが友部正人さんだったとは!中津川フォークジャンボリー繋がりで浅川マキさん「夜が明けたら♪」とも絡んでくるのでしょうか。早川さんや岡林氏の音楽が「特捜」BGMに採用されれば世界観にピッタリでしょうに(^^)。

#40「初指令・北北東へ急行せよ!」の池袋~赤羽。前回リポートした#164「再会・容疑者は刑事の妹!」の篠原演芸場や#50&51「凶弾」の十条・文化センターも含めると結構頻出ロケ地なんだな~と実感。おっと#136&137「誘拐」の王子・飛鳥山公園も(滝汗)。都電荒川線に乗ったら無限ループですね。私は#54「ナーンチャッテおじさんがいた!」が大好きなんで・・・。終点は#212「地図を描く女!」だし。

最後になりましたが樋浦勉さんも好きです。日活児童映画「四年三組のはた」のやさしいおじさん役の印象が強いもので、反動で九官鳥を飼う異常者役は脳内で増幅されて・・・怖かった~。



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