特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第431話 単身赴任・妻たちの犯罪パーティー!

2008年08月27日 00時19分30秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 村山新治
1985年9月4日放送

【あらすじ】
蒸し暑い夜、帰宅途中の酔っ払いが殴られる事件が続発し、特命課が捜査に乗り出す。3週間に8人もの被害者が出たものの、被害者間に共通点はなく、強いて挙げれば酔って大声で歌っていたことくらいだった。
所轄署の作成した不審者リストをチェックした橘は、ある男の名に見覚えがあった。犯人の似顔絵ともよく似るその男は、橘の盆栽仲間で、3年前に大阪に転勤したはずだった。男の自宅を張り込んだ橘は、かつて盆栽で一杯だった庭が、妻のゴルフの練習場所になっていることに驚く。単身赴任から3年ぶりに戻っていた男の表情は暗く、仲睦まじかった妻との関係も冷え切っているように見えた。
偶然を装って男に接近した橘。男は「単身赴任の間に、家族は私のいない暮らしにすっかり慣れてしまった」と、家庭に居場所を失ったことを嘆く。妻は男の嫌いなクーラーをかけっぱなしにし、朝食も男の好きな和食から洋食に変わっていた。自宅は近所の奥様方の集会場所になり、娘からも邪険にされ、男は頻繁に夜の散歩に出かけ、公園でラジオのプロ野球中継を聞くのが唯一の楽しみだという。男の言葉に、妻と同居していた長崎時代の我慢の日々を思い出した橘は、そのストレスが男を通り魔に変えたのではないか、と推測する。
そんななか、特命課は高杉の思い付きから、犯行のあった夜、いつも巨人が負けていたことに気づく。紅林は大の巨人ファンで、巨人が負ける度に、ひどく陰気になるというサラリーマンをマークするが・・・

【感想など】
恥ずかしながらビデオテープの残量を勘違いし、上記あらすじ(25分頃)までしか録画できないという失態を演じてしまいました。佐藤脚本らしい救いの無さそうな展開に、結末が気になって仕方ありませんが、敢えて予想すれば、真犯人はサラリーマン→男が犯人でなかったことに安堵する橘→その矢先、男は我慢の限界を越えて妻を殺害→呆然とする橘、という展開だったのでは?どなたか、よろしければ以降の展開がどうなったか教えてください。よろしくお願いします。

【あらすじの続き】
通りがかりの酔漢に襲い掛かるサラリーマンを取り押さえる紅林。「巨人が勝つことだけが生き甲斐なんです・・・」取調べに対し、サラリーマンは素直に犯行を認めた。事件の解決とともに、男が犯人でなかったことに安堵する橘。だが、男の自宅を訪れた橘が見たものは、妻の死体と、うろたえる男の姿だった。「妻の心無い言葉にカッとなって家を飛び出し、帰ってきたら死んでいた」と主張する男。特命課の疑惑は男に向けられるが、橘は一人、「彼は奥さんを愛している」と男の無実を主張する。「人間は変わる。現に、3年の別居の間に奥さんは変わってしまった」という神代の言葉に「女は変わっても、男の気持ちは変わらんのです・・・」と反論するものの、家を出ていた間の男のアリバイは無い。
信じている男を敢えて厳しく追及する橘。追い詰められた男は、黙っていた事実を語る。その夜、家に帰ろうとした途上で、男遊びの噂が耐えない同僚の妻と出会った男は、妻への反発もあって声を掛けた。女は男に「あんたの奥さんは最低ね!」と言い放ったという。
その後の捜査で、妻は主婦仲間を利用して高給下着の悪徳セールスを取り仕切っていたことが判明。女もその一人で、売上金を妻から厳しく取り立てられていた。特命課の取調べに、女は犯行を自白。事件の夜、女は妻に「知ってるのよ。売上金を浮気相手に貢いでるんでしょう」となじられ、思わず殺してしまったのだ。
こうして事件は解決。傷心の男を訪ねる橘。男が妻に壊された盆栽を植え直すのを見て、橘は「ここはまた盆栽で一杯になりますね」と、主無きゴルフの練習場所を見つめる。だが、男は答えた。「これは、このままにしておきます。女房が寂しがりますから」と。

【改めての感想】
鬼親爺さんのおかげで続きを見ることができましたので、改めて感想を。

単身赴任者の孤独と悲哀のなかに、変わってしまった妻を恨みながらも愛し続ける男の純真さを描いた一本。愛着のある盆栽を壊されるわ、同居していた実母と別居させられるわ、朝食を嫌いな洋食にされるわ、嫌いなクーラーを入れられるわと、やりたい放題な妻の態度にはブチ切れそうになり、ついつい「男が妻を殺す」という展開を予想してしまいましたは、橘の慧眼どおり、男はそれでも妻を愛していたのです。
いつもの五月脚本とは違って、悲惨な事件のなかに爽やかな印象が残るのは、ラストシーンに象徴されるように、そんな男の一途な気持ちが胸を打つからでしょう。「また根が生えてきますから。」盆栽は育て直すことができても、妻はもう戻らない。失って改めて実感できた妻への愛情が、ラストの哀切な一言に結実しているのだと思います。

この男だけでなく、通り魔となったサラリーマンも、そして妻を殺した女の夫も、いずれも単身赴任者。まるで単身赴任者=社会の犠牲者とでも言わんばかりの脚本ですが、それだけ当時は、会社の命令で心ならずも家庭を離れたサラリーマンが多かったのでしょう。しかし、事情が違うとはいえ、橘の前で「やっぱり夫婦は別れて暮らしちゃいかんですね」などと言う吉野らは、ちょっと無神経ではないかと思いました。
妻の横暴さに耐える男に共感しつつ、ただ一人、男の妻への愛情を信じる橘。そこには、妻との別居という道を選んだことへの自責の念とともに、「自分が乗り越えられなかった試練を、乗り越えられる夫婦がいるはずだ」と信じたい気持ちが込められていたのではないしょうか。「女はそうでも、男の気持ちは変わりません。」やや女性に失礼に思えるこの言葉に、今も(普段は自覚してなくとも)女房への思いを捨て切れない橘の真情が垣間見えるような気がします。また、そんな橘に敢えて「人は変わる」と言ってのける神代課長の真情も、その過去を考えれば、痛ましいものがあります。
改めて全編を通して見ると、おやっさんの不在を感じさせない味のある一本であり、橘主演編の中でも上位に入る出来ではないかと。見逃さなくて本当によかったと、改めて鬼親爺さんへの感謝の想いがこみ上げてきます。本当にありがとうございました。

3 コメント

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惜しいっ! (特オタ)
2008-08-27 22:00:11
妻は殺害されますが、その犯人は商品を売りつけていた奥様集団の一人でした。
結局、ダンナは妻のゴルフ道具一式を片付ける事もしませんでした・・・奥さんを心底、愛していたから・・・みたいな感じですかねぇ。

再放送が楽しみですね。
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ありがとうございます! (袋小路)
2008-08-29 21:44:07
特オタさん、情報をお寄せいただき、誠にありがとうございます。
この結末と私の予想と、どちらがより悲惨だったのか、なかなか判断は難しいですね。とはいえ、ラストにはせめてもの救いがあったようで、佐藤脚本のなかでもなかなかの力作と言えるのでしょうか。

鬼親爺さん、コメントはご指示通り削除させていただきましたが、わざわざ映像をアップいただき、感謝感激です。さぞご面倒だったでしょうに、何とお礼を申し上げてよいやら分からないほどです。何かお返しできることがあれば、何なりと仰ってください。
取り急ぎダウンロードさせていただきましたので、週末にゆっくり視聴し、改めて残り部分を投稿したいと思います。本当にありがとうございました。
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何とお礼を申したものやら・・・ (袋小路)
2008-09-01 23:29:11
鬼親爺さん、重ね重ねご丁寧にありがとうございました。ご心配いただきました通り、最初のファイルは再生できず、再アップいただいたファイルで視聴できました。

ご希望通り、鬼親爺さんからのコメントは削除させていただきましたが、こんなやり取りの記録も貴重な財産かと思い、後半部のあらすじ、感想は、あえて中途までの記事とは別立てにしました。内容もさることながら、違う意味で記憶に残る一本になりそうです。

コメント欄でお礼を申し上げるしかないのが誠に心苦しいのですが、本当にありがとうございました。今後とも末永く、当ブログにお付き合いください。
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