特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第483話 二重記憶喪失の女・青い鳥、堕ちた!

2009年07月24日 01時27分55秒 | Weblog
脚本 宮下隼一、監督 宮越澄
1986年9月18日放送

【あらすじ】
ある日、紅林はバイクと接触して倒れた女を助ける。女をアパートまで送ったところ、そこには見知らぬ青年が住んでいた。驚いて管理人に確認する女だが、「1年前、急に家賃も払わずに姿を消したそっちが悪い」と責められる。だが、女にとっては、今朝、出かけたばかりの部屋のはず。混乱して頭痛に襲われる女を病院に連れて行く紅林。どうやら、女は1年前に何らかの事故で記憶を失ったらしく、バイクとの接触でそれ以前の記憶を取り戻したものの、空白の1年間の記憶は消えたままだった。
空白の1年間、自分が何処で何をしていたのか分からず、不安なままに入院生活を続ける女を気づかう紅林。その手掛かりは意外なところから舞い込んできた。10ヶ月前に大阪で起こった殺人事件の容疑者の指名手配書に、女の顔があったのだ。
桜井と叶が大阪に飛んで調べたところ、女は当時、ホステスとして働いており、共犯として手配中のヤクザとともに美人局を繰り返していた。事件当日も女が被害者をアパートに招き入れ、殺して金を奪った上で放火し、逃走したと見られていた。アパートは焼け落ち、被害者の死体は黒こげ状態だったが、所持品から身許が確認された。被害者は、女の馴染み客である喫茶店主で、店の経営がうまくいかず、借金を重ねていた。犯行当時も金を借りたばかりで、その金を狙われたものと見られた。
ヤクザが女とともに都内に潜伏していたと見て、捜査に乗り出す特命課。自分が殺人容疑者と知ってショックを受ける女を病院から連れ出し、失踪当時の足取りを追う紅林。男を逮捕するためにも、そして女自身のためにも、空白の記憶を取り戻すことが必要だと考えたのだ。女を見て慌てて逃げ出す少年を問い質したところ、1年前、少年は自転車で女にぶつかったという。怖くなって逃げ出した際、少年が見たのは、ヤクザが女を助け起す姿だった。
一方、桜井らは、女が勤めていた店のママから事情を聞く。ヤクザは記憶をなくした女を強引に自分の情婦とし、ホステスとして働かせていた。さすがに哀れに思ったママが逃がそうとしたが、男に気づかれて失敗。男に乱暴される女を救ったのが、通りがかりの喫茶店主だった。それ以来、女は喫茶店主を兄のように慕うようになり、笑顔を取り戻した。そんな相手を殺したとは思えないとママは主張する。
その後も紅林とともに自身の足取りを追った女は、ペットショップの前でかすかな記憶を取り戻す。「青い鳥の声が聞こえる・・・」店員によれば、女はペットショップの常連客だという。そこに、サングラスで顔を隠した男がインコの餌を買いに来るが、女の顔を見て慌てて逃走する。男が手配中のヤクザと見て後を追う紅林だが、逃走を許してしまう。
付近を捜索し、女が男とともに潜伏していたマンションを発見する紅林。だが、指紋を採取したところ、男はヤクザとは別人だった。二人は兄妹として暮らしており、その暮らしぶりからは、女が無理に脅されているようには見えなかった。女がマンションで飼っていたインコの名前を呟いたことから、紅林は女が空白の記憶を取り戻したことを察する。紅林の追及に対し、女は「私一人がやったんです!」と殺人を告白するが、詳しいことは喋ろうとしなかった。
改めて大阪の事件を洗い直す特命課。そもそも、死体は本当に喫茶店主だったのか?死体の頭蓋骨を複顔したところ、再現された顔は、意外にもヤクザのものだった。被害者と見られた喫茶店主こそが、ヤクザを殺し、女とともにマンションで暮らしていた男だったのだ。やがて、喫茶店主は大阪に舞い戻ったところを桜井らに逮捕される。喫茶店主の告白によれば、事件当夜、女をめぐって口論になってヤクザを殺害。はじめは自首しようとした喫茶店主だが、女に「私を一人にしないで!」とすがりつかれると、借金を背負いながら妻と娘を養う日々への疲れから、女との新しい生活を選択。ヤクザの死体と着衣を取り替えて火を点けたのだ。そんな喫茶店主が、覚悟を決めて大阪に帰って来た理由は、自ら捨てたはずの妻子に会うためだった。連行される喫茶店主に駆け寄る妻と娘。「すまなかった!」泣きながら妻子を抱き締める喫茶店主の背に、後悔と安堵の思いが透けていた。
その頃、女は病院を抜け出し、マンションで男を待ち続けていた。大阪からの報告を女に語る紅林。「あの人が大阪に戻ったなんて嘘よ!」男に去られたショックから、インコとともに自殺を図る女。「記憶なんか戻らなければ良かったのよ!ずっと一人ぼっちだった私が、やっと幸せになれたのに・・・」「君はその寂しさを、犯罪に加担することで忘れようとした。しかし、そんなものは所詮、作り物だ。だから、彼はここに戻らなかったんだ!」たとえ偽りの日々だろうと、警察に怯えながらの暮らしだろうと、喫茶店主との日々は女にとって「一人ではない」というだけで、幸せなものだった。「待て!君は一人じゃない!」橘の言葉が、飛び降りようとした女を止めた。「親身になって君を心配し、君を信じた人間がいたことを、忘れてしまったのか?」女の視線を無言で受け止める紅林。泣き崩れる女に寄り添いながら、鳥カゴからインコを空へと放つ。「誰かが探しに来てくれるのを待つんじゃなく、これからは君が探しに行くんだよ。本当の、青い鳥をね・・・」

【感想など】
記憶を失うことで、初めて孤独から救われた哀しい女を、静かに見守る紅林の誠実さが印象的な一本。二重記憶喪失なるシチュエーションの元ネタは、サスペンスの名手・アイリッシュの傑作『黒いカーテン』かと思われますが、そのアイディアだけに頼るわけでなく愛する家族を裏切ってしまった男の哀しみと対象させることで、ドラマに深みを与えています。
女と男の微妙な心情については、ある程度あらすじで再現しましたので繰り返しませんが、正直なところ、ちょっと詰め込みすぎでバタバタした印象。「青い鳥」というモチーフにもやや食傷気味なところがあり、序盤の「死体が黒こげ・・・」という辺りで真相が読めてしまうのも、ちょっと残念ですが、ラストの爽やかさは紅林でなければできない(というか、下手をすればギャグになってしまかねない)ものがあり、後期特捜における紅林の代表作と言えるのではないでしょうか。
余談ですが、関西出身者の私としては、刑事やホステスのエセ大阪弁に苦笑というか閉口させられましたが、関東の方には普通に大阪弁として通用したのでしょうか?気になるところです。

2 コメント

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あれ、ナンチャッテ大阪弁だったんですか・・・。 (コロンボ)
2009-07-24 19:20:05
袋小路さんに指摘されるまで関東の私は完全にスルーでした(汗)。

さてDVD特典の予告編の映像を見てから気になっていた回です。西郷山公園~中目黒・宝来橋~神山町のアパート&観世能楽堂の坂道~自由が丘とロケ地が移動します。紅林が拳銃を構えるシーンで実際にロケ地に立ってみると違和感に襲われます。容疑者の逃走経路の真逆に拳銃を構えたり、犯人は犯人でわざわざ潜伏先を知らせるようなルートを選択してるんです。おかげでロケに使用されたマンションが簡単に判明です。

ちなみにココ(拳銃を構えるシーン)で第208話「フォーク連続殺人の謎!」でゲスト出演された長塚さんを過去2回目撃してます。

最後に健在だった頃の坂口さんが拝見できて、ちょっぴり満足しました(オイオイ中身はスルーかよ!)。
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お久しぶりです (袋小路)
2009-07-29 02:39:51
コロンボさん、しばらくです。
ここ数日バタバタしており、返信が遅くなってすみませんでした。
そうですか、関東の方にはアレでも普通に関西弁で通用するのですね。
いつもロケ地情報ありがとうございます。現地を知っている人からすれば「あり得ない」映像になってしまうのは、けっこうありがちですよね。
中身については・・・今回はスルーでもいいんじゃないでしょうか?
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