特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第390話 判決・愛が裁かれるとき!

2008年03月13日 02時10分43秒 | Weblog
脚本 阿井文瓶、監督 辻理

父の勧めで見合いに臨む桜井。見合い相手の父親は、桜井の父の弁護士仲間であり、桜井が逮捕した殺人犯の弁護を担当していた。その公判のため、遅れて見合いの席に到着した弁護士は、険しい顔で「被疑者が法廷で無罪を主張した」と桜井に告げる。被疑者は「桜井の拷問によって自白に追い込まれた」と冤罪を主張し、桜井は窮地に追い込まれる。
被疑者は病院に婿入りした医師で、先代の娘である妻に保険金を掛けて殺害した容疑で逮捕された。取調べに当たった桜井は、妻に対しては良き夫、娘に対しては良き父で、患者からも信頼される医師に敬意を示す。被疑者はそんな桜井に心を開き、犯行を自白する。良心的な医療に努める余りに病院の経営を傾かせてしまった医師を、妻はことあるごとに亡き先代と比較して罵った。ある夜、酔って帰って来た妻は、大理石の灰皿を振り回して医師に詰め寄った。無我夢中で抵抗した結果、逆に殺してしまったのだという。
だが、公判で否認に転じた被疑者は「拘置所で思い出した」とアリバイを主張する。被疑者の自供した犯行日時が嘘だったと見抜く特命課だが、一度調書に書いた事実は覆すことができない。すべては医師の周到な罠だったのだ。「奴は、人の心の裏側まで見つめるよう捜査をする、と自惚れていた私の心の隙をついた」と唇を噛む桜井。捜査を一からやり直す特命課だが、医師は桜井を告訴し、桜井はマスコミの非難にさらされる。
桜井の身を案じた父は、「見合い相手は好意を持ってくれているが、母親が刑事であることを理由に反対している」と明かし、刑事を辞めて弁護士事務所の捜査員になるよう勧める。見合い相手の励ましを得た桜井は、医師の娘に罵られながらも捜査に注力する。
多くの証言から「医師が妻を愛していたのは間違いない」と確信する桜井。では、なぜ医師は妻を殺したのか?妻の身辺を調べたところ、若い画家との不倫関係が明らかになり、画家の子供を身篭り、流産していたことが判明する。
そんななか、見合い相手と食事中の桜井を医師の娘が訪ねてくる。「父は罪を認めました。これ以上、母を汚さないでください」と涙ながらに頼む娘。見合い相手も娘に同情し「人の裏側を暴き立てることが捜査じゃありませんよね?あの方の言うことを聞いて挙げられませんの?」と桜井を問い質す。だが、桜井の選ぶ道は決まっていた。
公判に臨んだ桜井は、証言台で妻の不倫を暴き立て「これは計画的な殺害であり、カモフラージュのために自分と妻に保険金を掛けた」と語る桜井。「違う。私は妻と一緒に死のうと思った。保険は後に残す娘のためだ」法廷で罪を認める医師の言葉に、桜井が続ける。「そして、父親が母親を殺したという傷を娘さんに残さないために、冤罪として釈放されるよう工作した」「そうだ。君はそれを見事に暴いた。楽しいか?気分がいいか?」妻を愛しているがゆえに、不倫を許すことができなかった医師。「愛されなくなったから殺す。そんなものが愛情ですか?」と問う桜井に、医師は答えた。「君は、本当に愛する者に裏切られたことがあるかね?人間が悪魔になるのはそういう時だよ」
事件解決後、遠回しに刑事を辞めるよう勧める見合い相手に、桜井は「私は言葉じゃなく、行為で人を動かしたい。そういう現場にいたいんです」と答え、捜査へと戻るのだった。

理性の影に激情を押し隠した医師を好演したのは、宇宙刑事シリーズでお馴染みの西沢利明氏。台詞回しがいちいち凝っていることもあって、桜井との対決はなかなか見応えがありましたが、正直言って、ストーリー的には見るべきものがありません。
冤罪というテーマは興味深いものの、冤罪を主張した結果、かえって隠しておきたかった妻の不倫まで明らかになるという見事な墓穴掘りに終わっており、なにかこう、全体に空回りしている印象。「妻の過ちを隠したい、なおかつ(娘のために)無罪も勝ち取りたい」と考えた苦肉の策ではありますが、最終的に前者を優先するのであれば、最初から後者はあきらめていればよかった、と考えるのは、所詮他人事だからでしょうか。
さらに、桜井の見合い相手と医師の娘が、どちらも演技が稚拙なこともあってか、邪魔にしか思えません。医師の娘はストーリー上必要かもしれませんが、見合い相手にさほどの必然性はなく(桜井の刑事という仕事に対するこだわりを描くのであれば、弁護士である父親とのからみだけでも十分)、医師親子との対決だけに専念して欲しかったというのが正直な感想です。

コメントを投稿