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『検察秘録ー誰も書けなかった事件の深層』 村串栄一

2007年07月01日 | ノンフィクション


検察秘録.jpg

 

“東京地検特捜部” と聞くとどんな響きがあるでしょうか。正義感に燃え、巨悪に立ち向かう法の番人の集団であることは確かでしょう。

つい先日も、自らの身内ともいえる緒方重成・元公安調査庁長官を朝鮮総連との取引に関する詐欺容疑で逮捕しました。最近の大物逮捕ということでは、村上ファンドの村上氏、ホリエモンこと堀江貴文氏、自民党の政治家・村岡兼造氏らでしょうか。

ただ、特捜検事といえども、彼らも人間。法の厳正な執行を盾に、時の権力者にさえ立ち向かう一方で、検事総長を頂点にしたピラミッド組織の中で出世が気になる役人であることには変わりありません。現実はテレビドラマのように単純な勧善懲悪でストーリーが進むわけではないのですね。


本書はそんな地検特捜部の生の姿を描いています。少し前、鈴木宗男氏が逮捕された頃に書かれたもので、当時の雰囲気では鈴木宗男氏は、カネと権力を追い求める政治屋のようなイメージで報道されていましたから、検察に拍手喝采が送られました。

これまで見ますと、金丸逮捕、リクルート事件野村沙知代など、世間を欺く悪質犯罪を見事に暴いたことも事実ですが、残念ながら取り逃がした事件も数多いのです。旧橋本派の一億円献金問題はどうなったんでしょう。黒幕はすべて逃げおおせて、いかにも歯切れが悪い印象です。


旧大蔵省、国税、防衛省、政治家などが捜査対象となれば文字通り、現場は “死闘” を繰り広げますが、上層部からの理不尽な捜査停止圧力や自らの不祥事による断念などを本書ではつまびらかにしています。

東京地検特捜部の検事は僅か40名弱ですので、ベテラン記者が検事たちの人物像を把握することは比較的容易ですが、事件の裏の裏までよくぞここまで書けたと思います。

日の当たる部分だけでなく、検事の年収から出世に関わる抗争、組織の解説に至るまで、修羅場を生き抜く男達の生の姿を伝えてくれています。

目次です。


第1章
 瓦解した捜査

第2章
 政治家逮捕

第3章
 検察内部の権力闘争

第4章
 検事という職業

第5章
 傷だらけの特捜物語

第6章
 国税、警察との緊張関係

第7章
 正念場の特捜検察


ただ、その鈴木宗男氏の一連の捜査の中で、それに引きずられて逮捕された、佐藤優氏の書いた衝撃の一冊 『国家の罠』 には、検察が国策の中で動かされている事実を認めないわけにはいきません。

また、あまり評判になっていませんが、宮本雅史氏の書いた 『真実無罪』 では、やはり大物政治家の村上正邦氏(もう忘れられそうですが)が、おとしいれられる様子が克明に描かれています。 


“権力の横暴は許さない” “相手が誰であろうと関係ない” “俺が責任を取る” と、大物逮捕に向かう検事の集団であって欲しい。そう思います。




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