2011年、東電フクイチ事故、巨大環境汚染に伴って、東日本一帯で、莫大な放射能汚染物質が生み出された。
事故から15年の現在でも、深刻な有機物汚染が続いているが、これを政府は焼却処理する政策を行っている。
放射能は物理現象であるため、燃焼や化合のような化学的処理で消えることはない。どんな火力で燃しても、含まれた危険なアクチノイド(核燃料)、セシウムXやストロンチウムXが煙とともに大気中に拡散するだけだ。
現在、なお残るアイソトープは、半減期が数十年とか数万とかの超長寿命のものばかりで、セシウム137が無害物質に減衰するには300年以上かかる。
プルトニウム239に至っては、100万年間の隔離保管が必要だ。
燃焼によって大気中に拡散したアイソトープは、呼吸から生物に内部被曝をもたらし、また新たに土壌汚染を起こして農産物を有害化してしまう。
(キノコなど真菌類がセシウムを選択吸収し濃縮する)
肺に沈着したアクチノイドやセシウム137は、10~40年の潜伏期間を経て肺癌や乳癌を引き起こす可能性がある。
燃焼施設周辺では、セシウム137を内部被曝することで、循環器障害=心筋梗塞や大動脈解離、筋肉靭帯障害を引き起こす人が激増するだろう。
日本政府は、このことを理解していながら、見て見ぬふりをして、「汚染物質を焼却処理した」と子供だましの詭弁を弄している。
2011年までの安全基準であるKgあたり100ベクレルを超える汚染物質の処理として、もっとも適切なのは、フクイチ事故前のプロトコルである「耐蝕ドラム缶に入れて100年間程度、土中に埋めて保全」することだが、東日本全域を汚染するほどの超莫大な汚染で、東日本のほぼすべての土壌が㎏あたり100ベクレルを超えてしまっているので、結局、政府は、安全基準を根拠もないまま80倍に拡大してみせた。(土壌Kg あたり8000ベクレルまで許容)
いきなり安全基準が80倍になったことで安全になったわけではない。ただ有害性、危険性を無視した基準を作らないと原発運営や事故処理を正当化できなくなっただけだ。
実際には、8000ベクレル土壌で生産された農産物を食べることは、癌のイニシエーターになるような食品を食べるのと同じ愚行である。
亜硝酸ナトリウム発色肉や有機リン添加食品を食べるよりも、さらに恐ろしい。
政府職員は深刻な毒性を知っているから絶対に食べないが、一部の原発推進者が「食べて応援」などと騙されて食べる可能性はある。
そんなことをすれば、待っているのは被曝地獄だけだ。「食べて応援」がどれほど凄まじい惨禍を招いたことか?
https://posfie.com/@konetama/p/3iDKuqv
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6070235.html
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5887973.html
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6017381.html
民の声新聞に、放射能汚染廃棄物の焼却処理問題が記事になったので紹介する。
【汚染廃棄物焼却問題】「内部被曝のリスク、受忍できぬ」原告や支援者が都内で院内集会 「具体的な危険ない」と焼却全肯定した仙台高裁判決受け最高裁に上告~大崎住民訴訟 2025/06/13
http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-820.html
福島第一原発原発から約130㎞離れた隣県・宮城県大崎市の住民が起こした訴訟は、放射能に汚染された牧草や稲わらなど「農林業系廃棄物」の焼却にかかる公金支出の差し止めを求めたが、一審・仙台地裁、二審・仙台高裁ともに請求を退けられた。
「(焼却によって)受忍すべき限度を超える具体的な健康被害の危険性があるものであったとはいえない」などとする判決を不服とした住民たちは上告。国の原発政策に異を唱えられない最高裁の判断を仰ぐことになった。
10日午後に東京・永田町で開かれた院内集会を取材した。何の罪もない住民はなぜ、原発事故の後始末による内部被曝を強いられなければならないのか―。
【「健康や環境への被害が心配」】
「私たちの地域に迷惑施設である焼却施設が建設される際、行政と環境保全に関する申し合わせなどの約束をしました。ところが、原発事故に伴う牧草や稲わらなどの放射能汚染ゴミの処理に際し、大崎市は住民との約束を無視しました。
宮城県などの指示の下に、いわゆる特措法(「放射性物質汚染対処特措法」)を根拠として8000ベクレル以下の放射能汚染ゴミを2018年から試験焼却。そして2020年から本焼却を強行し、現在も焼却を続けています。
みなさん、私たちは危険な放射能汚染ゴミの焼却による健康や環境への被害が心配です。焼却には同意しておりません」
集会の冒頭、原告団長・阿部忠悦さんはそう述べた。
行政との「約束」、そして「無視」。
住民たちは1989年9月、ゴミ焼却場「西部玉造クリーンセンター」の建設にあたり、大崎地域広域行政事務組合と「玉造ゴミ焼却場開設に伴う環境保全に関する申し合わせ」を締結。そこには「ごみ焼却場の機能・設備等を変更する場合は地元住民に事前に説明し合意を得るものとする」と明記されている。
さらに2009年11月、地元の水利組合は「施設へ搬入する一般廃棄物は………水質汚染のおそれのある重金属物質を含む廃棄物は一切搬入しないものとする」などとする覚書を同組合と交わしている。
大崎市は2018年10月、試験焼却を開始。2020年7月には本焼却を始めた。阿部さんたち124人は住民監査請求を経て2018年10月11日、試験焼却や焼却灰の埋め立てに関する公金支出差止訴訟を仙台地裁に起こした。(被告は大崎地域広域行政事務組合管理者である大崎市の伊藤康志市長)。
しかし、仙台地裁の齊藤充洋裁判長(現在は東京高裁判事)は2023年10月4日、「本件試験焼却は、8000㏃/kg以下の農林業系廃棄物の試験焼却を行う点で法令に違反するものではない」、「本件各焼却施設のバグフィルター通過時に放射性セシウムは概ね99・9%以上除去されるとの調査結果が存在する」などとして阿部さんたちの請求を棄却した。
ちなみに、齊藤裁判長はこの判決の5カ月前、石巻市民が起こした「女川原発運転差止請求訴訟」でも住民たちの請求を門前払いする形で棄却している。
【高裁「具体的危険ない」】
阿部さんたちは仙台高裁に控訴。だが、見米正裁判長は主に次のような理屈で改めて住民の主張を退けた。
「特措法で8000㏃/㎏以下の廃棄物については、通常の処置方法でも被曝線量が年1ミリシーベルトを下回るものとして、市町村において安全に処理できるという扱いになった」
「2017年11月には、JAや農家などから『放射性物質に汚染された廃棄物の早期処理を求める要望書』が大崎市に提出された」
「本件焼却施設では、試験焼却前後でモニタリングポストの空間線量に有意な差は認められなかった」
「基準値の8000㏃/㎏への引き上げは、暫定的な措置としてやむを得ないものであった」
「焼却により不溶性の放射性物質が飛散していることや、飛散した放射性物質が人体に影響を及ぼす程度の濃度で飛散していることを適格に示す証拠はない」
「住民が提起する様々な不安を完全に解消できるまで焼却処理ができないとすることは事実上、廃棄物の処理事業を不可能にすることに等しい」
「周辺地域の住民に健康被害をもたらす抽象的な危険があることまでは否定し難いものの…本件試験焼却は周辺住民に健康被害が発生する具体的な危険性を生じさせるものではなかった」
「社会生活上受忍すべき限度を超えるといえる具体的な健康被害の危険性があるものであったとはいえないから…住民の人格権や平穏生活権に対する違法な侵害行為であるとまではいえない」
これら司法判断について、住民側弁護団の1人、松浦健太郎弁護士は「放射性物質の拡散を科学的根拠をもって立証した訴訟は少ないのではないか」と悔しさをにじませた。
草場裕之弁護士も「保護されるべき人たちなのに、燃やしてもう一度放射性物質をばらまいている。しかも細かくして体内に吸い込ませている。そもそも原発事故が起こる前の基準は100㏃/㎏だった。8000㏃/㎏以下の焼却を認めた特措法をこのまま放置すると、放射性物質の拡散を止められない」と指摘した。
【「問題の本質は内部被曝だ」】
NPO法人市民放射能監視センター「ちくりん舎」(東京都西多摩郡)副理事長の青木一政さんは、福島県浪江町の帰還困難区域で2017年4月29日から5月10日まで燃え続けた「十万山」の山林火災での調査でも活用した「リネン吸着法」を使い、裁判に協力してきた。
調査結果をリモート報告した青木さんは、焼却問題を理解するための前提として「問題の本質は空間線量率ではなく内部被曝。
PM2・5より小さい放射性微粒子を肺の奥に吸い込んでしまうと、場合によっては一生涯にわたって内部被曝が続くことになる」と指摘した。
「リネン吸着法」で2018年秋、2019年夏、同年冬の3回、焼却施設周辺を調べたところ、バグフィルターを通過してしまった放射性微粒子の存在を確認できたという。
「玉造クリーンセンター」は老朽化で2022年3月末で稼働停止したが、その前後を比較すると稼働停止後の放射性微粒子吸着率は約3分の1に下がったという。
「玉造クリーンセンターから細かいチリが出ていたのは明らか。これ以上、明白な資料はないだろう。これも最高裁に提出している」と青木さん。焼却施設から風下2㎞で生活している住民の放射性微粒子吸入は、福島県内で特定避難勧奨地点に指定された地域の住民とほぼ同じレベルだという。
「放射能ゴミを燃やすことで、周辺の地面に放射性微粒子が積もっている。それが日常的に舞い上がって(再浮遊)、住民は吸い込んでしまっている。焼却することの罪深さを感じる」
集会には「原子力市民委員会」の大島堅一座長(龍谷大学教授)もリモート参加。問題点を指摘した。
「放射性物質の扱いに関する二重基準(ダブルスタンダード)は、一刻も早く解消される必要がある。拡散・希釈すれば大丈夫という考え方に基づいた焼却処理だが、周辺住民を中心に実害が生じる。内部被曝のリスクも考慮されていない。
周辺住民は一般国民と異なるリスクが追加的に生じるような状況に置かれているわけで、差別的な状況。許されるものではないし、合意形成の手続き的な合理性が欠如している」
阿部さんたち原告や支援者たちは閉会後、雨上がりの首相官邸前に移動。「焼却絶対反対」と書かれた横断幕を手に、「ばらまくな!」、「集中管理の原則守れ!」などとシュプレヒコールを行った。
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引用以上
判決の根拠になったのは、「焼却施設のバグフィルター通過時に放射性セシウムは概ね99・9%以上除去されるとの調査結果」だが、確かに大同鋼機製バグフィルターの性能は素晴らしいものだ。
だが、それは、燃焼排気のすべての条件が完全にクリアされた場合であって、フィルター交換が適切時期を無視されたり、焼却炉本体に欠陥やひび割れなどがあって浄化されない排気が放出されたりするリスクを無視したものだ。
実際に、東電が福島沿岸で、放射能汚染排水を海洋放出する作業でも、ALPSの放射能除去性能は、ひどい変動があって、IAEAの監視があるようなときは、廃水を何十回もフィルターにかけて性能を高いレベルでクリアしているが、検査のないときは、繰り返し除去を行わず、朝日新聞の過去の調査では、基準値の数万倍のストロンチウムXが検出されたことがあった。
汚染水、浄化後も基準2万倍の放射性物質 福島第一原発 小川裕介 石塚広志 編集委員・大月規義 川原千夏子 2018年9月28日
https://www.asahi.com/articles/ASL9X6HQ3L9XULBJ014.html
ALPSは、本当にトリチウム以外の核種を除去できているのか? 2023年07月08日
https://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6051665.html
データというのは、完全な理想条件でのデータが裁判所に提出されるのだが、日常的な運用で、必ずしも理想条件が満たされるとは限らない。
東電も政府も、いつでも見せかけのきれいなデータしかださないメンツ死守の体質を持っている。誠意よりもメンツなのだ。
だから、大崎焼却場問題は、ガンマ線スペクトラマを持参して、現場付近で数十日間の測定調査を何度も繰り返さないと正しい結果は得られない。
そもそもKgあたり8000ベクレル、年間20ミリイーベルト許容という指針は、安倍晋三政権が作ったものだが、それはとてつもなく恐ろしい、原発事故を正当化し、容認するための科学的根拠のない基準だった。
https://hrn.or.jp/activity_statement/1654/
政府側の少佐古内閣官房参与でさえ、「子どもたちに20ミリシーベルトはひどい、と絶句し、辞任したほどだった」
https://www.youtube.com/watch?v=yFg2IxD7mvs
8000ベクレル土壌の農産物移行係数を見てみよう。
https://www.ruralnet.or.jp/images/oyakudachi_3003.pdf
上の実験では、葉物野菜のセシウムX移行係数が00.49になっていて、Kg8000ベクレル土壌で、ホウレンソウやキャベツなどを生産すると、Kgあたり392ベクレルの野菜ができることになる。
食品や農産物の政府許容量は、キログラムあたり100ベクレルであり、実に4倍もの放射能汚染食品が生産されることになる。
したがって、政府基準は、自らの安全基準さえ平然と破っている。
8000ベクレルなど絶対に許してはならないのだ。元のKgあたり100ベクレルが正しかったのである。
大崎焼却場の放射性汚染物排気では、もしも99.99%のフィルター性能なら検出されるはずのない、周辺地域での汚染が検出されている。
私のサンプリング調査では、2012年の大崎市のセシウム汚染は、仙台・白石などに比べて非常に少なかった。
だから、この地域のコメは比較的安全と思われたのに、政府はわざわざ汚染の少ない地域に汚染を拡大しようとしているとしか思えない。