リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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「ちくほっくる」で勉強会

2012年12月07日 | Weblog
知り合いのPSWさんから職員の研修にまねかれ筑北村の福祉就労施設「ちくほっくる」を訪問。
Iターンで信州筑北村に来て障害者の支援と、地域づくりをもり立てている熱い方だ。
就業後の時間にスタッフに対して主に薬物療法、向精神薬についてお話しディスカッションした。
頓服薬は何かというところから、作用、副作用、シェアードデシジョンメイキング、錐体外路症状といったところまで話。



「ちくほっくる」は精神障害者、知的障害者の働く場、生活リハビリの場であるが、山間の窪地の人口約5000人の村で唯一パン屋でもある。プロの手ほどきのもと手作りの本格的なパンを作っている。イートインもできスープやコーヒーなどの軽食も食べられる。
渡り廊下でつながった裏の建物には知的と精神である程度分けられたディケアの様なスペースがある。



「ちくほっくる」は筑北村から村社協への指定管理で運営されており、就労継続B型事業所、生活介護事業、日中一時支援、地域活動センターとして運営されている。収入の多くは福祉の方から得ているが、多くのスタッフ、当事者が関わっており、村の小麦を挽いた強力粉でパンをつくるなど地域づくりにもかかわる様々な仕掛けも手がけているらしい。

パンは美味しければリピータがつき毎日消費するものだから、障害者雇用の場としては一般的だがここのパンはレベルが高かった。
病院内にこのくらいのカフェがあればとおもう。

本日は病院の玄関でディケアのバザーが行われていたが、当地には大町のがんばりやさん、有明のパン屋さん、などパンを作っている作業所はいくつかある。
役場や企業になど訪問販売をおこなっているようで病院内で日時を決めて職員などに販売できるようにしたらどうかと思った。

障害年金は社会保障?

2012年12月07日 | Weblog
我が国の社会保障は基本的には申請主義である。生活保護も年金も介護保険などの諸制度も申請しなければ利用できない。

消費者金融のTVCMは盛んになされるが、生活保護はTVCMでその存在を知らせてくれたりはしない。
むしろ某芸人の家族例のように生活保護受給者をたたき受給を避けさせるようなネガティブキャンペーンばかりだ。
生活保護で救済されるべき人が社会福祉協議会の生活福祉資金貸付で対応されているなど必要な支援にたどり着くのは至難の業だ。

障害年金という制度もあるが精神障害においては受給するには非常にめんどくさい手続きが必要となる。
そもそも初診時まで年金を払っていないと受給できない。
発症時に年金を支払っていなかったばかりに年金を受け取れないという人も結構いる。
高齢者であれば障害や収入、資産の有無にかかわらず経団連会長であってももらえるというのも、高齢者=弱者とも限らない現在おかしいと思う。
いまの日本の年金制度は社会保障ではなく低品質な金融商品であろう。

統合失調症で仕事を続けることも困難となり(他院に)入退院を繰り返しながら年金が受給できるということを知らされず、親が10年以上国民年金を収め続けていたケースもある。

実際、障害をもちながら生活を成り立たせられるだけの収入が得られる仕事につくというのはかなり難しい。
身体障害や内部障害など他の障害ではそういうことは無いのだが、精神障害に限り就労時間や月収なども各く欄が増えた。

年金の申請にあたり初診日証明などの書類を取り寄せたり、申立書をかくことなどは統合失調症や、うつ状態のひとにはとても不可能な作業であり大抵はケースワーカーが一緒に手伝って書くことになる。

一方で不況が続き失業して生活困窮し、うつ状態となり、かといって持ち家があったり車を保持していたりで生活保護の受給まではためらわれるようなケースで年金申請の相談をうけることがある。
障害によるものでなければ他の制度が優先されるべきであろうが、非正規雇用のケースなどなかなか難しい。

「うつ病で障害年金を年間216万円貰う方法」などネットなどでもたくさん見つかるが、社会保険労務士などでそのような手続きの相談や代行を行なっているところもあるようである。

初診から1年半後から障害認定を受けられる。そして申請日から最大5年前まで訴追請求ができ認定されれば数百万円の一時金が入ることもある。これは、かなりの大金であるから申請する方も必死である。

年金申請が受理されるように診断書の書きかたの例(ひな形があるのだろう)を持参したり、受診に同行されたりすることもある。
微妙なケースは通るとは限らないと断った上で嘘にならない範囲で書くが、制度を守らなければいけない立場でもあり微妙な気持ちになる。
どのくらいの報酬か聞いてみたところ年金の2ヶ月分だそうだ。

このようなことを経験するにつけ、年金や失業保険、生活保護などをなくし、変わりにベーシックインカムとパーソナルサポートサービス、住まいのサポートなどに転換すべしと感じる。