リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

障害年金は社会保障?

2012年12月07日 | Weblog
我が国の社会保障は基本的には申請主義である。生活保護も年金も介護保険などの諸制度も申請しなければ利用できない。

消費者金融のTVCMは盛んになされるが、生活保護はTVCMでその存在を知らせてくれたりはしない。
むしろ某芸人の家族例のように生活保護受給者をたたき受給を避けさせるようなネガティブキャンペーンばかりだ。
生活保護で救済されるべき人が社会福祉協議会の生活福祉資金貸付で対応されているなど必要な支援にたどり着くのは至難の業だ。

障害年金という制度もあるが精神障害においては受給するには非常にめんどくさい手続きが必要となる。
そもそも初診時まで年金を払っていないと受給できない。
発症時に年金を支払っていなかったばかりに年金を受け取れないという人も結構いる。
高齢者であれば障害や収入、資産の有無にかかわらず経団連会長であってももらえるというのも、高齢者=弱者とも限らない現在おかしいと思う。
いまの日本の年金制度は社会保障ではなく低品質な金融商品であろう。

統合失調症で仕事を続けることも困難となり(他院に)入退院を繰り返しながら年金が受給できるということを知らされず、親が10年以上国民年金を収め続けていたケースもある。

実際、障害をもちながら生活を成り立たせられるだけの収入が得られる仕事につくというのはかなり難しい。
身体障害や内部障害など他の障害ではそういうことは無いのだが、精神障害に限り就労時間や月収なども各く欄が増えた。

年金の申請にあたり初診日証明などの書類を取り寄せたり、申立書をかくことなどは統合失調症や、うつ状態のひとにはとても不可能な作業であり大抵はケースワーカーが一緒に手伝って書くことになる。

一方で不況が続き失業して生活困窮し、うつ状態となり、かといって持ち家があったり車を保持していたりで生活保護の受給まではためらわれるようなケースで年金申請の相談をうけることがある。
障害によるものでなければ他の制度が優先されるべきであろうが、非正規雇用のケースなどなかなか難しい。

「うつ病で障害年金を年間216万円貰う方法」などネットなどでもたくさん見つかるが、社会保険労務士などでそのような手続きの相談や代行を行なっているところもあるようである。

初診から1年半後から障害認定を受けられる。そして申請日から最大5年前まで訴追請求ができ認定されれば数百万円の一時金が入ることもある。これは、かなりの大金であるから申請する方も必死である。

年金申請が受理されるように診断書の書きかたの例(ひな形があるのだろう)を持参したり、受診に同行されたりすることもある。
微妙なケースは通るとは限らないと断った上で嘘にならない範囲で書くが、制度を守らなければいけない立場でもあり微妙な気持ちになる。
どのくらいの報酬か聞いてみたところ年金の2ヶ月分だそうだ。

このようなことを経験するにつけ、年金や失業保険、生活保護などをなくし、変わりにベーシックインカムとパーソナルサポートサービス、住まいのサポートなどに転換すべしと感じる。

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2 コメント

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Unknown (ututotukiau_PT)
2012-12-26 20:08:29
御意。

大事なのは、診断名や書面上のADLでなく、その人とその人の生活を実際に観て評価する事だと思います。

それに基づいた、サービス提供、経済的支援。

やはり、それにはお隣さんとかお茶飲み友達とかが貴重な情報源になるのだと思います。

考えてみると、私が言うのも僭越ですが、若月先生の志に通じるものがありますね。
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Unknown (といぴ)
2012-12-26 21:46:46
病院では大川弥生さんらが推進しが総合実施計画書が制度化されていますが・・。
障害のアセスメントは医師は主にFunctionレベルからどうしても見てしまうので、リハ職種やケースワーカーなど多職種で行えるような仕組みが必要ですね。
お隣さんたちや茶飲み友達からの情報をどう活かしていくか・・・。
それを支援にどうつなげていくか。
難しいテーマです。
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