ひとり留守居で所在なく雑然とした自室にいた。
壁には孫息子が8歳頃に私の顔写真を撮って、それを使ってパソンでデザインした「父の日」のHappyFather's Dayのカード(A4サイズ)が貼ってあるのに気づいた。「何で今頃きづくの・・・?」「だって、もう10年も古い頃のものだよ」と独り言。
海の向こうの国では、小学校低学年から宿題がパソコンでの交信だから簡単なんだろうと思うが、爺レベルでは驚きだ。「そう言えばカードはお祝いのレストランで呉れたんだ・・。そうそう、あの事件を起こしかけた中華店だったな~・・」
事件ってなんだい?
まだ、孫息子が5~6歳の頃だったと思う。有名店なので店内は混雑をしていた。娘が「お爺ちゃんトイレに付き添って・・・」と頼まれた。子供の誘拐もあるのでひとり歩きはさせない。RestRoomと書いてあるドアーを押して中に入った。 まだ背が低いので囲いのある処にはいった。「おじいちゃんはここにいるよ」と、声を掛けた。 日本と違い囲いの裾はない。したがって、使用中は2本の脚が見える。何気なく周りを見わたすと男便器がない。もしや? ここは婦人用なのか?もう、遅い。「早くして・・」と声をかけて悠然として、慌てずにドアーを押してでた。すると、店内に警報機が鳴り響き渡り奥から黒人の警備員二人が駆け込んできた。その時は既に脱出に成功していた。孫息子に言うと「おじいちゃんが間違うてるの知っていたよ」「教えろよ」娘曰く。「日本人のおじいちゃんだったので不問にしてくれたのよ。気をつけて!」失敗談が鮮明に思いだされた。
その隣の壁には「さようなら 日本で また 会おうね!」と自筆で日本語で書いた「Good Bye !」カードがピンで留めてある。そう言えば帰国前夜に二人して「おじいちゃん 渡したいものがあります」と孫ふたりして大きな声で読み上げ最後に「楽しかったありがとう」と言うと感謝状をもらった。3週間長期滞在の遊ばせご苦労かな? それは違う!! 爺が楽しませて貰ったのに・・・。
その孫も、この9月には18歳の大学生と15歳の高校2年生になる。大きくなると校友関係や遊びや学校行事などと忙しくなってくる。こういった小さなことが後日思い起こし、忘れられない想い出となり心を癒してくれるから不思議だ。
小さい孫とは「父の日」に夕食会を楽しみました。この孫とも何時しか大きくなるかとうれしくもあり、寂しくもあるものですね。
「ただいま」と、妻の元気なご帰還の声が階下の玄関先から聴こえてきた。 「御帰りなさい」と返事をした。
机の上には孫の作品がまだある・・。
終わり