いま、机の前にあるカレンダーの7月の暦を見ている。 もう、15日を切った。 この夏は、はらはらする夏を迎えることになりそうだ。 17歳になる孫息子がひとり昨年の夏に続き来日することになった。
昨年は爺とふたりで先祖の墓参りに行った。 途中の乗り換えJR駅で爺だけ乗せてドアが閉まるアクシデントがあった。 だが爺がいて、何とか無事10分後には会え胸をなでおろせた。 切符は渡しておいたものの、知識は行き先も交通機関も全く知らない。
この夏が試練の本番だと厳しく突き放すのだと母親の娘が言う。 爺の手出しは厳禁と厳しく言い渡された。
そうは言うものの、車社会に育った脚の弱さ、日本の地理不案内、日本の生活経験不足、漢字も漢検を受験してると言え勉強中だ、日常会話だけは何とかなると言えるが~・・。 だから、心配でならない。 そ~うと、尾行するにも爺にはもう、その体力はない。 運を天にまかすしかない。
でも、昨夏は突然に玄関ドアを開けて「ぼくです・・」と、言って爺婆を驚かしたではないか。 初体験するには余りにも高いハードルだった気がする。 去年だからまだ、16歳だよ。 アテンダントそして空港アシストの親切な助けがあったのではないかと疑う・・・。(実態は更に、爺の家の近くで夜になり目印が見当たらなくて彷徨ったそうだ。・・一時はパニクった。どう~しよう・・)
そりゃそうだ。
今夏もSF国際空港で17歳の身で自国とは言え自分自身で手続きを済ませての出国、日本は帰省で慣れてるとは言え今度はひとりでの身体検査、搭乗口へゲートナンバーを探しての移動。 ここで始めて機内に搭乗する。
これだけでも緊張するよ。
機内では日本入国の「税務申告」の用紙記入、成田空港到着口への移動、入管の入国手続き、預けた荷物のピックアップ、「税務申告」を済ませ、これで成田国際空港のロビーにやっとでれる。
ここでは、まだホットできないのだ。ここは異国なのだ。
異国でのリムジンバスのチケット購入をする。それから2時間5分かけてのバス乗車がある。
もうあと一歩だ。
タクシーに乗り換え、行く先を告げる。昨夏の反省込めて間違えなく爺婆の家の前にタクシーを案内し降り、荷物を受け取り玄関のドアーを開けて「ぼくです・・」と、言えば・・
ここで無事到着である。 朝の7時に自宅を車で出発し、変更線を越え翌日の夕刻に爺婆の家に辿りつける「冒険の旅」の完成絵巻である。
大変な工程の数々だ。相談相手もいないひとりだぜ・・。 日本語が話せるとは言え異国には違いはない。 あっぱれな孫だと思うよ。
「冒険の旅」はこれで終わったのでない。 この夏の本番はこれからなのだ。「え~・・」
何と、「ご来光を拝む富士登山」ツアーに、更に、戦国時代の「松本城」の登城。そして、鎌倉の「円覚寺で座禅を組み、写経」をひとりで参加するとは驚きだ。 これを完遂するには交通機関を駆使せねばならない。だが、ひとりでできるのか爺は心配だ。 「そ~と教えよう」違反ではない筈。
まだ来日せぬ孫の「冒険の旅」の爺の落ち着きのない有様です。爺の頭の中の孫は母親の緊急入院、緊急米国への帰国で、ひとり日本に残された時の幼い可愛い盛りの孫のイメージでしかない。
173cmを超える背丈に育っても、あの時の幼子のままの孫息子の姿でしかない。
「獅子の子落とし」のたとへが脳裏を蘇った一夜でした。
終わり