イギリスで「うどん屋」さん（丸亀製麺、グルメ杵屋）が出店攻勢！

毎日新聞〈経済記者「一線リポート」〉（2021.8.19付）に〈英でうどん、出店攻勢 コロナで賃料割安 味、好み反映〉という記事が出ていた。ラーメンと違ってうどんはヨーロッパでは知名度が低いはず。それがここへ来て出店攻勢とは…。以下に記事全文を紹介する。

日本のうどんチェーン店の英国への進出が相次いでいる。欧州でラーメン人気は定着したが、うどんの知名度は低い。新型コロナウイルス禍にもかかわらず、出店計画は強気らしい。果たしてどんな戦略を練っているのか。気になって、ロンドン市内の店舗に出かけてみた。

7月26日正午。ロンドン中心部のリバプールストリート駅近くに讃岐うどん専門店「丸亀製麺」の英国1号店が開店した。客の目の前でうどんをゆでたり、天ぷらを揚げたりするスタイルは日本の店舗と変わらない。友人と来た大学生、アバニサ・マヘッスラーさん（19）は「知らない食べ物に関心があるので来ました。強い歯ごたえも好きです」と楽しんでいた。丸亀製麺現地法人のキース・バード最高経営責任者（CEO）は「英国や欧州の人たちにどれだけうどんが受け入れられるか楽しみです。まずはうどんを体験してほしいです」と話す。

これまでの道のりは平たんではなかった。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは2020年7月、英国に丸亀製麺の現地法人を設立し、21年春のオープンを目指していた。ところが英国は昨冬、新型コロナの感染再拡大で再びロックダウン（都市封鎖）に突入し、開店は延期となった。日英間を自由に行き来できないため、事前の開店準備も進まず、現地スタッフに仮想現実（VR）技術で遠隔指導した。コロナ禍で十分な市場調査もできなかったが、英国のファストフード店やピザ店など飲食業界を渡り歩き、ロンドンでレストランを数店舗展開するバードCEOの経験が生きた。

バードCEOはメニュー展開で「英国の消費者に理解してもらいやすい工夫をした」と話す。コシのあるうどんやだしの風味などは日本と同じだが、豚骨うどん、チキンカツカレーうどんなど、英国人の好みを反映したメニューを投入。だしに魚介ではなく野菜を使った菜食主義のビーガン対応メニューの割合は3割を占める。実は新型コロナによる恩恵もあったという。ロンドンは不動産賃料が世界的に見ても高いが、コロナによる需要低迷で賃料は以前と比べ約3割安になった。この好機を生かし、年末までにロンドンで5店舗を展開。26年までに欧州で100店舗を目指すという。

グルメ杵屋が展開する讃岐うどん専門店「杵屋麦丸」も20年12月、ロンドン中心部のセントパンクラス駅に英国1号店をオープンしている。ここはロンドンとパリを結ぶ高速鉄道の発着駅で、夏季休暇シーズンの今はにぎわっているが、開店時はコロナ禍でひっそりとしていた。「行列ができるかなと思って準備したのですが、誰も来ませんでした。駅は空っぽでした」と、英国現地法人のキム・ドンヒュン代表は振り返る。

新型コロナの感染再拡大による英政府の規制強化で、同店は開店からたった2日で休業に追い込まれた。ロックダウン後、営業を再開したのは4月半ばだ。厳しい環境下だが、杵屋麦丸はロンドン市外にも2店舗目を出店済みで、3～4年以内に英国内で50店舗を目指す。「その後はスペインやフランスに挑戦です」と、キム代表の鼻息は荒い。

強気のキム代表は英国で約40店舗を展開する持ち帰りずし店「ワサビ」の創業者だ。「元々うどんが好きだったわけではない」（キム代表）が、その手腕を知るグルメ杵屋が協力を要請。英国人の好みに合わせて細麺にすることなどを条件に出店を引き受けた。キム代表は「持ち帰りずしもすぐには英国で定着しなかった」とし、「シンプルなかけうどんのおいしさを英国人はまだ知らない。時間はかかるだろうが、本当のうどんを紹介していきたい」と意気込む。

英国へ進出した日本の両うどんチェーン店を支えているのは、現地の飲食店事情に詳しい現地法人の経営トップたちだった。欧州の人たちの好みを反映しつつ、新たな日本の食文化の紹介に挑戦している。キム代表にライバル丸亀製麺の出店について尋ねると、「大歓迎です。英国人がうどんを知る機会が増え、市場が広がることはいいことです」と、自信に満ちた返事が返ってきた。【ロンドン横山三加子】