tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(23)「腹いっぱい」より「胸いっぱい」

2009年03月02日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
ならまちを拠点に地域おこしを行うボランティア団体「奈良町座」の月例会が、2/16(月)午後7時から行われた。
※参考:満員御礼!奈良町座の月例会(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/0763a6d24dcb478aae0630bdbbe904d6

この日のゲストスピーカーは、社団法人奈良県観光連盟・専務理事の三浦建史郎氏である。三浦氏は、1945(昭和20)年7月生まれ(奈良市出身)。県立奈良高校から日本交通公社入社・奈良営業所勤務。2005(平成17)年4月にはJTB執行役員・JTB商事代取社長。07年3月に退社し08年5月から現職。同氏のことは以前、私のブログで紹介させていただいたことがある。
※観光地奈良の勝ち残り戦略(15)宿泊者を増やすために(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/faad8920026c954c68afcf92db930dbc

この日の講演のタイトルは「観光地(地域)の魅力づくりとマーケットへの適応」だった。詳しい資料もいただいたので、順に紹介する。
※奈良町座サロン(月例会)への参加申し込み方法:開催日の2日前までに、事務局(奈良オリエント館)宛、電子メールで申し込む(定員は30名程度)
info@creerks.com

1.観光産業を取り巻く環境の変化(旅行形態の変化)
・団体型から家族・グループ・個人型へ。時間消費型、能動型、早着き遅立ち保養型へと変化している。
・注目すべきマーケットは、女性・高齢者・外国人と子供。バリアフリー化と外国人受け入れ体制が求められる。
・旅行は日常消費の一部となり、売上げの増加は単価ではなく客数に依存することになる。
・滞在型旅行が増え、泊食分離(宿泊と食事が別)が増える。すると「宿泊施設に隣接・近接する観光地の魅力づくり」が必要になってくる。奈良でも「食」の充実が求められる。



2.観光資源の発掘から観光商品の企画へ
・奈良には良い観光素材がある。「観光商品化」のノウハウが必要だ。
・観光資源を洗い出し、観光商品のキャッチコピーを作り、認知度・好感度を高めなければならない。

3.認知度を如何にして高めるか
・「リピート、口コミ、パブリシティ」が、お客の需要をつかむ三種の神器。
・個別地域に照準を定めた展開を図らねばならない。橿原市などは「関空から1時間」をウリにしなければならない。
・観光団体などへの電話による問い合わせが多い。札幌市の「ちょっとおしえてコール」などの成功例に学び、「観光案内コールセンター」を設けては。
※ちょっとおしえてコール(札幌市コールセンター)
札幌市のイベント情報、施設案内、様々な制度や手続きの問い合わせ、くらしのちょっとした質問などに親切に答えてくれる電話サービス。年中無休、朝8時から夜9時まで応対してくれる。
http://www.city.sapporo.jp/callcenter/

4.サービスレベルの向上と「もてなし」の心の推進
・時代は「腹いっぱい」から「胸いっぱい」へと変わった。
・お客さま第一主義のキーワードは「お客さまの声を熱心に継続的に聞く」「お客さまの心を有り難く思う」「お客さまの気持ちになる」。
・観光振興に関わる方策の理解と深耕に向けた、継続的な取り組みが必要である。観光振興は一産業としての問題ではなく、地域全体に関わる問題。県民一人ひとりが観光地の経営に携わっている。観光振興は県の財政を豊かにする。



・嵐山光三郎の「良い街の十条件」…川が流れる街、町並みが美しい街、祭りのある街、長老がいる街、若手が長老を立てて活発に活動している街、おばさんが元気な街(オバタリアンは街の潤滑油)、酒と料理がうまい街、上等の蕎麦屋と宿のある街、豆腐屋がある街、古都
・新しい観光需要は「3ショク・ヒルネつき」…食(地域の料理・味)、職(職人技・職人芸)、色(いやらしくない色気)。ヒ(人のもてなし)、ル(ルート、ルーラル=田舎の景色・自然)、ネ(ねぐら・宿)。

5.おわりに
・いろんな施策をマシンガンのように撃ち込みながら、方向性を探っていくべき(走りながら考える)。
・奈良の将来像は「歴史を背景にしたリゾート経営」ではないだろうか。三浦氏の理想は、韓国・慶州の佛国寺(ブルクッサ)。
http://www.tabijin.com/butkokuji.html

これは良い話をお聞きした。「観光商品化のノウハウが必要」は、そのとおりだ。良いキャッチコピーも要る。情報発信が求められる奈良では、「リピート、口コミ、パブリシティ」に、もっと注力しなければならない。「観光案内コールセンター」は良いアイデアである。

ハワイへ行くと、住民すべてが観光客を歓迎してくれる。奈良では、それができていないのではないだろうか。そもそも、住民が奈良のことを知らなさすぎると思う。観光振興は、地域全体の振興に関わる問題であり、県民は観光地経営に携わっているという意識を持たなければならない。それがもてなし(胸いっぱい)の第一歩であろう。

嵐山光三郎の「良い街の十条件」も、面白い。これに当てはまる街は、奈良県下にはたくさんあるではないか。これも「観光商品化のノウハウ」が必要だ。

やはり「いろんな施策をマシンガンのように撃ち込みながら、方向性を探っていくべき」である。失敗しても、またやり直せばよい。うかうかしているうちに、時代のニーズが変わっていく。「カット&トライ」(試行錯誤)の精神で、新たな施策にチャレンジしよう!

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8 コメント

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オモシロイ! (おぜん)
2009-03-02 15:19:33
こんにちは。今日の記事、大変興味深く読ませていただきました。
奈良は観光資源は本当に豊富だと思います。それも、京都、大阪、神戸にはないものが一杯。
これを商品化しなくてはいけないわけですね。
奈良の人は奈良の人ではない人が多いと思います。
なんといっても、寝に帰ってきてる方々が多いので。静かに寝られれば良いと思っているのでは・・・。
でも、来年に1300年祭を控えて悠長なことも言ってられません。
とにかく、行動あるのみですよね。10行動したうちの、一つか二つ成功すれば上出来でしょう。
「歴史を背景にしたリゾート経営」その通りだと思います。早く県庁がホテルになればいいのに。
いっそのこと、県営プールと警察のところが県庁で
県庁がリゾートホテルに。山焼きは一望だし、お水取りも近いし。言うことなし!

この秋、奈良で食のイベントがあるのですか?
返信する
良い旅でした (ikaru(尼御前))
2009-03-02 21:26:24
今しがた、2泊3日の奈良旅行から帰宅しました。
奈良検定1級の認定証を持参して、
心地良い旅行でした。
・・・どこで役に立てるかが課題ですが。^^;

竹林寺で1人の女性に出会いました。
私がなぜ竹林寺を訪れたかが不思議だったようです。
「行基菩薩の墓所を流れる風が心地良くて、
元気を戴いてまた東京で働くんです。」
と答えました。
彼女は笑顔になって、
「私の住む地は、そんな力を持っているんですね。
今更だけど、私の住む地に誇りが持てます。」
とおっしゃいました。
こんな出会いがうれしかったです。

かえる庵のご夫婦や神社の禰宜さん、
月次祭を奉仕されていた氏子代表の皆様、
大仏プリンのお店のキュートな女性、
たくさんの奈良の方とお話しました。

こんな一人旅の楽しさがあるから、
奈良を訪れるのがうれしいです。(*^_^*)

観光という枠をはめると難しいかもしれませんが、
奈良の皆様には素敵な方々がたくさんいらっしゃいます。
皆様の良さが観光客に伝わってくれればと思います。
観光客も、きちんとマナーを持って
やってきてくれれば良いのですし。
返信する
フードフェスティバルなら(仮称) (tetsuda)
2009-03-03 06:05:27
おぜんさん、ikaru(尼御前)さん、コメント有難うございました。

> これを商品化しなくてはいけないわけですね。

> 寝に帰ってきてる方々が多いので。静かに
> 寝られれば良いと思っているのでは・・・。

「奈良の寝倒れ」ですね。眠っている資源を発掘して出口を作る努力が必要です。

> とにかく、行動あるのみですよね。10行動した
> うちの、一つか二つ成功すれば上出来でしょう。

失敗をおそれるのでアクションを起こさない、という通弊もあります。カット&トライですよね。

> この秋、奈良で食のイベントがあるのですか?

はい。県のHP(予算のところ)に《奈良の食材を活用した「(仮称)フードフェスティバルなら」の開催、有名シェフ 等のネットワークの構築》と出ています。軽井沢でCu-Cal(クウカル)という愛称の「軽井沢フードフェスティバル」が開かれていますが、その奈良版を秋にやろう、という計画のようです。おぜんさんの出番がありそうですね。
http://www.cucal.net/2008/index.html

> 今しがた、2泊3日の奈良旅行から帰宅しました。

> 観光という枠をはめると難しいかもしれませんが、奈良の
> 皆様には素敵な方々がたくさんいらっしゃいます。皆様の
> 良さが観光客に伝わってくれればと思います。

奈良県民が県内に泊まっていない、というデータがありますが、はるばる東京からご来県いただき、有難うございました。観光客へのもてなしという点ではまだこれからですが、心根の優しい人が多いので、少し意識すれば大幅に改善できると思います。1300年祭がそのきっかけになると期待しているのですが…。
返信する
奈良市観光海外から (テッド)
2009-03-04 23:44:47
奈良出身米国に住むものですが 欧米からの観光客
増加に貢献できればと思います。三浦氏にもコンタクトして見ます。3月の16日に日本に行きます。 今回は1ヶ月くらいは滞在します。
返信する
海外への情報発信 (tetsuda)
2009-03-05 04:56:06
テッドさん、コメント有難うございました。

米国事情にも奈良にもお詳しいテッドさんのお力があれば、百人力です。奈良県観光連盟は、奈良コンベンションビューローと合体することになっています。組織力を強化して、1300年祭にも備えるようです。

三浦氏は要職にあってお忙しい方ですが、観光連盟と組まれれば、良いコラボが出来るかも知れませんね。私も、テッドさんにお目にかかりたいと思っています。
返信する
”出会いと交流”の舞台 (naraneko)
2009-03-07 07:42:49
テッドさんに会う会をN経済センター主催などで作って欲しいですね。
ところで、吉野発信関連。高度経済成長期、テツダさんの成長期でもありますが、このころ、花岡大学という児童文学者が吉野在住で司馬遼太郎さんらを加えた「吉野風土記」を編集して一種の民俗学的文芸サロンになっていました。のち、花岡さんは京都女史大学教授として京都に移られるのですが、今年は花岡大学さんの生誕100年。15日、なら100年会館で演劇「かたすみの満月」が上演されるようです。
花岡さんの仏教童話は浄土真宗の布教網もあってかつて各国語に翻訳されています。
奈良連隊で東大寺の清水公照師と出会い無二の親友となり、コラボ作品も誕生。
こういう出会いが新しい時代を作るのでしょう。古代律令国家の背骨ができた舞台である平城京遷都
1300年という画期こそ、”出会いと交流”により、”人類の叡智と浪漫”をグローバルスタンダードにしたいものです。
ちなみに清水師は来年が生誕100年で、出身の姫路市の書写山にある工芸館で記念展示が開催されます。
返信する
1300年祭を機に (tetsuda)
2009-03-08 07:33:24
naranekoさん、コメント有難うございました。

> 花岡大学という児童文学者が吉野在住で司馬遼太郎さんらを加えた
> 「吉野風土記」を編集して一種の民俗学的文芸サロンになっていました。

> 東大寺の清水公照師と出会い無二の親友となり、コラボ作品も誕生。

これは存じませんでした。素晴らしい「出会い」があったのですね。

1300年祭は、パビリオンによる展示会形式でなく、セミナーやシンポジウムやコンベンションなどを含めたお祭りになりますので、いろんな「出会いと交流」が行われることでしょう。大いに期待したいですね。
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naranekoさんに感謝 (蔵武S)
2009-03-09 10:29:33
 花岡先生の生誕100年とは知りませんでした。以前に自分が担当していた書籍のアドバイスをいただきに何度かご自宅にお邪魔したことがあります。先生は大淀町佐名手にあるお寺の生まれで、小生も大淀町に縁があるため若輩者に親しく接してくださいました。その折、書籍の推薦文を封書で依頼したところ、返信用の封筒をうっかり入れなかったため、諭された記憶が鮮明です。
 京都の法蔵館から『花岡大学仏教童話全集』が出ています。1冊だけ持っています。さっそく再読します。イラストもとてもいいです。お生まれになった浄土真宗の浄迎寺には童話の石碑があります。実はまだ行ったことがないので、大淀町で法事がある20日に行ってみようかな。
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