夏の甲子園で、今回から「クーリングタイム」が導入された。5回終了後に10分間の休憩を取るのだが、休憩後に足がつる(こむらがえりを起こす)選手が続出して話題となった。毎日新聞(8/16付)〈夏の甲子園、足つり続出 熱中症予防におみそしる ミネラル豊富、専門家推奨〉によると、
※写真は御所南PA「御所の郷(さと)」の豚汁定食。鶏カツつき760円(税込み、以下同じ)
汗によって水分とともにミネラルが体内から出ることで、筋肉のけいれんを起こすなどの熱中症の症状が出やすくなります。(クーリングタイム直後に症状が出たのは)疲労がたまった後半だからというのはもちろんあるが、適切な濃度のミネラルを含んだスポーツドリンクを取っていないことも原因としてあるのではないか。
だしを取ったみそ汁を飲むのもいい。塩分、カルシウム、マグネシウム、ビタミンなどが豊富な赤みそで作ったもの。暑いと飲みにくいので、冷やした「アイスみそ汁」を飲むのもいいかもしれない。試合中だけでなく、朝、夜にしっかり飲むことも大切です。
まいどおおきに食堂(和歌山橋本食堂)の豚汁200円と、ご飯大300円
味噌汁が熱中症予防やこむらがえり対策になるとは、興味深い話だ。いずれにしてもわが家では、夏場は食欲も食事を作る意欲も減退するので、一汁一菜でしのいでいる。これはもちろん、土井善晴さんのベストセラー『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社、のち新潮文庫)にならっているのである。
この土井さんの提案は、「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、「日本人としての生き方」の提案にもなっている。奈良新聞「明風清音」欄に寄稿したので(2023.8.17付)、以下にその内容を紹介する。
「一汁一菜」という美学
先月(2023年7月)の平均気温は、日本の観測史上(1898年以降)最も高く、45年ぶりに記録を更新したそうだ。こんなに暑いと食欲も食事を作る意欲も減退するが、わが家ではこれを「一汁一菜」で乗り切り、今も続けている。大阪生まれの料理研究家・土井善晴さんの著書『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社刊)にならったのである。
▼「料理が大変」という人へ
本書の冒頭には〈この本は、お料理を作るのがたいへんと感じている人に読んで欲しいのです。(中略)だれもが心身ともに健康でありたいと思います。一人の力では大きなことはできませんが、少なくとも自分を守るというのが、「一汁一菜でよいという提案」です。うまくいけば家族、健康、美しい暮らし、心の充実、実現するべき仕事を支える「要」になるかも知れません〉。
▼ご飯と具の多い味噌汁
もともと一汁一菜とは、汁物とおかず(主菜)一品、そこにご飯と漬物をつける。しかし土井さんは「ご飯と具だくさんの味噌汁だけで十分」という。可能なら漬物を添えてもいい(汁飯香)。具材が多いので、味噌汁はダシを引かなくてもよいのだそうだ。
〈ご飯は日本人の主食です。汁は、伝統的な日本の発酵食品の味噌を溶いた味噌汁。その具には、身近な野菜や油揚げ、豆腐などをたくさん入れられます。(中略)一汁一菜とは、ただの「和食献立のすすめ」ではありません。一汁一菜という「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います〉。
▼料理に男女の区別はない
コロナ禍で緊急事態宣言が出され、夫も子どもも家にいるという状況が続き、ご家庭の主婦から「一日三回の食事を用意するのが苦痛」という声を聞いたが、一汁一菜であれば、夫でも作れたのではないか。
〈これなら、どんなに忙しくても作れるでしょう。ご飯を炊いて、菜(おかず)も兼ねるような具だくさんの味噌汁を作ればよいのです。自分で料理するのです。そこには男女の区別はありません〉。
〈(中略)準備に十分もかかりません。五分も掛けなくとも作れる汁もあります。歯を磨いたり、お風呂に入ったり、洗濯をしたり、部屋を掃除するのと同じ、食事を毎日繰り返す日常の仕事の一つにするのです。「それでいいの?」とおそらく皆さんは疑われるでしょうが、それでいいのです。私たちは、ずっとこうした食事をしてきたのです〉。
▼約33万部を売り上げ
本書は単行本が2016年に刊行され 21 万部、コロナの渦中の21年に新潮文庫となって11 万 7 千部を売り上げた。電子書籍と合わせると約33 万部である。それはこのようなシンプルな提案が、読者の心に響いたのだろう。
▼「普通においしい」でよい
〈お肉の脂身やマグロのトロは、一口食べるなり反射的においしい! と感じますが、それは舌先と直結した「脳」が喜んでいるのだと思います。そのように脳が喜ぶおいしさと、身体全体が喜ぶおいしさは別だと思うのです。(中略)ご飯や味噌汁、切り干しやひじきのような、身体に良いと言われる日常の食べ物にはインパクトがないので、テレビの食番組などに登場することもないでしょう。
もし、切り干しやひじきを食べて「おいしいっ!」と驚いていたら、わざとらしいと疑います。そんなびっくりするような切り干しはないからです。若い人が「普通においしい」という言葉使いをするのを聞いたことがありますが、それは正しいと思います。普通のおいしさとは暮らしの安心につながる静かな味です〉。
肩肘張らず、シンプルな食材で一汁一菜を作り、いただく。その繰り返しが健全な生活のリズムを作るのである。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
※写真は御所南PA「御所の郷(さと)」の豚汁定食。鶏カツつき760円(税込み、以下同じ)
汗によって水分とともにミネラルが体内から出ることで、筋肉のけいれんを起こすなどの熱中症の症状が出やすくなります。(クーリングタイム直後に症状が出たのは)疲労がたまった後半だからというのはもちろんあるが、適切な濃度のミネラルを含んだスポーツドリンクを取っていないことも原因としてあるのではないか。
だしを取ったみそ汁を飲むのもいい。塩分、カルシウム、マグネシウム、ビタミンなどが豊富な赤みそで作ったもの。暑いと飲みにくいので、冷やした「アイスみそ汁」を飲むのもいいかもしれない。試合中だけでなく、朝、夜にしっかり飲むことも大切です。
まいどおおきに食堂(和歌山橋本食堂)の豚汁200円と、ご飯大300円
味噌汁が熱中症予防やこむらがえり対策になるとは、興味深い話だ。いずれにしてもわが家では、夏場は食欲も食事を作る意欲も減退するので、一汁一菜でしのいでいる。これはもちろん、土井善晴さんのベストセラー『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社、のち新潮文庫)にならっているのである。
この土井さんの提案は、「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、「日本人としての生き方」の提案にもなっている。奈良新聞「明風清音」欄に寄稿したので(2023.8.17付)、以下にその内容を紹介する。
「一汁一菜」という美学
先月(2023年7月)の平均気温は、日本の観測史上(1898年以降)最も高く、45年ぶりに記録を更新したそうだ。こんなに暑いと食欲も食事を作る意欲も減退するが、わが家ではこれを「一汁一菜」で乗り切り、今も続けている。大阪生まれの料理研究家・土井善晴さんの著書『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社刊)にならったのである。
▼「料理が大変」という人へ
本書の冒頭には〈この本は、お料理を作るのがたいへんと感じている人に読んで欲しいのです。(中略)だれもが心身ともに健康でありたいと思います。一人の力では大きなことはできませんが、少なくとも自分を守るというのが、「一汁一菜でよいという提案」です。うまくいけば家族、健康、美しい暮らし、心の充実、実現するべき仕事を支える「要」になるかも知れません〉。
▼ご飯と具の多い味噌汁
もともと一汁一菜とは、汁物とおかず(主菜)一品、そこにご飯と漬物をつける。しかし土井さんは「ご飯と具だくさんの味噌汁だけで十分」という。可能なら漬物を添えてもいい(汁飯香)。具材が多いので、味噌汁はダシを引かなくてもよいのだそうだ。
〈ご飯は日本人の主食です。汁は、伝統的な日本の発酵食品の味噌を溶いた味噌汁。その具には、身近な野菜や油揚げ、豆腐などをたくさん入れられます。(中略)一汁一菜とは、ただの「和食献立のすすめ」ではありません。一汁一菜という「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います〉。
▼料理に男女の区別はない
コロナ禍で緊急事態宣言が出され、夫も子どもも家にいるという状況が続き、ご家庭の主婦から「一日三回の食事を用意するのが苦痛」という声を聞いたが、一汁一菜であれば、夫でも作れたのではないか。
〈これなら、どんなに忙しくても作れるでしょう。ご飯を炊いて、菜(おかず)も兼ねるような具だくさんの味噌汁を作ればよいのです。自分で料理するのです。そこには男女の区別はありません〉。
〈(中略)準備に十分もかかりません。五分も掛けなくとも作れる汁もあります。歯を磨いたり、お風呂に入ったり、洗濯をしたり、部屋を掃除するのと同じ、食事を毎日繰り返す日常の仕事の一つにするのです。「それでいいの?」とおそらく皆さんは疑われるでしょうが、それでいいのです。私たちは、ずっとこうした食事をしてきたのです〉。
▼約33万部を売り上げ
本書は単行本が2016年に刊行され 21 万部、コロナの渦中の21年に新潮文庫となって11 万 7 千部を売り上げた。電子書籍と合わせると約33 万部である。それはこのようなシンプルな提案が、読者の心に響いたのだろう。
▼「普通においしい」でよい
〈お肉の脂身やマグロのトロは、一口食べるなり反射的においしい! と感じますが、それは舌先と直結した「脳」が喜んでいるのだと思います。そのように脳が喜ぶおいしさと、身体全体が喜ぶおいしさは別だと思うのです。(中略)ご飯や味噌汁、切り干しやひじきのような、身体に良いと言われる日常の食べ物にはインパクトがないので、テレビの食番組などに登場することもないでしょう。
もし、切り干しやひじきを食べて「おいしいっ!」と驚いていたら、わざとらしいと疑います。そんなびっくりするような切り干しはないからです。若い人が「普通においしい」という言葉使いをするのを聞いたことがありますが、それは正しいと思います。普通のおいしさとは暮らしの安心につながる静かな味です〉。
肩肘張らず、シンプルな食材で一汁一菜を作り、いただく。その繰り返しが健全な生活のリズムを作るのである。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
シンプルイズベスト・・これに限りますね。
一汁一菜私も奈良新聞での鉄田さんの記事拝見してから実践しています。体調もぐっと良くなるように思います。夏バテ知らずの健康体になれそうですね。
あまりにも人は食べ過ぎているんだと思います。美食のし過ぎは寿命を縮めますものね。
鉄田さんの原稿大変素敵に書かれていました。感激しています。
> 一汁一菜私も奈良新聞での鉄田さんの記事拝見してから
> 実践しています。体調もぐっと良くなるように思います。
昔から、日本人はこんなシンプルなものを食べていたと思います。体調が良くなるのも、当然です。
> あまりにも人は食べ過ぎているんだと思います。
> 美食のし過ぎは寿命を縮めますものね。
はい、その通りです。私のFBに、ご高齢の方から〈私の周りには、金持ちで美食家が多いですが、たいてい認知症になっています。栄養をとり過ぎても、問題ではないですかね〉という書き込みがありました。
高齢者の身体は「省エネ運転」になりますから、粗食で良いのです。美食は「たまに」で。
> 鉄田さんの原稿大変素敵に書かれていました。感激しています。
恐縮です。次回(8/31付)も、「食」にまつわる話です、お楽しみに!