tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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久米寺で「虫霊法要」/一寸の虫にも五分の魂

2022年07月05日 | 奈良にこだわる
水曜日(2022.6.29)のNHK奈良放送局のニュース番組「ならナビ」で、「虫霊法要」の模様を報じていた。番組のHPによると、
※トップ写真は昨年の虫霊法要の模様、奈良新聞の記事サイト(2021.6.26付)から拝借した

橿原 久米寺 農薬などで駆除された虫を供養「虫霊法要」
殺虫剤や農薬などで駆除された虫を供養する法要が29日、橿原市の寺で行われました。「虫霊法要」というこの法要は、蚊取り線香や殺虫剤のメーカー、それに薬局などの団体が40年ほど前から橿原市の久米寺で毎年この時期に行っているものです。

寺の境内にある虫塚の前におよそ60人の参列者が集まり、虫が好む桃やメロンといった果物や、きゅうりなどの野菜が供えられました。このあと、僧侶がお経をあげる中、参列した人たちは次々に焼香して、静かに手を合わせていました。

法要を営んだ団体によりますと、虫を供養するこうした法要は全国でも珍しいということで、団体の代表の堀本文男さんは「虫の霊とともに、コロナも沈静してほしいと願いを込めました」と話していました。


この話「以前、新聞でも見たな」と思い検索してみると、昨年(2021.6.26付)の奈良新聞がヒットした。

久米寺で「虫霊法要」
人間の生活のために薬剤で駆除された虫を供養する「虫霊法要」が25日、橿原市久米町の久米寺境内虫塚前で営まれた。薬品を扱う業界関係者ら約60人が参列した。虫塚は、県毒物劇物取扱者協会などが昭和58年7月に建立。法要は薬品関係者でつくる県虫霊碑奉賛会が毎年続けている。

虫塚前で、同寺の密門泰範住職らが読経する中、参列者は静かに手を合わせた。新型コロナウイルス感染症の収束もあわせて祈った。堀本文男奉賛会長は「薬品を扱う職業として、犠牲になった虫の魂を思うことが一番大切だ」と法要の意義を話していた。


ふつう今頃の季節に行われるのは、「虫送り」だ。日本国語大辞典「虫送り」には、

農作物の害虫を村外に送りだす呪術的行事。大勢の村人が、松明(たいまつ)をともし、鉦や太鼓をたたいて、「送った送った、何虫を送った」とはやしたてながら、田のあぜを歩き回り、最後に村はずれなどに送って行く。さねもりおくり。虫追い。《季・夏‐秋》

虫送りはウンカなどの害虫を村外に送りだす行事であり、退治された害虫の霊を鎮める法要ではない。以前、上北山村の林泉寺境内に、ゴキブリの霊を鎮めるために「護鬼佛理天(ごきぶりてん)」が祀られていることを当ブログで紹介した。建立したのはビルの清掃会社だ。

日本には「一寸の虫にも五分の魂」ということわざがあり、また日本仏教には「草木国土悉皆成仏」「山川草木(一切衆生)悉有仏性」という教えがある。「虫霊法要」は1983年(昭和58年)から、「護鬼佛理天」の建立は2001年(平成13年)だから、どちらも比較的最近のことだが、根底には害虫の「鎮魂」という考えがある(「害虫」という考え方自体、人類の勝手な決めつけに過ぎないのだが)。害虫の鎮魂とともに、新型コロナウイルスの地上からの撤退を願いたい。
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