先日ネットで、こんな記事を読んだ。しだれ桜は英語でweeping cherry(tree)というのだそうだ。weepは「(涙を流して)泣く」だから、直訳すれば「泣く桜」だ。英米人にとってしだれ桜には、そんな悲しげなイメージがあるのだろうか。
※「京都:すすり泣く桜」(インターネット新聞『JanJan』)
http://www.janjan.jp/area/0604/0604132315/1.php
以前自分のプログの「陽気な桜vs陰気な桜」(4/9)で、今は「陽気な桜」の時代だと書いたが、これだと桜は英米では「陰気な花」になってしまう。なお、しだれ柳もweeping willowというそうだ。willow単独では「柳」なので、やはりweepingが「しだれ」の部分に相当する。
「泣く桜」「泣く柳」という言葉には、どうも納得できない。いくら用例を思い返しても、そんなイメージは浮かび上がってこないのだ。思い余って英国の事情に詳しいメル友(日本人)に、メールで尋ねてみたところ早速次のような丁寧な回答をいただいた。
「多分形状を念頭に置いた表現だと思うのですが……。枝垂れ桜を連合王国で見る機会がなかったために、weeping cherry treeという語法の含意を汲んだ経験がないのです。柳は単にwillowで済ませますので、これまたweepingの含意は判りません。willowそのものにも、『涙する』に連なるイメージはなかったように思います」
なるほど、やはり形か。急いで「ロングマン現代英英辞典」を引いてみるとweepingのところに「(of trees)with the branches hanging down : a weeping WILLOW」(木の枝が垂れている:しだれ柳)とあった。weepingの説明は、これだけである。
ところでメールは以下のように続く。
「連翹(レンギョウ)のことをweeping golden bellとかweeping Forsythiaと言うようです」「学名はForsythia suspensaで(中略)ラテン語のsuspensaには、『涙』に類する意味はありません」
suspensaは英語のsuspending(吊る)、forsythiaは「レンギョウ、モクセイ」なので、学名を直訳すると「吊りレンギョウ」となる。英語ではweepingを冠することで、あの長く伸びた枝の形を強調したのだろう。確かに、鮮やかな黄色で早春を彩るレンギョウは「泣く」イメージとはほど遠い。
最近はお寺のパンフレットにも英語や中・韓国語訳のついたものが多い。じっくり読んでみると、文化の違いが浮かび上がってきそうで面白い。そんな例を見つけ次第、報告することにしたい。
※写真は奈良市の大和文華館(4/2撮影)。紅梅とレンギョウのコントラストがきれいだった。
※「京都:すすり泣く桜」(インターネット新聞『JanJan』)
http://www.janjan.jp/area/0604/0604132315/1.php
以前自分のプログの「陽気な桜vs陰気な桜」(4/9)で、今は「陽気な桜」の時代だと書いたが、これだと桜は英米では「陰気な花」になってしまう。なお、しだれ柳もweeping willowというそうだ。willow単独では「柳」なので、やはりweepingが「しだれ」の部分に相当する。
「泣く桜」「泣く柳」という言葉には、どうも納得できない。いくら用例を思い返しても、そんなイメージは浮かび上がってこないのだ。思い余って英国の事情に詳しいメル友(日本人)に、メールで尋ねてみたところ早速次のような丁寧な回答をいただいた。
「多分形状を念頭に置いた表現だと思うのですが……。枝垂れ桜を連合王国で見る機会がなかったために、weeping cherry treeという語法の含意を汲んだ経験がないのです。柳は単にwillowで済ませますので、これまたweepingの含意は判りません。willowそのものにも、『涙する』に連なるイメージはなかったように思います」
なるほど、やはり形か。急いで「ロングマン現代英英辞典」を引いてみるとweepingのところに「(of trees)with the branches hanging down : a weeping WILLOW」(木の枝が垂れている:しだれ柳)とあった。weepingの説明は、これだけである。
ところでメールは以下のように続く。
「連翹(レンギョウ)のことをweeping golden bellとかweeping Forsythiaと言うようです」「学名はForsythia suspensaで(中略)ラテン語のsuspensaには、『涙』に類する意味はありません」
suspensaは英語のsuspending(吊る)、forsythiaは「レンギョウ、モクセイ」なので、学名を直訳すると「吊りレンギョウ」となる。英語ではweepingを冠することで、あの長く伸びた枝の形を強調したのだろう。確かに、鮮やかな黄色で早春を彩るレンギョウは「泣く」イメージとはほど遠い。
最近はお寺のパンフレットにも英語や中・韓国語訳のついたものが多い。じっくり読んでみると、文化の違いが浮かび上がってきそうで面白い。そんな例を見つけ次第、報告することにしたい。
※写真は奈良市の大和文華館(4/2撮影)。紅梅とレンギョウのコントラストがきれいだった。