tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

キャメロン・スミスさんからのお礼状(for 吉野杉の割り箸)

2013年03月20日 | 林業・割り箸
2月17日、「キャメロン・スミスさんに、吉野杉の割り箸を発送しました」という記事を書いた。キャメロン・スミスさんは、オーストラリア・リズモー市の職員で、姉妹都市である大和高田市で研修を受けていた。

新聞で「マイ箸を使う親日家」と紹介されていたので、「マイ箸ではなく、割り箸発祥とされる吉野の割り箸を、どんどん使い捨ててください。吉野割り箸は、端材を活用したエコ商品ですから」と書いて、吉野杉の割り箸をたくさんお送りした。

その後、同市の女性職員から「スミスさんのマイ箸については、職場でも議論がありました。母国では偏った情報しか入らず、また良い割り箸が入手できない事情から、このように誤解されていたようです。いただいた割り箸は、シッカリ使わせいただくよう、伝えます」とのお電話をいただき、安心していた。

このたび、キャメロン・スミスさんご自身から、手書き(英文)の挨拶文を添えたグリーティングカードをいただいた。そこには「あなたからの贈り物をいただき、とても嬉しく、また驚きました」「いただいた割り箸を使うことで、食事がとても楽しくなりました」「日本で滞在した時間をエンジョイし、日本語と日本文化に関する一層深い知識を身につけることができました」云々と書かれていた。ちゃんと理解していただけたようである。

スミスさん。県土の77%が森林という奈良県と違い、お国の森林面積は国土のわずか5%ですので、「割り箸が森林を守る」という考えが理解できにくいと思いますし、良質な割り箸も入手できないと思います。しかし、割り箸や森林保護に関する「正しい知識」を、ぜひお国で普及させてくださることを、大いに期待しています!
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キャメロン・スミスさんに、吉野杉の割り箸を発送しました!

2013年02月17日 | 林業・割り箸
今朝(2/17付)の奈良新聞社会面に「姉妹都市 友好深まれ リズモー市職員・スミスさん 大和高田市派遣 故郷PRに意欲」という大きな見出しが踊った。リード文は

大和高田市と国際友好姉妹都市を結ぶオーストラリア・リズモー市から市職員のキャメロン・スミスさん(44)が大和高田市役所に1ヵ月間、派遣され、広報情報課に勤務している。3月1日までの予定で、周囲が「日本人より日本人らしい」と評する親日家のスミスさんは、両市の友好に寄与しようと意欲的に仕事に取り組んでいる。

大和高田市は1963年、オーストラリアのリズモー市と姉妹都市提携を結んだ。これは日豪間の姉妹都市の第1号だった。経緯は大和高田市のHPに出ていて、今も学生の相互派遣(交換留学生)を行っている。奈良新聞の記事からの引用を続ける。
※トップ写真は吉野杉の天削(てんそげ)割り箸(Webかっぱ橋 より)

今年が両市の友好都市締結50周年に当たるため、リズモー市から職員派遣の申し出があり、大和高田市が受け入れた。スミスさんは市役所の食品衛生管理の仕事をしており、「日本の食の安全を学ぶとともに、両市の友好関係を深めよう」と派遣職員に志願したという。

リズモー市のPR活動などに従事しているが、周囲の市職員らはスミスさんについて「まじめで何でも興味を持ち、意欲的」と評価する。


ここまでは良い、問題はこの次である。

自分の箸を持ち、懇親会でも日本酒をたしなむ。約20年前から空手を習い、2段の腕前で、滞在中は橿原市内の道場へ稽古に出向く。近鉄高田市駅前のアパートに1人往まいしているが、「食べることが好き。日本はコンビニ弁当、外食なんでもおいしい。困らない」。特にたこ焼きがお気に入りとか。

日本酒も空手もたこ焼きも、大いに結構だが「自分の箸を持ち」はいけない。これを受けて記事の小見出しにも「マイ箸使う親日家」と出てしまっている。

 割り箸はもったいない?―食卓からみた森林問題 (ちくま新書)
 田中淳夫
 筑摩書房

キャメロン・スミスさん、決してマイ箸など持たず、吉野杉やヒノキ(Japanese cedar or Japanese cypress grown in Yoshino district)の割り箸をどんどん使い捨てて下さい。吉野杉・ヒノキの割り箸は、通常は捨てられる部分(丸太から柱材などを取った残りの部分)から作る立派な「エコ商品」(ecology commodity)です。プラスチック製(made of plastic)などのマイ箸よりずっと舌触りが良く、食べ物を美味しく感じます。マイ箸を持つ人は、往々にして「食べたらティッシュでさっと拭いて箸箱に入れ、また次に使う」という不潔なことをしている人も多いです。母国で「市役所の食品衛生管理の仕事」をされているスミスさんは、まさかそんなことはされていないでしょうけど。

吉野杉やヒノキの割り箸を使うことは、森林や林業の活性化につながります。杉やヒノキの人工林は、植林して何度も間伐して、最後に主伐してまた植林する、というサイクルの繰り返しです。木を使わないと森林が荒れ、花粉症や山崩れの原因になります。まさにスミスさんの記事の隣に「林業再生へ思い熱く 橿原で『フォーラム十津川』」という記事が出ていて、十津川村における森林・林業の再生について、真剣な討議が行われた様子が紹介されています。

割り箸が地域と地球を救う
佐藤 敬一,鹿住 貴之
創森社

森林・林業を再生するために最も大切なことは、もっと私たちが木材を使うことです。だから林野庁は全国的な規模で木づかい運動を推進しています。私も、割り箸をテーマにして、たくさんのブログ記事を書いています。当ブログ左端の「カテゴリー」の「林業・割り箸」をご覧ください。また、高田木材協同組合をお訪ねになれば、もっと詳しいことを教えてもらえると思います。

スミスさんは大和高田市の「広報情報課」で勤務されていますが、広報マンに求められる役割の第一は、「正しい情報を受け入れ、それを発信すること」です。誤った情報がもとで判断を誤り、それが発信されてしまってはいけません。

私は吉野杉の割り箸をカバンに忍ばせていて、飲食店でプラスチック箸が出てきたらそっと割り箸を取り出し、それで食事しています。いわば「マイ割り箸」です。吉野杉は木目が緻密で美しく、持った感触も温かいですし、麺類がつるつる滑ることもありません。使い捨てますので、清潔です。

奈良県の県土の77%は森林です。しかし木材を伐採する量より、蓄積される量(木が育つ量)の方が大きいので、どんどん森林蓄積が増えているのが現状です。奈良新聞のスミスさんの記事の末尾には、こう記されています。

スミスさんは「リズモー市のことを、もっと多くの大和高田市民に知ってもらえるよう宣伝したい。個人的には歴史ある奈良の風物や空手を通じて日本の文化を学びたい」と話す。吉田誠克市長は「職員派遣は、リズモー市が50周年を積極的に盛り上げようという気持ちが伝わって大変うれしい。スミスさんには両市の友好の懸け橋になってもらいたい」と期待する。

スミスさん。本日クロネコ便で、吉野杉の割り箸(上端を斜めにカットした天削箸)を市役所宛、たくさん発送いたしました(送料の方が高いくらいの安価な箸ですがさすが吉野、シッカリと作られています)。まずは香りを嗅いでください(smell it directly)。そしてコンビニ弁当もたこ焼きも、外食時にも、この割り箸をお使いください。相当な量ですので、余ったら母国に持ち帰り、お友達にも差し上げてください。

ぜひ吉野杉・ヒノキの素晴らしさと、かつては奈良県の伝統的地場産業(traditional local industry)のトップランナー(the first runner)だった林業・製材業(lumbering industry)の抱える問題点、日本の「木の文化」のことなどを教えてあげてください。それこそが「広報情報課」のtrainee としての the key (most important point) です。

※2/19追記
当記事を読まれた大和高田市役所・広報情報課勤務の女性から、お電話をいただいた。スミスさんの「マイ箸」に関しては、来日された時から議論があったとのこと。母国では偏った情報しか入らず、また良い割り箸が入手できない事情から、このように誤解されていたとのことであった。日本人の吉田遊福さんでさえ永らく誤解されていのだから、ムリないのかも知れない。「いただいた吉野杉の割り箸は、シッカリと使わせいただくよう伝えます」とのことで、一件落着。


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吉野杉のランチョンボード、販売スタート!(by 暮らしの道具デザインコンペ)

2012年08月27日 | 林業・割り箸
奈良の木ブランド課(奈良県農林部)は、8月24日(金)から「吉野杉ランチョンボード」の販売を開始した。奈良新聞(8/25付)の見出しは、「吉野杉の温かみを食卓に 高級ランチョンボードを商品化」だ。記事によると、

県は24日、デザイナーや集成材メーカーと連携し、樹齢約150年の高級吉野杉で作った食卓の敷板「ランチョンボード」を商品化したと発表した。きょう25日からJR奈良駅構内のアンテナショップで販売する。温もりのある杉の木目や香りが特徴。家庭や料理店での利用を見込む。

写真は丸商店のサイトより拝借(次の写真も)

県がデザイナー、集成材メーカーと連携 きょうから販売
同ボードは昨年、県が初めて公募した吉野材を使った「暮らしの道具」デザインコンペの優秀賞受賞作品。吉野材の魅力をPRしようと、県が商品化を主導。デザインをプロダクトデザイナーの南政宏さん(滋賀県立大学生活デザイン学科助教)が担当し、吉野町の集成材メーカー丸商店が製品化した。製造工程は吉野杉の集成材を機械でくりぬいて板状に加工し、手杵業で研磨。汚れを防ぐため表面に天然の植物油を塗り、接地面にポリウレタンのクッシヨンを取り付けている。



丸商店会長の丸剛さんは「杉の香りや肌触りから安らぎを感じてもらえる。県奈良の木ブランド課は「使うほどに味わいが出る魅力的な1品」と太鼓判。サイズは縦45センチ、横32センチ、高さ1.2センチ。重さは約500グラム。価格は6,000円。取扱店は県内の特産品を集めたアンテナショップ「ナラ イン ザ ボックス」(奈良市三条本町)。問い合わせは県奈良の木ブランド課、電話0742(27)7470。



デザインされた南政宏さん。第1回「暮らしの道具」デザイン
コンペ
で撮影(トップ写真および下の写真とも 2011.7.13開催)

県のHPには《「吉野材」を使った「暮らしの道具」デザインコンペ入賞作品の商品化第1号》と大きく出ている。このコンペは県が主催し、ハートツリー株式会社が運営、南都銀行とNPO法人Yoshino Heart(吉野ハート)が協力して実施された。2010年10月に募集が開始され、12月3日の締切日までに全国から219点の応募があった。1次・2次審査に残った15作品を対象とした「最終審査会・入賞作品発表会」が、11年7月13日(火)東京・虎ノ門の「森カフェ」(フォレスタ虎ノ門内)で行われ、私も関係者として現地に赴いた。



厳正な審査の結果、最優秀賞(1作品)に「割り鉛筆」、優秀賞(4作品)に「一輪挿し」「スツール」「プレート皿」とともに「ランチョンボード」が選ばれた。審査委員長講評によると《優秀賞「ランチョンボード」は、極めてノーマルなフォルムを持っている。しかしその形は、デザイナー自身が作り、生活の中で検証したうえで自信を持って提案したデザインである。使いやすく、吉野杉の端正な柾目を生かす形でもある》。直線ではなく曲線でデザインされていて、見た目も手触りも、とても優しい。そこに杉の柾目が、まっすぐ横切るのである。

一昨年に募集開始したコンペから2年を経て、やっと1作品が商品化され、ほっと胸をなで下ろしているところである。奈良新聞は報じていないが、同日、県は第2回「暮らしの道具」デザインコンペの募集要領も発表している。当ブログでも近々、詳しくお知らせすることにしたい。
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吉野割り箸 vs 中国産割り箸

2012年04月04日 | 林業・割り箸
朝日新聞奈良版(3/29付)に《吉野割り箸売り込み中 「介在」省き中国産と勝負 奈良町「地域活性局」 東京、質・安さPR》という記事が載っていた。藤丸正明(ふじまる・ただあき)くんへのインタビュー記事である。レポーターは高橋尚之記者である。記事全文を紹介すると、

吉野産の割り箸を、「奈良町情報館」(奈良市中院町)を運営する株式会社「地域活性局」が東京の料理店に売り込み、販路を広げている。手触りの良さや香りの高さから高級品として知られるが、介在する流通会社を省くことで割安な価格で売り込んでいる。地域活性局は奈良町の観光案内や県内の特産品販売などが業務。

3年前の夏、京都市中京区の京料理店「魚棚(うおんたな)」の店主山本純示さん(50)が観光客として情報館を訪れ、販売されていた吉野の割り箸の安さに驚いた。山本さんが店で仕入れていた吉野の割り箸は複数の流通会社が間に入っていたが、情報館は下市町の問屋のみを介して仕入れているため、価格は安く抑えられていた。山本さんは地域活性局社長の藤丸正明さん(28)に「取引がしたい」と持ちかけ、以前より1~3割安い1膳約5.9円で仕入れることに。

山本さんの紹介で情報館から神奈川県箱根町や福岡市の料理店に出荷することも決まった。県外で販売されている吉野の割り箸の高さに気づいた藤丸さんは、東京の料理店などに尋ねて回ったところ、「同じ値段なら少しでもよい箸を使いたい」との声を多数聞いた。「直接取引で従来品より安く出荷すれば勝負できる」。今後の需要拡大や観光情報の発信を見越し、東京での営業を決めた。

昨秋、県の緊急雇用対策事業を活用して東日本大震災で被災した福島県と千葉県の20代の男性3人を雇い、東京都にオフィスを開設。11月から料理店への営業を始めた。福島県いわき市出身の柿崎智広さん(28)は、約30種類の箸を持って日本料理店に営業に出向く。国内に多く流通している中国産が1膳1~3円に対し、吉野産は約3.5~30円。中には値段が大差ないものもある。「ひとくちに吉野の箸と言っても、これだけの種類と価格帯があることが知られていない。『この価格で買えるのか』と驚かれることも多い」と柿崎さん。これまでに41軒との契約に成功。「木目がきれい」「香りが全然違う」など評判は上々という。藤丸さんは「県の特産品への潜在的な需要は確実にある。生産者の利益になるよう、適正価格で取引を広げたい」と意気込む


割り箸はもったいない?―食卓からみた森林問題 (ちくま新書)
田中淳夫
筑摩書房

早速、森林ジャーナリストの田中淳夫氏が、ご自身のブログで、この記事を「吉野割り箸のコスト・パフォーマンス」として紹介されていた。《山村と観光地を結びつけて地域を活性化しようというのが狙いだ。実際に吉野を歩いて、川上村の高原野菜などに目をつけて直接仕入れて、奈良町で料理店に卸すなどしている。そして割り箸の販売もしていた。その地域活性局が、首都圏まで営業の手を延ばしたのだ。それも割り箸というアイテムで》。

《すると、次々と注文が取れた。その理由は、「安いから」。これまで吉野の割り箸は、いくつもの問屋を通って高くなっていたが、直販するとかなり安くなる。1膳5.9円で扱うらしい。この価格は、中国産よりは高いが、その品質を見れば、十分に戦える値段となった。これまで10円以上するケースだって普通だった。これは、ちょっとした眼からウロコである。「品質がいいから高くてもいい」あるいは「箸は食べられたら安いもので十分」ではなく、「品質がよくても許容価格があり、その範囲なら多少上乗せしてもよい箸を使いたい」だったのだ。これって、値段設定が間違っていたということ?》。

《ようは、コスト・パフォーマンスだ。品質差と価格差が釣り合わないと売れないのだ。これまで、その割合を間違っていたのかもしれない。中国産元禄箸が原価1円以下なのに対して、同じ品質(元禄箸など)の国産箸に3円つけていたら、売れない。かといって天削・利久箸など高級箸だから差別化だと言って10円という値段をつけても売れない。もちろん、箸袋などで工夫して20円~50円で売るケースもあるが、それは例外的な付加価値だろう》。

《そこそこ安くすると売れるのかもしれない。もちろん、製造価格を下げては何にもならないので、流通コストの削減が重要だろう。生産者と小売り店を直に結ぶか、産地問屋が直に消費者(外食店)と結ぶか。まだまだ国産割り箸に可能性があることを感じる。ちなみに東京の営業を回っているのは、緊急雇用対策による男性3人。みな震災被災者だそうである》。

流通革命は終わらない―私の履歴書
中内功
日本経済新聞社

かつて東京大学の林周二教授が、「問屋無用論」を説いた(『流通革命』1962年)。いわゆる「中抜き」である。ダイエー創業者の中内功氏も、その信奉者であった。その後、大型ショッピングセンターや「B to C」(e コマース)などが登場したが、日本では問屋(中間流通業者)が健在である。日本の消費財はアイテム数が膨大であり、小売業が欧米ほど寡占化されていないので、問屋の調達・供給機能が求められるのである。その裏には、日本の消費者ニーズの「細やかさ」が挙げられるかも知れない。

それにしても1膳5.9円というのは、魅力的な価格設定である(もとは1~3割高だから、6.5~8.4円ということになる)。県内には製造業者が82社(軒)あるとのことだが、ほとんどが零細業者(いわゆる家内制手工業)なので、価格決定権はない。「中抜き」による割安設定で、「許容価格の範囲内なら、多少割高でも品質のいい箸を使いたい」という買い手の心をつかんだのである。

価格破壊 (角川文庫)
城山三郎
角川書店

先日、藤丸くんはFacebookに《東京での弊社の取引契約軒数が30軒を越えました。50日に満たない営業日数でしたが、開始は上々です。吉野の割箸の現在での年間出荷本数は20万3000膳。吉野本葛が年間45kg。「本物が届くのが良い」とよく言われる》。さらに今日は《3月末で41軒でしたが、今月は来週には50軒目を取ることが出来そうです。昨日、京都祇園2軒と、北新地1軒・難波1軒いただきました。今日もスタッフが祇園で紹介を貰って回っています》と、頼もしいことを書いておられた(「地域活性局が5周年」)。吉野割り箸の販売は、ほとんどすべてが中国産割り箸からの乗り換えなのだそうだ。1膳5.9円なら太刀打ちできるのである。

私は大阪へ出ると、よく道具屋筋を歩く。かつて、店頭は「中国産の木製割り箸」(アスペン、白樺など)で占められていた。その後中国で木がなくなってきたので「これは吉野割り箸のチャンス到来!」と思っていたが、結局「中国産の竹製割り箸」と「プラスチック箸」に置き換えられただけだった。有害な薬品(漂白剤や防カビ剤)が検出された竹箸は論外だし、プラスチック箸は、あまりにも口当たりや手触りが悪い。

環境問題とは何か (PHP新書)
富山和子
PHP研究所

最近、国会議事堂の議員食堂で国産割り箸を置くようになったという話を聞いたが、私の勤務先の社員食堂でも、月に1度の「地産地消の日」にはヒノキの天削箸(B級品)が出てくる。これは口当たりも触感も良いし、値段も安い。以前私は「県下飲食店で提供する全ての料理に、エコ商品である吉野割り箸をつけよう」という提言をしたことがあったが、やはりこれは間違っていなかった(「観光立県・奈良への提言」)。

藤丸くんの尽力により吉野割り箸のコストパフォーマンスが改善され、東京など大都市の料理店に普及しつつあるのは、とても有り難いことである。私も、もっと吉野割り箸の良さをPRしたいと思う。小学生だって、あんなに頑張っているのだから。
※参考:「環境にやさしい吉野割り箸を使おう」(小学生の卒業論文)、「割り箸鑑定団」(インターネット新聞「JanJan」)
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環境にやさしい吉野割り箸を使おう!

2012年04月03日 | 林業・割り箸
奈良新聞(3/28付)で、「吉野杉でつくられた環境に優しい割り箸」という卒業論文を読んだ。紙面の2ページを割いた堂々の大論文である。書かれたのは、帝塚山学園の塚本奈都子さんである。「割り箸は環境を破壊している」という誤解を払拭するに十分な材料を提供している。しかも驚くべきことに、これは大学ではなく「小学校」の卒論なのである! 400字詰め原稿用紙30枚以上に及ぶ力作の一部を以下に紹介する。
※トップ画像は日本割箸協会のホームページより

Ⅰ.テーマについて
奈良県上北山村の新屋箸製作所で割り箸作りの工程を見学させていただきました。新屋さんの説明によると、割り箸は端材という本来なら捨てられてしまう部分を利用して作られているとのことでした。これまで私が思っていた割り箸のイメージとかけはなれていて、環境に優しいものだということを知りました。そこで割り箸のことをもっとくわしく調べようと思い、このテーマを選択しました。



Ⅱ.割り箸を知ろう
1.割り箸の歴史

箸そのものは聖徳太子の時代に「箸食制度」が取り入れられたが、「割り箸」は江戸時代に飲食店とともに普及した。ただし、このときの割り箸は竹製で「引裂箸(ひさきばし)」と呼ばれるものだった。明治時代になると衛生面への配慮から料亭で割り箸が出されるようになったが、それは高級な店に限った話で、ほとんどの飲食店では洗って使える塗り箸を使っていた。しかし、昭和初期になると割り箸製造機が誕生。大量生産が可能になり、飲食店の多くが割り箸を置くようになったのである。

1970年代以降は、外食産業の急激な発展、衛生面への関心の高まりなどにより、割り箸の需要が激増。国内生産が追いつかなくなる。結果、量と安さを求めて外材の割り箸を大量に輸入するようになった。現在使われている割り箸は、明治時代に吉野(奈良県)で樽材として使っていたスギの端材(必要な部分を切り取ったときにできる余った木片)を有効活用することから生まれた。もともと箸は一本ずつばらぱらで作られていたのだが、吉野出身の小間治三郎という箸職人によって現在の1膳そろったものが発明された。



割り箸などにする杉の端材。桜井市の松原木材で撮影(10.3.4)

2.割り箸の作り方
一部で森林の敵と思われている「割り箸」だが、「吉野割り箸」は国内資源の有効利用といえるだろう。「割り箸」を2本に割る行為は、これからの食事を始めることを意味し、日常生活の流れに精神的なけじめをつける有効な方法とされている。「吉野割り箸」は、有効な資源活用の上、機能と便利さ、衛生的であるために1回で使い捨てるようになっている。

吉野地方では、あくまでも森林の恵みを余すことなく活用し、森林の保護育成を図り、清らかな水と緑、澄んだ空気を生み出す自然を守っていくことを考え、先人の知恵である「吉野割り奢」作りの灯をいつまでも絶やすことなく、大切に守り続けている。

株式会社マーヴェックのホームページより

3.割り箸の種類
・利久

千利休が考案した卵中(らんちゅう)を基にして作られたことからこの名前がついた。千利休は、客を招く日の朝、必ず吉野地方より取り寄せた杉材を、客の人数分だけ小刀で両端を細かく加工して、軽くて持ちやすく、食べやすい箸を削り作ったといわれている。当初は利休と呼ぱれていたが、「利を休む」という語呂を嫌った人々によって利久と改められたものが広まった。

・天削(てんそげ)
角や平面のシャープさとまっすぐな美しい木目など「杉材」の特徴、美しさを最も感じさせる形状である。この杉の柾目部を正面に加工した杉柾(すぎまさ)天削が、割り箸の高級品とされている。 

・卵中(らんちゅう)
千利休が考案したとされる中太両細の「中広平箸」だ。両端は丸く削られ、中央部は持ちやすく転がりにくいように平らになっている。古来、日本ではお正月、お祝いなど晴れの日には普段使っている箸ではなく、その日のための新しい箸を使い、片方を人が、もう片方を神様が使うという意味で両口の端を使う習慣がある。卵中は割り箸ではなく、もともと2本に分かれた箸である。



春日ホテルのレストランで出てくる吉野杉の天削箸(08.10.30撮影)

4.割り箸は今…
現在、日本国内では年間250億膳もの割り箸が使われているが、実はその98%は海外から輸入されたものだ(その内99%は中国製)。そのため、国内の割り箸工場数も年々減少し、平成18年には101エ場になっている。エ場数の減少に伴い、日本国内の割り箸製造業に携わる労働者も減っており、平成元年には約4,000人だったが平成17年には450人に激減した。
(tetsuda注:2005年の統計では250億膳もの割り箸が使われていたが、現在は190億膳を割っている。)

・都道府県別割り箸の生産量
国内の割り箸の生産量は奈良県(82工場)が最も多く、全体の約7割を占めている。次いで石川県(10工場)が約1.5割、北海道7工場)が1割を占めている。

・間伐材の利用と京都議定書
割り箸だけでなく、木材も輸入材に押され、日本の木材の自給率は2割まで落ち込んでいる。林業は衰退し、山村の高齢化が進み、林業の担い手がおらず、手入れできずに荒廃している森林も少なくない。割り箸に限らず、間伐材を有効活用することは、資金を山に還元し、森林整備を促進することにつながる。



向かって左の3膳は卵中(らんちゅう)、それ以外は天削(てんそげ)

6.国産割り箸と中国産割り箸の特徴
・外国産割り箸の特徴

①原木すべてを割り箸に加工している。
②中国産割り箸の店頭小売価格は1円程度(国産は1膳3円程度)。原料は日本とは異なるアスペンやシラカバ、竹を使用している。

7.間伐とは
植林された杉や桧は、年々の成長に伴い木々の間隔が狭くなってしまう。そのままにしておくと、陽光が入らなくなり、ひ弱な木になってしまい、将来立派な丸太(原木)を育成するためには過密になる木々の一部を計画的に伐る作業が必要である。



第9回奈良県“暮らし”と“環境”フェスティバルで(3/31撮影)

・吉野の間伐材と吉野の割り箸
間伐は一般的に、杉については16~20年より行い、40年頃までは3~5年に1度、70年頃までは7~10年、以後10~20年に1度行われる。小径木時の30年前後位までは主として保育を目的に行われ、その後は木材の利用を目的として間伐されている。桧については、杉より遅く20~25年と30~35年に2割強程度行われ、それ以降は成長に応じて行われている。

8.日本の割り箸は森を守り、環境保護に貢献している
箸の原料である吉野の杉材はすべて植林で、建築材などに利用した木材の端材を有効活用したものである。古来、吉野では切った分を植林して山を守り、手入れすることで循環させながら自然を守ってきた。割り箸は、その中で出る端材や森の手入れによる間伐材から作られたものだ。この割り箸は、森林資源の維持や林業の育成に貢献し、森を守る重要な役目を担っている



環境フェスティバル会場・帝塚山学園の展示(3/31)

・日本の森を守る意義
日本の山林の多くは木を育て、間伐をして森の手入れをすることで守られてきた。近年の林業の衰退で森の手入れが行き届かなくなることで、森の保水力が弱まり土砂災害の元になったり、花粉飛散の1因にもなっているといわれている。森林は手入れすることで木の成長を促しCO2をより吸収するようになるが、手入れをしないとCO2の吸収も落ちてしまう。これらを解決する方法は、私たち消費者が国産の木を積極的に使うことに他ならない。木はCO2を吸収して育つので、日本の森で育った木を使用して焼却してもCO2は循環するだけで増加することはない。

・吉野割り箸の削りくずも有効利用されている
割り箸を製造する過程で「木毛くず」「木綿くず」「おがくず」の他、「切れ端(木の端)」などの木くずができるが、決して無駄にはされていない。「木毛くず」はスレート屋根の断熱材としての木毛セメント板、「木綿くず」は植生マットや室内装用の壁紙の原材料として、有効に活用されている。「おがくず」や「切れ端(木の端)」はお風呂の芳香剤、各割り箸工場で箸加工時の煮沸や乾燥の燃料として余すところなく利用されている



帝塚山学園の展示に、小学生の卒論が並んでいた。手前が塚本さんの作品(同日)

Ⅲ.調査の結果
■新屋箸製作所をたずねて
《新屋箸製作所》
所在地=奈良県吉野郡上北山村 工場の面積=約1200㎡(建物のみ)従業員数=8人 創業=40年

《社長の新屋佳久さんに質問させていただいた》
1.原料はどこから調達していますか?→吉野付近
2.品質を高めるためのエ夫は?→刃物が良く切れるように手入れをしている
3.加工の工夫は?→お箸がまっすぐに割れるように手間をかけること
4.この仕事を始めて何年ですか?→23年
5.どのように出荷していますか?→問屋・小売店・家庭・ホテルなどに直接配送する
6.作業の一番大変なところは何ですか?→柾目引き
7.この仕事をしていて、一番嬉しいことは何ですか?
→「あなたのところで作ったお箸しか買っていないよ」と言われること
8.この仕事に関して将来の夢は?→もっとこのお箸のことを知ってもらいたい
9.箸の生産量は?→1日約3万膳、1年720万膳(良質なもの)
10.どの時期の木が良いお箸になりますか?→11月~4月の木
《新屋箸製作所の方々からのメッセージ》
「自然を愛する心」と「伝統を守り続ける心」を1人でも多くの人に伝えたいです。



塚本さんの卒論。カラー写真もきれいに収まっていた(同日)

■割り箸アンケート調査
他の人達の割り箸への関心が知りたいと思い、下記のようなアンケートを実施した。
1.割り箸をエコだと思うか? YES 7人(27%)、NO 19人(73%)
2.1.の答えの理由(抜粋)
YESの理由
・間伐材で作られているので森林破壊ではなく、逆に計画的な植林になる
・箸を洗うための水や洗剤の節約
・間伐材はそのままであればゴミになるが、割り箸としてリサイクルしている。
・使い捨て(衛生的にOK)
NOの理由
・間伐材を他にも使う道があれば必要ではないと思う
・森林伐採を行い割り箸を作るため、エコではないと思う。
・使い捨てでもったいない
・ほとんどが輸入品(中国)で森林を伐採しているため
・不要な間伐材だが、それを割り箸にする時にエネルギーを使用するから
・自然破壊につながるのではないか
・資源の無駄使い
・MY箸ブームの今、割り箸はどこで使うのかによりエコになったり、そうでなくなったりするように思う


割り箸はもったいない? ― 食卓からみた森林問題 (ちくま新書)
田中淳夫
筑摩書房
 
Ⅳ.まとめ
普段何気なく使っている割り箸。実はその9割以上が外国産のものだったのですか、誰もが知っていて、どこにでもある身近な存在の割り箸で、特に国産のものに私は注目してみました。調べを進めていくと、割り箸にも「利久箸」「天削箸」「卵中」などの種類があり、国産割り箸は残材や端材、間伐材を利
用しているエコ商品であり、薬品なども一切使用されていません。そして、使い捨てではあるけれど、リサイクルも可能なのです。割り箸を使うことが、森
林破壊やゴミの増加の問題などに直結しているわけではないのだということを知りました。

そこでアンケートを行ってみて、他の人が割り箸のことをどう考えているのかを知りたいと思いました。いただいた回答を見ると「MY箸ブーム」というわりには「割り箸はエコである」という人が多かったです。それでもNOと答える人が圧倒的でした。「割り箸は使い捨てだからもったいない」というのも正しい意見だと私は思います。けれども、国産割り箸の良さ、すなわち「その製造に関わって間伐が活発におこなわれるようになり、森は活性化されて森林が豊かになる」という点を、皆が理解していくことができれぱと思います。間伐材を使用する環境に優しい国産割り箸を私達が使うことは、「森林破壊」でも「環境汚染」でもないのだということを、もっと広くアピールする必要があるのではないかと思います。



吉野ヒノキの割り箸。秋葉原の箸勝本店で撮影(2008.9.11)

Ⅴ.感想
毎晩、毎晩遅くまで書いていて、正直とってもしんどかったです。それでもなんとか仕上げることができました。最後には大きな達成感を味わうことができて嬉しかったです。お忙しい中、工場見学をさせてくださった新屋箸製作所の新屋さん、アンケートに答えてくださった皆さん、電話で色々教えてくださった日本割り箸協会の方、ありがとうございました。そして最後に毎晩手伝ってくれた父や母に感謝します。


いかがだろう。とても行き届いた卒論だ。「毎晩、毎晩遅くまで書いていて、正直とってもしんどかったです」という感想には実感がこもっている。それにしても塚本さんの将来が楽しみだ。割り箸から垣間見える林業の実態や切り捨て間伐の現況、国内では木が余っているのに海外から輸入するという矛盾、山村の高齢化など、さまざまな問題を「割り箸」という切り口で鮮やかに提示している。

国産の割り箸は端材・間伐材の有効利用だからどんどん使うべきだ、という正論は、徐々に市民権を得つつあるが、外食産業などでは(品薄になってきた)中国割り箸を止めてもプラスチック箸に切り替えたりと、国産割り箸への代替があまり進んでいないのが現状である。環境にやさしく、しかも手触りや口当たりが良くて料理が美味しく食べられる吉野割り箸を、どんどんお使いください!
コメント (2)
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