今朝(2/17付)の奈良新聞社会面に「姉妹都市 友好深まれ リズモー市職員・スミスさん 大和高田市派遣 故郷PRに意欲」という大きな見出しが踊った。リード文は
大和高田市と国際友好姉妹都市を結ぶオーストラリア・リズモー市から市職員のキャメロン・スミスさん(44)が大和高田市役所に1ヵ月間、派遣され、広報情報課に勤務している。3月1日までの予定で、周囲が「日本人より日本人らしい」と評する親日家のスミスさんは、両市の友好に寄与しようと意欲的に仕事に取り組んでいる。
大和高田市は1963年、オーストラリアのリズモー市と姉妹都市提携を結んだ。これは日豪間の姉妹都市の第1号だった。経緯は
大和高田市のHPに出ていて、今も学生の相互派遣(交換留学生)を行っている。奈良新聞の記事からの引用を続ける。
※トップ写真は吉野杉の天削(てんそげ)割り箸(Webかっぱ橋 より)
今年が両市の友好都市締結50周年に当たるため、リズモー市から職員派遣の申し出があり、大和高田市が受け入れた。スミスさんは市役所の食品衛生管理の仕事をしており、「日本の食の安全を学ぶとともに、両市の友好関係を深めよう」と派遣職員に志願したという。
リズモー市のPR活動などに従事しているが、周囲の市職員らはスミスさんについて「まじめで何でも興味を持ち、意欲的」と評価する。
ここまでは良い、問題はこの次である。
自分の箸を持ち、懇親会でも日本酒をたしなむ。約20年前から空手を習い、2段の腕前で、滞在中は橿原市内の道場へ稽古に出向く。近鉄高田市駅前のアパートに1人往まいしているが、「食べることが好き。日本はコンビニ弁当、外食なんでもおいしい。困らない」。特にたこ焼きがお気に入りとか。
日本酒も空手もたこ焼きも、大いに結構だが「自分の箸を持ち」はいけない。これを受けて記事の小見出しにも「マイ箸使う親日家」と出てしまっている。
キャメロン・スミスさん、決してマイ箸など持たず、吉野杉やヒノキ(Japanese cedar or Japanese cypress grown in Yoshino district)の割り箸をどんどん使い捨てて下さい。吉野杉・ヒノキの割り箸は、通常は捨てられる部分(丸太から柱材などを取った残りの部分)から作る立派な「エコ商品」(ecology commodity)です。プラスチック製(made of plastic)などのマイ箸よりずっと舌触りが良く、食べ物を美味しく感じます。マイ箸を持つ人は、往々にして「食べたらティッシュでさっと拭いて箸箱に入れ、また次に使う」という不潔なことをしている人も多いです。母国で「市役所の食品衛生管理の仕事」をされているスミスさんは、まさかそんなことはされていないでしょうけど。
吉野杉やヒノキの割り箸を使うことは、森林や林業の活性化につながります。杉やヒノキの人工林は、植林して何度も間伐して、最後に主伐してまた植林する、というサイクルの繰り返しです。木を使わないと森林が荒れ、花粉症や山崩れの原因になります。まさにスミスさんの記事の隣に「林業再生へ思い熱く 橿原で『フォーラム十津川』」という記事が出ていて、十津川村における森林・林業の再生について、真剣な討議が行われた様子が紹介されています。
森林・林業を再生するために最も大切なことは、もっと私たちが木材を使うことです。だから林野庁は全国的な規模で
木づかい運動を推進しています。私も、割り箸をテーマにして、たくさんの
ブログ記事を書いています。当ブログ左端の「カテゴリー」の「林業・割り箸」をご覧ください。また、
高田木材協同組合をお訪ねになれば、もっと詳しいことを教えてもらえると思います。
スミスさんは大和高田市の「広報情報課」で勤務されていますが、広報マンに求められる役割の第一は、「正しい情報を受け入れ、それを発信すること」です。誤った情報がもとで判断を誤り、それが発信されてしまってはいけません。
私は吉野杉の割り箸をカバンに忍ばせていて、飲食店でプラスチック箸が出てきたらそっと割り箸を取り出し、それで食事しています。いわば「マイ割り箸」です。吉野杉は木目が緻密で美しく、持った感触も温かいですし、麺類がつるつる滑ることもありません。使い捨てますので、清潔です。
奈良県の県土の77%は森林です。しかし木材を伐採する量より、蓄積される量(木が育つ量)の方が大きいので、どんどん森林蓄積が増えているのが現状です。奈良新聞のスミスさんの記事の末尾には、こう記されています。
スミスさんは「リズモー市のことを、もっと多くの大和高田市民に知ってもらえるよう宣伝したい。個人的には歴史ある奈良の風物や空手を通じて日本の文化を学びたい」と話す。吉田誠克市長は「職員派遣は、リズモー市が50周年を積極的に盛り上げようという気持ちが伝わって大変うれしい。スミスさんには両市の友好の懸け橋になってもらいたい」と期待する。
スミスさん。本日クロネコ便で、吉野杉の割り箸(上端を斜めにカットした天削箸)を市役所宛、たくさん発送いたしました(送料の方が高いくらいの安価な箸ですがさすが吉野、シッカリと作られています)。まずは香りを嗅いでください(smell it directly)。そしてコンビニ弁当もたこ焼きも、外食時にも、この割り箸をお使いください。相当な量ですので、余ったら母国に持ち帰り、お友達にも差し上げてください。
ぜひ吉野杉・ヒノキの素晴らしさと、かつては奈良県の伝統的地場産業(traditional local industry)のトップランナー(the first runner)だった林業・製材業(lumbering industry)の抱える問題点、日本の「木の文化」のことなどを教えてあげてください。それこそが「広報情報課」のtrainee としての the key (most important point) です。
※2/19追記
当記事を読まれた大和高田市役所・広報情報課勤務の女性から、お電話をいただいた。スミスさんの「マイ箸」に関しては、来日された時から議論があったとのこと。母国では偏った情報しか入らず、また良い割り箸が入手できない事情から、このように誤解されていたとのことであった。日本人の吉田遊福さんでさえ永らく誤解されていのだから、ムリないのかも知れない。「いただいた吉野杉の割り箸は、シッカリと使わせいただくよう伝えます」とのことで、一件落着。