「風のフジ丸」は少年忍者だが、「奈良の藤丸」は青年社長である。太宰府市(福岡県)出身、弱冠28歳で株式会社地域活性局(奈良町情報館内)の代表取締役を務めるしっかり者だ。今年で創業5周年を迎える同局は、2月13日(月)、奈良ロイヤルホテル(奈良市法華寺町)で創業5周年記念式典とパーティを開いた。奈良新聞(2/15付)「茶道でまちおこしを 創業5周年 地域振興へ新規5事業」によると、
《地域振興事業を手がける地域活性局(奈良市中院町、藤丸正明[ふじまる・ただあき]代表)は13日夜、奈良市法華寺町の奈良ロイヤルホテルで創業5周年記念式典を開き、事業計画として茶道によるまちおこしなどに取り組む方針を発表した。同社は平成19年奈良市の旧市街地・奈良町で創業。観光案内施設の運営を主体に川上村で栽培した野菜の朝市や吉野地域の特産品販売事業を展開している。あいさつで藤丸氏は観光を軸に山間部と都市部を流通で結び地域振興を図ってきたことを報告。今後の事業計画では茶道とエ芸の芸術祭▽町家保存の地域基金設立▽商店・宿泊施設の紹介サイト開設など五つの新規事業を発表した》。
《続いて、茶道に造詣の深い臨済宗相国寺派管長の有馬頼底師が「茶道と観光」を主題に特別講演。自ら取り組んだ観光事業が誘客につながっだことを例示し「何かやらないと何も起こらない。やるとなったら協力することが大切」と訴えた。茶道と奈良の関わりについては「村田珠光がわび茶を提唱したのが奈良の地。茶の湯を通して文化交流が盛んになった」と説明。「若いエネルギーを受け入れ協力してほしい」とエールを送った。この後同社が計画する芸術祭の看板を揮毫した。式典には仲川元庸奈良市長ら約140人が出席した》。
冒頭の藤丸くんによる「地域活性局 5年間の実績報告」が、コンパクトに5年間の活動をまとめていて、興味深く拝聴した。いただいたPowerPoint資料から抜粋すると、
1.生産地育成事業
気候に恵まれた川上村で食材を生産し、古くからの生活文化が注目されている「ならまち」で消費する事により、「ならまち」に必要な食材の生産地を形成し、過疎地域の活性化を図る。
平成22年より、奈良県まほろばふるさと再生事業を受託し、過疎化に悩む川上村に2名の社員を常駐させ観光地に必要な食材を供給する生産地化を加速させました。同6月より、蕎麦の生産に着手。1年目は約60kg収穫することができました。
朝市は平成17年10月より元興寺文化財研究所の南側の軒先をお借りして開始し、翌18年6月より、現在の奈良町情報館前にて行ってきました。原則月1回 第二土曜日に開催しています。昨年度より朝市の定義などを大幅に改良し、それまで平均100名前後だったお客様も多いときでは300名を越えるようになりました。また、昨年10月より設置している直売コーナーも好評です。
2.消費地振興事業(観光地域振興事業・奈良町情報館事業)
4年2ヵ月で来館者数30万名を突破。当初学生期間中の定休日週2回を、卒業後はなくし、開館日数を増やした。また、受付で口頭案内を充実させた結果、広告店舗も徐々に増え、当初2軒だった広告店舗も現在は125軒。
観光に関する現状:観光客数減と不景気による購買力の低下で予断を許さない状況である。不特定多数の場所での宣伝が、消費に結びつかない客層を集めている。
年度、来館者数(開館日数)来館者数の1日あたり平均
19年 18,135人 ( 68日)267人
20年 56,860人 (335日)170人
21年 80,735人 (365日)221人
22年 75,932人 (364日)209人
23年 69,755人 (358日)195人
合計 301,417人(1,490日)202人
奈良町おさんぽMAP 町中の周遊促進のため製作
H21年度版 協賛: 50店 10万部発行
H22年度版 協賛: 84店 20万部発行
H23年度版 協賛:105店 20万部発行
H24年度版 協賛:111店 20万部発行
3.県外出荷事業(奈良の魅力ある特産品の出荷事業部)
東日本大震災で被災した失業者を雇用し、継続可能な事業を行う条件で1年7ヵ月の期間事業(認定)を受けました。10月に福島にて就職説明会を開き2名雇用するなど合計3名が東京で11月半ばから営業を開始しました。現在、東京の26軒の料理店と契約を結んでおり、今後も新規拡大と共に、取引できる品数を徐々に増やしていく予定です。
奈良が全国に誇る特産品(吉野割箸・吉野本葛・日本酒・奈良漬など)は多くの高級料理店で取引されています。奈良から直送するとともに、奈良の観光情報を発信することで「ならまち」および奈良県の観光潜在需要の掘り起こします。また、奈良県出身の東京在住者の会を立ち上げ、弊社と共同で朝市を開始するとともに、東京における奈良の特産品の需要を拡大するための事業を進めていこうと考えています。
平成21年8月取引開始(観光客として来館の京都の料理店と)。23年6月奈良県緊急雇用事業に事業提案、9月受託決定。10月 福島市にて企業合同説明会に出席、11月 営業開始。12月 契約店舗10軒を超す、24年1月 契約店舗20軒を超す、2月13日現在 26軒。4月 朝市開始予定
東京地域での契約先
清澄白河(=江東区 5)銀座(1)大塚・駒込(9)麹町(7)神楽坂(4)合計(26)
他地域での契約先
箱根(1)京都(1)大阪(1)福岡(1)合計(30)
4.新規事業
茶道と工芸の芸術祭
村田珠光や、『天王寺屋会記』に登場するお茶室「高坊(たかぼう)」など、奈良の旧市街地には茶道に関する縁(ゆかり)が多い。近年、地域の生活文化に魅了される観光客が訪れる「ならまち」で魅せる「もてなしの文化」を形成する。
ならまち戦争展
日本の夏は戦争に関するニュースや行事・ドラマが並ぶ。「奈良」地域として経験した戦争の歴史を後世に語り継ぐ戦争展を行う。
デジタルインフォメーション事業
これまでに積み上げてきた地域の情報をホームページで紹介し、県外から「奈良・ならまち」に訪れようとしている観光客に情報発信を行う。商店・宿泊施設の紹介を行い、観光客に奈良のサービスをまとめて紹介できるサイトを作る。
商店交流会の開催
「ならまち(奈良市景観形成地区内)」には約300軒の商店があり、個々のお店の個性は他の観光地に比べて際立っている。そこで多くの商店と交流のある弊社が、商店の交流会を開催し横のつながりを増やすと共に、まちづくり団体などとの共催なども検討することで、地域内の交流を増やす。
地域基金事業構想
地域住民出資による基金を立ち上げ、空家などを家主から借り受け、企画を基に改装などを行い、大々的に建物に入居する人を募集し、選考する。また、吉野林業や吉野葛など、奈良県内の産業を地域で紹介する事により町家を活用してもらう事を企画する。地域内に一定の産業資本を入れる事で町家の維持保存等に役立ち、地域力向上を計る。
以下の4枚は、称名寺で撮影(1/25)
いかがだろう。太宰府から奈良大学に入学して地域おこしに取り組み、創業してわずか5年の青年がこれだけのことをやり、しかも、これからも5つの新規事業を手がけるというのだから、大したものである。
新規事業のなかでは「茶道と工芸の芸術祭」が目をひく。来年(2013年)の2月に実施する予定だそうだ。茶礼祖・村田珠光(じゅこう)が住した称名寺は近鉄奈良駅の北側にあるし、高坊一族ゆかりの高林寺はならまち内だ。さらに生駒市高山の茶筌は、茶筅の全国シェアの8~9割を占めているし、橿原市今井町は今井宗久(千利休、津田宗及とともに茶の湯の天下三宗匠の1人)の出身地といわれる。宇陀市の仏隆寺は、 空海が唐から持ち帰った最古の茶を栽培し、大和茶発祥の地とされている。奈良で茶道に関するイベントを行うというのは、うってつけなのだ。
ちなみに称名寺(奈良市菖蒲池町)とは、『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』によると《鎌倉時代の文永二年(一二六五)に興福寺の学僧であった専英・琳英兄弟が常行念仏の道場として創建。当初は興福寺の北にあったため興北寺ともいう。宝永元年(一七〇四)と宝暦十二年(一七六二)の大火で堂宇がことごとく焼失し、享和二年(一八〇二)に今の本堂が再建された。秘仏である本尊の光烟光仏は厨子入りの阿弥陀如来立像。同じく本尊の釈迦如来坐像は釈迦念仏道場である東堂、阿弥陀如来坐像は阿弥陀念仏道場である西堂から移されたもので、いずれも重要文化財に指定されている。境内の千体石仏群は松永久秀の多聞城に使われ、廃城とともに散乱していた石仏や墓石を第十九代観阿上人が集めたものという。茶礼祖と仰がれる村田珠光が住して禅を学んだことから、独爐庵(通称、珠光庵)という茶室があり、毎年五月十五日の命日に珠光忌法要が営まれる》。
また高林寺(奈良市井上町)は、同書には《融通念仏宗の尼寺。奈良時代、藤原豊成の屋敷跡に建てられた寺で、豊成の娘の中将姫はここで成人し、當麻寺に入って出家、法如尼となった。豊成は死後この地に葬られ、藤原家の興隆を祈って高林寺と名付けられた。平重衡の南都焼討ちで焼失したが再興、境内の豊成の廟塔(墳墓)を守って今日に至っている。また、桃山時代には数奇者の高坊一族が住み、茶湯等を楽しみ、奈良町の数寄者の一大サロンを形成、奈良町文化の中心となった》とある。
2/15付の奈良新聞 には「奈良町で茶の湯満喫 地域活性局 元興寺などで茶会」という記事も出ていた。《奈良市の旧市街地「奈良町」の茶道文化と工芸を紹介する茶会が14日、同市中院町の元興寺など2カ所で行われ、地域の住民ら約50人がお茶や作品に親しんだ。同茶会は、奈良町で観光案内所を運営する地域活性局が来年2月に予定している芸術祭のプレイベントとして開催。茶道を通じてまちおこしを図ろうと企画した》。
《元興寺では、県出身の指物師、故川崎幽玄さんの監修で平成6年に造られた茶室「泰楽軒」を会場に開かれ、幽玄さんの次男で茶道具士の鳳嶽さん(74)も同席。参加者は、橿原市今井町の茶道表千家の蔵六会社中のもてなしで、茶道文化を味わった。地域活性局の藤丸正明代表は「奈良町は茶道愛好家が多く茶の湯の文化に縁の深い土地。お茶を通じてもてなしの文化を醸成したい」と話していた》とある。
藤丸くんの事業報告、有馬頼底師の特別講演「茶道と観光」に続いて始まった「創業5周年記念パーティ」に参加した約140人の顔ぶれは、創業当初からの支援者である野崎充亮氏(株式会社春日庵代表取締役)、今西清悟氏(株式会社今西清兵衛商店会長)、大辻康夫氏(地域活性局特別顧問)をはじめ、仲川元庸氏(奈良市長)、森川裕一氏(明日香村長)、森本公誠師(東大寺長老)、河野良文師(大安寺貫主)、辻村泰善師(元興寺住職)など、錚錚(そうそう)たる面々が出席されていた。何より、地元・奈良町の住民・支援者がたくさん来られていたのが良かった。名簿を数えると、ざっと50人余りになった。帰りには、奈良町直行のマイクロバスまで用意されていた。「遠くの親戚より近くの他人」、地元の支持が一番なのである。
昨年(2011年)3月、経済産業省は全国のソーシャルビジネス(社会的企業)121の事例を集めた「ソーシャルビジネス・ケースブック」を刊行した。そのなかで奈良県では唯一、地域活性局が採択・紹介された。紹介文を抜粋すると
村(生産地)とまち(消費地)をつないで、地域経済循環型プロジェクトを実現
概要:山間地域の活性化のため学生が集まりスタート。奈良県吉野郡川上村の農産物や吉野の特産品などを販売する朝市の開催及び配達の山間地域振興振興事業と、消費地である奈良の旧市街地「ならまち」に立ち上げた観光案内所「奈良町情報館」を運営し、観光サービスを企画するなどの事業を実施しており、地場産食材の調達を容易にし、消費地を観光地化するビジネスを展開。
POINT
○奈良県の生産地である農村と消費地である都市を結んで、産直農産物の販売を事業化
○奈良市の旧市街地に民設の観光案内所を開設し、多くの集客を実現
○民設の観光案内所の実績が認められ、旧市街地にある公共施設の指定管理者に選ばれた
ボランティア活動やNPO法人ではなく、株式会社を設立して「ビジネス」にしているところがいい。「茶道と工芸の芸術祭」にしても「地域住民出資による基金」にしても、事業としての展開を目論んでいるのである。
最近も藤丸くんはFacebookに、こんなことを書いていた。《東京での弊社の取引契約軒数が30軒を越えました。50日に満たない営業日数でしたが、開始は上々です。吉野の割箸の現在での年間出荷本数は20万3000膳。吉野本葛が年間45kg。「本物が届くのが良い」とよく言われるようです》《会社の創業(記念)パーティー以降、発表した事業への協力や支援の申し出を多くいただいています。本当に感謝です》。
吉野割り箸の年間出荷量「20万3000膳」は、中国産割り箸からの乗り換えなのだそうで、これは驚きだし、奈良県林業界、ひいては日本の林業界にとって、大変有り難いことである。まさに「木づかい」への貢献である。林野庁さん、これは表彰ものですよ。
藤丸くんはじめ地域活性局の皆さん、これからも若い力で会社を、そして地域を盛り上げてください。奈良の皆さん、これからも彼らの活動を支援してまいりましょう!
《地域振興事業を手がける地域活性局(奈良市中院町、藤丸正明[ふじまる・ただあき]代表)は13日夜、奈良市法華寺町の奈良ロイヤルホテルで創業5周年記念式典を開き、事業計画として茶道によるまちおこしなどに取り組む方針を発表した。同社は平成19年奈良市の旧市街地・奈良町で創業。観光案内施設の運営を主体に川上村で栽培した野菜の朝市や吉野地域の特産品販売事業を展開している。あいさつで藤丸氏は観光を軸に山間部と都市部を流通で結び地域振興を図ってきたことを報告。今後の事業計画では茶道とエ芸の芸術祭▽町家保存の地域基金設立▽商店・宿泊施設の紹介サイト開設など五つの新規事業を発表した》。
《続いて、茶道に造詣の深い臨済宗相国寺派管長の有馬頼底師が「茶道と観光」を主題に特別講演。自ら取り組んだ観光事業が誘客につながっだことを例示し「何かやらないと何も起こらない。やるとなったら協力することが大切」と訴えた。茶道と奈良の関わりについては「村田珠光がわび茶を提唱したのが奈良の地。茶の湯を通して文化交流が盛んになった」と説明。「若いエネルギーを受け入れ協力してほしい」とエールを送った。この後同社が計画する芸術祭の看板を揮毫した。式典には仲川元庸奈良市長ら約140人が出席した》。
冒頭の藤丸くんによる「地域活性局 5年間の実績報告」が、コンパクトに5年間の活動をまとめていて、興味深く拝聴した。いただいたPowerPoint資料から抜粋すると、
1.生産地育成事業
気候に恵まれた川上村で食材を生産し、古くからの生活文化が注目されている「ならまち」で消費する事により、「ならまち」に必要な食材の生産地を形成し、過疎地域の活性化を図る。
平成22年より、奈良県まほろばふるさと再生事業を受託し、過疎化に悩む川上村に2名の社員を常駐させ観光地に必要な食材を供給する生産地化を加速させました。同6月より、蕎麦の生産に着手。1年目は約60kg収穫することができました。
朝市は平成17年10月より元興寺文化財研究所の南側の軒先をお借りして開始し、翌18年6月より、現在の奈良町情報館前にて行ってきました。原則月1回 第二土曜日に開催しています。昨年度より朝市の定義などを大幅に改良し、それまで平均100名前後だったお客様も多いときでは300名を越えるようになりました。また、昨年10月より設置している直売コーナーも好評です。
2.消費地振興事業(観光地域振興事業・奈良町情報館事業)
4年2ヵ月で来館者数30万名を突破。当初学生期間中の定休日週2回を、卒業後はなくし、開館日数を増やした。また、受付で口頭案内を充実させた結果、広告店舗も徐々に増え、当初2軒だった広告店舗も現在は125軒。
観光に関する現状:観光客数減と不景気による購買力の低下で予断を許さない状況である。不特定多数の場所での宣伝が、消費に結びつかない客層を集めている。
年度、来館者数(開館日数)来館者数の1日あたり平均
19年 18,135人 ( 68日)267人
20年 56,860人 (335日)170人
21年 80,735人 (365日)221人
22年 75,932人 (364日)209人
23年 69,755人 (358日)195人
合計 301,417人(1,490日)202人
奈良町おさんぽMAP 町中の周遊促進のため製作
H21年度版 協賛: 50店 10万部発行
H22年度版 協賛: 84店 20万部発行
H23年度版 協賛:105店 20万部発行
H24年度版 協賛:111店 20万部発行
3.県外出荷事業(奈良の魅力ある特産品の出荷事業部)
東日本大震災で被災した失業者を雇用し、継続可能な事業を行う条件で1年7ヵ月の期間事業(認定)を受けました。10月に福島にて就職説明会を開き2名雇用するなど合計3名が東京で11月半ばから営業を開始しました。現在、東京の26軒の料理店と契約を結んでおり、今後も新規拡大と共に、取引できる品数を徐々に増やしていく予定です。
奈良が全国に誇る特産品(吉野割箸・吉野本葛・日本酒・奈良漬など)は多くの高級料理店で取引されています。奈良から直送するとともに、奈良の観光情報を発信することで「ならまち」および奈良県の観光潜在需要の掘り起こします。また、奈良県出身の東京在住者の会を立ち上げ、弊社と共同で朝市を開始するとともに、東京における奈良の特産品の需要を拡大するための事業を進めていこうと考えています。
平成21年8月取引開始(観光客として来館の京都の料理店と)。23年6月奈良県緊急雇用事業に事業提案、9月受託決定。10月 福島市にて企業合同説明会に出席、11月 営業開始。12月 契約店舗10軒を超す、24年1月 契約店舗20軒を超す、2月13日現在 26軒。4月 朝市開始予定
東京地域での契約先
清澄白河(=江東区 5)銀座(1)大塚・駒込(9)麹町(7)神楽坂(4)合計(26)
他地域での契約先
箱根(1)京都(1)大阪(1)福岡(1)合計(30)
4.新規事業
茶道と工芸の芸術祭
村田珠光や、『天王寺屋会記』に登場するお茶室「高坊(たかぼう)」など、奈良の旧市街地には茶道に関する縁(ゆかり)が多い。近年、地域の生活文化に魅了される観光客が訪れる「ならまち」で魅せる「もてなしの文化」を形成する。
ならまち戦争展
日本の夏は戦争に関するニュースや行事・ドラマが並ぶ。「奈良」地域として経験した戦争の歴史を後世に語り継ぐ戦争展を行う。
デジタルインフォメーション事業
これまでに積み上げてきた地域の情報をホームページで紹介し、県外から「奈良・ならまち」に訪れようとしている観光客に情報発信を行う。商店・宿泊施設の紹介を行い、観光客に奈良のサービスをまとめて紹介できるサイトを作る。
商店交流会の開催
「ならまち(奈良市景観形成地区内)」には約300軒の商店があり、個々のお店の個性は他の観光地に比べて際立っている。そこで多くの商店と交流のある弊社が、商店の交流会を開催し横のつながりを増やすと共に、まちづくり団体などとの共催なども検討することで、地域内の交流を増やす。
地域基金事業構想
地域住民出資による基金を立ち上げ、空家などを家主から借り受け、企画を基に改装などを行い、大々的に建物に入居する人を募集し、選考する。また、吉野林業や吉野葛など、奈良県内の産業を地域で紹介する事により町家を活用してもらう事を企画する。地域内に一定の産業資本を入れる事で町家の維持保存等に役立ち、地域力向上を計る。
以下の4枚は、称名寺で撮影(1/25)
いかがだろう。太宰府から奈良大学に入学して地域おこしに取り組み、創業してわずか5年の青年がこれだけのことをやり、しかも、これからも5つの新規事業を手がけるというのだから、大したものである。
新規事業のなかでは「茶道と工芸の芸術祭」が目をひく。来年(2013年)の2月に実施する予定だそうだ。茶礼祖・村田珠光(じゅこう)が住した称名寺は近鉄奈良駅の北側にあるし、高坊一族ゆかりの高林寺はならまち内だ。さらに生駒市高山の茶筌は、茶筅の全国シェアの8~9割を占めているし、橿原市今井町は今井宗久(千利休、津田宗及とともに茶の湯の天下三宗匠の1人)の出身地といわれる。宇陀市の仏隆寺は、 空海が唐から持ち帰った最古の茶を栽培し、大和茶発祥の地とされている。奈良で茶道に関するイベントを行うというのは、うってつけなのだ。
ちなみに称名寺(奈良市菖蒲池町)とは、『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』によると《鎌倉時代の文永二年(一二六五)に興福寺の学僧であった専英・琳英兄弟が常行念仏の道場として創建。当初は興福寺の北にあったため興北寺ともいう。宝永元年(一七〇四)と宝暦十二年(一七六二)の大火で堂宇がことごとく焼失し、享和二年(一八〇二)に今の本堂が再建された。秘仏である本尊の光烟光仏は厨子入りの阿弥陀如来立像。同じく本尊の釈迦如来坐像は釈迦念仏道場である東堂、阿弥陀如来坐像は阿弥陀念仏道場である西堂から移されたもので、いずれも重要文化財に指定されている。境内の千体石仏群は松永久秀の多聞城に使われ、廃城とともに散乱していた石仏や墓石を第十九代観阿上人が集めたものという。茶礼祖と仰がれる村田珠光が住して禅を学んだことから、独爐庵(通称、珠光庵)という茶室があり、毎年五月十五日の命日に珠光忌法要が営まれる》。
また高林寺(奈良市井上町)は、同書には《融通念仏宗の尼寺。奈良時代、藤原豊成の屋敷跡に建てられた寺で、豊成の娘の中将姫はここで成人し、當麻寺に入って出家、法如尼となった。豊成は死後この地に葬られ、藤原家の興隆を祈って高林寺と名付けられた。平重衡の南都焼討ちで焼失したが再興、境内の豊成の廟塔(墳墓)を守って今日に至っている。また、桃山時代には数奇者の高坊一族が住み、茶湯等を楽しみ、奈良町の数寄者の一大サロンを形成、奈良町文化の中心となった》とある。
2/15付の奈良新聞 には「奈良町で茶の湯満喫 地域活性局 元興寺などで茶会」という記事も出ていた。《奈良市の旧市街地「奈良町」の茶道文化と工芸を紹介する茶会が14日、同市中院町の元興寺など2カ所で行われ、地域の住民ら約50人がお茶や作品に親しんだ。同茶会は、奈良町で観光案内所を運営する地域活性局が来年2月に予定している芸術祭のプレイベントとして開催。茶道を通じてまちおこしを図ろうと企画した》。
《元興寺では、県出身の指物師、故川崎幽玄さんの監修で平成6年に造られた茶室「泰楽軒」を会場に開かれ、幽玄さんの次男で茶道具士の鳳嶽さん(74)も同席。参加者は、橿原市今井町の茶道表千家の蔵六会社中のもてなしで、茶道文化を味わった。地域活性局の藤丸正明代表は「奈良町は茶道愛好家が多く茶の湯の文化に縁の深い土地。お茶を通じてもてなしの文化を醸成したい」と話していた》とある。
藤丸くんの事業報告、有馬頼底師の特別講演「茶道と観光」に続いて始まった「創業5周年記念パーティ」に参加した約140人の顔ぶれは、創業当初からの支援者である野崎充亮氏(株式会社春日庵代表取締役)、今西清悟氏(株式会社今西清兵衛商店会長)、大辻康夫氏(地域活性局特別顧問)をはじめ、仲川元庸氏(奈良市長)、森川裕一氏(明日香村長)、森本公誠師(東大寺長老)、河野良文師(大安寺貫主)、辻村泰善師(元興寺住職)など、錚錚(そうそう)たる面々が出席されていた。何より、地元・奈良町の住民・支援者がたくさん来られていたのが良かった。名簿を数えると、ざっと50人余りになった。帰りには、奈良町直行のマイクロバスまで用意されていた。「遠くの親戚より近くの他人」、地元の支持が一番なのである。
昨年(2011年)3月、経済産業省は全国のソーシャルビジネス(社会的企業)121の事例を集めた「ソーシャルビジネス・ケースブック」を刊行した。そのなかで奈良県では唯一、地域活性局が採択・紹介された。紹介文を抜粋すると
村(生産地)とまち(消費地)をつないで、地域経済循環型プロジェクトを実現
概要:山間地域の活性化のため学生が集まりスタート。奈良県吉野郡川上村の農産物や吉野の特産品などを販売する朝市の開催及び配達の山間地域振興振興事業と、消費地である奈良の旧市街地「ならまち」に立ち上げた観光案内所「奈良町情報館」を運営し、観光サービスを企画するなどの事業を実施しており、地場産食材の調達を容易にし、消費地を観光地化するビジネスを展開。
POINT
○奈良県の生産地である農村と消費地である都市を結んで、産直農産物の販売を事業化
○奈良市の旧市街地に民設の観光案内所を開設し、多くの集客を実現
○民設の観光案内所の実績が認められ、旧市街地にある公共施設の指定管理者に選ばれた
ボランティア活動やNPO法人ではなく、株式会社を設立して「ビジネス」にしているところがいい。「茶道と工芸の芸術祭」にしても「地域住民出資による基金」にしても、事業としての展開を目論んでいるのである。
最近も藤丸くんはFacebookに、こんなことを書いていた。《東京での弊社の取引契約軒数が30軒を越えました。50日に満たない営業日数でしたが、開始は上々です。吉野の割箸の現在での年間出荷本数は20万3000膳。吉野本葛が年間45kg。「本物が届くのが良い」とよく言われるようです》《会社の創業(記念)パーティー以降、発表した事業への協力や支援の申し出を多くいただいています。本当に感謝です》。
吉野割り箸の年間出荷量「20万3000膳」は、中国産割り箸からの乗り換えなのだそうで、これは驚きだし、奈良県林業界、ひいては日本の林業界にとって、大変有り難いことである。まさに「木づかい」への貢献である。林野庁さん、これは表彰ものですよ。
藤丸くんはじめ地域活性局の皆さん、これからも若い力で会社を、そして地域を盛り上げてください。奈良の皆さん、これからも彼らの活動を支援してまいりましょう!
多くの方からいただいた物は、また多くの人に反していけるようにこれからも前を向いていこうと思います。
「人の歴史」が好きな自分が、日本で一番古くから人が住み続けている町を舞台に仕事をしていることにとても幸せを感じています。
これからもよろしくお願いします。
> 続けていくことができているのは、辛い事よりも楽しい事の方が多かったからだと思います。
> その楽しい出来事の多くが奈良に昔から住んでいる地域の方からいただいたものでした。
奈良の人は親切ですし、付き合いが深まれば深まるほど、心根の優しさが実感できますね。
> 多くの方からいただいた物は、また多くの人に返して
> いけるようにこれからも前を向いていこうと思います。
「借りたものは返さなければ…」というスピーチがありましたね。それは事業活動でお返しください、期待しています。
> このレポートで藤丸君の軌跡と未来展望が手に取るように。
出席して「ぼんやり」聞いていた人より、当記事を読まれたほうがよく分かると思いますよ。
> 次回は7周年ですか、10周年ですか? その時は必ず出席します。
次は、奈良町情報館・開館5周年の10月5日あたりだと思いますよ、お楽しみに。