「小百合様」の写真をじっと見ていて気が付いた。 顔の左右が大きく違うのである。 左、右半分だけ見ると、 「小百合様」 に見えない。 左右合わせて 「小百合様」 なのである。 写真を左右半分ずつ見ていて、はたと気付いた。 結婚する前、正しくは「駆け落ち」する前、 「あかね様」の従姉妹と一緒に食事をしたことがある。 二人共に共通して面長で、俗に言う「馬面」であった。
二人を前に食事をしていると、馬二頭と食事をしている感じがした。 我が家の家系には、面長な人間がいない。 だからそう感じたのである。 ついそれを口に出してしまった。
二人にこっぴどく怒られて、その夜は「食事を奮発」させられた。
「小百合様」の写真を、右と左と別々に見ていて気付いた。 左半分が、妻の従姉妹の顔である。 右半分が、我妻 「あかね様」の顔である。 似て非なるところがある。 全く別人になる。
「小百合様」の「憂いと優しさ」の表情は、実にこの左右非対称なところから生まれていると気付いた。
世に云う「サユリスト」は、この左右非対称の顔に魅せられて、五十数年の長きにわたり 「恋い慕ってきた」 のではなかろうか。 「小百合様」も、もうすぐ六十八歳になる。
しかし、それで終わりではない。 それは通過点なのである。 私と「あかね様」の関係もまた。