予想もつかない業種の石綿曝露。
コンクリート構造のビルの、建設作業の戦後の変化で、一番大きな変化は、コンクリートの構造体を作る作業です。嘗て昭和三十年前半は、木製の木枠を作り、番線と呼ばれる鉄線で外部の型枠と内部の型枠を固定し、バタカクと呼ばれる木柱で補強し、コンクリートを打ち込んでいました。当然に仕上がりは凹凸があり、その上から、モルタルと呼ばれる、砂とセメントを混ぜ合わせたもので仕上げていました。昭和三十年代の末、コンパねと呼ばれる型枠材が出現し、工法が一変しました。この工法では、セパと呼ばれるコンクリートの厚さを均一にする金具を使い施工します。当然にコンクリートの厚さが均一になり、又、コンクリートの仕上げ面が平らになりました。その結果、仕上げに使われるモルタルの接着力が凹凸の存在したコンクリートより著しく低下しました。そこで登場したのが、シーラーと呼ばれる、接着剤です。この中には、増粘材と呼ばれる石綿が含有され、また、仕上げに使用されたモルタルにも、強度を補強する為に、モルタル混和材と呼ばれる、粘度補強材が投入されました。この粘度補強材にも石綿が使用され、これらの資材を使い施工に携わった左官の職人さんたちが、石綿曝露を起こしました。特に、コネバと呼ばれるミキサーでモルタルを練る係りの職人が大量の石綿被害にあいましたが、どうもこの人たちは、自分たちには石綿は関係ないがごとく思っているようです。なお仕上げ工事の塗装工事(外壁吹き付け工事)の職人の皆さんも被害者なのです。外壁防水吹き付け仕上げは、基本形として次の工程を取ります。まず、下地処理として接着ぞ今日の為の、シーラーを吹き付けます。当然に石綿が含有されていたことは明白です。次に機材と呼ばれる、外壁の模様と為る建材を吹き付けます。このものが即仕上げとなるタイプと、今一度仕上げ材を吹き付けるタイプに分かれますが、いずれにしても、耐候性能を上げる為に、石綿を使用しました。こうしてビルの基本的部分が、根本的に石綿に汚染したのです。現在建て替えビルの解体現場では、この様なビル本体のコンクリート破壊については何ら気勢がなされていないのが現状です。ここに、一般人にも石綿被害が及ぶ危険性が潜んでいるのです。資産価値検討時、石綿建材の使用状況調査で、その価値の確定がなされるような流れが出来つつあります。どちらにしても、2040年ごろから、一般人の中から、中皮腫患者が多発してくる事は間違いないでしょう。その時政府はどのような対策を採るのでしょうか。現行の「労災」「石綿救済法」だけでよいのか今一度考えてみる必要があるようです。