“夕方になれば暑さは和らぎ、涼しい風が吹く今日この頃だ。日暮れを待ちかねたのか虫は競うように嗚き始める。耳を傾けながら部屋の電気を消して、しばしの合唱を楽しんでいる。虫が一日を通じて最も元気なのはこの時間帯。「リーリーリーリーリー・・・」。室外機の中にコオロギがいるのかしら。「リーリー」「リーリー」と鳴き合う二匹の声は愛らしい。はす向かいの公園の草むらでは大合唱だ。その高低や大小が彼のように湧き上がるコーラスは実に見事だ。寝転がって、じっと目を閉じている。
「シューッ」―。車が通ると虫はしばし沈黙し、またゆっくりと奏でる。夜は始まったばかりだ。”(10月5日付け中日新聞)
愛知県日進市の自営業・青山さん(女・58)の投稿文です。「草むらコンサート」この言葉にハッとした。防音が良くなったせいか、耳が遠くなったせいか、それとも虫が少なくなったせいか、ボクは最近虫の声を意識したことがない。聞く時間的余裕がないとは言えない、傾ける意識がないのだろうか。青山さんは電気を消して合唱を楽しんだと言われる。至極の時間であったろう。でもそうするかしないかは個人の姿勢である。生活は豊かになったが、心のゆとりはなくなった。それが現代だとすると、何かがおかしい。スマホやテレビに向ける時間を、もう少し自然の中におけないだろうか。