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「Eternal Voice」と「Grande TAKARAZUKA 110!」月組公演

2024-04-28 16:12:22 | 宝塚

宝塚大劇場に遠征してきました。
月組公演「Eternal Voice 消え残る想い」副題が内容とともに、月城さんのサヨナラ公演であることを表している。
 19世紀ヴィクトリア朝のイギリス、心霊研究会や降霊会、霊媒など、この時代の流行が出てくるので、1月の雪組公演からコナン・ドイルやホームズが登場してもおかしくない設定。主人公のアンティークを扱うユリウス(月城かなと)、霊感の強い彼がメアリー・スチュアートの首飾りを手に入れ、同様に特殊な能力の女性アデーラ(海乃美月)と出会ったことで、事件に巻き込まれていく。
 メアリー・スチュアートとエリザベス一世の確執や、カトリックとプロテスタントの争いが重要なポイントなので、メアリー・スチュアートって誰?という状態だとちょっと難しい。私は、ユリウスとアデーラの出会いが「運命的な邂逅」だったというあらすじから、てっきり一目惚れで恋に落ちるのだろうと思い込んでいたのがじゃまして、最初、話が見えにくかった。2回見て、運命的な出会いというのがロマンスではなく、メアリー・スチュアートの念、「消え残る想い」が二人を結びつけた、それが運命的な出会いなのだと気づいて、やっと話が見えてきた。
 メアリーの想いが二人を呼び寄せ、出会わせた理由は、いま再び宗教的な対立が起きていて、それを利用した政治家が王室を倒そうとする動きがある、争いを起こさせてはならない、未然に防ぎたいということ。その争いの中に、呪術師や霊媒師が絡んでいて、彼らはメアリーとともに死刑になった者の子孫で、首飾りを使って呪いを成就させようとしている。ユリウスとアデーラは秘密警察に協力して、その陰謀を阻止して、めでたしの結末。
 重要な役が超常現象研究所のヴィクター(鳳月杏)で、二人が出会うのもここだし、ヴィクターが秘密警察の協力者であったことから、捜査に加わることになる。
 呪術師(彩海せら)と霊媒師(彩みちる)の怪しさ全開の場面やら、秘密警察の局員たちのやりとりやら、おもしろい場面もあるんだけど、いま一つ上がり切ってない感じがする。霊媒のみちるちゃんの怪演はすばらしくて、声のコントロール、身体の表情、演技力に感心する。秘密警察の有能な女性局員エイデン(天紫珠李)とみちるちゃんが言い争う場面が、とてもおもしろい。セリフの内容が非常に歴史的なのもあるが、二人のテンポがよくて、危機感のある場面なのに、なんだかおもしろいの。
 そして、最も印象に残った役は、メアリー・スチュアート(白河りり)。最初に配役が発表されたときは、あら、りりちゃん、亡霊やるの!?首だけ?と思った。闇にぽっかり首が浮かんでいて、りりちゃんのきれいな顔からきれいな声が流れ出て、れいこさんのユリウスに歌いかけるのかなと思ったけど、だいぶ違いましたけど、とてもよかったです。
 話が見えにくいのは、歴史的背景の理解が必要ということのほかに、ヒロインのアデーラの演技がネックになっていると思う。アデーラは霊感が強くて、そういう自分を受け入れられなくて苦しんでいたのが、ユリウスと出会ったことで、自分を受け入れて歩み出していけるようになるのだが、頑なに恐れおののいていた時と、氷が溶けるようにほどけていく時と、まったく変化が感じられない。メアリーの遺品を手にしたとたんに強烈な力を感じるような場面も、いま彼女が何を感じ、どんなに動揺しているのかが伝わらない。ユリウスや周囲の人のセリフや反応で、ああ、そういうことかとやっとわかる感じ。でも、演技力で物語を展開させていく役を海乃さんに当てちゃいけないと思う。現に展開しなくなってるから。だから、れいこさんとちなつさん、ユリウスとヴィクターが力技で場面をこじ開けて推し進めている。
 しかし、月組の未来は明るいと思う。れいこさんがしょっちゅう言うように。下級生みんな芝居心がある。墓掘りの場面で特に感じた。演出的にはいい感じのところもあるので、もう少しでおもしろくなりそうな感じはある。
 幕切れは、ユリウスとアデーラがそれぞれまっすぐ前を向いて歩き出していくという、中の人の退団、新しい歩みを表すようなラストシーンになっている。
  
 ショーは祝110周年と月城かなとサヨナラと110期生の初舞台。初舞台生の口上は放送で見たことはあったが、初めて生で見た。あれは生で見ると感動しますね。なんだろね、親心になっちゃうのかな?健気で、がんばりたまえ!と思ってしまう。
 口上が終わると、プロローグからパーッと明るくて、白と金色でキラキラしてる!月組なのにダークで妖美じゃない!オーソドックスとはこういうことかというショー(特に何も引っ掛かるところがないとも言える)になっている。
 プロローグ、スターが次々と登場して歌っていくが、れいこさんからちなつさんへ歌い継ぐところが二人の関係性を感じて、きゃ~というポイント。ポージングの笑顔じゃなくて、れいこさんがほんとにうれしそうに笑ってる。
 雪組育ちで月組に組替えになったれいこさんのために作られた「雪月」の場面、和物の雪組ということで、れいこさんは白地にキラキラの狩衣姿。といっても、雪組では王朝ものはやったことがなくて、初狩衣なんだって。そうでしょうね、れいこさんは武士で立ち回りやるか、町人で大火事に遭うか、だもんね。「思い出ばかり雪のように降り積もる路」という歌詞の歌から、月の場面になり、ちなつさん以下の組子が出て群舞になり、最後は4メートルの長い掛け(薄墨で月が描かれている)を着て、背景の大きな大きな月に向かって階段を上がり、振り返る。雪から月へ昇りつめたれいこさんをあらわしているのかな。
 男役が銀橋にズラリの、黒燕尾の場面がやはり壮観。れいこさんが演出の中村先生に希望を聞かれ、「黒燕尾」とお願いしたそうだ。ちなつさんとの絡みの振付が(ほんの一瞬だけど)あるのもありがたい!
  
 スカステでこの公演のナウオン番組の放送があった。れいこさん最後のナウオンだ。ずっと、れいこさんはもっとわがままに自分のしたいようにしたらいいのにと思っていた。常に、組子がとか、組のためにとしか言わない、自分の気持ちはどうなの?と思って。しかし、このナウオンを見てわかった。礼華はる、彩海せらが想定どおりに上がってきて、注目の下級生として名前を挙げていた雅耀くんが新人公演の主役と決まった。そうして、信頼するちなつさんに次を託してやめていく。これこそ、望みどおりなんだ、と。誰よりもかわいい風間柚乃を心配しつつ。
 
 黒燕尾のあと、一人残ったちなつさんが「苦しいときも君と一緒に乗り越えてきた」と歌い、そのあと登場したれいこさんが「しあわせだったと伝えたい」と歌うのだ。
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