よむよま

よむ・よまない、それから。

「双蝶々曲輪日記」十月大歌舞伎第二部

2020-10-15 21:55:21 | 見る
十月の歌舞伎座第二部「双蝶々曲輪日記」角力場を見てきた。
濡髪長五郎が白鸚、放駒長吉が勘九郎。
「双蝶々曲輪日記」というお芝居は、たぶん長いものなんだろうけど、私はこの角力場と引窓の二つの場しか知らない。この二つの場の間に殺しがあったと思われるが、そこは見たことがない。

角力場は、人気の大関(江戸時代は横綱がないので、トップスター)濡髪が、素人出身の放駒という若者と対戦することと、二人のそれぞれのパトロンが遊女をめぐって対立していることがつながっているストーリー。
素人に負けるわけのない濡髪が負け、あとで呼び出した放駒に対して、そっちのパトロンが遊女を身請けしないようによろしく頼むと持ち掛ける。
「わかるだろう?さっきの勝負はそういうことなんだよ」と濡髪に言われた放駒が怒って、そんな汚い話には応じられないと突っぱねる。

何回か見ている芝居だが、私はずっと、濡髪はオトナで放駒は子どもと感じていて、頼みを聞いてやればいいのにと思って見ていた。それが、平成中村座だったか、勘ちゃんの放駒を見たときに、
「そういうことか!キミが怒るのはもっともだ!キミの言うことは正しい!」と思ったのだ。
トップスターの大関に実力で勝ったと思って、無邪気に無防備に喜んでいた放駒が、濡髪がわざと力を抜いて負けたとわかったとき、
「オレに言うことを聞かせたければ、土俵に叩きのめしておいて、さあ言うことを聞け!と言えばいいじゃないか!わざと負けてやったんだからそのかわりに頼みを聞け?オレはそんな卑しい汚い人間じゃないぞ!」と憤然と怒り出すのだ。
勘ちゃんの放駒は、根っこからまっすぐで明るいの。この子の言うことのほうが正しい!と、まっすぐ届いたのでした。
キミも大人になれよというのは、曲がってても平気な大人になれよということなんだな、たいていの場合。
今月の角力場も、とてもよかったです。
白鸚の濡髪は貫禄十分、でも、ちょっと悪い顔に見えるかな。年のせいかな。

勘ちゃんは若旦那の与五郎と二役ですが、与五郎が茶屋の亭主と二人で濡髪の大きな着物を着て、「わあ、さすがに大きい!」とキャッキャッする演出はやらなかった。たぶん二人がくっつくからでしょう。与五郎の部分がわりとあっさり早々と終わったのは、そういう配慮なんだろうと思う。

歌舞伎座は今月も、一席おきで、四部制一演目のみ、飲食・売店なし。
地下の木挽町広場は売店もやってます。舞台写真がもう発売されてたので、また勘ちゃんのを5枚買っちゃった。
いい一幕なので、できるだけお客さん入ってほしい。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「7.2新しい別の窓」(2020.1... | トップ | 「ささみみささめ」長野まゆみ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

見る」カテゴリの最新記事