goo blog サービス終了のお知らせ 

映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ナルニア国ものがたり7 さいごの戦い」 C・S・ルイス

2016年11月01日 | 本(SF・ファンタジー)
ナルニア国の崩壊

さいごの戦い―ナルニア国ものがたり〈7〉 (岩波少年文庫)
ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田 貞二
岩波書店


* * * * * * * * * *

大猿ヨコシマは愚かなロバにライオンの皮をかぶせてアスランを名のらせ、
それが見破られると、こんどは、破滅の神タシをナルニアによびよせてしまいます。
ジルとユースチスは、ナルニアを救うさいごの戦いへ。


* * * * * * * * * *

いよいよナルニア国の最終巻。
最後にふさわしいオールキャストという感じではありましたが・・・。


本作は完全に宗教色一色というふうです。
醜い大猿のヨコシマが、子分格の人のいいロバにライオンの皮をかぶせ、
アスランと名乗らせます。
そして人々に「アスランのお告げ」として、ムリな労働をさせる。
まるで奴隷のようにこき使われるナルニアの動物たち。
そんな様子を見て、こんなアスランはインチキだ、なんとかしたい
と思うのが、あの、カスピアン王から7代ほど後のチリアン王。
彼を助けようと、ひとまずジルとユースチフがまたこのナルニアにやってきます。
ニセのアスランを操っていたヨコシマは、
ティスロック国で信じられているタシの神もアスランも同じだと暴言を吐き、人々を困惑させます。
そしてついには、常にナルニアを狙っていたティスロックとナルニアの戦争になっていきます。


ニセのアスランの正体を知った小人たちは、
では本当のアスランを信じるかといえば、そうはなりませんでした。
もうなにも信じない。
アスランも、タシも。
自分たちのことは自分たちで決める、と。


様々な宗教があり、そして無神論者もいる現代の社会。
中には自分の利益のために、適当な神をでっち上げるものさえいる。
そんな世の中をみごとに表しているのがこの巻です。


しかしアスランは、自分を信じるものだけを救い、
グチャッグチャになったナルニア国は崩壊のままに任せて、閉じてしまう。
うーむ、まあ考えてみれば初めからそういう物語ではあったのですが、
なんだかなあ・・・と思わないでもない。
そして、アスランの良き"子どもたち"は、
ナルニア国ではない真のナルニアへ・・・。
そしてここにもまた衝撃のラストがありまして・・・。


うーん、これでは「行きてかえりし物語」ではなくて、
「行きてかえらぬ物語」ではないか。
これでいいのか・・・?
でも、よーく考えてみると、本作では
人はもともと「アスランの国」から生まれたものだと言っているのではないでしょうか。
それがたまたま、「この世界」へ来ていて、
そしてまた、本来いるべきところへ帰っていった。
つまり、そういう物語だったわけなのですね。


そのように、納得はできるのですが・・・
私はあまり好きにはなれません。

「ナルニア国ものがたり7 さいごの戦い」 C・S・ルイス 岩波少年文庫
満足度★★☆☆☆