映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

湯を沸かすほどの熱い愛

2016年11月08日 | 映画(や行)
母の愛とは



* * * * * * * * * *

双葉(宮沢りえ)は、持ち前の強さと明るさを持つ母。
家業は銭湯なのですが、一年前から夫が“蒸発”し、今は休業中。
そんな時、彼女は体調を崩し、医師から余命宣言を受けてしまいます。
ほんの一時、一人で泣いて泣いて、そして彼女は立ち上がる!
まもなく自分がいなくなってしまっても、
残った皆が前向きに生きていけるように、彼女は奮闘します。



まず、夫(オダギリジョー)を探す。
案外あっけなく見つかり、連れ帰ります。
しかし、なんと小学生の隠し子(?)・鮎子(伊東蒼)までついてきてしまった。
そして、学校でいじめを受け不登校寸前の娘・安澄(杉咲花)には、
立ち向かう勇気を示します。
そして双葉は、家族に銭湯の仕事を割り振って、営業再開。
新しい家族4人の生活は順調に動き始めますが、
次第に双葉の体が弱っていくのです・・・。



安澄のイジメへの対処法は、意表をついてかっこよかった! 
この母にしてこの娘あり。
立派にDNAを受け継いでいるではありませんか。
その夜、同じクラスの男子たちは、眠れぬ夜を過ごしたでしょうね・・・。
そして彼女が手話を身につけていることには、彼女自身も知らない涙・涙の理由が。
ここでもう、双葉の肝っ玉母さんぶり(というのにはスマート過ぎですが)に、
ころりと参ってしまいます。


本作に登場する女たちは、みな実の母との縁が薄いのです。
だけれども、その彼女たちを、双葉が余りあるほどの“湯を沸かすほどの熱い愛”で包み込みます。
そしてそれが全然押し付けがましくないから、心地よい。
これこそが本当の“母の愛”。
でも、その双葉自身は、“母”への思いは満たされないままなのです。
せつないですね。
とはいえ、その憂さ晴らしの方法が痛快でした!!
そうですよね、今さら双葉にはお母さんなんか必要ない。
彼女には“家族”がいるのですから。



さて一方、たくましい女たちに引き換え、
男たちはただ呆然と立ちすくんでいます。
彼らにできるのはボイラーの火を焚くことのみ。
そんな中で、やっと夫一浩が、妻のためにしようと思いついたこととは・・・?


スケールが小さいと、いつも妻に言われていた一浩の精一杯は、
でも、限りなく暖かいですね。
ものすごく、心にしみる一作でした。

「湯を沸かすほどの熱い愛」
2016年/日本/125分
監督・脚本:中野量太
出演:宮沢りえ、杉咲花、オダギリジョー、松坂桃李、伊東蒼

あったかさ★★★★★
切なさ★★★★★
満足度★★★★★