映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヒメアノ~ル

2016年11月30日 | 映画(は行)
凡用が一番・・・



* * * * * * * * * *

平凡な毎日に焦りを感じながら、
ビルの清掃のパートタイマーとして生活している岡田(濱田岳)。
彼は同僚の安藤(ムロツヨシ)から、
一方的に思いを寄せるカフェの店員・ユカ(佐津川愛美)のことを打ち明けられます。
そのカフェで、岡田は高校時代の友人・森田(森田剛)と出会うのですが、
実はその森田は、ユカのストーカーなのでした。


このあたりまではちょっぴりコミカルなラブストーリー?と思えるのですが、
とんでもない。
森田の正体が現れるに連れ、作品は次第に悲惨な様相を呈してきます。


この森田を演じる森田剛がなんといっても凄い。
本作は古谷実原作で、名字の一致は偶然だそうなのですが。
彼は高校時代、ひどいいじめにあっていて、
あるきっかけから、たがが外れてしまったとでも言うのでしょうか、
心は暗黒の底にあるのです。
その底知れない暗さ、不気味さ、危うさ・・・。
以前からあった残虐性は、どんどんエスカレートして行きます。


岡田は自分を底辺にいる凡人だと思っています。
その点で言えば、安藤も森田も似たようなもの。
でも、彼らは自分の位置の捉え方がそれぞれなんですね。



例えば安藤は、
ユカが誰かと付き合うようになったら、その相手をチェンソーで切り刻んでトイレに流してやる!
などと息巻いて、実際にチェンソーを購入までしています。
けれども、実際に岡田がユカと付き合い始めたと聞いて、
彼にできたのは自分の髪を「鉄腕アトム」みたいにして、岡田に絶交を言い渡すのみ。
安藤は、いつもうつろな目をしていて、かなり怪しい奴・・・のように見えるのですが、
実際はかなりの小市民。
孤独で、岡田との付き合いを、実は拠り所にしているのです。


一方森田は、すっかり心が壊れており、
自分の残虐行為すらもあまり自覚していないようです。
まるでブラックホールのように、あたりをひき寄せて傷つけずにいられない。
罪の自覚もないこの人物には、とにかく圧倒されてしまいます。


私自身も、底辺近くにいる凡人だとは思うのですが、
いやあ、ただの凡人というのも幸せなことだ・・・と思えてきました。
凡人は、結局最後の一線を超えることはできません。
ホント、凡用で十分。
少しの友人とたまに飲んでうさを晴らせれば、それでいいですよね・・・。

ヒメアノ~ル 通常版 [DVD]
森田剛,佐津川愛美,ムロツヨシ,駒木根隆介,山田真歩
Happinet


「ヒメアノ~ル」
2016年/日本/99分
監督・脚本:吉田恵輔
原作:古谷実
出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ
残虐度★★★★☆
心の闇度★★★★★
満足度★★★★☆