映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マジカル・ガール

2016年11月10日 | 映画(ま行)
平和な風景の中の落とし穴



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白血病で余命僅かな少女アリシアは、
日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。
ユキコのドレスを着るのが夢です。
その父親ルイスは失業中ですが、
なんとか娘が生きているうちにその夢を叶えてやりたいと思うのです。
しかしデザイナーによる一点もののそのコスチュームはなんと90万円!! 
それでも諦めきれないルイスは、ついに非合法な手段で大金を手に入れようとする・・・。
心に闇を抱える女性バルバラとワケアリの元教師ダミアンによって、
事態は救いがたい方向へ・・・。



海外作品に突如流れる日本語のアニメソング(長山洋子さんのデビュー曲だそうです!)というのは、
なんともインパクトがあります。
だからこれはユーモアに満ちたポップな作品?
・・・などと思っていたら、とんでもない。
フィルム・ノワールと呼ぶべき作品なのでした。



ルイスに秘密をばらすと脅迫されたバルバラが、
なんとか夫に内緒でお金を手に入れようとする。
女性がすぐにでもお金を稼ごうとすればその道は限られています。
彼女の行先は謎めいたクラブ。
その具体的なシーンが描写されないところがまた、想像を刺激するといいますか、
見えないモノ、わからないモノこそが怖いわけですね。



それにしても、元々が、余命僅かな無邪気な娘のため・・・ということなのに、
この結末はなんなんだ!!
平和な風景からいきなり落とし穴に突き落とされるようなこの感覚。
救いがたいけれども、心の隅に何か引っかかってしまう作品。



監督は、日本カルチャーに精通された方とのことです。
今や世界中でこんな風に日本アニメが行き渡っているらしいと実感もさせられました。

マジカル・ガール [DVD]
ホセ・サクリスタン,ルシア・ポジャン,バルバラ・レニー,エリザベト・ヘラベルト
バップ


「マジカル・ガール」
2014年/スペイン/127分
監督・脚本:カルロス・ベルムト
出演:バルバラ・レニー、ルシア・ポシャン、ホセ・サクリスタン、ルイス・ベルメホ、イスラエル・エレハルデ

ノワール度★★★★☆
満足度★★★.5