オタク-CGM-ロングテール

2006年01月11日 | 人生はマーケティングもある。
■COMIC CITY 大阪に行ってきた。
いわゆる「コミック同人誌」の販売イベントである。大阪インテックスの会場を1号館から6号館まで、すべてを埋められるのは、いまや、このイベントだけだと言われている。
主催社のサイトによると、募集サークルが14,000。1号館まるまると広大な中庭が開場待ちのスペースに当てられていたので、開場までにざっと2~3万人の来訪者が想像された。
出展者と来訪者が合わせてざっと5万人。一冊のコミック誌は数百円であるが、来場者が数冊の本を買うだけで、一日に億単位の金が動くと言うイベントである。
コミック誌の多くは、それぞれ題材にする「もとねた」になるコミックがある。会場内の何百と並べられた長机はそれぞれの「もとねた」別に区切られている。たとえば、「鋼の錬金術師」、「ガンダム」、「テニスの王子様」はては、「ドラゴンクエスト」、「ファイナルファンタジー」といったゲームソフトや、「大河ドラマ新撰組」といった芸能・テレビ番組など、それぞれのジャンル別に数十から数百人の出展者が思い思いに装丁したコミックを数種類ずつ販売をしている。
来訪者は入場券にもなっている厚さ3cmほどのガイドブックであらかじめお目当てのブースをチェックしておき、開場と共に一目散にそのブースに駆け寄り、お気に入りの本を買いあさる。このイベントに合わせて印刷された「新刊本」もそれぞれのブースにおかれている。

■コミック同人誌販売会に見る「オタク文化」の形
コミック同人誌が「オタク文化」を説明する分かりやすい例になっていると思われ、多くのオタク評論もこのコミック同人誌販売会のディープな経験を元に書かれているように感じられる。
さて、オタク研究世界一の野村総合研究所の定義によれば、オタク市場に切り込むいは、「創造」「収集」「コミュニティー」「イベント」「聖地」「伝説」の6キーワードに留意する必要がある、という。これをコミック同人誌販売会によくあてはまっていることがわかる。
数千人の作家がコミックを書き(創造)、販売会という(イベント)に参加する。来訪者は他ではなかなか手に入らないお気に入りのコミックを(収集)する。特定のテーマに沿ったコミック作家同士、または読者たちの交流は会場内だけでなくオフ会という形をとりながら、(コミュニティー)を形成する。大阪インテックス、東京国際展示場がコミック同人誌にとって、「聖地」であり、日本のメッカは「アキバ」であることは、言うまでもない。そして、「伝説」は生まれる。(伝説についての調査・考察は十分できていません。すみません)

■オタクの消費行動とCGM,ロングテール
オタクの消費行動について、野村総合研究所は下の4つを提示している。
・コミュニティ形成志向が強い
・ITリテラシーおよび情報収集・交換の能力が高い
・興味の対象の二次創作表現が活発
・対象を追い求めるうちに手段が目的化する。

オタクの消費行動を、現在のメディア状況CGMと、ロングテール論の関係性に落とし込むと以下のことが言えるのではないだろうか。
・オタク:オタクは情報発信をせずにはおかれない。
・CGM:CGMはマスにはなりえない。積みかさねにおいてCGMは力を顕在化する。
・ロングテール:ロングテールはニッチの積みかさねであると同時にこだわりの連鎖である。

■マスメディアとオタクメディアの融合
では、コミック同人誌がなぜ社会的に大きく認知されないかというと、上に書いた「テーマ性」から来るものなのではないだろうか。
「出版社の思惑や営業戦略にとらわれず、作家が自由に作品を発表できる場の提供」を目指して始まったコミケだが、既存作品の模倣が四割という現状は「理想とは多少ズレている」。という指摘がある。
模倣=真似=盗作。というながれの言葉ではあるが、私の感じたコミック同人誌の世界は、[模倣]+[原作にないストーリー]=[原作の世界の拡張]、と理解をした。一冊一冊の作品に、、原作者が意図しない、または、マスの読者を対象にするがゆえに作者が作ることの出来ないストーリーがある。
マスを対象にしたマスコミック誌と、ニッチを対象としたミニコミック誌を連動させて、より大きな文化活動が出来るのではないか。そして、そこにあらたなビジネスモデルが現れてくるのではないかと感じている。