世田谷美術館で催されている『ボストン美術館 パリジェンヌ展 現代を映す女性たち』
を観ていて、今まで何故気がつかなかったのかということがあった。
上の作品は『ギャルリー・デ・モード・エ・コスチューム・フランセ』という雑誌に
掲載された「商品を届ける優雅な仕立屋」という、1778年に流行したフランスの衣装
をエッチングによって描いたものである。
原画はピエール=トマ・ルクレール(Pierre-Thomas Le Clerc)によるものだが、
美術史的には新古典主義と言われる時代を全く感じさせず、明らかに四肢が細すぎて
デッサンとしてならともかく「絵画」として見るならばありえない描写である。つまり
絵画として後世に残らないような作品が当時の風俗を表すものとして残っているのである。
ここの齟齬を専門家がどのように捉えているのかいまいちよく分からない。