MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『幸福(しあわせ)』(1965年)

2018-03-30 01:57:33 | goo映画レビュー

原題:『Le Bonheur』
監督:アニエス・ヴァルダ
脚本:アニエス・ヴァルダ
撮影:ジャン・ラビエ/クロード・ボーソレイユ
出演:ジャン・クロード・ドルオー/クレール・ドルオー/マリー・フランス・ボワイエ
1965年/フランス

「幸福」になるための方法について

 上映時間約80分の本作はタイトル通りに、主人公のフランソワの妻のテレーズの不幸な水死以外は「幸福」な家族の様子しか描かれていない。問題はテレーズの水死をどのように捉えるかによる。
 普通に考えるならば、事故の直前に夫のフランソワが郵便電話電信管理機関(P.T.T.)に勤めるエミリーとの不貞を告白したことによりテレーズがショックを受けて、フランソワが眠っている間に自殺したと見なすであろうが、ワンショットだけテレーズが溺れているシーンが挟まれているように必ずしもテレーズが自殺したとは限らない。誰もテレーズが入水した様子を目撃してはおらず、フランソワでさえテレーズの本当の死因は把握しきれず、もちろんフランソワは自分の告白がテレーズの死の原因の可能性として考えられても確信には至らないのである。
 本作の本当の恐ろしさとは、不倫に関しても死因に関しても幸せになりたければ物事を深く考えないことだという結論に至ってしまうことではないのだろうか。


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