MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ダウンサイズ』

2018-03-06 00:58:21 | goo映画レビュー

原題:『Downsizing』
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:アレクサンダー・ペイン/ジム・テイラー
撮影:フェドン・パパマイケル
出演:マット・デイモン/クリストフ・ヴァルツ/ホン・チャウ/クリステン・ウィグ/ウド・キア
2017年/アメリカ

「運命」という名に相応しい振る舞いについて

 「運命論」という観点から捉えるならば本作と『15時17分、パリ行き』(クリント・イーストウッド監督 2018年)は同じテーマを扱っていると思う。3人の青年たちがパリ行きの列車でイスラム過激派のテロリストと対峙するまでの運命と、本作の主人公のポール・サフラネックがダウンサイジングして隣人のドゥシャン・ミルコヴィッチや元政治活動家のノク・ラン・トランと出会い、「ダウンサイジング」を最初に提唱したノルウェーのユルゲン・アスビョルンセン医師たちのグループに合流するまでの人生を運命と捉えることに違いはないように見える。
 だからポールは環境破壊による地球の終末を唱えるアスビョルンセン医師たちと共に地下に作られたコロニーへの移住を決心するのであるが、ドゥシャンは彼らを「カルト」と見なす。つまり「現在」に向き合うことなくどうなるのか分からない「未来」にこだわる集団は、皮肉にも金儲けのためにわざわざダウンサイジングして普通に生きている家族と組んでクスリや高級品を売りつけている「現実主義者」のドゥシャンには胡散臭いものでしかないのである。
 土壇場になってポールがコロニーに行かなかった理由が、コロニーにたどり着くまでに歩いて11時間かかることだったのかどうかは定かではない。再び「ダウンサイジング」して暇を持て余すような行為に飽き飽きしていたのかもしれない。結局、ポールはまたノク・ランのボランティア活動の手伝いをすることになる。
 「レジャーランド」でいつもの高齢の車椅子の男性に食事を運んだ後に、ポールは改めて振り返って彼を見つめる。その時、ポールは自分の亡き母親を思い出していたに違いない。医学部に進学しながら病気になった母親の面倒を見るために中退して理学療法士にしかなれなかったポールだが結局同じことをしている。それはまるで『15時17分、パリ行き』同様に自分自身のことではなく他人に奉仕することこそが「運命」という名に相応しいというかのようだ。


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