MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『宇宙人東京に現わる』

2018-03-01 00:26:49 | goo映画レビュー

原題:『宇宙人東京に現わる』
監督:島耕二
脚本:小国英雄
撮影:渡辺公夫
出演:南部彰三/目黒幸子/川崎敬三/見明凡太朗/永井ミエ子/山形勲/苅田とよみ
1956年/日本

ノーベル賞級の発見をした博士の雑な扱われ方の意味について

 作品冒頭は赤い塗料が撒かれた跡にタイトルが映され、その次に青い傘のアップが映された後に、小村芳雄と新聞記者が訪れた「宇宙亭」の提灯の赤が映されるなど本作は赤と青のイメージで彩られている。
 岡本太郎がデザインした「パイラ星人」は1970年に大阪に「太陽の塔」として再び現れた。
 しかし肝心のストーリーが良くない。そもそもどの客層をターゲットに制作されたのかよく分からないのである。原水爆などの核兵器廃絶を訴えたいのならば地球に接近してきている「R」と呼ばれる惑星を原水爆で攻撃して地球を救うというストーリーに違和感を持つし、松田英輔博士が発見した原水爆以上の破壊力を持つ元素「ウリウム101」を使って惑星を破壊するというのは逆に「平和的」と呼ばれる怪しい核開発を推奨しているようなものである。
 ところが別の側面を注目してみるならば、必ずしも核開発を勧めているようには見えない。それは松田英輔博士の扱いである。松田博士は「ウリウム101」の情報を盗んで金儲けを企てるジョージ斎藤と名乗るブローカーたちに誘拐されるのであるが、「R」の接近で諦めて松田博士を縄で縛りつけて置き去ってしまう。松田博士が閉じ込められたビルは「R」の接近により崩壊するのであるが、松田博士は辛うじて落ちなくて助かっていた。そこへ天野銀子(人間の姿をしたパイラ星人)たちが現われて松田博士から「ウリウム101」の情報を聞き出して「R」を破壊するためのミサイルを作るのであるが、松田博士は縄を解かれただけで自力で東京城北天文台まで青息吐息で帰らせられるのである。原水爆以上の破壊力を持った元素を発見したノーベル賞級の博士の割には扱いが雑過ぎる。つまりどれほど優れた発見をしても「害悪」を伴うものだとこんな目に遭うのだよというメッセージなのであるならば納得できるストーリーではあるのだ。


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