MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『15時17分、パリ行き』

2018-03-05 00:15:50 | goo映画レビュー

原題:『The 15:17 to Paris』
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ドロシー・ブリスカル
撮影:トム・スターン
出演:アンソニー・サドラー/アレク・スカラトス/スペンサー・ストーン/ジュディ・グリア
2018年/アメリカ

もはや映画評論家の評価などどうでもいい映画監督の作品について

 2015年8月21日に実際に起こった「タリス銃乱射事件」を基に実際に事件に関わった3人を主人公に据えて撮られており、てっきりイーストウッドがフランスの「ヌーヴェル・ヴァーグ」的実験を試みたのかと思って期待して観に行った。しかし例えばエリック・ロメール監督やジャック・ロジエ監督作品が持つ瑞々しさが見られるわけではなく、「ヌーヴェル・ヴァーグ」的手法が成功しているようには見えないのであるが、そもそもイーストウッドにはそのような意図は最初からなかったと捉えるべきであろう。
 アンソニー、アレク、スペンサーの3人は幼なじみで学校でははみ出し者として教師たちに目を付けられており、転校したものの転校先のキリスト系学校でも同じ目に遭っていた。やがてスペンサーは空軍の落下傘部隊に入隊することを目指し自身に厳しいトレーニングを課して身体能力を上げて入隊することができるのであるが、先天性の奥行感覚の欠落によりスペンサーは熱望していた部隊に入隊することができず、救護班に所属して救急処置を学び、そこで首を切られた際の治療法は存在せず運に左右されることを知り、それは事件の現場で活かされることになる。
 アフガニスタンで従軍していたアレクが休暇を利用してガールフレンドがいるドイツを訪れることになったために3人で会うことになる。ドイツに滞在後、3人はフランスに行く予定だったのだが、たまたま飲みに入ったバーで出会った男性に「良い女がいる」と勧められてアムステルダムに行くことになり、その後、パリ行きの高速列車に乗って事件に巻き込まれるのである。
 小さい頃からはぐれ者で運にも見放されて努力も報われなかった者たちが、まるでそんなやんちゃな彼らこそ必要とするように運命が彼らを事件現場に導き、フランスから勲章を貰うにいたるまで一気に上りつめた彼らを見た時、私たちに必要なこととはただ(「行動しろ」という説教臭い言葉よりも)「何かをしろ(do something)」という至ってシンプルなことだと気づかされるのである。
 映画評論家には評判が悪いのだろうが、若者には勇気を与える佳作であることに間違いない。


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