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タイヤとコーナリング(中休み放言)

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ
樹生さん、今日はタイヤの2つの旋回力に関する解説じゃなかったんですか。

いやあ、ちょっと、体調が戻って来ないし、ちょっと発散したいなと。

それで体系も何もなく、MOTOGPチャンピオン、バレンティーノ、ロッシ選手のライディングの写真を見て、好き勝手に語っちゃおうというんですね。

まあ、そんなところです。カンベンしてね。さあ、行ってみましょうか。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ
はい、ではまずはこちらから。いや、それにしてもすごいバンク角ですね。
60度くらい行ってるんじゃないでしょうか。これで転んでないんですよね。

これこそ最新のタイヤテクノロジーとそれを生かす車体、エンジンパワーマネージメントの賜物ですね。
フロントタイヤの接地面なんかすごいですね。
バイクはカーブの内側に倒すと旋回力が増す。その証拠写真みたいなもんですねこれは。
タイヤを傾けて転がすと、傾いた方向に曲がって進む力が生じる。この力のことを「キャンバースラスト」(キャンバーは傾き、スラストは力の意味の英語)と呼びます。
キャンバースラストは、細くてグリップ力のそこまで強くなかったバイアスタイヤ時代の旋回力、極太扁平タイヤのラジアルでは「コーナリングフォース」が旋回力の花形、なんて、まことしやかに言われますけど、このバンク角は明らかにキャンバースラストを期待してのもの。
おそらく旋回Gも2.0に迫るのではないかと思います。
ここ2,3年、モトGPのバンク角はまた一段と深くなりました。1000ccエンジンから800ccエンジンへとレギュレーション(規則)が変化。コーナリングスピードを上げて戦闘力を増す方向へと、マシン開発もややシフト。
マシンはますますスリムに。バンク角は深く。
旋回速度は速く。

実は市販されているバイクの設計上のフルバンクで旋回すること自体は、そんなに難しくありません。適切な速度に乗せてライダーが変な力をどこにも入れず、安全なところでだーっと旋回していければ、バンク角を深くすること自体は簡単なんです。
ただ、このレベルになるとそうは行きません。
前輪、後輪共にタイヤのトレッド部分の端、もうサイドウォールとの境目のショルダーに乗って旋回してるようなものですよね。ちょっとでも間違うとスリップダウンします。むしろスリップダウンしかかるその境界線上で走っている行った方が正確でしょう。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ。)
樹生さん、これはそれを後ろからみたところですね。

ほぼそうなんですが、若干違うんですね。
上の写真に比べると、マシンがかすかに起きてるでしょう。
右手首を見ると、アクセルが開きはじめていますね。つまり、この状態は旋回加速に入った状態、トラクション旋回に入った状態です。
ロッシ選手の体重(+遠心力による荷重)が、すべて後輪の接地点に斜め内側から掛かっていることが読み取れると思います。

この、斜めからタイヤに荷重が加わりつつタイヤが回転すると、タイヤがねじれるようにたわむんです。
ここにアクセルを開いたことによるトラクションが加わりますから、タイヤはさらに押しつぶされつつ、ねじられ、普通に傾いて旋回しているときよりも、より強く、路面をかきむしるようにグリップします。
タイヤに掛かる斜めの強い力を、路面と接した硬い構造のトレッドがより強いグリップ力で路面に踏ん張って持ちこたえるので、その分さらにサイドウォールがなじれるようにたわみます。
ラジアルタイヤの特性は、このねじれ方をタイヤ製造の過程で高度に想定し、コントロールできるということにあります。

リヤタイヤの向きを見ると、このままイン側の縁石にちょっと乗り上げていきそうですよね。でも、実際はイン側縁石の回り、つまりアスファルト上をきれいに弧を描いて回りこんで行きます。(この弧が特に美しいんです。ロッシは!)
つまり、リヤタイヤは、実際の車体の進行方向よりも少しだけカーブのイン側を向いていることになりますよね。

このタイヤの回転方向の向きと、タイヤ(を含む車体)の実際の進行方向の向きとの角度のズレ。
この角度を「スリップアングル」と呼びます。
実際にタイヤは微細なすべりをいつでも起こしているものですが、別にスライド走行しなくても、我々一般ライダーが行動でトラクション旋回をしているときも、タイヤにスリップアングルはついています。
それを生むのが、「タイヤのねじれ」。
トレッドが路面にしっかり食いついている状態でも、サイドウォールがねじれた分だけ、タイヤの進行方向とタイヤの向きにはずれが生じるのです。
その角度は1°未満~3°程度が通常でのスリップアングルです。

タイヤがねじれて、「スリップアングル」がつき、タイヤの向きが進行方向よりも少し内側を向く。そのタイヤが回転して進もうとするのですから、タイヤには、現在の進行方向よりも内側に向かおうとする力が生じます。
その力を「コーナリングフォース」と呼びます。タイヤの発揮する二つめの旋回力です。

腰の弱いタイヤだと、スリップアングルがついても、腰砕けになっていって旋回力がすぐには高まりません。
トレッドががっちり硬く、路面に食いつき、短いサイドウォールがねじれを分担し、しなやかにねじれると同時に、強靭にねじれを戻そうとする特性のタイヤにすれば、スリップアングルがわずかについただけでも、すぐに強い旋回力(コーナリングフォース)を生みます。

このスリップアングルの増加に伴うコーナリングフォースの立ち上がりの比率のことを「コーナリングパワー」といいます。
訳すと「旋回力」そのままですが、僕らが普段使う意味とは違います。
分かりやすい例で言うと、四輪の普通乗用車で、街中時速30キロで走っている時と、高速を時速100キロで走っている時に、ハンドル(ステアリングホイール)を同じ分量だけ、同じ速さで切ったとします。
ゆっくりの時は曲がり始めもゆっくりですが、高速時にはちょっと切っただけでも車体がすごく敏感に反応して、驚くほどハンドルがクイックになっていますよね。
この違いが「コーナリングパワーの違い」です。最終的な旋回力の大小ではなく、旋回力の立ち上がり方が急か、穏やかかを示す言葉が「コーナリングパワー」です。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ

さて、話を元に戻しましょう。
バイクの旋回力をあえてタイヤの発生する力の種類で2つに分解すると、
1、タイヤが傾くことによる「キャンバースラスト」。
2、タイヤがねじれ、スリップアングルがつくことによる「コーナリングフォース」
この2つになる。
「コーナリングフォース」も、日本語に直訳すると遠心力の反対の「求心力」になるため、時としてタイヤの発生する旋回力の総和の意味で使われることも時々見かけますが、それは誤りです。

さあ、この写真を見ていただくと、最初のバンク角が一番深い写真に比べて、荷重がよりリヤタイヤに移り、タイヤのねじれも大きく(といっても数度です)なって、コーナリングーフォースを生かした旋回になっているのが分かるのでないかと思います。

この状態では、実際に路面とタイヤとの間でもなだらかな両輪のスライドを起こしており、スリップアングルは完全グリップ走行時のタイヤのたわみ、ねじれのみの時よりも大きくなっています。

タイヤのゴムは、路面に対して動かずにグリップしているときよりも、わずかに滑りながらこすれているときの方が高いグリップ力を発揮します。
それはコーナリングフォースでも同じで、わずかに路面とスライドしていて、かつタイヤがねじれている状態の時が、一番コーナリングフォースが大きくなります。

でも、タイヤのスリップ率も、コーナリングフォースを生むスリップアングルも、大きすぎると逆に摩擦力は落ちてグリップ力は落ちていきます。
スリップ率は10%~20%、スリップアングルは10度を越えると、逆に旋回力が落ちていきます。
四輪でドリフトが遅いっていうのも、そういうタイヤの特性から来ているんですね。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ
これは雨です。
いかに250馬力に迫り、加速と最高速はF1より速いと言われるモトGPでも、タイヤがグリップしてくれなければ、その力を路面に伝えることは出来ません。
いかにタイヤと路面のやり取りが大事か、このショットを見るだけでもよ分かると思います。

さらに、1つ上のドライの写真と比べると、同じコーナーではないので厳密には比べられませんが、バンク角が非常に浅いのを除くと、あとは思いのほか似てますね。
基本は同じ。路面状況によって、アレンジしているだけなです。

でもでも、基本は同じでよく似ているとは言っても、そのアレンジはなかなか面白い。
ロッシ自身の体重のかけ方を比べてみてください。
ドライの時は、アクセルを開けた状態でリヤタイヤに全体重がぐううっと、掛かっていくのに任せた状態でした。
遠心力と、加速度によって、ロッシの体は、バイクから見て外側、後方に押し出されようとします。
それに力で逆らわず、その掛かる荷重をどこにどんな角度で掛けると一番旋回効率がいいか、その体の置き方をいろいろ(身体)操作するのが、ライディングフォームというわけです。

対して雨では、ロッシの体重は後輪だけに掛かるようにではなく、前後輪両輪に掛かるような位置にしています。
晴れと同じようなトラクションを掛けると、さすがにレーシングレインでも支え切れません。
ライダーの中心を車体の中心付近に置き、パワーもやさしく慎重にかけています。
バンク角が浅い分、フロントタイヤが内側に切れているのが分かるでしょうか。
高速コーナーで見て分かるくらいの舵角を与えることなど、フロントタイヤを斜めにしてブレーキをかけているに等しい行為です。
しかし、これくらいの低速コーナーで、しかもバンク角も浅いとなれば、見ても分かる程度、若干の舵角がつくこともあります。

我々の交差点での右左折やUターンなどがいかに低速で舵角で曲がっているか、改めて感じる一枚です。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ
「スリップアングル」には、誤解もあります。
バイクは後輪が車体と同じ向きに固定され、前輪のみが舵を切る。だから、ハンドルに舵角がつくと、その分がそのままスリップアングルだ、という誤解です。
もしも、フロントに舵角がつく間、車体が全く変わらず直進を続けていたのなら、舵角=スリップアングルというのも成り立ちます。

しかし実際には、舵角がつくと、バイクの場合同時にキャンバーアングル(タイヤの傾き)もつきます。そして舵角がつく過程で、バイクの向きも変わって行きますので、ハンドルの舵角に遅れて車体の向きが変わる、ということはありえるのですが、ハンドルの切れ角よりもフロントのスリップアングルは小さいことが多いのです。

もう1つ、「バイクはフロントに舵角がつくから曲がるのだ。舵角がつかないとバイクは倒れ、決して旋回できない。」
というもの。これはほぼ、正しいのですが、完全に正しいわけでもない。
バイクの舵角はUターン時などの極低速を除き、車体の傾きと動きによって
結果的にあとからつくのです。

この写真、ロッシのフロントタイヤは浮いていますね。
でも旋回加速しています。
この瞬間では、ロッシはリヤタイヤのキャンバースラストとコーナリングフォースの2つだけで、曲がりながら加速している訳です。
フロントの舵角に頼らなくても、曲がることは出来るんですね。
これがトラクション旋回のひとつの典型的な例といってもいいかもしれません。

じゃあ、「フロントに舵角を付けろ」という人は間違っているかというとそうとも言えない。
直進状態から、旋回に入る倒し込みの段階で、その人のような操作をする人もいますし、それで曲がれるのが最新のマシンとラジアルタイヤのパフォーマンスだからです。(私の考え方は違いますけれど)

そのことはまたいつか、お話する機会がくると思います。
一次旋回と二次旋回のお話をするときにでも。

あら!、途中からひとりでずっとしゃべりまくっちゃった。
ごめんなさい、聞くの、つらかった?

……樹生さん、少なくともDJには向いてませんね。


注意*********************************

いまさら言うまでもありませんが、これは、一素人が勝手に写真から想像しているだけで、正しさに関しては何の保証もありません。
また、日常、公道でライディングを楽しむ時にも、GPライダーの走りから学ぶことはたくさんあると思いますが、エネルギー域が余りに違うので、ただコピーすることにはほとんど意味はありませんし、まして真似してスピードを上げていくのは自分のみならず周囲の人を危険に巻き込む可能性が高く、決してお勧めできません。
是非、記事を読んでの判断はご自分でなさって下さい。


************************************

web上では、私のこの記事も含めて、失礼ながら素人の不確かな解釈があふれ、工学的用語も定義を間違ったまま使われていること多いようです。
フィーリングで楽しむには、別に用語の定義にこだわる必要はありませんが、工学用語を使ってライディングを説明しようとするとき、用語の意味の取り違えは無駄な混乱を生むことになります。
どうぞ、読者の方は、信頼の置ける書籍等で正確な用語の意味をご確認下さい。
ただ、ひとりのライテクオタクの駄弁を聞いて楽しむ場合は、「樹生、また調子に乗って。どうせホラだろう」程度の気持ちでお聞き下さい。
ご自分で確認するまでは参考に留め、決して私を信じないようにお願いいたします。
バイクにまたがり、走り出してしまえば、自分を守れるのは自分しかいない。それがライダーというものだと、私は思っておりますので。

ライテクインデックスⅢへ。
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峠に行きました。 (山賊)
2009-12-15 15:32:08
ベテランの走りにまったくついて行けず。
反省しきりでした。

ウェットで舗装林道と普通の峠道でしたが、直線で遅い、コーナー脱出でトロイ。

脱出のトラクションかけるのが全然ダメでした。

どうも峠系は怖さが先にたってメリハリなしの走りになっている事が一番の原因でした。

このブログに書かれている走りが全然できていませんでした。

いろいろ考えさせられる峠ツーでしたよ。

しかし次は欠点がよくわかったので多少の向上ができるかも!?

天気の良い日に片道1時間半かかりますけど、一番近い峠にコソ練に行く予定です。
 
 
 
質問です。 (山賊)
2009-12-15 15:43:07
↑で質問書くの忘れてしまいました(^^;

ベテランの人が峠は2速でギアチェンジなしで走るとの事。

エンジン音がうるさいけれど、ギアチェンジなどやるよりギア固定で走ったほうがいいと言っていました。

私は直線は4速に上げ、コーナーは3速、ヘアピンは2速位を多用しますが、上手な人は2速など低いギア固定なのでしょうか?

いつも質問ばかりですみませんが、お教えください。

 
 
 
峠はいつも新しくて (樹生和人)
2009-12-15 21:20:33
山賊さん、こんにちは。
峠でのギヤポジションですが、それこそバイクによって、ライディングスタイルにもよって大きく違います。
私は頻繁にギヤチェンジする方です。
エンジンの回転数の中の自分の好きな部分(必ずしもパワーバンドとは限りません、わざと外してゆるやかな特性を狙うときもあります)を使いたいのと、ギヤチェンジ操作自体が楽しいので、ギヤチェンジします。

排気量が大きくてマルチエンジンだと、低回転から高回転まで使えるので、ギヤチェンジをあまりしない人もいるかもしれません。

排気量が小さいと、頻繁にチェンジしないと速く走れないはずです。

峠の道にもよりますね。直線区間があるのか、カーブの曲率はどんなのか、路面はどうか…。

また「エンジン音がうるさいけど…」という場合、エンジンが高回転までまわると、閉じたときに急に強いエンブレが利いたり、開けた時にレスポンスが良過ぎてタイヤが空転したりと、かなり扱いが神経質になります。
それが扱える自信と経験がある人は、あえてそれを選んでもいいのですが、一般的には、そこまで高回転まで回さないのが普通です。

バンディット1250なら、十分低速トルクもありますから、下は2000回転くらい、上でも4000回転くらいでも実用上峠で十分走れるはずです。開いた直線区間で5000~6000くらいまで回すことがたまにあるくらいで。

パワーを御せないうちにパワーバンドに入れてしまうと、何かの時にホントにぶっ飛んでしまいます。
リッターネイキッドのパワーは、それほど凶暴なのです。
みんな知らないか、忘れているだけです。
くれぐれもご注意下さい。

直線で遅いのは、路面(濡れて舗装状態もよくない)や道幅(林道では路外転落が怖い)などから来る自衛規制で速度が上げられないのだと思います。
慣れている人はどれくらいが限界かよく知ってますから、それより下の速度では平気で行きますが、そうでない人が怖さを感じて速度が出せないのは当然で、むしろ大切なことです。ここで無理に速度を上げるのは勇気ではなく、愚かな行為です。
峠を快走したいときは、気持ちよく、かつ怖くない速度を上限とするべきです。そして、これは守らなければなりません。前の人が行けたからと言って自分が行けるとは限らないのです。峠の事故では、前走者に無理についていこうとして、自分の判断でなく、速度を出しすぎたことによるものも多いのです。
死亡事故も起きています。
決して無理せず、自分を抑えて下さい。

もし、峠を「速く」走りたいとお望みでしたら、パワーを使い切ることよりも、上限を4000回転とか、4500回転とかに決め(できれば3000以下を推奨したいです)、滑らかな加減速の中で、どれくらいのカーブをそれくらいの速度で通過したとき、どれくらい自分に余裕があるのか、バイクの傾きをどう感じるか、タイヤのグリップ感をどれくらい感じ取れるか、などを、走ってはメモし、バイクの動きと速度、旋回の感覚を体系的に自分の中に積み上げていくことから始めるといいと思います。
また、直線路でもどれくらいの速度の時にどう感じるか、決して怖くない状況の中で様々な速度を繰り返し、ノートして覚えていくといいと思います。
舗装林道のようなところでは、直線でさえ、40キロと50キロでは世界が違います。60キロはまた別世界になります。
その道路上で、とっさにフルブレーキを掛けることができる速度以上は、出してはいけません。
時速何キロなら速いとか、安全とか言うのは、公道上ではナンセンスなのです。
突然路面の凸凹があったり、舗装修理のパッチに乗ったりしてタイヤが滑ったり、サスが揺さぶられたり、ハンドルがいきなり激しく振動したりすることもあります。
同じ道でも、時速40キロの時と50キロの時では全く別の道になる。
これは是非覚えておいて下さい。

ああ、今日はなんだか説教くさいことばかり、長々とすみません。

どうぞ安全運転で、バイクライディングを楽しんでください。
 
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