バイクライフ・バイクツーリングの魅力を北海道から。
聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
タイヤとコーナリング<4>キャンバースラスト

(出典はgoo自動車&バイク モトグッツィV7クラシック試乗レポート フォトギャラリーより。)
バイクが傾いて旋回しているとき、前後のタイヤは、常に2種類の旋回力を発揮しています。
「キャンバースラスト」と「コーナリングフォース」です。
どちらも、バイクを旋回させる力、旋回状態でいうと、慣性の法則で直進しようとするバイクを内側へ曲げて走らせようとする力のことです。
簡単に整理してみますと、
・キャンバースラスト=タイヤの傾きによって生じる内向力
・コーナリングフォース=タイヤの向きと進行方向のズレによって生じる内向力
ということになります。前回もお話したのですが、今回、次回と、この2つの力について、バイアスタイヤ、ラジアルタイヤの違いを踏まえながらお話して行きたいと思います。
今日はそのうちの「キャンバースラスト」についてです。
キャンバースラストとは、回転しているタイヤが傾くと、傾いた方向に曲がっていこうとする力。
この力の説明をするためによく引き合いに出される例は2通りあります。
1つは10円玉(500円玉でも問題ない^^;)を転がすと、傾いた方向に曲がっていくでしょう、という例。(図1)
図1
もう1つは、バイクのタイヤの形から、タイヤを傾けたとき、タイヤが一周する時の円周長が、接地面の内側が短く、外側が長くなるので、それで曲がるのだ、という、円錐を転がしたときの転がり方を引いた例。(図2)
図2
この二つは、曲がり方のメカニズムは違います。正しさからいうと、どちらの例も間違いとは言い切れないものの、どちらも不十分だと私は思っていますが、ここで厳密に考証していくことはやめます。
実際に、バイクはタイヤだけで走っているのではなく、リヤタイヤはスイングアームで車体とつながり、リヤタイヤの向きと傾きは、そのまま車体の向きと傾きになり、フロント回りはフロントフォークとタイヤなどの舵取り部分が首を振って車体の向きとは独立して動きます。ごくごく浅いバンク角(例えば2°とか)でフロントを逆方向にフルステアした場合などを除き、一般にはリヤタイヤもフロントタイヤも車体の傾きと同じ方向に傾きます。
そのとき、ライダーを含めた重心位置がどこにあるかとか、タイヤ単体では考えなくてもよい要素がいろいろ重なってくるのが実際のコーナリングシーンです。
でも、今日は話を単純化するために、タイヤが(前後とも)、傾く(車体もですね)ことによって生じる、曲がろうとする力。それを、「キャンバースラスト」と銘打っておきましょう。
一般的な雑誌や書籍のレベルでは、今日の私の定義と同じ位の大まかさで「キャンバースラスト」をとらえているようです。
<注>
タイヤ工学的に厳密に言えば、「キャンバースラスト」はタイヤの傾き<だけ>の内向力を指し、バイクの旋回のときの車体・ライダーを含めた重心が内側に来てそれに引っ張られるように内側に曲がっていくところまでは入らないのですが、現実のコーナリングでは、タイヤの傾きと重心の内側への移動は密接に絡んでいるので、ここはあえて混同しておきます。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ)
前回記事でも見た、GPシーンでのすごいバンク角。
バイクは遠心力に対向するため、重心をタイヤよりもコーナーの内側に位置させなければなりません。そうしないと、曲がらずに外側にひっくり返ってしまいます。
そして、バイクを傾けることで、キャンバースラストが生まれ、バイクは旋回して行きます。
でもこのキャンバースラスト、傾ければ傾けただけ旋回力が正比例して強まるわけではありません。
下の図は、和歌山利宏氏の「タイヤの科学とライディングの極意」を参考に書いたものですが、和歌山氏によれば、タイヤのバンク角が生む旋回力=キャンバースラストは、直立付近から倒し始めに大きく立ち上がり、バンク角が深まるにつれて徐々に頭打ちになると言います。

これは実際の走行シーンに当てはめて考えると、コーナー進入時に直立状態から例えば20°くらいまでバイクを傾けていったときは、ライダーはバイクの傾きに比例して旋回力が強まるのを感じることができます。
しかし、例えばバンク角45°で旋回中、もうひと寝かししてフルバンクの50°まで寝かしこんでも、バンク初期のようには旋回力は高まってくれません。スピードが変わらなければ穏やかにイン側に向きを変えてくれるでしょうが、くいっと針路変更するほどには向きを変えてはくれないのです。
「バイクが一度旋回状態に落ち着いてしまうと、ライダーはほとんど何もできなくなる…」と言われるのは、こうした理由もあるのです。
ちょっと脱線しますが、コーナーでオーバースピードに気づいて曲がりきれないと判断したときの対処法として、柏秀樹氏、山田純氏他、多くのインストラクターが推奨するのは、リヤブレーキを慎重にかけ、スピードを落とすことで回転半径を小さくすることです。
同じバンク角でも、速度が落ちれば回転半径は小さくなる。
リヤブレーキの利きはそれほど期待できないのですが、やむを得ない場合の対処法として上がっていますね。
対して根本健氏、直弟子の現ライダースクラブ編集長竹田津氏等が推奨するのは、フロントブレーキをかけて車体を起こし、減速後、再びバンクし直してクリアする方法。
どちらが大きく修正できるかと言えば、後者です。フロントブレーキをかけたほうが車体が立ち、その分ブレーキを強くかけられ、速度を落とせるからです。運動エネルギーは速度の2乗に比例しますから、オーバースピードの時にまず速度をいかに落とすかが大事なのです。しかし、速度は落ちるものの、フロントブレーキをかけている間は車体が立ち、キャンバースラストが減ってバイクはどんどんアウト側に迫っていきます、それでも構わずに減速し、これ以上アウトに孕むと危ないというその地点で、再びバンク!旋回してかわすのが、後者の技術。
おそらく、柏氏も山田氏もそれは十分承知で、自分でも場合によってはそうするでしょう。しかし、初心者は、フロントをかけろ、というと、いきなりギュツと掛けるかもしれない。するといきなりフロントからスリップダウンしてしまうかもしれません。また、フロントをかけてマシンが起き、アウト側に向かっていくその恐怖心にパニックになり、ぎりぎりの時点での再度バンクができなくなるかもしれません。だから、多くのインストラクターは慎重にリヤをなめるようにかけろというのだと私は思います。それに、リヤからなら、スリップダウンしてもフロントから行くよりダメージが少ない場合が多いからです。
根本氏も、カーブ中の微細な修正にリヤブレーキをなめることは頻繁にしています。
一見逆を言っている感じのライテク記事も、状況を具体的に想定すれば、「あれかこれか」ではなく、場合によって適切な方を採る、という風に応用ができると思います。
それに、まずはどのインストラクターも強調している、公道でオーバースピードで突っ込むような無謀な走りはするなというメッセージの方を、まずは胸に刻むことでしょう。
さて、やっと本題。
このキャンバースラスト、よく言われるのは、「バイアスタイヤはキャンバースラストで曲がり、ラジアルタイヤはコーナリングフォースで曲がる」ということですが、これはどういうことでしょうか。
ことキャンバースラストに限って言えば、バイアスもラジアルも、変わりません。
バイクは基本的に傾けて曲がる。その原理は大きく変わらず、タイヤ構造に関わらないからです。
しかし、ライダーが日常的に感じる曲がり方に関して言えば、やはりバイアスはラジアルに比べてキャンバー中心の曲がり方…と感じます。
それは、主にタイヤのプロファイル(形状)のせいです。
モトグッチV7クラシック、リヤ130/80-17、 ヤマハFZ1、リヤ190/50 ZR17。
(写真出典、左側はここ、右側はここです。)
図3
図3はバイアスとラジアルのタイヤの形を誇張して書いた概念図ですが、タイヤの構造上、ラジアルタイヤはバイアスよりも扁平で幅広に作られているのでした。
この図はリヤタイヤの例ですが、このタイヤを履いたバイクがリーン(=バンク)していく過程を考えてみましょう。
細いバイアスタイヤを履いた車体の方は、ライダーの操作で重心位置が少し左右に移動し、タイヤの接地面が左右にずれるだけでも、バンクしていくイメージになると思います。
一方の幅広いラジアルでは、重心が左右にずれても、幅広く扁平なタイヤの接地面を横に移動しながらゆっくりバンクしていくことが想像できるでしょう。
直立付近から例えば30°くらいまでのバンクでは、バイアスの細いタイヤの方が軽く寝ます。ではふらふらして乗りにくいかといえば、バイアスタイヤは径が大きかったり、重量が重めだったり、車体のキャスターとトレールの設定等などにより、安定性が高いので、そんなにふらつかないのです。
しかも、浅いバンク角の領域では、キャンバースラストはバンク角にほぼ比例して立ち上がってくれますから、倒していく過程とバイクが曲がりこんでいく過程が素直に結びついてライダーに分かりやすく、安心でき、信頼できるハンドリングになります。

出典はgoo自動車&バイク モトグッツィV7クラシック試乗レポート フォトギャラリーより。
(バイアスタイヤのよさは、細身のプロファイルにより、わずかなバンクでも素直に旋回性を発揮し始め、その手ごたえ、効果がリニアで分かりやすいこと。大げさな体重移動も要らない。)
ラジアルとて、直立付近がそんなに重いわけではありません。タイヤの軽さ、ころがり抵抗の少なさ、車体の設定などで初期の動きの軽さを十分出せるからです。ラジアルタイヤのキャンバースラストが小さいなどということもありません。
ラジアルタイヤしか知らない人でも、直立付近が重くて困る、という感じを持った人はほとんどいないはずです。
ただ、比べると、バイアスの細いタイヤの旋回は、ライダーの大げさな体重移動を必要とせず、わずかな、しなやかな動きでバンクし、素直に旋回し、立ち上がり、華麗にダンスしていくようなそんなリズムは、やはり人間の感性には合っているものだなあという気がします。
絶対性能では明らかに劣る細いバイアスタイヤが見直され、V7クラシックや新しいCB1100などにも採用されてきているのには、四六時中張り切って目を三角にして、速く走らないといけないような気になりがちな、超高性能マシンに、ツーリング派のベテランたちがノー、と言い始めたからかもしれません。
次回は、もう1つの旋回力、「コーナリングフォース」についてお話しします。
ライテクインデックスⅢへ。
バイクが傾いて旋回しているとき、前後のタイヤは、常に2種類の旋回力を発揮しています。
「キャンバースラスト」と「コーナリングフォース」です。
どちらも、バイクを旋回させる力、旋回状態でいうと、慣性の法則で直進しようとするバイクを内側へ曲げて走らせようとする力のことです。
簡単に整理してみますと、
・キャンバースラスト=タイヤの傾きによって生じる内向力
・コーナリングフォース=タイヤの向きと進行方向のズレによって生じる内向力
ということになります。前回もお話したのですが、今回、次回と、この2つの力について、バイアスタイヤ、ラジアルタイヤの違いを踏まえながらお話して行きたいと思います。
今日はそのうちの「キャンバースラスト」についてです。
キャンバースラストとは、回転しているタイヤが傾くと、傾いた方向に曲がっていこうとする力。
この力の説明をするためによく引き合いに出される例は2通りあります。
1つは10円玉(500円玉でも問題ない^^;)を転がすと、傾いた方向に曲がっていくでしょう、という例。(図1)

もう1つは、バイクのタイヤの形から、タイヤを傾けたとき、タイヤが一周する時の円周長が、接地面の内側が短く、外側が長くなるので、それで曲がるのだ、という、円錐を転がしたときの転がり方を引いた例。(図2)

この二つは、曲がり方のメカニズムは違います。正しさからいうと、どちらの例も間違いとは言い切れないものの、どちらも不十分だと私は思っていますが、ここで厳密に考証していくことはやめます。
実際に、バイクはタイヤだけで走っているのではなく、リヤタイヤはスイングアームで車体とつながり、リヤタイヤの向きと傾きは、そのまま車体の向きと傾きになり、フロント回りはフロントフォークとタイヤなどの舵取り部分が首を振って車体の向きとは独立して動きます。ごくごく浅いバンク角(例えば2°とか)でフロントを逆方向にフルステアした場合などを除き、一般にはリヤタイヤもフロントタイヤも車体の傾きと同じ方向に傾きます。
そのとき、ライダーを含めた重心位置がどこにあるかとか、タイヤ単体では考えなくてもよい要素がいろいろ重なってくるのが実際のコーナリングシーンです。
でも、今日は話を単純化するために、タイヤが(前後とも)、傾く(車体もですね)ことによって生じる、曲がろうとする力。それを、「キャンバースラスト」と銘打っておきましょう。
一般的な雑誌や書籍のレベルでは、今日の私の定義と同じ位の大まかさで「キャンバースラスト」をとらえているようです。
<注>
タイヤ工学的に厳密に言えば、「キャンバースラスト」はタイヤの傾き<だけ>の内向力を指し、バイクの旋回のときの車体・ライダーを含めた重心が内側に来てそれに引っ張られるように内側に曲がっていくところまでは入らないのですが、現実のコーナリングでは、タイヤの傾きと重心の内側への移動は密接に絡んでいるので、ここはあえて混同しておきます。

(出典はモトGPオフィシャルサイト 写真のURLはここ)
前回記事でも見た、GPシーンでのすごいバンク角。
バイクは遠心力に対向するため、重心をタイヤよりもコーナーの内側に位置させなければなりません。そうしないと、曲がらずに外側にひっくり返ってしまいます。
そして、バイクを傾けることで、キャンバースラストが生まれ、バイクは旋回して行きます。
でもこのキャンバースラスト、傾ければ傾けただけ旋回力が正比例して強まるわけではありません。
下の図は、和歌山利宏氏の「タイヤの科学とライディングの極意」を参考に書いたものですが、和歌山氏によれば、タイヤのバンク角が生む旋回力=キャンバースラストは、直立付近から倒し始めに大きく立ち上がり、バンク角が深まるにつれて徐々に頭打ちになると言います。

これは実際の走行シーンに当てはめて考えると、コーナー進入時に直立状態から例えば20°くらいまでバイクを傾けていったときは、ライダーはバイクの傾きに比例して旋回力が強まるのを感じることができます。
しかし、例えばバンク角45°で旋回中、もうひと寝かししてフルバンクの50°まで寝かしこんでも、バンク初期のようには旋回力は高まってくれません。スピードが変わらなければ穏やかにイン側に向きを変えてくれるでしょうが、くいっと針路変更するほどには向きを変えてはくれないのです。
「バイクが一度旋回状態に落ち着いてしまうと、ライダーはほとんど何もできなくなる…」と言われるのは、こうした理由もあるのです。
ちょっと脱線しますが、コーナーでオーバースピードに気づいて曲がりきれないと判断したときの対処法として、柏秀樹氏、山田純氏他、多くのインストラクターが推奨するのは、リヤブレーキを慎重にかけ、スピードを落とすことで回転半径を小さくすることです。
同じバンク角でも、速度が落ちれば回転半径は小さくなる。
リヤブレーキの利きはそれほど期待できないのですが、やむを得ない場合の対処法として上がっていますね。
対して根本健氏、直弟子の現ライダースクラブ編集長竹田津氏等が推奨するのは、フロントブレーキをかけて車体を起こし、減速後、再びバンクし直してクリアする方法。
どちらが大きく修正できるかと言えば、後者です。フロントブレーキをかけたほうが車体が立ち、その分ブレーキを強くかけられ、速度を落とせるからです。運動エネルギーは速度の2乗に比例しますから、オーバースピードの時にまず速度をいかに落とすかが大事なのです。しかし、速度は落ちるものの、フロントブレーキをかけている間は車体が立ち、キャンバースラストが減ってバイクはどんどんアウト側に迫っていきます、それでも構わずに減速し、これ以上アウトに孕むと危ないというその地点で、再びバンク!旋回してかわすのが、後者の技術。
おそらく、柏氏も山田氏もそれは十分承知で、自分でも場合によってはそうするでしょう。しかし、初心者は、フロントをかけろ、というと、いきなりギュツと掛けるかもしれない。するといきなりフロントからスリップダウンしてしまうかもしれません。また、フロントをかけてマシンが起き、アウト側に向かっていくその恐怖心にパニックになり、ぎりぎりの時点での再度バンクができなくなるかもしれません。だから、多くのインストラクターは慎重にリヤをなめるようにかけろというのだと私は思います。それに、リヤからなら、スリップダウンしてもフロントから行くよりダメージが少ない場合が多いからです。
根本氏も、カーブ中の微細な修正にリヤブレーキをなめることは頻繁にしています。
一見逆を言っている感じのライテク記事も、状況を具体的に想定すれば、「あれかこれか」ではなく、場合によって適切な方を採る、という風に応用ができると思います。
それに、まずはどのインストラクターも強調している、公道でオーバースピードで突っ込むような無謀な走りはするなというメッセージの方を、まずは胸に刻むことでしょう。
さて、やっと本題。
このキャンバースラスト、よく言われるのは、「バイアスタイヤはキャンバースラストで曲がり、ラジアルタイヤはコーナリングフォースで曲がる」ということですが、これはどういうことでしょうか。
ことキャンバースラストに限って言えば、バイアスもラジアルも、変わりません。
バイクは基本的に傾けて曲がる。その原理は大きく変わらず、タイヤ構造に関わらないからです。
しかし、ライダーが日常的に感じる曲がり方に関して言えば、やはりバイアスはラジアルに比べてキャンバー中心の曲がり方…と感じます。
それは、主にタイヤのプロファイル(形状)のせいです。


モトグッチV7クラシック、リヤ130/80-17、 ヤマハFZ1、リヤ190/50 ZR17。
(写真出典、左側はここ、右側はここです。)

図3はバイアスとラジアルのタイヤの形を誇張して書いた概念図ですが、タイヤの構造上、ラジアルタイヤはバイアスよりも扁平で幅広に作られているのでした。
この図はリヤタイヤの例ですが、このタイヤを履いたバイクがリーン(=バンク)していく過程を考えてみましょう。
細いバイアスタイヤを履いた車体の方は、ライダーの操作で重心位置が少し左右に移動し、タイヤの接地面が左右にずれるだけでも、バンクしていくイメージになると思います。
一方の幅広いラジアルでは、重心が左右にずれても、幅広く扁平なタイヤの接地面を横に移動しながらゆっくりバンクしていくことが想像できるでしょう。
直立付近から例えば30°くらいまでのバンクでは、バイアスの細いタイヤの方が軽く寝ます。ではふらふらして乗りにくいかといえば、バイアスタイヤは径が大きかったり、重量が重めだったり、車体のキャスターとトレールの設定等などにより、安定性が高いので、そんなにふらつかないのです。
しかも、浅いバンク角の領域では、キャンバースラストはバンク角にほぼ比例して立ち上がってくれますから、倒していく過程とバイクが曲がりこんでいく過程が素直に結びついてライダーに分かりやすく、安心でき、信頼できるハンドリングになります。

出典はgoo自動車&バイク モトグッツィV7クラシック試乗レポート フォトギャラリーより。
(バイアスタイヤのよさは、細身のプロファイルにより、わずかなバンクでも素直に旋回性を発揮し始め、その手ごたえ、効果がリニアで分かりやすいこと。大げさな体重移動も要らない。)
ラジアルとて、直立付近がそんなに重いわけではありません。タイヤの軽さ、ころがり抵抗の少なさ、車体の設定などで初期の動きの軽さを十分出せるからです。ラジアルタイヤのキャンバースラストが小さいなどということもありません。
ラジアルタイヤしか知らない人でも、直立付近が重くて困る、という感じを持った人はほとんどいないはずです。
ただ、比べると、バイアスの細いタイヤの旋回は、ライダーの大げさな体重移動を必要とせず、わずかな、しなやかな動きでバンクし、素直に旋回し、立ち上がり、華麗にダンスしていくようなそんなリズムは、やはり人間の感性には合っているものだなあという気がします。
絶対性能では明らかに劣る細いバイアスタイヤが見直され、V7クラシックや新しいCB1100などにも採用されてきているのには、四六時中張り切って目を三角にして、速く走らないといけないような気になりがちな、超高性能マシンに、ツーリング派のベテランたちがノー、と言い始めたからかもしれません。
次回は、もう1つの旋回力、「コーナリングフォース」についてお話しします。
ライテクインデックスⅢへ。
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