大仏や薔薇の名前に桜貝 2016-06-09 | 夏 大仏や薔薇の名前に桜貝 見事な薔薇である まじろぐことのできないで凝視 しばらくは動けない 苗札には小さな字で その名を桜貝と表示されていた 美男の大仏が磨かれていて薔薇が似合って見える
片陰の国際交流鎌倉宮 2016-06-08 | 夏 片陰の国際交流鎌倉宮 鎌倉は四季それぞれに賑わっている 夏の日盛り 短パンに半袖の外国人が闊歩している 彼らは異国にきての臆病なふるまいは全くない 大声で話し笑い駈け出したり 私が木陰でやすんでいると 遠慮なく話しかけてくる 会話にならない国際交流である
心太かの貧しさにもりあがる 2016-06-07 | 夏 心太かの貧しさにもりあがる 心太 この字もひびきにも昭和が感じられる よしず張りの茶店の店先の縁台でいただければいうことない 連れがいればいつしか少年時代の戦後の話になっている 日本中は貧しかった時代がまだ脳裏から消えてはいない 心太かの貧しさの透きとおる(添削)
贈られて口の強張る父である 2016-06-06 | 夏 贈られて口の強張る父である 父の日は母の日に比べて少し軽く扱われているというが それが良いのである 父の子供らへの奉仕や傾注は年に一度のイベントには不似合いだ 無償が当然の価値であって測られたり 落着されては心外となるのだ とは言いつつも 何かを贈られたりすれば 不慣れなその場面に口ごもってしまい なんともだらしがない自分がいる
竹夫人空っぽという無抵抗 2016-06-05 | 夏 竹夫人空っぽという無抵抗 竹夫人とは昔からある抱き枕のこと 中はがらんどうで夜気を通す 冷たい空気を抱いて寝むわけだ 夫人と呼ぶ粋な心根がにくい なにもいわずにただ尽くしてくれるとは 永遠に叶うことのない漢の妄想だ
あれからは焦げたまんまの蝉しぐれ 2016-06-04 | 夏 あれからは焦げたまんまの蝉しぐれ 蝉の声がこれほどに焦げたように聞こえるのはいつからだったか 終戦の玉音放送のあの暑い日 2発の原子爆弾のもたらした焦熱地獄 本土より早めに夏を迎えた沖縄の悲劇の日 焦げたまんまの声は永遠だろう
山宿に戦後のにほひ渋団扇 2016-06-03 | 夏 山宿に戦後のにほひ渋団扇 戦後も72年ともなればその記憶は淡くなってくる 日常では完全に過去のものとして暮らしている 沖縄忌/原爆忌/8月 など戦争を顧みる忌日は貴重だ ひなびた山宿で土間の台所に渋団扇があったりすると にわかに戦後のあの貧困がよみがえる
あめんぼう己が姿に金縛り 2016-06-02 | 夏 あめんぼう己が姿に金縛り 水馬とはよくも名付けたものだと感心する その体の重さを知る由もないが 細い六本の足で水に立つ すべるように走る 立ち止まってはしばらく動かない 自分の姿への恍惚か なにかを悟っての金縛りかもしれない
青嵐吾に始祖鳥の憶えかあり 2016-06-01 | 夏 青嵐吾に始祖鳥の憶えあり 新緑が若葉へ青葉へと深まってくる 田植えも終わったころになると春の風は やわらかな優しい風でなく 時折は嵐のようにすさまじい そのすさまじさはなぜか懐かしい そうか自分には始祖鳥のDNAがあるんだな 納得してまた風にあたりにでかける