ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舍 「華厳」
【子季語】
狗背、紫蕨、いぬ蕨、おに蕨、ぜんまい蕨、干ぜんまい
【解説】
山野の湿気の多いところに生えるシダ類である。紫色の若芽は白い綿毛に 覆われた渦巻状で、それが開かぬうちに干薇として保存し食用とする。
【科学的見解】
薇(ゼンマイ)は、北海道から沖縄までの林内に生育する夏緑性のシダ植物である。葉は、栄養葉と胞子葉に別れ、栄養葉の若葉が食用にされる。また、木綿布があまり手に入らなかった時代には、その若葉にまとわりついた綿毛を活用し、木綿糸もしくは絹糸と合わせることで薇布(薇織)が作り出されていた。似た種としては、ヤシャゼンマイやヤマドリゼンマイ、オニゼンマイなどが存在する。(藤吉正明記)
鳥鳴いて狗背の綿ほぐれ行く 佐藤紅緑 「花紅柳緑」
頭陀袋よりぜんまゐののぞくなり 向久保貞文
待ちて今日ぜんまい土をやぶりけり 水原秋櫻子
ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舎
ぜんまいのすでにほどけてゐし暮色 宇咲冬男
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