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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

龍神の総身はいかに鱗雲 流伴

2017-09-08 | 
龍神の総身はいかに鱗雲



秋天の鰯雲には懐かしい少年期が蘇る
少年時代に補注網を持って
走り回っていた頃の空の記憶だろうか

鰯雲より厚ぼったい鱗雲
いつも竜の鱗のように感じる
空をゆうゆうと泳ぐ竜も澄み切った
秋空の空気を満喫しているようだ
茜色の鱗雲には息をのむ

原句
龍神に空はせまさう鱗雲

「空はせまそう」があまりにも平易だったようだ

間をおかず鷺の降り立つ刈田かな 流伴

2017-09-07 | 
間をおかず鷺の降り立つ刈田かな




窓から見える一面の苅田
昨日の朝はまだ重い稲穂があったのだが

もう稲香に誘われた白鷺が来ている
田圃は鷺にとっては職朝の貯蔵庫だ

稲刈りを済むのをどこかで見張っていたかのように
間をおかずにやってくるのは毎年の事だ


原句

櫓田に間合ひの妙や鳥とりどり

刈田は3日もすれば櫓田に変わる
その頃になると鷺だけでなくたくさんの種類の鳥がやってくる
序列のあるごとく
争うことはない

下向いていよいよ重く秋日傘 流伴

2017-09-06 | 
下向いていよいよ重く秋日傘



写真は句意とは離れてしまったが
夏の日差しを遮る日傘は軽く元気に見えるのだが
秋になるとその日傘は重く感じらられる
黄落の中の日傘は見る目に美しいが
日傘のなかの顔は沈んでみえる
その日傘は主人公の内面を受け止めていよいよ重い

原句

石畳ひとつひとつに秋日影

下向いて石畳の坂道を歩く景
秋の日差しが小さな石畳のひとつひとつに
はっきりとした影をつくっている

秋日影を
秋日傘にしてみたら句全体があたらしくなった

蛇まつりや祖父報恩の奉献旗  流伴

2017-09-04 | 
蛇まつりや祖父報恩の奉献旗




隣町小山市の南端は間々田地区で長村合併以前は間々田町であった
遺跡がたくさん出る地域で江戸時代は日光街道の宿場町として栄えていた
その名残の旧い旅館が残っている

句友はその地域のボスで毎年の「蛇まつり」を仕切っている
彼の祖父の納めた奉献の旗がいつも秋空にたなびいている

原句
古宮に奉献の旗鰯雲
ただぼ報告だったものを
句友の祖父をイメージさせてみた

神の子に吾子のかがやき宮相撲 流伴

2017-09-03 | 
神の子に吾子のかがやき宮相撲




稲の収穫が終わると
豊年の感謝をこめて
神社で宮相撲が行われる風習が残っている

神官が行事を務めるところも多い
もともと相撲はこの神事が始まりだった

子供相撲が中心になる
親たちは神の子になったような我が子がまぶしい


原句
爽やかに白き幣束宮土俵

宮土俵は相撲の傍題だと注意された
爽やかもあって季重ねになっていた
句意も単純すぎていたようだ

鶏頭花無為無聊という力み  流伴

2017-09-02 | 
鶏頭花無為無聊という力み



鶏頭の容は決して美しいとは思わないが
どこか妖艶で何やら不満げな面持ちを感じる
その無為無聊には力み冴え感じられる

原句
鶏頭や無為無聊と云ふ力み

や切れを外した方が句意に素直だと思ったが

スクランブルくの字への字に鳥渡る 流伴

2017-09-01 | 
スクランブルくの字への字に鳥渡る



鳥の輪たる季節である
渡良瀬遊水地にはたくさんの野鳥が生息している
季節ごとに主役は入れ替わる

秋空に編隊飛行の鳥の群は
信じられないほどの距離を超えて飛来する

原句
渡り鳥スクランブルは先ずくの字

鳥の渡りの形をなんとか表現したい
推敲してみたが変わり映えしていない

虫の秋白くて長い長寿眉 流伴

2017-08-31 | 
虫の秋白くて長い長寿眉



虫の音が盛りの季節だ
じっと寝床で耳をすます

少し耳の遠くなったのを自覚する昨今だが
蟋蟀も鈴虫もはっきりと聞き分けられる

去年よりも長くなったような白い眉毛を
しごいている自分がいる

2016年の原句
虫の秋わけなく顰め長寿眉

原句にほとんど変わらないが
中七わけもなく顰め
は意味がない

露天から乗り出す五体渓紅葉 流伴

2017-08-30 | 
露天から乗り出す五体渓紅葉



川沿いの露天湯のある温泉は多い
どこも紅葉の季節は賑わっている
秘湯といわれる地域も
ほとんどが秘湯の名を返上するほどの賑わいだ

谷底を覗く理由はないのだが
谷底を見届けようと
五体を乗り出す人が後をたたない
みな少年に戻りたいのだ


2015年9月の原句
渓もみじ秘湯に五体そまりきり

秘湯は余分な措辞だった
五体を染める これも平凡すぎる
掲句は紅葉に気分が高揚している
あたりが感じられれば成功だが・・・

猪の泥浴の痕富士の野趣 流伴

2017-08-29 | 
猪の泥浴の痕富士の野趣




富士の裾野、凡そ200kmを12回に分けて1年間で一周したことがある
旅行社のツアーだが元気な中高年で評判のツアーだった

その折丁度今頃の季節
猪の泥浴びの痕に遭遇した
なんとも野趣にあふれた光景に息を呑んだが
全員がいるはずもない猪を感じて周囲を見回したものだ


2015年9月の原句
猪の泥浴痕や富士一周

富士一周は句意に離れていると感じたので省き
猪の野趣を加えてみたが・・・

星流る懺悔のあとの天主堂  流伴

2017-08-28 | 
星流る懺悔のあとの天主堂




青の時代のひとこまだが
日曜日にしばしば訪れていた協会に
独りで夕方行ったことがある
懺悔の内容は記憶からは消えているのだが
帰りに振り返るとその協会の十字架の上を
はっきりとした流星が飛んでいた記憶は鮮明だ


2016年9月の原句
月の雨懺悔のあとの天主堂


月の雨と原句はしていたが
懺悔の後の心根を思えば
すっきりと星の飛ぶの季語がよさそうだ

稲の秋新の頭巾の六地蔵 流伴

2017-08-27 | 
稲の秋新の頭巾の六地蔵





稲穂は大きく頭を垂れて
収穫に時期が近い

豊作に感謝して
お地蔵様の頭巾を新しくする

こんな農村の風習がなんとも平和を実感させる


2016年9月の原句
地蔵尊頭巾を替へし秋の暮

収穫の感謝をはっきりとさせてみたが

銀杏散る院の窓より小さき手 流伴

2017-08-26 | 
銀杏散る院の窓より小さき手




獨協大学付属病院の銀杏は素晴らしい
妻の通院、友人の見舞いで何かと訪れる機会が多い

碧い銀杏の葉が色づきだすと早い
金色に輝く黄落が終わるとギンナン拾いの人々が現れる

その後は見事な冬木立
これも素敵だ

病院の窓からも入院の人たちの顔が覗ける
小さな手が元気に振れていると自然と顔がほころんでくる


2016年9月の原句
銀杏散る観る人掃く人拾ふ人

場所を特定して焦点を絞ってみたのだが・・・

落蟬や水琴窟の遠い闇  流伴

2017-08-23 | 
落蟬や水琴窟遠い闇 





あの蝉しぐれも収まって
今は蜩が元気だが
あちらこちらに蝉が落ちている
仰向けにそのほとんどは動かない

庭の角の水琴窟
ときおり澄んだ音を伝える

落蟬への挽歌のようだ



2015年㋇の原句
鳴き止んで待つかたちかな秋の蝉

待つかたちが捨てがたいが
水琴窟を摂り合わせてみた
蝉の哀れが詠めているだろうか